Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

交際(ミルと初子の場合)、14

2017-01-27 20:08:48 | 日記

 「お父さん、鷹夫さんとの交際が嫌なら断るわよ。」 

初子は父にそう言ってみた。

父は喜ぶかと思いきや酷く驚いた様子で、えっと言った。

お父さん、何だか私が男の人と交際するのが嫌みたいだから。彼女がこう言うと、

父はしげしげと初子の顔を見て、真顔で黙っていた。

 「お父さん、この前からおかしいでしょう。」

初子はそれが鷹夫からの電話があった直後からの事だからと、

自分達の交際が本当は父の意に副わないのではないかと聞いてみた。

 「いや」

父は静かに言った。初子の顔色の様子を見ながら、逆に彼の方が娘の事を案じている眼差しに変わっていた。

父は最初言い淀んでいたが、静かに娘に話し始めた。

 「お前お父さんに、男の子とは話もしたくない、彼氏も要らないと言っていただろう。」

だから、お父さんお前に男の子を近づけないように気を付けていたんだ。

そんな話を始めるのだった。

 父の話を聞き終わった初子は唖然としていた。

「お父さん、それって何時の事だか分かる?」

そう、それは初子が14歳の時の事だった。今初子は22歳である。8年も前の話であった。

確かに初子にも父にそう言った記憶があった。

しかし、彼女の方は当時、相当父に八つ当たりしたり、彼女ともめたクラスの男子が、

彼女だけでなく他の女子、また男子とも相当問題の多い生徒だという事に気付き、

自分だけじゃ無いと思うと、彼女の頑なな気持ちも自然解れてしまったのだった。

 そうか、父にそんな気持ちはもう無いと言った事が無かったなと彼女は反省した。

「お父さん、それは昔の話よ。私だって普通に彼氏は欲しいし、そろそろ結婚だって考えているわ。」

父は初子のこの言葉に大きく目を見開くと、それは本当かと彼女に念を押すのだった。

そして、父は長の年月の自分の気苦労が徒労に終わったのだと思うと、心底疲労感が湧いて来るのだが、

にこやかな娘の笑顔を見ていると、自分の娘が普通の子であり、

他所の子と大した違いの無い、同じ様な成長を遂げている事にほっと安堵するのだった。


交際(ミルと初子の場合)、13

2017-01-27 19:42:16 | 日記

 一旦散歩に出かけた初子だが、5分と歩かない内に家の事が気になって来た。

母だけに父を任せて来て、何だか自分が無責任な感じがして来たのだ。

母の言葉、元々お前のせいでというのも気になる。

父がおかしくなったのは私のせいなのだろうかと彼女は考えてみる。

 確かに、鷹夫からの電話で交際の申し込みにOKした日から、父はおかしくなったと言える。

そうすると、私が彼と交際する事が父には相当ショックだったのだろうか?

そうなら彼との交際を辞めた方がよいのではと彼女は考え始めた。

 歩きながら、ふと気が付くと目の前にご近所の末広さんが来るのが目に入った。

何時もの笑顔で初子の所へ歩み寄って来ると、

「やあ、お父さんとうとうおかしくなったんだって。」

と、特に揶揄するような目付きでもなく、何時もと変わりのない笑顔で彼女に話しかけて来た。

全く変化のない彼の笑顔に、彼女は何かしら思うのだった。

 お父さん、蔵の中で笑ったり泣いたりしているそうだけど、

到頭気が触れて、座敷牢ならぬ蔵の中に閉じ込められたんだって。

と、ただ真偽を確かめたいのだという物言いだけを、彼女はこの近所のおじさんから感じるのだった。

 蔵の中で?

確かに、初子の家には古い蔵があった。

彼女の祖先が建てた物ではなく、今の家を父が購入して転居して来た時から元々あった建て物だった。

古い家だけに価格が安かったのだ。

彼女にすると朽ちかけた古い土蔵造りの蔵は薄気味の悪い物だった。

その薄暗い蔵の中で、父はさっきの様に笑うだけでなく泣いてもいるのだろうか?

