碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

『TBSレビュー』で話したこと

2011年09月25日 | テレビ・ラジオ・メディア

インタビュー出演した、25日の『TBSレビュー』。

オン・エアを見て、いいと思ったのは、BPO(放送倫理・番組向上機構)の「若きテレビ制作者への手紙」を、番組キャスターの木村郁美アナウンサーが“朗読”していたことだ。



テロップで文字を出すだけでなく、じっくりと読み上げてもらったおかげで、視聴者にその内容がきとんと伝わってきた。

スタジオには、「手紙」を執筆した、BPO放送倫理検証委員会委員で作家の重松清さん。



文章も分かりやすかったが、その解説も聞きやすかった。

何より、この手紙に、制作の「現場」にいる人たちに対する“応援”“声援”という意味が込められていることが理解できた。

ただ、ひとつ気になったのは、番組内で木村アナがしていた、BPOが審議した事案の説明。

3つのうち2つが毎日放送の「イチハチ」(すでに打ち切り)で起きたものだ。



この番組は確かに毎日放送の制作だが、関東の視聴者はTBSで見ていたわけで、「ウチは毎日放送が作ったものを流しただけなので関係ない」とは言えない。

言っていないけど(笑)。

毎日放送とTBSの関係や放送責任について、ひと言あってもよかったのではないか。そんな風に思った。

私のインタビューは、全体の終盤に登場。



使われていた談話を採録すると、ざっと以下のようなものでした・・・・


この「手紙」に書かれていることは、実はテレビの制作者にとっては基本中の基本なんですよね。もっと言えば、基本以前のことかもしれません。

だけども、あえてそれを書かなければいけない、言わなければならない現状が今のテレビなのではないか。

たぶん、そういう風に、書いた方も考えたんじゃないかな、と思います。

ものすごく乱暴な言い方をすれば、「制作現場の劣化」ですよね。

今、番組を作る時に、いろんなハードルがあります。

制作期間が短い、時間がない。お金がない、予算が少ない。人手が足りない。知恵が出ない。いろんなことがあります。

しかし、それは今までのテレビの歴史の中でも変わらなかったことで。

もちろん、「今が一番大変だ」と言われれば、そうかもしれませんが、作るものが「こんなもんでいいじゃないか」という所に陥っているのではないか。そんな気がするんですよね。

一旦、自分たちでハードルを下げてしまったら、どこまでも堕ちていきます。

そこでギリギリ踏ん張れるかどうかが、作り手の一番大事なところなんですが、その部分のストッパーが効かなくなっているような。

特に若い人たち、若い制作者の人たちが、何を以って自分を維持するのか、分からなくなっているんじゃないか。

やはり3月11日の大震災が契機になったと思うのですが、世の中の気分とか意識が、いろんなジャンルで変わってきています。

テレビも、「3・11以後」のメディアとして、自分たちのことを考えなくてはならない。

存在意義とか、意味とか、そういうものを問われる時代になりました。

そんな中で、これまでと同じように、「ま、こんなもんでいいだろう」「時間もないし、お金もないし」「笑ってもらえばいいや」「可笑しければいいや」というだけでは、これからのテレビはやっていけない。

そういう時だからこそ、制作現場の一人一人に、この手紙が読まれるべきだし、内容について、ぜひ考えてみて欲しいです。



・・・・インタビューVTRが終わり、スタジオに戻った際、重松さんが「手紙の背後にあるものまで指摘してもらった」と話していらしたのが、嬉しかったです。

「手紙」はBPOのサイトで読むことが出来ますので、興味のある方はぜひ、ご一読ください。

「若きテレビ制作者への手紙」
http://www.bpo.gr.jp/kensyo/decision/011-020/012_k_letter.pdf