神が宿るところ

古社寺、磐座、不思議・パワースポット、古代史など極私的な興味の対象を見に行く

真山神社

2016-12-31 23:51:56 | 神社
真山神社(しんざんじんじゃ)。
場所:秋田県男鹿市北浦真山字水喰沢97。国道101号線から秋田県道55号線(入道崎寒風山線)に入り、入道崎方面に(西へ)向かう。国道・県道の分岐(「牧野」交差点)から約2.8kmのところで左折(南へ。案内看板がある)、約9km。駐車場有り。
社伝によれば、景行天皇の御世(71~130年?)、武内宿禰が北陸北方地方視察の後に男鹿島に立ち寄った際、「湧出山」に登って使命達成・国土安泰・武運長久を祈願するため瓊瓊杵命(ニニギ)、武甕槌命(タケミカヅチ)の2柱を祀ったことが始まりという。その後、貞観年間(859~877年)に、円仁(第3代天台座主、慈覚大師)によって「湧出山」は、北の「真山」(標高565m)、南の「本山」(同715m)に二分され、それぞれ修験の聖地となった。神仏混淆の中、天台宗総本山「比叡山 延暦寺」の守護神である「赤山明神」と習合、南北朝時代に別当寺「真山 遍照院 光飯寺」が天台宗から真言宗に転宗したが、修験霊場としての隆盛は変わらず、近世には秋田藩主・佐竹氏の篤い庇護を受けた。明治に入り、神仏分離によって「真山神社」と改称したという。因みに、「なまはげ」は鬼ではなく、「真山」の神の使いとされ、五穀豊穣・災難除去を祈って行われる「柴灯祭(せどまつり)」は当神社の特異神事となっている。
なお、当神社に隣接する「なまはげ館」には「男鹿真山伝承館」が併設され、いわゆる「なまはげ」習俗を体感できる。それによって、まさに「なまはげ」が鬼ではなく、神の使いであることが実感できるので、機会があれば是非訪問してほしいと思う。


真山神社のHP

秋田県神社庁のHPから(真山神社)

「なまはげ館」のHP


写真1:「真山神社」拝殿。本殿は「真山」山頂にあるとのこと。参拝日にはかなり強い雨が降っており、拝殿周辺のみの訪問となった。


写真2:境内の「薬師堂」。かつての別当寺「光飯寺」の本尊であった薬師如来像などが祀られている。


写真3:同上、内部。


写真4:同じく境内の「歓喜天堂」


写真5:同じく境内の「榧(かや)の木」。根元周囲4m、樹高7m、樹齢約1200年とされ、慈覚大師手植えのものという。ここが「光飯寺」跡らしい。


写真6:秋田といえば「なまはげ」。国道101号線(船川街道)沿い、男鹿半島の入口となる船越水道に架かる男鹿大橋手前の「男鹿総合観光案内所」にある巨大な「なまはげ」像。高さ15m。
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姥御前神社(三湖物語 ・その4)

2016-12-24 23:21:28 | 神社
姥御前神社(うばごぜんじんじゃ)。
場所:秋田県山本郡三種町芦崎字芦崎308。八郎潟の西部承水路の西岸、「男鹿街道」沿いの地域コミュニティセンター「せいぶ館」の裏手(西側)。駐車スペースあり。
「三湖物語」の続き。「七座山」の天神(「七座神社」:2016年12月10日記事参照)により米代川からも追い出された八郎太郎は、川を下り、現在の秋田県山本郡三種町天瀬川にたどり着いた。そこで、親切な老夫婦(爺と婆)に一夜の宿を借りることができた。そして、自分が龍であることを告げ、明朝、鶏が鳴くと同時に大地が割れ、大きな湖に変わることを話した。老夫婦は驚きながらも、その話を信じ、荷物を纏めて、鶏が鳴く前に逃げ出した。しかし、婆は裁縫道具を忘れたことに気付き、家に取りに戻ろうとして、溺れてしまった。それに気が付いた八郎太郎は、婆を天瀬川の反対岸に当たる現・三種町芦崎まで尾で弾き飛ばした。こうして、八郎太郎は「八郎潟」の主となり、爺と婆の命は助かったが離れ離れとなり、後に、爺は天瀬川の南にある「三倉鼻」(現・秋田県南秋田郡八郎潟町)に「夫殿大権現(おとどだいごんげん)」として、婆は芦崎に「姥御前神社」として祀られるようになった。因みに、この両地区では鶏は飼わず、鶏や卵も食べなかったという。
さて、「夫殿大権現」の洞窟(岩屋)は「三倉鼻」と呼ばれる丘の麓にあるが、ここはかつて海に突き出した岬で、洞窟は波の浸食作用によってできたものという。縄文時代には住居として利用されていた痕跡もあるらしい。また、古代には、ヤマト政権の勢力範囲の北限がこの辺りだったとされている。洞窟の中には「夫殿大権現」と「八竜大権現」の小祠が祀られているが、「夫殿大権現」の祭神は足名槌神であるという。一方、「姥御前神社」は神社本庁に加盟する神社となっていて、現在の祭神は手名槌神。因みに、「八郎太郎」は「大潟神社」に祀られている。現・秋田県南秋田郡大潟村は昭和39年に八郎潟の干拓によってできた村なので、元々は神社は無かった。そのため、昭和53年に「大潟神社」が創建されたのだが、祭神は、農業の守護神として天照大神と豊受大神(「伊勢神宮」の祭神と同じ)を奉斎するとともに、「八郎太郎大神」も合わせて祀られることになった。八郎太郎は、土俗信仰の神であり、こうした神が神社本庁包括下にある神社において祀られるのは極めて珍しいとされている。