彼女はやはり家に帰った方がよいなと判断した。

そして、普段と全く変わりのない笑顔を向ける末広さんに、

「家の父はちっともおかしくありません。普通です。」

ときっぱり言うと、きっと眉毛を上げて、用があるからとその場で踵を返し家へと急ぐのだった。

 

 

 


交際(ミルと初子の場合)、12

2017-01-27 09:27:09 | 日記

 ははははは。

 わーぁははははは。

部屋いっぱいに響き渡る父の声に、台所から居間へと向かう初子は父の機嫌が相当上々なのを知る。

今までいた台所でも父の笑い声は聞こえていたので、余程面白い事でもあったのだろうと思いながら彼女は聞いていた。

さて、台所の用を済ませて彼女が居間に来てみると、父は座布団に座り込み、まだ時折上を向いて高笑いしていた。

 電話かしらと電話を見ると、受話器は掛かったままである。

確かに、父は電話に出るには遠い位置にいた。

では、テレビで面白い番組をやっているのだろうと、彼女は興味を惹かれてテレビを覗き込もうとする。

 おやっ?

テレビの画面が見える位置まで来たが、テレビの画面は暗いままである。

テレビは点いてい無かったのだ。

ここで初めて初子は父の様子がおかしいと感じるのだった。

 わぁははははは。ははははは。

また父が、顔を天井に向けて部屋一杯に響き渡るような、空にまで向かって声を轟かせるような高笑いを上げた。

こんな父の笑い方など今まで彼女は見た事が無かったので、一瞬奇妙な感じが彼女を襲った。

それは恐怖にも似た感情だった。奇妙で異質なものを見ると人が抱く恐怖心のような物だろう。

 まさか父が、

と思い彼女は父の顔つきや様子等、具に観察した。

すると父を凝視する彼女の目の前で、また父が口を大きく開けると顎を上げ、

天井に向かって空にまで届けとばかりに高らかな笑い声を上げる。

まるで腹の底から「は」の音を虚空にでも吐き出しているような声の出し方だった。

顔も明るく清々しそうだ。

 彼女が見ていると気が付いた父は、

「医者がこうしろと言うんだ。」

と言うので、彼女はそうだと、2日前の晩の那須さんの言葉を思い出した。

お父さん変だから、医者に見せた方がいいよ。

 「お父さん、具合が悪いんなら医者に行って診てもらって来たら。」

と言葉がつい彼女の口から出たものの、

父が医者が言うと言ったのだから、父はもう医者には行って来たのかと思い当たる。

 行って来たの?それでそうしろと言われたの。彼女はそう聞いてみる。

そして同時に父は真面らしいとややほっとした。

父はそうだと答え、抑えるから変になるんだ、

思いっきり外に発散しなさいという事だったと言った。

 彼女はもう1度落ち着いて父の様子を観察してみた。

父はかなり明るい表情で、身も心も天に昇って行きそうな、ぐわっと湧き立つような気配を身にまとっていた。

父のこの歓喜の様相に、彼女は嬉しそうだねお父さんと言ってみた。

父は娘の言葉に如何にもそうだというような明るい笑顔で答えると、

「おお、盆と正月だ、盆と正月が一遍に来たんだ。」

と言う。

なるほど、これは父にとって相当良い事があったのだと彼女は悟った。

 良かったね、盆と正月が一緒に来たのなら、8月と1月、夏冬2つ合わさって、丁度春、

春爛漫なんだねお父さん。

と、おめでとうと彼女が言うと、父はお前うまい事を言うなぁと益々上機嫌である。

そこで初子は、お母さんはと言って、母はどこへ行ったのだろうと探し始めた。

 お母さんなら外へ行ったと父は言い、また引き続き、

ははははは

と、高笑いを始めた。父を居間に残すと彼女は玄関に出た。

 ガラス戸越しに外で動いている母が見えた。

彼女が外へ出て行くと、母の方は家の前で2、3歩進んでは戻るというように、

行きつ戻りつしている。

 「お母さん、如何したの?」

今度は母に聞いてみる。

ああ、と母は彼女の顔を見ながら、お父さん変でねと気落ちした風情である。

お父さんが?全然変じゃないと思うけどと、彼女が言うと、

母はそうと少々気を引き立たせた風だった。

 お医者様にも行って来たみたいだし、ああしろと病院で言われたんでしょう?

お母さんも一緒に行ったんじゃないの?

