碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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BPOが、「セシウムさん」問題で<提言>

2011年09月23日 | テレビ・ラジオ・メディア

22日に、BPO(放送倫理・番組向上機構)が、「東海テレビ放送『ぴーかんテレビ』問題に関する提言」を発表した。

BPOからの「提言」自体が珍しいものだ。

今回の「セシウムさん」問題をふまえて、他の放送局にとっても参考になる「提言」を目指したという。

とりあえず、印象に残ったポイントだけ、整理しておきたい。


●この番組の総スタッフ中、社員は十数人で、82パーセントが外部スタッフであり、しかも経験の浅い者の割合が高かった。

●番組制作費は過去約3年間で9パーセント削減。

●制作スタッフの人数がぎりぎりで、ひとりが担当する仕事の量も種類も多く、多忙をきわめていた。それがスタッフ間のコミュニケーション不足、チェック体制の低下につながる。

●制作現場は「スタッフ同士、顔も名前もわからない希薄な関係」

●余裕のない制作環境は、「組織のスリム化・業務の効率化による企業体質の強化」という経営計画に沿って生じた。

●時間的にも予算的にも心理的にも余裕のない制作現場。

●放置しておけば、物理的にも精神的にもバラバラになりがちな大勢のスタッフをひとつのチームとしてつなぐのは、放送という仕事に対する使命感であり、それを支える制作体制のはず。


上記を踏まえて、BPOからの「提言」

1.全社的なレベルで、あるいは部署や制作現場ごとに、放送の使命について話し合う機会を設けること。

2.番組が、その制作に必要な人員と時間が確保される環境で制作されているか、とくに生放送番組において種々の不測の事態にも対応できるゆとりが確保されているかどうかを再点検すること。

3.スタッフの間で忌憚のない意見交換や問題提起が行われるような職場環境を整えること。

4.制作現場スタッフの研修が、放送局所属か制作会社所属やフリーかを問わず、十分に行き渡り、各人が納得できる方法で実施されているかどうかを再検討し、改善を要するところは早急に改善し、実りある研修を継続すること。


・・・・この提言からうかがえるのは、今回の問題は東海テレビによるものだが、その問題を派生させた「制作現場」「制作環境」は、他の放送局でも共通する点が多いのではないか、ということだ。

つまり、提言は東海テレビに対してだけのものではない。

120を超える放送局全体に向けたものなのだ。

それにしても、最近のBPOは積極的(笑)。

いや、それだけ放送界の現状に危機感を持っているからだ。


ところで。

今週日曜(25日)の朝に放送される、TBSの自己検証番組「TBSレビュー」も、BPOに関する内容だ。

「BPOによる”若き製作者への手紙”は2つの情報バラエティの審議入りをきっかけに意見書とともに書かれた。BPOはなぜこうした試みをしたのか。これをもとに良質の番組作りのありかたを考えていく」というもの。

この手紙は、BPO放送倫理検証委員会委員で作家の重松清さんによって書かれたものであり、ご本人が、その意図などをスタジオで説明してくださる予定。

今回、私はインタビュー取材を受けており、カットされていなければ(笑)、VTR部分で登場するはずです。


「TBSレビュー」

放送:2011年9月25日(日) 5時30分~6時00分