
本体では本を開いていたが、本心では別のことを考えていた。身近なところにこそ歌うべきことはあるのではないか。猫がきた。お腹が空く。UMAがきた。星が消える。狸が出た。宇宙が膨らむ。日常のドアを通って人々が進んでいく。立ち読みの人、コーヒーの香り、浄水器を売る人、風船を膨らます人。食品コーナーの前はシャッターが下りて行き止まりになっている。人々は足を止めて改装工事の貼り紙を見つめている。開いているようで、閉ざされている。
「そんなんでは秋が終わってしまいますよ」
傍目には読みあぐねている人に映ってしまうのも仕方ない。
「秋……」
先生への義理を立てて、僕は本心を本体に合わせた。
パラパラパラ♪
焦点が合えば書は軽やかにめくられていく。
十月の終わりには、元から読み返して感想文も書いた。
「休んでいるようで動いている。
困っているようで楽しんでいる。
満ちているようで不安でいる。
人の心はわかりません」
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