初子のこの問いに、母はそうだと答え、那須さんや近所の人が、

あんたも一緒に行って、医者に診てもらって来た方がいいよって言うから、行って来たんだけど、

医者の話では…と、母は言葉を濁した。

この状態が今より悪くなる様なら、治らないかもしれないから気を付けなさいって。

 えー、と初子。

大丈夫なんじゃないの、お父さんとても元気で明るかったもの。

少々無理して彼女は微笑んだ。

 お医者様で、ああやって声を出して気持ちを発散させなさいって言われたんでしょう。

もう効果があったらしくて上機嫌じゃないのお父さん、盆と正月だなんて言ってたし、

相当嬉しい事があったのね。良かったね。

彼女がにこにこして母に父の事を取り成すと、母も少し落ち着いたのか微笑んだ。

そして、元々お前のせいでああなったんだけど…などとぼそぼそ言い始めるのだった。

 機嫌がいいのはいいんだけど、良過ぎるのは変だという話だし。

母にこう言われても初子には何の事か分からない。

初子が母の言葉に解せない素振りを見せ始めたので、

母の方は父の様子が気になったのか、これ以上彼女に何でも構うのが面倒になったのか、

ついと家に入ると奥へと姿を消してしまった。

外に1人残った初子は、父の様子と同じように明るく高く晴れ渡った青い空に、

『天高く馬肥ゆる秋』など連想する。

 彼女は綺麗な秋空に誘われてか、家に入りたくなかったのか、そのまま散歩に出掛けてしまった。

 

 

 

 

 


交際(ミルと初子の場合)、11

2017-01-27 09:00:08 | 日記

 初子が父の異変に気付いたのは、鷹夫から電話があった3日目だった。

2日前の夜、父は母と共に帰宅して来たが、

玄関先で母と言い合う声がもうろれつが回らないそれであったので、

父は酔っぱらっているなと直ぐに察しが付いた初子である。

父の様子がおかしいと言うだけに飲み屋にいるのだろうと思っていたが、

10分かそこらで父が酩酊するとも思えなかった。それで、那須さんの話が腑に落ちなかったのだが、

酔っぱらっているからおかしいと思われたのだろう。やはりそうだと初子は思う。

思っていた通りだと家に上がってきた父の顔をじーっと見守る初子。

 父は彼女と顔を合わせると、母と話していた口を閉じてにゅんと笑った。

目が弓なりになり深く曲線を描いて、恵比寿様のような笑顔になった。

無くなった父方の祖父に似てるなあと思うと、彼女はやはり父と祖父、父息子だなあと感じる。

 「お父さん如何したの?」

彼女が問いかける声には答えず、父は大きくふうっと溜息を吐きながら、

よろよろした足取りで自分達の寝所へと上がって行った。

初子が見守る中、父の顔は終始笑顔のままであった。

 彼女は玄関に顔を出してみた。

母が玄関で履き物も脱がずに立っている。

静かで、肩を落とした感じである。その影が那須さんの時に似ていた。

「お母さん、如何したの?」

彼女の声に母は特にどうという様子も見せなかったが、

お父さん、何だか変でね。とだけ言った。

 変?、那須さんもそう言う話だったけど、どんな風に変なの?何だか嬉しそうだったけど。

彼女の問いに母は如何話したものかと思う。うまく話せないでいた。

那須さんにしてもそうだったのだろう。何処が如何といえないのだが、何時もの父ではない事は確かだった。

「何だか、様子が変でね。」

何処が如何とは言えないけれど、変なのだけは分かる。

母はそれだけ彼女に言うと、

一寸もう少し飲み屋や他の人の話を聞いて来るからと出て行った。

おかしいという人もいれば、何時もの父だという人もいるのだ。

母自身がどう判断してよいか困っているのだった。

 


早寝

2017-01-27 08:51:35 | 日記

 単純なんですが、早く寝るのがお勧めです。

実際に私も翌日が早い日は早めに寝床に入ります。

ゆっくり休んで爽快に早く目覚めます。

よく言うように早寝早起きですね。

 しかし、これも現在の話です。

若い頃は早く寝ても早起き出来なかったのが事実です。

若い人は目覚ましと、早起きしなくてはという気力ですね。多分に。