『誰に見せるのかしら?』
内心私は疑問に思いましたが、彼女の後を追って行き先を確かめる事もせずに其の儘、
自分達の教室に残って教科書など読んでいました。
本当に、私にすると今更という感じでした。
何を如何と思う事も無く、只、書いてくれと言うに任せて書いただけの事でした。
暫くして彼女が戻って来て、あれでいいみたいと言うので、私はそうと言って微笑みました。
が、内心あれでねぇと苦笑いしました。あれでは無いと思うけど、そう思ったのです。
翌日、やはり彼女が、あれでは無くて他の事を書いて貰いたいらしいという事だ、と言うので、
私はやはりと思いながらにこにこして、私が書くならあの部分から書く事になるけど、
と、念を押してみると、其れなら良いみたい、他にも書いて貰う人がいるらしいから。
割合早かった彼女の返事に、やはりそうかと私はほっとしました。
続いて、ほっとした私の笑顔を見つめて、Bさんが怪訝そうに問いかけてきました。
「あの詩なんだけど、あれって本当にそうだったの?」
何だか本当の事だと思えないと彼女は言うのでした。
他にも、あの詩を読んだ事がある人がいて、見た事があるとか、
何時頃の事なの?あの詩の話って?
彼女が不思議そうにそう問いかけてくるので、
私はそうでしょうね、と答えます。
あの詩と似た詩を私も読んだの。中学の文集に載っていたから、読んだ人いると思うわ。
私の経験とあんまりそっくりなので、私も読んだ時とても驚いたの、
でも、本当に私も同じ経験をしたから、その通りに私の方の経験を書いたのよ。
赤い花の名前もちゃんとサルビアと書いてあったでしょう。
彼女がそうだと言うので、私も頷きます。
そして、あれはね、確か園の年長さんの頃の話よ、と私は付け加えました。
そんなに前の事なの?彼女は驚いてそう言うと、ごく最近の事なのかと思ったと言うのです。
そんなに小さい頃に?JUNさんそんな経験があったのかと、何だか彼女は瞳を伏せて、しんみりするのでした。
全然知らなかったと彼女が言うので、幼馴染と言っても案外知ら無い事があるのだなぁと、
私も感慨深い思いがしました。
彼女の同病相憐れむという様なしんみりした様子を見ていると、
彼女にも何だか同じような経験、失恋したのか何か、其れ成りの出来事があった雰囲気を感じるのでした。
「お互いにね。」
私がそう言うと、彼女は少しムッとした感じで、
瞳を伏せたまま、そんな経験Junさんだけよと低く言うのでした。
私は少し微笑んで、そう、とだけ言うとこの話はもうしない事にしました。
書かなくてよいという話になったので、この件は終了する事にしたのです。
彼女がまだ何か言いたそうにしていたので、私はもうこの話はしない事にしたわと遮ると、
自分の机の方に向き直り教科書を開いて読み始めました。