Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

交際(ミルと初子の場合)、2

2017-01-22 22:31:43 | 日記

 鷹夫から交際の申し込みの電話があった翌日の夜、初子は彼からの電話を待っていた。

が、如何いう訳かうんともすんとも電話は掛かって来なかった。

父も電話を受けた様子が無かった。本当に梨の礫である。

 「お父さん、昨日の人、鷹夫さんから電話があった?」

彼女は念のために父に訊いてみるが、いやお父さんは出ていないという返事だった。

逆に、父はお前が電話に出たんじゃないのか?昨日じゃ無くて今日の話だが、と言う。

今日は私は出ていないのよ、掛かって来なかったのかしら?

そうか、お父さんも今日は電話に出ていない。と、初子と父の間ではこんなやり取りがあった。

 その晩は、父娘2人で何だかがっかりしたような、拍子抜けしたような気分でいた。

妙だなぁと父は言う。昨日迄はあんなに熱心だったのに、などと父が独り言を言う。

それを聞きつけて、初子は彼から何回電話があったのだろうかと訝る。

彼からの家への電話は、てっきり彼女が聞いた2回だけだと思っていたのである。

何だか初子にしてみると父の様子の方が変に思える。

初子よりも父の方が鷹夫に詳しいように思われるのだ。妙な話である。

 「お父さん、鷹夫さんからは何回電話があったの?」

初子は聞いてみる。

1回だよ。昨日の電話が初めてだ。と父が妙にしゃんとして言うので、初子はびっくりして父に問い直す。

初めて?その前にも1回あったんじゃないの?

たか何とかっていう者を知っているかって、お父さん私に聞いてたじゃないの。

そう彼女はぴしゃりと父に言って、責めるような、疑うような顔つきで眉間に皺を寄せると父を睨んだ。

 父は困ったような恍けたような表情で、

いやー、お父さんよく知らんけどな、などと言う。

彼女が、では誰から電話があったのかと聞くと、さあ誰だったかなと、

父はそろそろ腰を浮かせて逃げ腰となり、そそくさと何処かへ出て行ってしまった。

 眉間に皺を寄せたまま、初子はさっぱり訳が分からない状態でいた。

まあ、思えば鷹夫は昨日のあの調子である、酷ければ今日は1日二日酔いだ。

それにやはり、昨日の事はサッパリと忘れてしまっている鷹夫であるかもしれない。

そう思うと、昨日の出来事は当てにならない話なのかもしれないと、

初子は電話の方には見切りをつけて、テレビの面白い番組等に見入ってその晩を過ごした。

 そして翌日、翌々日の事、漸く鷹夫から電話が掛かって来た。

電話は夕方の明るい時間であり、仕事が休みの日であったから、初子が直に取る事になった。

父は幸いな事に留守であった。

 「初子さんですか?」

確りとした鷹夫の声である。

はいそうですと初子がにこやかに答えると、向こうは、僕達交際していますよね、と問いかけて来る。

僕、交際してくださいって言いましたよね。とも聞いてくるので、彼女はそうですと答える。

それで初子さんOKされたんでしたよね。と初子は言われるので、

彼女は当然、はい、OKします、交際します、と答えた。と返事をする。

 そうですよね。と明るい彼の声が電話口に返って来た。

ここで初子が彼の連絡先を訊こうと思い、

「それで鷹夫さんの電話番号は?」

の、「そ」が今しも彼女の口から出るというタイミングでガチャンと電話は切れた。

こうなると、初子もしかめっ面をして首を傾げてしまう。

父といい鷹夫といい、一体どうなっているのだろう?

何だか妙だ。初子には如何にも不思議な交際のスタートであった。

 


交際(ミルと初子の場合)

