昨年末、南房総の富山(とみさん)に登った時に、ここは「里見八犬伝」の舞台だと聞いた。小説の名前だけは知っていたが、この機会に読んでみようという気になって、文庫本を購入。ぶ厚い、上下巻2冊だが、合わせて1,150頁もある。読み切れるかなと、思って読み進めたが、無事最後まで読み切った。
その感想を書こう。舞台は戦国信長秀吉の時代の約百年前、室町時代だ。滝沢馬琴が小説を書いたのは江戸時代。南房総の伏姫と八房(これは犬の名前)から始まって、八つの玉が弾けて、その子孫たち、いずれも「犬」の名前が付く剣士八人の物語だ。一人ずつ登場してくるが、その舞台はほぼ関東地方、最後は京の都も一部はあるが、ほぼ関東の田舎だ。
登場人物は多いが、悪人がよく死ぬ。初めは善人のように振る舞い、旅人の寝こみを襲い、強盗を働く、主人公は、事前にそれを察知し、逆に殺す。首を刎ねるのが何度出てきたことか。昔の人は、こんな残酷なことに喝采していたんだな。そして妖術使い、この辺は空想だ。最後は八剣士が揃い、何万という大軍と戦い、勝つ戦争の物語だ。人数は相手の方が圧倒的に多いのだが、主人公側が勝つ、この辺になると何だか滑稽だ。それに武器として鉄砲が登場する。秀吉の百年前はまだ鉄砲はなかったはずだが・・まあいい。
ということで10日ほどで読み終えた。現代語訳のフルバージョン、お金を出してまで読むほどのものではないな、という感想だ。Amazonnのコメに面白い、一気に読んでしまった、など肯定的なコメが並んでいたため、期待したが、それほどでもない。登場人物が多すぎ、展開が早すぎ、残酷なシーンが多すぎ、八剣士が揃うのは物語の最後の方、それまでは話がどんどん飛ぶ。江戸時代は、こんな小説が受けたんだ、でも今はねえ・・という感想でした。子供向けに八犬伝の漫画が出てるが、これであらすじは分かるし、十分じゃないかな。
また、南房総は富山(とみさん)、登ってみるか、伏姫と八房のいた伝説の洞窟もあるそうだから、見てみたいな。