他にも元教授は色々アドバイスしてくれた。
そして、交際を申し込む前に一度自分が相手の女性の父親役になってあげるから、
申し込みのシュミレーションをしてみたらいいよと申し出てくれた。
これはミルにとっては願ったり叶ったりの申し出であった。
地球人の親の年代よりはやや古い人であったが、元教授は男親という者には違いない、
ミルの申し出に対しての彼の感想などぜひ参考にしたいと思うのだった。
ミルは早速宇宙に帰ると元教授の選んでくれた本を読んでみた。
女性に交際を申し込むには、やはり先ずその父親を陥落するのが一番手っ取り早いべしとあった。
ミルが図書館で参考にしていた他の本にも、同じ様な事が出ていたので、これは一般的にそうらしいと彼は判断した。
元教授が父親役をと言ってくれたのには、そういった理由もあるのだと思う。
次に、初子への交際の申し出の言葉を考えなければならない。
チルも初子の父親に様々にアプローチしていてくれたので、
まず、最初にミル自信が父親に挨拶する言葉を考える事にした。
本のその項目を調べてみる。
男子たる者その交際相手の父親、及びその婦女子には勇猛果敢、誠実を以て常に正直に事に当たるべし。
とあった。
勇猛果敢は普段毎日の鍛錬でしているミルの事、造作ないなと思うが、
誠実と正直ではどうしたらよいかと考えてしまう。
本当に正直に話してよい物かどうか。
地球人との交際の調査研究の為にお嬢さんとの交際をお願いしたいのですが。
これでよいだろうか?何だか断られそうな気がした。
さて、自己紹介の例なども書いてある。
私は○○軍の○○階級の誰それです。出身は○○県です。将来は○○艦長などを希望しております。
ふぅ~ん、とミルは思う。
自分の理想とする自己紹介と大差ない。これはこのままでよいなと地球の本にいたく感心する。
後はどんな時、どんな場所から、今の学生が女性に交際を申し込むかをリサーチしてみた。
結果、学生同士の交流会、飲み会など、おふざけの場などでどさくさに紛れ、
お目当ての女性宅に電話している事が多かった。
こういう場面からだと、失敗した場合でも後の所作に困らないと本にもあった。
早速ミルは飲み屋街をうろついて、学生の溜まり場で様々に必要例を採取した。
雑音、話声、歓声、ヤジ、等々、上手く電話のバックの音声も合成できた。
全て準備が整ったところでミルは宇宙船の自室に籠り、申し込みのセリフ練習を繰り返し行ってみる。
これでよい、自分ながら行けそうな気がした。うん、これはきっとうまく行くに違いないと思う。
明日は図書館で、何時もの親切な年配の地球人にシュミレーションしてもらおうと考えると、
ミルはうきうきとして、早々に寝床へと潜り込むのだった。