2017-01-22 16:30:36 | 日記

 初子がミルと再会を果たし、夢子にその事を電話で話してから10日程してから初子の家に電話が掛かって来た。

ミルこと鷹夫からだったが、彼は大した自己紹介の仕方もできなかったらしい。

しかも、電話に出たのは初子の父だった。

父はハイハイと電話で話していたが、不快とも何とも言わず、

受話器を手に目の前の空間にまだ見ぬ電話の相手の主を想像したり、

また、時折、部屋の向こうでテレビを見ている自分の娘である初子を眺めたりしていた。

 2回目の電話が掛かって来た時になって、漸く初子の方にミルからの話を通した。

「おい、お前、たか何とかという物を知っているか?」

たか何とか?初子には思い当たる人がいた。鷹夫の事である。

如何いう訳か初子の耳には「たかお」の「お」の音が聞き取り難かったので、

夢子と彼の事を話題にする時には「たか何とか」さん、で通していた。

夢子の方は普通に鷹夫さんで話していたが、この夢子の音も初子には聞き取りにくかった。

 「知っているわよ、去年と今年に海で会った人よ。」

初子は父に返事をした。

父は受話器に向かって、知っているそうだよと返事をしていた。

父の様子はまんざら嫌な感じでも無いようだ。

態度もやや遜った感じで、初子にすると父が商売の取引先にでも電話しているように感じたものだ。

そして、この父の受話器の向こうの相手が鷹夫だとピンと来た。

その年の夏に彼と再会した時に、今度はきちんと自分の電話番号を教えて置いたからだった。

向こうから家に電話が掛かって来ても不思議では無い。

 その後、父は受話器を置くと、彼女の傍にやって来て言った。

「いやぁ、向こうがきちんとした名前より、たか何とかの方がお前が分かるだろうと言うから…」

確かに、初子にとってはそうだった。この時父から鷹夫という人から電話だと言われても、

彼女はきっと誰だろうと思ったに違いない。

 ああ、あの人だとにこやかに鷹夫の顔を思い浮かべると、父はその初子の顔を見ながら、

世の中一体全体何が如何なっているのだろう、というような、一種信じられない表情を浮かべ、娘からは顔を背けつつ、

お前電話に出てみるか?とだけ聞いた。

普段ならとんでもない、如何してお父さんの方で電話を切ってしまわなかったのか、と頗る機嫌が悪くなる初子だが、

その時の初子は当然、ええと言って電話に近寄ると、もしもし代わりましたと受話器に向かって話し始めた。

 父はその何時もと違う娘の様子にも、何やら信じられない物、稀有な物を見るような眼でいた。

その目のままで彼女の仕草の後を追っていたが、背中に目が無い初子にはその様子を知る由もなかった。

 「たか何とかです、お父さんに聞かれましたか?」

受話器から、確りした男らしい声が聞こえてきた。

初子は彼の声だと思う、ええ、たか何とかさんでしょうと答える。

ここで鷹夫は確りと「たかお」ですと発音する。

初子も受話器のおかげで漸くたかおという言葉を聞き分ける事が出来た。

はい、たかおさんですね、分かりました。そう言うと鷹夫は嬉しそうに、

「僕たち交際しましょう。」

と言う。

ね、交際してくれますか?こう聞いてくる鷹夫の声のバックが何やら賑やかで騒がしい。

彼と同年代の男性らしい複数の声、それも何処か飲み屋か何かで皆で盛り上がっているらしい雰囲気が感じられる。

時間も夕餉の時刻をまわる頃である。

 『ははぁん、仲間同士で飲んだ余興に、勢いで自分の好きな子に電話して、

交際OKか振られるかで盛り上がっているんだな。』

初子はピンと来たものだ。

 内心ウフフと彼の事を微笑ましくなる。

昨年の夏も今年の夏も彼に対して彼女が思った事だが、

気真面目で上がり症、女生とは殆ど話せない口下手な人、無口なだけに頭の良い、話すと話題の奥深い人かな、だった。

それで、皆の前で、多分周りの皆は彼の事を女性とは縁遠い、モテることの無い人と思っているだろう、

と彼女が思うと、ここは彼に花を持たせてやろうと思うのだった

そして、実際に彼女は気真面目な彼の事を気に入っていたので、

「ね、いいでしょう?」

彼が再度こう言った時、初子はにこやかに

「OKです。交際します。」

と、はっきり答えたものだ。

 OKだ、という彼の声と、わーという声、えーという驚きの声、やった―と言う声で向こうが大盛り上がりの中、

じゃあと鷹夫の声がしたと思ったら電話はそのまま切れた。

受話器を持った初子はあれれという感じだったが、何しろ相手は酔っ払いの集団と思うと、

明日の朝、当の鷹夫はこの事を覚えているのやら、と苦笑いして受話器をそのまま電話に掛けた。

 

 

 

 

 


今日は寒いです

2017-01-22 11:31:03 | 日記

 今日は寒い日です。

雪にはなっていませんが、雨が降り光量が落ちて大気は灰色です。

もうお昼になると思うと、昼食を何にしようかと考えてしまいます。

同じように、次は何にしようか、そう考えてしまいます。

 2、3日前ふと思いついたのは「ミルと初子の交際」ですが、

如何しようという考えがある訳でもなく、いわゆる構想ですね、

それがきちんと頭に有る訳ではなく、漠然と頭に浮かんだだけです。

 写真で間を繋ごうかなと思いましたが、写真もないし、

今日はこのまま休みでしょうね。お題も無い日だし。