素敵なお部屋（アクロスティック）

えー、ご案内いたします
鬼のいぬ間
またこちらは
犬のいる間
空きがまだございます


エイリアンの間
踊り食いの間
待ち人来ずの間
いかつい野郎の間
明日のない間


絵に描いた餅の間
押し掛け女房の間
まだまだ他のもございます
一泊だけの間
空きだらけでございます


遠慮は無用
おくろぎいただきたい一心で
真心を尽くして従業員
一同でおもてなしさせていただきます
あらん限りに


得るものの多い間
大きな木の下の間
的外れにお高い間
意地汚い畳の間
悪霊の好む間


偉く傷んだ間
王手の聞こえる間
ママ友どもの間
イノシシの通る間
あとのない間


えー、お客様
お伝えしにくいことですが
満室となってしまいました！
いかかでしたでしょう。また
改めてお越しくださいませ。


　アクロスティック「エオマイア」

インドア（折句）

みうみうが
レインをよんだ
西の空
雨傘なしは
無筋であろう

「ミレニアム」


雨脚の
王手ラッシュを
かいくぐり
ケーキ屋さんへ
進むのは棋理

「アオカケス」


壮大な
恋を見通す
角のいる
七段の間は
駒犬の間

「そこかしこ」


雨脚が
竜を封じた
雲の間で
和菓子を囲う
頭脳戦争

「アリクワズ」

ウォーク・ドッグ

捨てられた犬は
捨てられたことを知らなかった
何も情報を持たないままに
とぼとぼと道を歩く

近頃
あのおじいさん見ないね
あのお父さん見ないね
あのおばさん見ないね
あのフェイスブックの人見ないね
あのガキ見ないね
あの近所の人見ないね
あのpomeraの人見ないね
あのたまに見る人見ないね
あの子どこ行ったの

何か急に仕事なくなっちゃった
ぼく何かしたのかな
それとも何かすべきだった？

新しい町はどっちだろう
まだ棒なんかには当たらない

視界良好

エレベーター・フィッシュ

耳にして
そこはかとない
最深の
魚を語る
１ミリの石

折句「ミソサザイ」短歌

味のよい手

えーと
どこまで指したっけ
知らない？　あれからもう
９年経ったの？
流石に誰も覚えていないか

　アクロスティック「江戸仕草」


創造的一手を探して
交番に駆け込んだ
角を曲がって真っ直ぐ行ったところに
四間飛車のタケさんが隠れ住んでる
ここだけの話、拡散は無用です

　アクロスティック「そこかしこ」


あのつけ麺うまかったな
ケニーは興奮を抑えきれない
トニー覚えてないのかい
うん、少し考えさせてくれ
ふっ、また詰将棋か

　アクロスティック「揚げ豆腐」

さーちゃん

あんた元
気かとたずねる
さーちゃんに
返すお愛想
夏も終わりか

折句「あきざかな」短歌

指先時代（折句）

（株）
カートに入れて
見つめれば
１秒ほどで
新社オープン

「鏡石」


重ねても
各種取引
認め得ず
いたくしびれる
指紋認証

「鏡石」


馬上から
イカ焼きを得る
王様の
マネーはエディ
スイカ・オア・アップル

「バイオマス」


AIの
オート機能に
任された
いかたこ国家
愛コントロール

「エオマイア」

呼び捨て

おーいタツヤ、タツヤー
もう何十回と続く
徹底した叫びが外で
名を呼び続けている
深夜という時間に

怒っている風にも
文句があるようにも聞こえる
手につくものが何もない
何故に呼び続けているのか
知るすべもない

終わらない呼び声
もうそれは答えなのか
手をあげる者が他に
ないということの
終点に残された部屋がここに

俺は窓を開けるべきか
もしも目が合ってしまったら
敵かも知れない
長い恨みを携えて
仕返しに今現れたか

俺に友達はいない
もしもいたなら人違いだ
天秤座
何気に人間の血が流れ
死を時々恐れている

おーいタツヤ、タツヤー！
もう聞き飽きた俺の名
天に向かって叫ぶような声が響く
謎の男に応える者はまだ現れない
しびれを切らす様子もない

終わらないことが恐ろしい
もしも窓に石が飛んできたら
手をこまねいてはいられない
何も起こらない内は何も
しなくていい　

おーいタツヤ！　タツヤー！　タツヤー！
戻る場所を持たない男は
適当なところを知らない
名もなき俺を呼び捨てて
詩は生まれるだろうか


　アクロスティック「おもてなし」

逃亡者

大筋で
物を語った
手配書に
名を残す彼
氏の一ページ

折句「おもてなし」短歌

じゃんけん王誕生

AIの
同級生が
知り尽くす
グーチョキパーの
最強手順

折句「江戸仕草」短歌

ソング・バード（折句）

アダージョで
おもてなしたら
！
計略のない
すっぴんのまま

「アオカケス」


８月の
イルカが眠る
終わりなき
マネシツグミの
スピーチの中

「バイオマス」


有用な
奇跡の粒を
拾わせて
ヨーデルを待つ
歌の神さま

「ユキヒョウ」


明日を追う
鳴禽たちが
柵を越え
一夜のジャズと
クロスする夏

「飴細工」

僕を呼んで

カーブを描き
風を切って
右へ曲がって
一時落ちて
しばし弾んで


カーブを描き
カープを倒し
湖に飛んで
稲を刈って
しあわせをといて


鴉を追って
火事場を抜けて
緑に塗って
いろはを読んで
詩情を挟んで


金を拾って
感謝を込めて
三日月に照れて
犬を誘って
塩をあびて


カートを縫って
カープを倒し
ミイラを取って
囲炉裏に触れて
城を落として


角を曲がって
カードを切って
水を打って
芋を引いて
真理をといて


カーブを描き
カントを切って
未来を泳ぐ
忙しい魔球を持っている
指名はまだない



　アクロスティック「鏡石」

君と僕（折句）

相棒に
ケモノを迎え
どうかする
運命なんて
ふっ、笑うよ

「揚げ豆腐」


夕暮れの
教師が投げた
悲観的
予言を蹴って
馬に乗る君

「ユキヒョウ」


感情が
前頭葉に
屯して
沈黙をつら
ぬいた教室

「風立ちぬ」


晴れと雨
流れる雲の
ミステリー
ずれているから
君と僕なの

「ハナミズキ」

未来棋士

八方に睨みを利かせた
生角を中央に置いた
見慣れぬ君は道場破り
吸い殻が地面にくすぶっている
きつねうどんはまだ届かない

　アクロスティック「ハナミズキ」


王手飛車取りを食らった
勿論どちらにも挨拶はなしだ
手を抜いて表に飛び出す一手
夏は人を待たないものだし
下を向いていたら花火はみえないもの

　アクロスティック「おもてなし」


余った歩があったらくれないか
時空を超えて棋士がやってきた
歩ですか。金じゃなくて、歩ですか
ラフにはあげられないね
今で結構手一杯で

　アクロスティック「アジフライ」

ダイビング（折句）

愛情は
リセットされた
唇に
わさびを塗った
スターゲートで

「アリクワズ」


猪口才な
コーンを蹴って
８月の
ツアーに交じる
トノサマバッタ

「チョコバット」


AIに
統制された
芝を踏み
群青色に
さばく審判

「江戸仕草」


神さまの
回覧板を
見届けて
１、２の３で
深海ダイブ

「鏡石」