井上ひさしさんの元妻・西舘好子さんが書いた『表裏井上ひさし協奏曲』(牧野出版)が、めちゃくちゃ面白い。
井上さんがまだ世に出る前から、いわば二人三脚で上を目指していく過程は、大変だったけど楽しかったはずで、若き日のお二人の様子が目に浮かんで、ちょっと涙が出そうになる。
「ひょっこりひょうたん島」の放送作家から、「手鎖心中」の直木賞作家へ。
そこからは猛烈な売れっ子作家としての日々だ。
劇作家としても活躍するようになる。
やがて、夫と妻の関係が、“座付き作家”と“演劇プロデューサー”の関係へと変化するあたりから、井上ひさし作品のファンとしては、読んでいて胸が苦しくなる場面が増えてくる。
そう、本のタイトルにある「表裏」の「裏」だ。
好子さんにしか書けない、夫婦の壮絶な・・・。
まあ、この先は、興味のある方、ぜひ読んでみてください。
それにしても、自分が死んだ後で、こういう本が出るというのは辛いなあ。
ご本人は死んじゃってるから、言い訳も反論も出来ないしね。
いや、辛いよなあ・・・。
さて、今週の「読んで(書評を)書いた本」は、以下の通りです。
京極夏彦 『虚言少年』 集英社
立花珠樹 『新藤兼人 私の十本』 共同通信社
保阪正康 『作家たちの戦争』 毎日新聞社
宮台真司・飯田哲也 『原発社会からの離脱』 講談社現代新書
・・・・99歳になる新藤兼人監督の映画への執念と、亡き妻で女優の乙羽信子さんへの情愛には圧倒されます。
* 上記の本の書評は、発売中の『週刊新潮』(9月15日号)に
掲載されています。