眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

It's Mine

2011-12-14 22:46:13 | ショートピース
メニューの縁を行ったり来たりしながら様子を窺っていた。「何かおいしいものはないかな? 今日のシェフのお勧めは何かな?」空腹のあまり足を滑らせて落ちてしまいそうだった。「これは私のもの。誰にも渡さない!」女はグラスを手元に手繰り寄せながら、きっと虫の方を睨みつけた。#twnovel

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一期一会

2011-12-14 22:17:13 | 12月の列車
 首飾りを作るための紙を集めては高く掲げて、それを突然宙に撒いた。部屋のあちこちに飛んで床に散乱する。そういう遊びだ。集めて投げて集めて投げてユウはそれを繰り返した。飛ぶ瞬間満面の笑み、それがこの遊びのクライマックスなのだろう。それはいつかのお手玉に似ていた。あの時は、お手玉が弾け中から小さな粒が飛び出した。ユウはそれをぶどうと呼び、部屋中をぶどうで散らかした。ついにタコに怒られて、今度はゴミ箱に向かって僕らはぶどうを投げたのだった。
 クラッカーを鳴らす。
 ユウの魔法によって筒は後にマイクとなり、紙テープはデザートになった。
 パパが開けたシャンメリーの音でユウは泣き出してしまう。どこにも当たっていなかったけれど、顔に当たったと訴えた。



 ふと気がつくと、せせらぎが聞こえた。
 12月の列車の隣には、黄色い列車が止まっていて、その上には青空、そして一直線に飛行機雲が走っていた。列車は動き出す。

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ゴーヤ

2011-12-14 21:36:12 | 12月の列車
「ヤーコンじゃない。ゴーヤだった」
 バアバが先の計画を修正した。



 トンネルを抜けると、列車はまたトンネルに入った。

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旅人のグラス

2011-12-14 01:43:57 | ショートピース
行き先はどこでもよかった。「水と空気があれば生きていける」彼は気ままな旅人で、目的もなく世界中を飛び回っていた。そうして彼の飛行機はついに地球を飛び出していた。宇宙バーのカウンターに座りグラスを傾ける。「この一杯のために生きているな」地球を見つめながらつぶやいた。#twnovel

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キウイ

2011-12-14 00:25:52 | 短歌/折句/あいうえお作文
北風に旨味をましたいりこだし

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友達は悪くない

2011-12-14 00:03:03 | 幻視タウン
 手紙の上の郵便番号が勝手気ままに弾かれているし、部屋番号がありもしない階数のものに書き換えられているので、もう少しで手紙を受け取れないところだった。どうでもいい手紙ならばよかったけれど、組織からの大事な指令などだったら大変なことになってしまう。それを読まなかったために、大事な任務を遂行できずに、消されてしまうかもしれなかった。
「危ないところだったよ」
 ホワイトボードを持ち、角を曲がると大泉がいた。やはり、まだ振り切れてはいなかったのだ。さて、どうするべきか。ポイントがいつの間にか溜まっていて、それでテレビを買おうかと考えたけど、どこに置こうかと考えるとまだそれは少し早い買い物かとも思われた。部屋には、まだ玄関に扉がなかったし、当然鍵もなかった。壁と壁の狭い間を通っていくしかなかったから、むやみに食べすぎて太ることもできなかったというわけで。
 路地裏に逃げたところで大泉から逃れられるだろうか。僕は逆に人足の途絶えることのない交差点に着目した。その真ん中にむしろ活路を見出したのだ。公の場で、手を出してくるだろうか……。
「そう考えたというわけさ」
 友達は、黙って僕の話を聞いていた。

 地下街を抜ける途中で本屋に吸い込まれて、入り口のところでエモヤンに会った。携帯電話を耳に当てて、会話をしている。「みやげものはあれでいいかな? 例の奴でいいかな? ん? ああ。そう。そう、そう、例のあれだよ。粒あんでいい?」会話に夢中で僕に気づかない振りをしている。肩を叩くがまだやめない。「そう、そう、持てるよ。ちゃんと持って帰るから」僕はぽんぽんと繰り返して肩を叩く。「してない、してない」してないでしょう。彼は誰とも電話なんかしていないのだ。ようやく偽の遠距離通話をやめて、僕の存在を認めた。「今は名古屋にいるんだって? 今日は仕事で?」と言うと急に怪訝な顔をして、「とういうよりも……」と切り出した。その時、彼の胸には名札がぶら下げられていてそれは知らない人の名前だったし、よく見ると顔ももうエモヤンではなかった。
「おかしなことがあるもんだろ?」
 友達は、少しも笑わず、一瞬顔を曇らせたように見えた。

