Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

3本の鉛筆、18

2017-01-14 12:13:17 | 日記

 『誰に見せるのかしら?』

内心私は疑問に思いましたが、彼女の後を追って行き先を確かめる事もせずに其の儘、

自分達の教室に残って教科書など読んでいました。

 本当に、私にすると今更という感じでした。

何を如何と思う事も無く、只、書いてくれと言うに任せて書いただけの事でした。

暫くして彼女が戻って来て、あれでいいみたいと言うので、私はそうと言って微笑みました。

が、内心あれでねぇと苦笑いしました。あれでは無いと思うけど、そう思ったのです。

 翌日、やはり彼女が、あれでは無くて他の事を書いて貰いたいらしいという事だ、と言うので、

私はやはりと思いながらにこにこして、私が書くならあの部分から書く事になるけど、

と、念を押してみると、其れなら良いみたい、他にも書いて貰う人がいるらしいから。

割合早かった彼女の返事に、やはりそうかと私はほっとしました。

 続いて、ほっとした私の笑顔を見つめて、Bさんが怪訝そうに問いかけてきました。

「あの詩なんだけど、あれって本当にそうだったの?」

何だか本当の事だと思えないと彼女は言うのでした。

他にも、あの詩を読んだ事がある人がいて、見た事があるとか、

何時頃の事なの?あの詩の話って?

 彼女が不思議そうにそう問いかけてくるので、

私はそうでしょうね、と答えます。

 あの詩と似た詩を私も読んだの。中学の文集に載っていたから、読んだ人いると思うわ。

私の経験とあんまりそっくりなので、私も読んだ時とても驚いたの、

でも、本当に私も同じ経験をしたから、その通りに私の方の経験を書いたのよ。

赤い花の名前もちゃんとサルビアと書いてあったでしょう。

彼女がそうだと言うので、私も頷きます。

そして、あれはね、確か園の年長さんの頃の話よ、と私は付け加えました。

 そんなに前の事なの?彼女は驚いてそう言うと、ごく最近の事なのかと思ったと言うのです。

そんなに小さい頃に?JUNさんそんな経験があったのかと、何だか彼女は瞳を伏せて、しんみりするのでした。

 全然知らなかったと彼女が言うので、幼馴染と言っても案外知ら無い事があるのだなぁと、

私も感慨深い思いがしました。

彼女の同病相憐れむという様なしんみりした様子を見ていると、

彼女にも何だか同じような経験、失恋したのか何か、其れ成りの出来事があった雰囲気を感じるのでした。

 「お互いにね。」

私がそう言うと、彼女は少しムッとした感じで、

瞳を伏せたまま、そんな経験Junさんだけよと低く言うのでした。

私は少し微笑んで、そう、とだけ言うとこの話はもうしない事にしました。

書かなくてよいという話になったので、この件は終了する事にしたのです。

 彼女がまだ何か言いたそうにしていたので、私はもうこの話はしない事にしたわと遮ると、

自分の机の方に向き直り教科書を開いて読み始めました。

 

 


3本の鉛筆、17

2017-01-14 11:28:00 | 日記

 それから2日程して、私はまたBさんに、書いて欲しいと言っていたから書いたらと言われます。

直接話したのかと私が聞くと、彼女は人伝だという返事でした。

如何いう情報網があるのか、彼女の顔を見ていると、彼女と誰かと彼の繋がり、

小中繋がりというより園繋がりかなと私は思うのでした。

 こんな風に幼馴染の彼女に言われると、私も書こうかなという気持ちが起きるのでした。

「書いた方がいいと思う?」

うんと元気に頷く彼女に、半ば溜め息交じりの私は何を書くのかと聞いてみます。

 文集みたいな物?詩とかでもいいの?

彼女はここぞとばかりに身を乗り出して、文でも詩でも、Junさんの書きたい物でいいんだってと言うので、

じゃあ詩ね、と私は言います。

其れなら書けそうだからと。

 実際詩なら短くて済むので、時間も掛からず私にはお手頃でした。

私は受験生、過去の彼やこんな事に今更そう時間を取られたくなかったのです。

 教室の自分の机に向き直って、私は「サルビアの花」という詩を書き始めました。

赤いサルビアの花、だったかもしれません。

実は、この赤い花の詩は依然見た事がありました。

内容が私のケースと酷似していたので、読んだ時非常に驚きました。

私との体験を、当時、彼がその書いた人に話したのかと思ったくらいです。

しかし、私と彼との体験も事実全くそうでしたから、その部分から詩に書き始めたのでした。

 私は直ぐに一応一つの詩を完成させるに至りました。

振り返ると、後ろの席にいたBさんに出来たから読んでみる、と詩を書いた紙を見せました。

Bさんは如何にも喜びに満ちた感じで目を見開くと、その紙を私から受け取り早速読み始めました。

私は紙を読み進めて行く彼女の表情、特に歓喜に輝く彼女の目の光を傍らで眺めて居ました。

 最初嬉しそうに目を輝かせていたBさんでしたが、その詩を読み進む内に瞳からは光が失せ、

明らかに失望したという感じで、瞼は彼女の光を失った瞳を覆い始めました。

 紙1枚の短い詩の事、彼女が読み終えるのにそう時間は掛かりません。

詩を読み終えたらしい彼女はうな垂れた儘、私から顔を背けると紙を持って立ち上がり、

「じゃあ、これ、見せてくるね。」

と、力なく呟くように言うとその場から立ち去り、其の儘教室から出て行きました。

 

