Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

交際(ミルと初子の場合)、9

2017-01-25 19:48:36 | 日記

   富士雄から電話があった翌日、当の鷹夫から予定通りに電話があった。

「ああ、はいはい聞いていますよ。」

鷹夫の自己紹介を聞いた初子の父はやはりなと富士雄の事を気の毒に思う。

『少しおかしいんだな。』

まあ、約束だから一応初子に取り次いでやろうと、父は電話の所からやおら立ちあがると、

初子に内心の恐れを悟られないようにそろそろと彼女に近付いた。

 たか何とかいう者から電話だと告げた。

初子は出ないだろう 。今はまだ娘はにこやかだが、またガラッと顔の景色が変わって、

自分はきつっと睨まれ、やいのやいのと怒鳴られるのだろうと思うと、彼女の父は内心げんなりして来た。

 父は覚悟を決めて目を反らしながら、彼女に電話に出てみないかと言ってみた。

この後、父は耳を塞ぎたい衝動に駆られながら初子の返事を待った。

が、意外な事に直ぐ初子は嬉しそうに承諾した。

うんと言って電話の所へ立って行く。

 『嘘!だろう…』

父は信じられないものを見る心地だった。

 あの初子が、嬉しそうに男性からの電話に出るなんて…。

天地がひっくり返った心地がする、おいおいこれは、天変地異の前触れかと開いた口が塞がらなかった。

父はそのまま、電話の彼女の側に寄れずに離れて見ていた。

耳だけはそば立てていたが、気が動転していて娘の声がよく聞き取れなかった。

彼が茫然としている内に電話は終わった。

 やはりなと父は思う。

うまく行かなかったのだ、こんなに直ぐに受話器を掛けるんだから。

『が、…』と彼は思った。

はて?、確かあの子は交際します。と言ってなかったかな?

そう思い直して彼女にちらっと確認してみる。

お前交際するって言ったのか?

娘がそうだよと言うので、父は喜ぶ以前にふらっと気が抜けた。

そしてその後に、フツフツと緩やかに幸福感が湧き上がって来る。

 『初子が、娘が、遂に男の子と交際するんだ。』

この時が来たのだと、父の瞼には滲んで来るものがあった。

そして堪え様も無く次から次へと溢れて来る。

 お父さん、ちょっと出てくるから。

細々とそう娘に言うと、涙を見られたくない父は、

ひょろひょろと横風に煽られるように玄関から何処かへ消えてしまった。

 


交際(ミルと初子の場合)、8

2017-01-25 16:40:27 | 日記

 う~ん、そうか。と初子の父は頷きながら受話器を電話に掛けた。

自分は今迄子育ての心配をして来たが、もう少ししたら今度は孫の心配をする年か、

そんな事を考えると、子供の初子に懲りた気分である。孫の心配まではしたくない物だと思う。

 それにしても、孫可愛さのあの年寄りには感服する。

『男の子は可愛いんだろうなぁ』

初子の父は溜息を吐く。

男の子だと孫でも可愛いのかなぁと思う。何だか富士雄が羨ましくなる。

何しろ自分の子は女の子ばかり、初子は長女だが、2番目も女の子だ。

男親にするとここ迄育てては来たものの、子供といえども娘は異性の事、

何をするにしても物慣れない感じがして長年過ごして来たものだ。

 初子の父も彼女同様、大学と名の付く所を出ていたが、教育とは縁のない方面を専攻していた。

毎年来る母校の会誌に教育のコラムがあり、彼は読むと率先してその通りに行ってみるのだった。

 自然の中で出来る遊び、正直に育てよう、親のいう事を聞かせよう、我慢を覚えさせよう、親切な子に育てよう、等々。

彼は読む度に何時も書かれた通りに初子を教育して来たものだ。

その甲斐あってか、確かに初子は何だか芯が通った人間に育った気がする。

が、何かしら気に障ると癇癪を起こし、ヒステリックになると、早口で矢継ぎ早に父を責めるのだった。

父にするとその権幕が何故か非常に恐ろしく感じる。

そこで父はある日、初子の性格について話題になった時、

 「お前のんびりしているけれど、怒ると怖いじゃないか。」

そううっかり彼女に言ってみた事がある。

しかしこれがいけなかった。

 何ですって、私の何処が怖いっていうの、と、凄い剣幕で逆襲されて、

何処が怖いか言って頂戴、ほら、言ってみてよ。

と眉根に皺を寄せて睨まれるのだから、父はうんともすんとも言えず、しんとしたっきりでいた。

その後初子が気が付くと、何時の間にか父は部屋から姿を消していた。そんな具合の父だった。

 彼女の性格が竹を割った様なといえばそうだが、こうと来たら曲げられない初子の性格が災いして、

過去に彼女はクラスの男子生徒ともめて、その挙句、かっかと激高した彼女は、

男子とは気が合わない、もう口もききたくないと父に言い放つと、以降の男子との不交際宣言をしたものだった。

 そんな過去から今まで、父は初子の影に男のおの字も感じた事が無かった。

初子の口から出る男の子の話題も全く聞いた事が無い。

 実は彼女が年頃になって、家に何度か彼女宛の男性からの電話が無い訳ではなかった。

しかし、父はもし彼女にこの電話を取り次いだならば、きっと不機嫌になるだろう彼女の顔を思い浮かべると、

全く取り次ぐ気がしなくなってしまうのだった。

 「今留守です。」

居留守を使うのが父の常套手段だった。

側に初子がいる場合もあったが、当の初子は母宛の電話だと思い、

母がいる場合は、お母さんは何処そこにいると彼女が言うと、

父は、なんだお母さん家にいたのかと、澄まして答えるのだった。

 こんな父が初子に交際の申し込みと分かっていて鷹夫ことミルの電話を取り次いだのだから、

真に奇跡としか言いようが無かった。

これはもう、一重に富士雄ことチルの影の功労としか言いようが無い。

 

 

 


肉まんです

2017-01-25 16:28:50 | 日記

 私の知っている中華まんというと、出始めの頃からの肉まんあんまん、

そして次に出たカレーまんも大好きでした。

これらは丁度育ち盛りの頃にパン屋さんや八百屋さんに置かれるようになりました。

その後社会人になり、結婚して、子育て中で世事に疎い間にピザマンという物が出て来ていました。

その頃再就職で若者の多い職場にいたところ、ちょっとしたイベントがあり、

上記の中華まんを4種類を取り揃えておきました。

早い者勝ちで売れ筋を見ていたところ、1位ピザまん、2位カレーまん、3位肉まん、4位あんまんでした。

今から20年以上前の話なので参考にならないでしょうが、

若者にはピザ、お年寄りには肉まんかあんまんというのが一般的なようです。

稀にアンマン好きな若い男の子がいました。これは結構隠れファンなようです。女の子もそうみたいです。