碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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「日本民間放送連盟賞」が発表された

2011年09月19日 | テレビ・ラジオ・メディア
山口放送「過疎の島の介護日記」


2011年の日本民間放送連盟賞(通称、連盟賞)が発表された。

私は「放送と公共性」部門の審査員を務めさせていただいている。

この部門は、「放送の公共性を強く意識しながら民放各社で取り組んでいる企画や開発の事績に対して賞を贈る」というもの。

今年の「放送と公共性」部門、受賞作は以下の通りだ。


最優秀 
<山口放送> 過疎の島の介護日記 あるヘルパーと歩んだ10年の放送活動


瀬戸内の過疎の島で訪問介護の会社を起こし、お年寄りたちの暮らしを支え続ける2人の女性ヘルパーの活動を、2002年から10年間にわたり密着取材し、ローカルのニュース番組や情報番組の特集枠、全国枠のドキュメンタリー番組などで放送を重ねた。2010年には、地域の病院を無償で借りることができ、行政の後押しも手伝い、財団からの助成金交付が決まり、この島に自分たちの小さな施設を作るという2人の夢が実現した。ローカル局として、地域の取り組みを真摯に伝え続けることで社会を動かした実績が認められ、2人の志を広く知らしめ、人のために尽くし、人のために働くことの大切さをストレートに伝えた事績として高く評価された。


優 秀 
<札幌テレビ放送> がん患者、お金との闘い 2007年~2011年の活動


サラリーマンの夫と2人の子どもと暮らす、がん患者の金子明美さん(2010年没)。がん患者への経済的支援を行政に求める金子さんの姿や一家の様子を通して、通院治療には十分な補償が出ないがん保険の実情や、高額療養費制度を申請しても、通院治療の場合は患者が3カ月分立て替える必要があり費用捻出に行き詰まる現実を、夕方のローカルニュースや特番で継続的に放送。保険会社や厚生労働省にも取材を重ね、新たな保険商品の発売や高額療養費制度の改善につながった。「がん患者とお金」の問題点を提起し続け、社会全体の議論を喚起し、行政や保険会社を動かした粘り強い取り組みとして評価された。


優 秀 
<ラジオ福島> 災害ラジオとインターネット連動展開の記録(暫定版)


3月11日14時46分、生ワイド番組の放送中に東日本大震災が発生。直後から全番組、全CMを休止し、3月26日5時までの全時間、報道特番を生放送した。震災発生当日から、ツイッターで災害情報を発信するとともに、リスナーから災害情報を募集するためのメールアカウントを作成し、放送とインターネットの連動型災害放送を開始した。3月14日はユーストリームで音声配信を開始、翌15日からラジオNIKKEIに番組を配信し、radikoを通して全国向けに福島の情報を発信した。新たなメディアを使った災害時の情報収集・告知の形を具体的に示し、今後の発展が期待できる事績として評価された。


優 秀 
<長野朝日放送> 地球を守ろう!プロジェクト


美しい信州の大自然を守るために、何ができるのかを視聴者とともに考える環境キャンペーン。子ども達が大自然と触れ合う「出前授業」や、環境特番・ミニ番組の編成、協賛企業による30秒環境スポットの制作・放送、視聴者参加型イベントの実施、さらには自社アナウンサーによる「紙芝居キャラバン」など、多彩な内容で2008年春から継続的に実施している。“地球を守ろう”という壮大なテーマであるが、目線は低く、全社一体で取り組み、市民を巻き込んだ活動を広く展開。豊かな自然を本気で守ろうとする意志が伝わり、放送局が持つ力を再認識させる事績として評価された。


・・・・実は、<優秀>がもう1本あった。

東海テレビ「キャンペーン“司法シリーズ” 開かれた司法へ」

である。

しかし、東海テレビから民放連に対して、「受賞を辞退したい」という申し入れがあったのだ。

「放送と公共性」部門の審査会では、あくまでも審査対象作品と向き合っての評価であり、いわゆる「セシウムさん」事件と受賞は別のことであると判断していた。

良い作品や良い取り組みはきちんと評価すべき、という考えだった。

辞退に関しては、東海テレビには東海テレビなりの判断があってのことと思う。

ちなみに今年、東海テレビの連盟賞入選は「放送と公共性」部門だけではない。

テレビ教養番組
(最優秀)「記録人 澤井余志郎~四日市公害の半世紀~」

テレビエンターテインメント番組
(最優秀)「泳ぐ車いす」

テレビCM
(優秀)「伊勢志摩国立公園志摩市 志摩への観光誘致/~思わずトンじゃう美しさ~(60秒)」
(優秀)「公共キャンペーン・スポット/食卓を守れ~ニッポンの農力~(120秒)」

青少年向け番組
(優秀)「くりびつ!」


すべて辞退とはいえ、これだけの入選作があったのだ。

ふだん東海テレビが、自社制作番組でいかに頑張っているかを物語っている。

だから、なおのこと、「セシウムさん」事件は残念だったのだ。

ぜひ一日も早く信頼を回復し、また連盟賞などに登場してきていただきたい。


それから、今回の連盟賞で嬉しかったのが、「テレビドラマ番組」部門の最優秀を、新聞の時評などで高く評価し、ずっと応援してきた「鈴木先生」(テレビ東京)が獲得したことだ。

視聴率のこともあり、あの社会派ドラマ枠は撤退するようだが、「鈴木先生」をはじめとする勇気あるチャレンジに拍手を送りたい。

「最優秀」受賞、おめでとうございます!


<参照>
日本民間放送連盟賞/2011年(平成23年)入選・事績
http://www.nab.or.jp/index.php?%C6%FC%CB%DC%CC%B1%B4%D6%CA%FC%C1%F7%CF%A2%CC%C1%BE%DE%2F2011%C7%AF%28%CA%BF%C0%AE23%C7%AF%29%C6%FE%C1%AA%A1%A6%BB%F6%C0%D3