 

 

 


3本の鉛筆、16

2017-01-14 09:49:45 | 日記

 そこで、私も一計を案じるのでした。

「若し書くとして、私以外に誰もそれを書く事が出来る人がいないのかしら?」

私はBさんに問い掛けます。

 書く約束は思い出したけ゚ど、他にも色々思い出して、

当時確か、私以外にも何人かにこの話をしたと言っていたのよ。

その人達の中に私より意見の通る人が居るんじゃないのかしら。

私でさえ覚えているんだから、私より優秀で書く事が出来る人がいると思うけど。

その人に書いて貰った方が世間には通るんじゃないかしら。そう話してみたのでした。

 Bさんは、私には分からないけど、Junさんに書いて欲しいと言うのだからJunさんが書いたら。

と言うのですが、如何もそれは私には承服できないのでした。

 「書いた方がいいと思う?」

幼馴染のBさんにこう問い掛けながら、全く書く気にならない私は当時の事を色々思い出していました。

自身が如何したらよいか、記憶と共に自分に限ら無い見知らぬ他者、または彼等を想定して彼是と考えてみるのでした。

 「向こうの高校にも当時の同じ園の同級生は何人かいるし…」

そうでなくても、その後知り合った同級生に彼が何も話していないとは思えないのでした。

何故、私に固執する必要があるのでしょう?

当時の私にはその事が全然分からないのでした。

私にすればもう既に過ぎ去ってしまった遠い過去の話でしかなかったのです。


3本の鉛筆、15

2017-01-14 09:14:48 | 日記

 当時の学校では、夢と同じように彼女は私の後ろの席でした。

そこで、私は昨日不思議な夢を見た、Bちゃんが出てきたのだと話し始めました。

(彼女には名前を付けてありました。)

雰囲気的に夜の教室のようだったとか、もしかしたらとか、

同級生のBちゃんが出てきたので思い当たったとか、父だけだと思い出せなかっただろうとか、

彼是色々話す内に、でも、今まで私だけが知っていると思っていた事なのに、

昨日の夢では、何だか皆が何かしら知っているように感じた。と話したのでした。

 そこで当時を思い出してみると、

確かに彼は、何人かに話したけど覚えていなかったり、覚えていても覚えていないと言ったり、

私が書いて貰うのに一番よい相手だと思ったと、はっきり言っていたのでした。

 私以外にも書く事が出来る人間が確かにいる筈なのに、今はもう交友関係もない彼の事を、

何故私だけが書かなければいけないのか、そう自問してみると、

書かなければ為らない内容も、今の年代になってみると相当深刻な意味合いを含む事に気付くのでした。

 どう考えたって、私自身にとって不利益にしかならないような内容を、

学校も違う、関わり合いもない、今はもう私より学力優秀な意見の通る人々の中にいて、

当時の同級生達もその中に何人かいる筈だし、彼自身だってその立場に居る。

今の私に迷惑を掛けると分かっていて書いてくれと言うなんて。

私はその彼の身勝手で利己的な態度に、昔感じ取ったと同じ彼の不変の有様を感じるのでした。

 そうはいっても、

『確かに、書くと約束はしたなぁ。』

私は思うのでした。

 

 


3本の鉛筆、14

2017-01-14 08:38:24 | 日記

 それから2、3日の内だったと思いますが、或る晩夢を見ました。

私は夢を見ながら、これは夢だと分かっているのです。

 場所は当時の教室でした。

不思議な事に電球が付いていて、教室は昼間というより夜間の室内の其れのようでした。

彼女の後ろには2、3人黒い学生服姿の男子もいて、休み時間らしく会話などしていました。 

照明と室内の明るさの雰囲気以外は、何時もとそう変わりない教室風景でした。

 幼馴染が私に、書いて上げたら、約束したんでしょうと言います。

私は彼女までそんな事を言うのだと、昨日、又は一昨日、父も同じ事を言っていたが、

何の事か分からないと彼女と話しを始め、同級生の彼女と話す内に、やはり或る同級生の事を思い出しました。

 其れで、彼女には背を向けて、1人昔の事を思い出していました。

『時が来たら書いてね。』

そんな言葉に思い至って、もしかしたらその事かなと思うのでした。

 彼女に確認してみようと振り返ると、その場所には父が立っていました。

「あれ、お父さん。」

何で教室に父が?そう思いましたが、夢の事、何でもあるのだなと私は思います。

 父は如何だい思い出したかいとにこにこして聞きますが、私は多分そうなのだろうと思う位でしたから、

父が出てくると、さっぱりと答えるしかありません。

「全然、何の事だか分からない。」

何日か前の言葉と同じ、私は父と同じ遣り取りを繰り返すばかりです。

 こうなったら私も意固地です。

父に限らず、どうやら皆が知っている事柄を、皆は何故私1人だけに書かせようとするのか?

『私ばかりに責任を押し付けて…』

私ばかりが悪く見られるではないか、そんな事を感じるのでした。

 父に限らず、誰が出て来ても、私はこの様な遣り取りにはもう大概飽きました。

そこで、自分の夢なのだから、自分の好きな様にするわと

「もう目を覚ます事にする。」

そう言って、何をしたのでしょう?覚えていませんが、目が覚めるとそこは平日の朝の自宅でした。

私は何時ものように登校の準備をするのでした。