減速してホームに停止する。その時、電車は現在にGをかけるが、体はまだ後ろに引っ張られて過去にしがみつこうとしていた。僅かな乗客を入れ替えて電車は動き出す。迷いのない電車は未来にGをかけようとするが、僕はもう少し現在に執着しシートに腰を沈めていた。抵抗は儚い。生身の肉体はGに吸収され同化し電車と一体となる。短く逆らい、多くを委ねて、運ばれて行く。
僕はGと関わり夢をみる。そこが最も時空を超えやすいスペースだったから。ドコロッシャン♪ 雷は一雨の予感。今夜は出かけなくちゃな。400ポイントが0になってしまう。ポイントはスキルと交換できるとか。同時に複数の鬼を持てるし、感情を薄めそれぞれの鬼に割り当てることができる。それにより演技の幅が広がるのだ。
躍動する電車がロックなGをかけて、乗客を煽る。僕はポイントに執着しながら縦乗りで踊る。ミラーボールに化けた吊革が羞恥心を溶かす。(何度でもここにいるよ)車窓から刺さるネオン。小部屋の中のバンジージャンプ。
「まもなく終点……」
アンコールを待たず終点へ向かう。すべてのGの終わり。
足音が動き出す。ドアが開く。同調が加速する。息を吹きながら、電車はすべての乗客を吐き出す。
終着のGに逆らって僕は夢にしがみついていた。(ここで降りたら再び戻れることはないだろう)たどり着いたとしても、終わらない旅に惹かれるのだ。雷、ポイント、鬼、スキル、演技……。課題はたくさんあるぞ。
「お客さん終点ですよ」床を叩くような足音。
「お客さんが終点ですよ」
「そんなことあるか!」
はっとして目を開けた。
そこに想像していた制服はなかった。
劇場の観客はみんな猫だった。
ということは僕もか……。
そうか。生まれ変わったのか。
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