部屋の中にまで容赦のない冬が押し寄せていた。頼りのエアコンを動かす手段は、リモコンしかない。しかし、どうしたことかリモコンの中は空っぽだった。ちょうど引出に残っていた電池を入れ込もうとして、おじいさんは顔を曇らせた。
「4じゃないのか?」(ならば5ということか)
心配はいるまい。電池なら引出の中に腐るほど蓄えがあったはずだ。単2、単3、そして鬼のように蓄えてあるのが4だった。まんべんなく揃っていなければ意味がない。多様性が確保されてないじゃないか。この役立たずの引出めが!
おじいさんは激情に駆られてちゃぶ台をひっくり返そうとした。
その時、ちゃぶ台の下に黒く走る影のようなものを、おじいさんは見た。小さな勇者がおじいさんのピンチを救うために、駆けつけたのだった。マウスは自らのお腹の中を割って見せた。
「僕のを使いなよ。おじいさん!」
「お前、これは4なんだよ」
お前のも4なんだよ。
むしろそれでよかったのだともおじいさんは思う。マウスの頭を撫でながら、おじいさんはもう一方の手で善意の腹を閉じた。
「そうとも。セブンにでも行くさ」
何か美味いもんでも買ってくるさ。
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