碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

今週の「読んで書いた本」 2011.09.10

2011年09月10日 | 書評した本たち

井上ひさしさんの元妻・西舘好子さんが書いた『表裏井上ひさし協奏曲』(牧野出版)が、めちゃくちゃ面白い。

井上さんがまだ世に出る前から、いわば二人三脚で上を目指していく過程は、大変だったけど楽しかったはずで、若き日のお二人の様子が目に浮かんで、ちょっと涙が出そうになる。

「ひょっこりひょうたん島」の放送作家から、「手鎖心中」の直木賞作家へ。

そこからは猛烈な売れっ子作家としての日々だ。

劇作家としても活躍するようになる。

やがて、夫と妻の関係が、“座付き作家”と“演劇プロデューサー”の関係へと変化するあたりから、井上ひさし作品のファンとしては、読んでいて胸が苦しくなる場面が増えてくる。

そう、本のタイトルにある「表裏」の「裏」だ。

好子さんにしか書けない、夫婦の壮絶な・・・。

まあ、この先は、興味のある方、ぜひ読んでみてください。

それにしても、自分が死んだ後で、こういう本が出るというのは辛いなあ。

ご本人は死んじゃってるから、言い訳も反論も出来ないしね。

いや、辛いよなあ・・・。





さて、今週の「読んで(書評を)書いた本」は、以下の通りです。

京極夏彦 『虚言少年』 集英社 

立花珠樹 『新藤兼人 私の十本』 共同通信社

保阪正康 『作家たちの戦争』 毎日新聞社

宮台真司・飯田哲也 『原発社会からの離脱』 講談社現代新書



・・・・99歳になる新藤兼人監督の映画への執念と、亡き妻で女優の乙羽信子さんへの情愛には圧倒されます。


* 上記の本の書評は、発売中の『週刊新潮』(9月15日号)に
  掲載されています。




ラジオ番組『源石和輝 モルゲン!!』で話したこと

2011年09月10日 | テレビ・ラジオ・メディア

朝、東海ラジオ『源石和輝 モルゲン!!』に出演した。

ちなみに東海ラジオと東海テレビは別の会社です(笑)。

出演はこれで3回目となるが、名古屋のスタジオから電話がかかってくるのだ。

今回は、内閣支持率で何かと話題になる「世論調査」について、お話させていただいた。


「そもそも、マスコミの世論調査はどのような方法で行っているのでしょうか?」といった源石さんからの質問で始まった。

郵送によるアンケートというやり方もあるが、RDD方式(Random Digit Dialing)と呼ばれる電話を使った調査が一般的だ。マスコミはほとんどコレ。

コンピュータが電話番号をランダムに選んでいくのだが、固定電話を持たない若者などが対象から外れるため、偏りはあります。

また今月はじめの野田内閣の支持率は、朝日新聞社が53%、フジテレビ番組「新報道2001」では70.8%と、傾向は同じだが、数字としては誤差とは言えないものがある。

これは、調査対象の違いが大きい。

朝日新聞の調査は1773件が相手で、そのうち有効回答は1051人(回答率59%)。

「新報道2001」は500人。ただし有効回答数は不明。

さらに朝日新聞は全国をカバーしているが、フジテレビは首都圏のみ、といった調査地域も大いに関係するのだ。

「数字という分かりやすく、ある意味絶対的なものに踊らされて、そこから落ちこぼれていくものも多いと感じるのですが・・・」と源石さん。

確かにそうだ。

たとえば、朝日新聞の質問は「支持しますか? 支持しませんか?」。またフジテレビ「新報道2001」の質問は、「支持しますか?」となっている。

つまり、○か×か、オール・オア・ナッシングを問うような聞き方をしているのだ。

そこからは、「少し支持する」「「あまり支持しない」といった“グレーゾーン”や、「少し支持するが期待はしていない」「あまり支持しないが、頑張って欲しい」といった“ニュアンス”は排除されてしまう。

「世論」とは、多数の人たちが共通してもっている意見のことだが、実際には、「世論調査」で得られた結果が「世論」といわれる。

また、あらゆる調査は、その結果を誘導することも可能。

あまりそれに踊らされることなく、自分自身で判断する必要がある。


・・・・といった内容を、約10分で話したわけです(笑)。

生放送なので、あっという間に時間が過ぎました。