眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

男の約束

2011-12-15 23:34:07 | ショートピース
3分はとっくに過ぎていた。「計ったのかね?」4年の月日が流れたカップを前に男はまだお湯の注ぎ主が戻ってくることを信じていると言う。麺だって伸び切っているに決まっている。「測ったのかね?」男は繰り返した。「あいつは腹を空かせて戻ってくるさ。さっき約束したんだから」。#twnovel

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ポーズ

2011-12-15 22:41:18 | 川柳または俳句のようなもの
おばあさん一足進み待つ小犬

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世界遺産マリオ

2011-12-15 20:32:06 | 12月の列車
「パチュピチ……、ピチュピュチュ……、そうマチュピチュ!」
 バアバがついに世界遺産を発見した。雪だるまを作るほど雪は降らなかった。降っても降っても積もらない雪だった。窓の外、鉢の中に花が咲いている。僕はサンシャイン牧場を思い出す。新しい服を着たユウは壁の前に立っている。カメラを向けられた時、彼女はなぜか精一杯の背伸びをしていた。
 1時間のドライブに出かけたのはイルミネーションを見るためだったが、地下駐車場から抜け出した地上には、恐ろしい冬将軍が待ち受けていて、シャッターを切ることもままならなかった。道行く人は、誰も用心を重ね合わせた格好をしていたけれど、それでも皆震えながら歩き、その寒さを声に出さねばいられないほどだった。
「あなた一番寒そうね」
 タコが言う通りかもしれない。僕は小さな冬を10分歩くほどの服しか用意してなくて、勿論0度周辺の将軍には対応していないのだった。ネックウォーマーを上げて、耳を隠した。信号のない道を僕らはラインを揃え、みんなで手を上げて横切った。ほんのひとときの間、光の中を潜り抜けて、再び地下駐車場に戻った。温かい食べ物が欲しくなった。



 トンネルを抜けて戻ってくると12月の列車の中には誰も乗っていなかった。
 天棚には何もなく、次の瞬間、マリオはそこを自由に駆けてゆくだろう。陽気な音を響かせながら、何の障害もなく、自由に、無敵で。時折、どこかから咳の音や、紙を舐める音が聞こえた。誰も乗ってはいないけど、誰かはいるのだ。ここは就寝前の病室の中なのかもしれなかった。静けさの中から漏れ聞こえる小さな音が、ちくちくと僕を刺して傷つけるのだった。

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