神が宿るところ

古社寺、磐座、不思議・パワースポット、古代史など極私的な興味の対象を見に行く

楞厳山 鬼岩寺

2011-03-22 21:15:34 | 寺院
楞厳山 鬼岩寺(りょうごんさん きがんじ)。本尊:聖観音。
場所:静岡県藤枝市藤枝市藤枝3-16-14。藤枝市生涯学習センターの北側。駐車場有り。
寺伝によれば、神亀3年(726年)、行基菩薩の開創という。弘仁年間(810~824年)、弘法大師(空海)がこの地に立ち寄ったとき、この付近では魔物(鬼)が出て村人を悩ましていたため、魔物退治を懇願された。そこで、弘法大師は五大尊の画像を描いて真言の行法を行い、魔物を巨岩に閉じ込めた。この巨岩は、今も寺の西の山麓にあるという。また、不動堂の不動明王像は智証大師(円珍)(空海の甥であるが、天台宗寺門派の宗祖)の作で、永禄年間(1558~1570年)に武田信玄が駿河国に侵攻した際、当寺も兵火に遭い、この不動尊像も焼失したと思われた。しかし、ある夜、当寺第23代堅照上人の夢に不動尊が現れ、「今、甲州の大泉寺に居るが、帰る縁があるので、迎えに来てくれ。」と言った。堅照上人が富士川まで来ると、仏像を背負った僧がいた。この僧こそ甲州大泉寺の住職で、当寺の不動尊像を運んできたのだった。これによって、当寺に不動尊が戻った、という伝説もある(夢のお告げはともかく、武田軍によって不動尊像が甲斐国に持ち去られていたらしい。)。
ほかにも、境内には「鬼かき石」(鬼の爪痕が残る石)、「行基菩薩腰掛石」(行基が腰を掛けたという石で、背もたれのある椅子のような形をしている。)などもある。「鬼かき石」は、その溝(鬼の爪痕)を3回なぞると願い事が叶う、特に手芸の上達に御利益があるとされるが、どうやら、古代、この溝で玉(勾玉)を磨いた砥石であるという。
また、「黒犬神社」は、当寺に飼われていた黒犬(クロ)を祀る。昔、田中城主が飼っていた白い土佐犬と無理に戦わされ、これを噛み殺したが、城主の怒りを買い、家来たちに追い立てられて井戸に飛び込んで自殺したという。そのとき、どこからともなく、夥しい犬が現れて、家来たちを襲った。これを恐れた城主が黒犬を祀ったのが「黒犬神社」であるとされる。この黒犬は春埜山から来たとされるが、春埜山の奥、山住山(標高1100m)には式内社「山住神社」があり、山犬(狼)信仰がある。つまり、この黒犬は狼だった、ということを暗示しているとともに、当寺辺りにも春埜山や秋葉山の神仏混淆、あるいは修験道の影響が及んでいたということだろう。
なお、行基の開創というのは伝説に過ぎないだろうが、奈良時代には法相宗?、平安時代後期には天台宗寺門派に転じ、鎌倉時代後期には真言律宗、現在は高野山真言宗の寺院となっている。


写真1:「鬼岩寺」境内に入ると、大量の五輪塔


写真2:正面に護摩堂(不動堂)。裏の山には「古墳の広場」(「若王子古墳群」)がある。


写真3:向かって左が「鬼かき石」、右が「行基菩薩腰掛石」


写真4:「黒犬神社」
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