両翼にあった大きな力はAIによって奪われたあとだった。そればかりでなく主役を務めた金銀も、下から力を発揮するであろう香さえも敵の手に渡ってしまったのだ。投了もやむなし。鴉たちは上から見下ろしながら、嘴を揃えて飛び去っていった。だが、まだ歩が残っていた。おじさんは駒台にあるものを指先でシャッフルしながら読みに耽った。何度シャッフルしても攻撃力は不足していた。そこに載るのは歩ばかりなのだから。最後の武器に触れながらおじさんは闘志を燃やしていた。この歩が勝負を決めるのだ。本能がささやく。できたばかりのAIを恐れることがあるものか。「死にもしないくせに」
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AIに
駒を取られた
街角に
歩しかなくても
タフなおじさん
(折句「エゴマ豚」短歌)
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