八郎潟町のHPから(夫殿の岩窟)

秋田県神社庁のHPから(姥御前神社)

同(大潟神社)


写真1:「夫殿大権現」(場所:秋田県南秋田郡八郎潟町真坂字三倉鼻。国道7号線沿い、八郎潟町と三種町の町境付近。駐車場なし)


写真2:同上、洞窟(岩屋)。


写真3:「三倉鼻」の台地上から見る「八郎潟」


写真4:「三倉鼻」台地上にある正岡子規句碑。「秋高う 入海晴れて 鶴一羽」


写真5:「姥御前神社」


写真6:同上、社殿


写真7:「大潟神社」(場所:秋田県南秋田郡大潟村字西1-12-2。「道の駅おおがた」から秋田県道42号線(男鹿八竜線)を南に約350m、交差点を左折(東へ)、次の交差点を左折(北へ)すると参道入口。駐車場有り。)
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高岩神社(秋田県能代市)

2016-12-17 23:42:29 | 神社
高岩神社(たかいわじんじゃ)。
場所:秋田県能代市二ツ井町荷上場字五輪台23。国道7号線(二ツ井バイパス)「二ツ井高架橋」のところから側道を下り、秋田県道317号線(西目屋二ツ井線)を北へ約1.1km、「→大沢ゴルフ」という案内板のところを右折(東へ)、すぐに「藤琴川」に架かる橋を渡り道なりに約1.2km。農場の廃屋?付近に「高岩神社入口」という案内板と鳥居がある。鳥居前に2台分程度の駐車スペースあり。そこからは徒歩、約30分。神社前に広場があり、そこまで自動車で行けなくもないようだが、歩いたほうが無難。
創立年代不詳。「高岩山」(333.7m)の山中にあり、天安年間(857~859年)に円仁(慈覚大師、第3代天台座主)が開山したともいう。参道や当神社付近には多くの奇岩・巨石があり、特に「高岩山」山頂には「雄御殿岩・雌御殿岩」という霊岩があり、古くから里人の信仰の対象となっていたとされる。現在の祭神は高皇産霊神、神皇産霊神ほか。
当神社の御神体とされていたのは円仁作との伝承もある阿弥陀如来、薬師如来、観音菩薩の木像で、「高岩山」は鎌倉時代末期から修験道の行場となっていたらしい。「密乗寺」という密教寺院を中心に多くの修行僧が集まっていたが、雇われ僧兵による軍事力も蓄えていたところから、浅利氏と(檜山)安東氏の争いの中で、16世紀終わり頃「高岩山」は焼き払われ、「密乗寺」も廃寺となったという。その後も修験の霊場となっていたが、明治5年に修験道が禁止され、「高岩神社」が成立した。社殿は、京都「清水寺」のような「懸造」(「舞台造」)の上にあり、間近に巨岩や洞窟などがある。参道途中の巨岩・奇岩も面白く、確かにパワー・スポットとしての存在感がある。


秋田県神社庁のHPから(高岩神社)


写真1:「高岩神社」参道入口の鳥居


写真2:参道途中の「五輪堂」。鎌倉時代末期~室町時代初期頃のものと推定される五輪塔を納めている。ここが「密乗寺」跡らしい。


写真3:同じく参道途中の「七廻杉」。推定樹齢550年・高さ約33mの巨木で、息を止めて周囲を7回回ることができると願い事が叶うとされる。


写真4:参道途中。このような巨石が至る所にある。


写真5:同上


写真6:社殿下の鳥居と社号標


写真7:社殿(懸造)


写真8:社殿前の岩


写真9:社殿横の洞窟


写真10:社殿裏の巨岩
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七座神社(三湖物語 ・その3)

