先日、出張で岐阜に泊まった時に、夕食で日本酒を頼んだ。長良川温泉十八楼という老舗旅館だ。前菜に凝った料理が運ばれてきて、これは日本酒だなと、日本酒のメニューを貰う。
日本酒メニューは、皆大吟醸だ。銘柄の後に1行、コメントが書かれている。
中段の日本酒、「華やかな吟醸香と淡麗にして深慮な味わい」と書かれている。このセールストークが気に入って、大吟醸「光琳」を注文した。飲むと、確かに、「華やかな香り」がして、飲みやすい「淡麗」だ。その後の「深慮な味わい」は、各自が考えろ、ということかな。
このセールストーク、プロの唎酒師が考えたんだろうと推察する。唎酒師は、まず日本酒を「テイスティング」する。それを変換して「セールストーク」に変える。その結果だ。実は唎酒師のテキストにはこのセールストークの例文がわんさと書かれている。
「華やかな吟醸香」と「淡麗」だから、おそらく葷酒(くんしゅ)か爽酒(そうしゅ)だ。そのあとの「深慮な味わい」は難しい。この深慮は日本酒に限らない抽象名詞だから、どうとも取れる。従って各自で考えろ、と私は解釈した。
こんなこと思いながら飲むのもまた楽し。もちろん日本酒に合った料理も美味しかったですよ、十八楼さん。