 間にボールの1つでもあったなら、何かを表現することができたけれど、突然大男と1対1にされてどうしていいかわからなかった。ただロープの間を行ったり来たりして、相手の様子を窺っていた。男が手を合わせようとした時は、ハイタッチをしてすぐにロープに逃れた。力比べでは勝ち目がない。問題なのは何も技がないことだった。技1つないリングの上で、僕はどんなプロレスを見せればいいというのか。「とても困った」凶器にも使えるコーヒーの空き缶を1つ手にとって、僕はそれを高く掲げた。男の頭に向かって、振り下ろすと見せかけて、ぎりぎりのところで止めてみせた。そうして、ロープの外まで持っていくと、郵便ポストの中に投げ入れた。思いの他、観客に受けず、いよいよ焦りが増してきた。柔道の投げの1つを思い出して、試してみるが、決まらない。
「全然駄目なんだよ」
 友達は何も答えず黙って僕の言葉を呑み込んでいた。

「お客様。ここは食事をする場所でございます」
 誰かが、僕の肩に触れていた。
 はっとしている隙に、男は何かを話し始めた。

 風は秋で、秋は遠い母を思い出させた。緑の丘の上に母は居て、僕と並んでキノコの山を食べていた。夏とは違う優しさを帯びた風が吹き抜ける度に、辺り一帯に甘い香りが立ち込めた。けれども、同時に風は時を切り刻み、少しずつ2人の時間を奪い取ってゆく。小気味良い音と共にキノコは欠け、急速に落ちていく太陽が2つの影を引き裂いた。何度目かの風が、ついに丘全体を黒く塗り終えて、冷たく、さよならを突きつけた。
 風は止み、じりじりとした太陽が表立つと突然の夏がやってくる。唇から、さよならの切れ端が見つかる。

「お客様。ここは食事をする場所でございます」
 言葉が、肩に触れて僕をどこかに連れ戻そうとしている。
「テーブルの上に友達を置いて空想に浸る場所ではございません」
 いつから僕はここにいたのだろう。いつから友達を置いていたのだろう。想像以上にそうしていたのもしれない。空想の中を流れる時間は、現実の時間とは違うのだから。
「虫の1秒は、人の1秒と違うって知ってますか?」
「お客様。ご理解いただけますでしょうか」
 自分のことはともかく、友達のことを言われて、動揺してしまった。友達は悪くない。友達は何もしていない。友達は、友達は、友達は……。

 木目を追っていると本屋の中にいた。「お母さん」少年は、みんなの場所だからという意識を持ってか、母の耳に顔を寄せて小さな声で疑問を投げかけていた。「これは?」長椅子に座りながら、母は母で自分の本を読んでおり、その世界の時の流れが寸断されることに少しの疎ましさを覚えながら、少年の持つ絵本の中から立ち上がる種々の疑問に答えていった。それは時に正しく、時に母の私情と空想を織り込んだ答えだった。少年は、その1つ1つを自分なりに呑み込んでは、再び自分の物語の中に戻っていった。
「ブックカバーはおかけしますか?」僕はそのままでと答える。「袋にはお入れますか?」僕はそのままでと答える。そのままで、そのままで、そのままで……。
 1階の入り口に近いところで、父が待っていた。それぞれ別の階の別の場所に旅立って、いつも最終的に合流することになっていたのだった。父は心もち肩を落とし、疲れているように見えた。
「あったか?」
 声が届くまで近づいたところで口を開いた。
「なかったよ」
 1日探し回った結果、何も見つからないということもあった。そうか、と父も残念そうに言った。

「お客様。ここは食事をする場所でございます」
 普通の言葉が、呑み込まれるまでに普通以上の時間がかかる。
 この世界に自分の居場所あるということはどれたけうれしいことだろう。この世界に自分の居場所がないと知ることはどれだけ受け入れ難いことだろう。世の中がすべて自分を受けて入れてくれるわけではない。
「友達を置いて空想に浸る場所ではございません」
 友達はただ黙って僕の話を聞いていただけだ。
 僕はテーブルの上の友達を折りたたんで、鞄の中に片付けた。
 友達がいなくなったので、僕は急にひとりになってしまった。

 自分の周りだけが静かな夜だった。
 今、僕の友達はずっと遠くにいる。
 自分の居場所を失って、誰かを傷つけずにはいられないほどに傷つきながら、彼らは今にも憎しみに変わり果ててしまいそうな悲しみをそっと自分の中に抱え込んでいる。 1つの居場所を失った瞬間、もっと広い世界に目を向けて、どこかに必ず信じられるものがあると信じて、冷たい夜の中に足を踏み出していく。遠く名前も知らない街の中で、癒えることのない傷を抱えながら、ひとり負けずに闘っている友達と、僕は今、痛みを分かち合っているのだ。
 テーブルの端にある緑のボタンを押せば、すぐに誰かがやってくるだろう。(来ないかもしれない)。テーブル中を、ドリアやパスタやサラダで埋め尽くすことだってできるかもしれない。ボタンを押せば……。
 手は、どこでもなく自分の胸に動いた。
 心の中で、友達に語りかけた。

(僕も一緒だよ)



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