2016-12-10 23:46:47 | 神社
七座神社(ななくらじんじゃ)。通称:七座山天神宮。
場所:秋田県能代市二ツ井町小繋字天神道上67。国道7号線「小繋」交差点から秋田県道3号線(二ツ井森吉線)に入り南下、約1.4kmのところに白い鳥居があるので、その下を潜り直進(南西へ)、約350mで境内入口。駐車スペースあり。
社伝によれば、斉明天皇4年(658年)に阿部比羅夫が蝦夷征討の際に創建したという。「綴子神社」(前項)と同様、「日本書紀」の斉明天皇4年の記事にある「齶田浦神」、また斉明天皇5年(659年)の記事にある「彼の地の神を祀る」というのが当神社のことであるとするものののようだ。元々、当神社からみて米代川の対岸(左岸、当神社の南)にある「七座山」は「権現座」(標高287m)と呼ばれる峰を主峰として7つの峰が連なる山がある。本来、「座」というのは岩石が多くて険しい場所という意味だそうだが、その「座」にそれぞれ神が居る、との信仰があり、また、修験の修行の場でもあったようだ。当神社は別名「(七座山)天神宮」といい、菅原道真公も祀られて学問の神ともされるが、本来は「七座山」を祀った自然神であったのかもしれない(ただし、阿部比羅夫創建というのは流石に信じ難い。)。なお、当神社の祭神として國常立尊(天地開闢のとき最初に現れた神で、人格性はない。)なども祀られていて、「天神」とは本来は「天津神」であり、自然神信仰を起源とすることを示しているのだろう。
さて、当神社にも、十和田湖・八郎潟・田沢湖の「三湖物語」に関わる伝説が残されている。即ち、十和田湖を追われた八郎太郎は、米代川を堰き止めて大きな湖とし、そこに棲もうとした。これに驚いた七座山の天神は、何とかして八郎太郎を追い出そうとした。そこで、伝説の1つは、米代川の流れの中に大きな石があるが、これが七座山の天神と八郎太郎が力比べをして投げた巨石だというもの。もう1つは、天神が使わしめの多くの白ネズミに命じて土手に穴を開けさせたので、八郎太郎は一気に下流に流されていったというもの。このとき、猫が白ネズミたちを捕まえることがないように、天神は猫に蚤(ノミ)を付けないと約束するかわりに繋いでおいた、ということで、猫繋(ネコツナギ)という地名が生まれた。現在は、「ネ」の字が取れて「小繋(コツナギ)」という地名になっているという。


秋田県神社庁のHPから(七座神社)

写真1:「七座神社」の県道に面した大きな白い鳥居。


写真2:境内入口の鳥居。


写真3:米代川の船着き場から上がってきたところにある鳥居。その傍に「三湖物語」所縁の地であることを示す標柱が立てられている。


写真4:同上、米代川側から。


写真5:社殿
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綴子神社

2016-12-03 23:21:57 | 神社
綴子神社(つづれこじんじゃ)。通称:綴子八幡宮。
場所:秋田県北秋田市綴子字西館47。国道7号線「綴子」交差点から北へ約400m。駐車場なし。
社伝によれば、斉明天皇5年(659年)、将軍・阿倍比羅夫が蝦夷征討のため当地に至り、戦勝祈願と北秋田地方の鎮護として豊前国一宮「宇佐神宮」(現・大分県)から八幡大神を勧請して、地主神と併せ祀ったのが創建とされる。当神社の主祭神は八幡山大神とされるが、これは応神天皇のことであるとされるので、一般の八幡大神と同じということになる。ただし、当神社では、この社伝から、東日本では珍しい「宇佐神宮」からの直接の分社であり、東北地方最古の八幡宮であるとしている。これらのことは、「日本書紀」の所謂「阿部比羅夫の北討」の記事を基にしていて、現在に残る地名の秋田や能代の初出であるとされる「齶田(飽田)」・「渟代」と同様、「肉入籠(ししりこ)」という地名が現在の「綴子」であるとする説によるものと思われる。ただし、「肉入籠」の場所の比定には諸説あり、他の地名の比定などからして、阿倍比羅夫は「渟代」から更に日本海を北上して現・北海道にまで行ったとされ、「肉入籠」も現・青森県~北海道のどこかではないか、とする説の方が有力のようである。もっとも、「渟代」は現・秋田県能代市よりも広い地域を指す(おそらく北秋田地方全体)とも考えられており、阿部比羅夫(軍団)が米代川を遡上しなかったとも言い切れないようである。
さて、当神社の社家・武内家は、弘長2年(1262年)以前、近江国(現・滋賀県)出身の「常覚院元瑞道亨(じょうかくいんげんずいどうきょう)」が「綴子八幡宮」を再興して、社家の初代となったとされる。境内の「内館文庫跡」は、武内家が慶安元年(1648年)に私塾として開設したものとされ、約1,500巻にも及ぶ蔵書を有するとされる。武内家の中でも「般若院玉峯英泉(はんにゃいんぎょくほうえいせん)」(正徳4年(1714年)生)という人物は特に英才であったようで、全国各地を行脚して修行して修験道を修め、役小角(役行者)が最も尊重した「仏母大孔雀明王経」を校訂するなどの業績がある。なお、「肉入籠」が「綴子」であると最初に言い出したのが、この英泉であるらしい。


綴子神社のHP

秋田県神社庁のHPから(綴子神社)


写真1:「綴子神社」境内入口


写真2:社殿


写真3:境内の「千年桂」。御神木で、創建当時のものとされる(実際は樹齢約300年という。)。樹高は約30m、目通り約8.5m。


写真4:「内館文庫跡」



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