「ねえ君、もう一勝負してみたら?」
人生の大先輩が、少し冗談ぽく話しかけてきました。
いつも会うと挨拶してくれる人でした。何気ないことを、いつも気さくに話しかけてくれる人でした。(いい人みたいだ。世話好きな人かな。少し干渉してくるようなとこあるな)そんな印象を抱いていました。
(一勝負? なんじゃそりゃ)
今のままではまるで駄目だみたいなことなの?
自分なりに少しは前進しているようなつもりもあったので、何か今を否定されているような、僕はちょっと寂しい気持ちになってしまったのです。でも、先輩は、よかれと思って話しているのです。冗談ぽい奴、すぐ終わる話のはずが、意外に熱を帯びて事細かに続いていくのです。
(ああ、やっぱり思った通りの人なんだな)
適当な相槌を打ちながら、興味がなくはない振りをしながら、僕は話が終わるのを待ちました。その間、僕は先輩も自分自身も、欺き続けていることになります。素直ではない、本音でぶつかっていけない、自分の態度に、僕はだんだん腹が立ってきました。もしも、セールスの電話などだったら、その場限りのことと冷たく断ち切れるはずなのですが。
「ああ、すみません。僕にはブログがありますので」
例えば、そんな風に胸を張って言える大切な何かがあればよかったのですが……。なければ、へらへら聞いているほかありません。昔からそんなことが、繰り返されてきた気もします。
(そうだ。ずっとそうだったんだ)
僕は人の退屈な話は雨音に変換して聞くことができたのです。ただ純粋に音だけを聞いて、節々に盛り上がりをみつけ相槌を打てばいいのです。雨はその内に上がりますから。
「一勝負をかけるには車を組み立てねばならない」雨音の中には、激しいメッセージ性が入り乱れ雷のように光ります。へー、そうなんですね。
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いつの間にか雨が上がった部屋の中で、僕はしばらくの間ぼんやりと椅子にかけていました。静寂の奥から自分が戻ってくるのを待たなければなりません。
あなたには、大切に思えるブログはありますか?
勝ちとか負けとか、そんな些細なものに惑わされる必要はありません。ブログは、好きに書くのが一番です。
少し気分のわるいような日も、書いている内に心も軽くなってくるかもしれません。