昨日(2日)、朝日新聞夕刊の一面下に、朝倉かすみさんの『田村はまだか』(光文社)の広告が、どどーんと出ていたので驚いた。どうやら、TBSの「王様のブランチ」で、「今年度上半期要注目作品」として紹介されたらしい。
次々と出てくる新刊を読んでいると、ついこの間読んだ本のことさえ忘れてしまいそうになる。『田村はまだか』は今年の2月に出た本。もう懐かしい。でも、この小説のことは、よく覚えている。とてもよかったからだ。読了後、家族にも薦めたので全員が回し読みしている。
そうそう、2月には、まだこのブログを立ち上げてはいなかったのだ。
深夜、路地の奥にある小さなスナックに5人の男女が集まっている。小学校の同級生で、皆40歳。クラス会の3次会だった。そして彼らは田村を待っている。店に向かっているはずだが、現れない。ふと誰かが口にする。「田村はまだか」・・・。
田村は小学校時代から不思議な男だった。父親はいない。男出入りの激しい母親との二人暮らし。年中ジャージを着て、頭は虎刈り。だが、勉強はできたし走るのも速い。とはいえ、田村が皆から一目置かれていたのは、一人だけどこか大人の風格があったからだ。「孤高の小6」だった。
実に巧妙な小説である。そこにいない田村のことを各人が想い、同時に「忘れられない人」「自分に影響を与えた人」のことを振り返る。それは会社の先輩だったり、年下の“恋人”だったりする。共通するのは「その人がいなければ今の自分はない」と思えるような人物であることだ。深夜のスナック、昨日と今日の境目で、彼らの過去と現在とが交錯していく。それにしても田村はどうしたのか。
朝倉さんの作品の特徴である小気味いい短文の連打と、深い情感をさりげない言葉に託す表現に、益々磨きがかかっている。
朝倉さんの作品を初めて読んだのは、2005年11月の『肝、焼ける』(講談社)だった。上手い!と思った。新人とは思えないほど、独自の小説世界を巧みに構築していた。こういう嬉しい”出会い”があるから、「本読み屋」はやめられないのだ。
第72回「小説現代新人賞」を受賞した表題作を含む本書は、朝倉さんの初作品集だ。主人公の「わたし」は、年下の男と遠距離恋愛中の独身女性31歳。相手の自分への気持ちがつかめない。そんな「肝、焼ける(じれったい)」状態から脱したくなって、男が住む北の町へとやってきた。
会うまでの微妙な時間を過ごす銭湯や寿司屋。これまでの仕事や恋愛の回想が、ほろ苦くも愛しい。そして、ついに男と向き合う瞬間が近づいてくる。
朝倉さんの文体の特長は、短いセンテンスの連打にある。観察と表現に齟齬と遅延がなく、リズムが心地よい。また、ヒロインの眼から見た若い男女、中高年の男女がリアルでユーモラスだ。そして、全作品に共通するのは、30代女性の日常と本音をすくい上げる力の確かさである。新人とはいえ、すでに自分の「ポジション」を持っているのだ。
他には、小さな田舎町の小さな事務所で働く独身女性の心の軌跡を優しく描いた「コマドリさんのこと」(北海道新聞文学賞受賞作)。同僚である40代独身女性たちの恋や不倫を眺めながら、自身も揺れている若い女性がヒロインとなる「一番下の妹」など、いずれも30代女性の“普通の生活”が非凡に描かれている。
<減煙コーナー>
もしかしたら、このまま「ゼロ本」まで行けるかも、と思えてきた。昨日は3本ということで緊張していたが、意外や、無事1日を乗り切ってしまった。
あらためて認識したのは、「食事をしたら吸う」とか「会議の後は吸う」とか、自分に対して勝手に「決まりごと」を作っていたんだなあ、ということ。「吸いたいから」というより、「吸うことになっているから」吸う、といった具合だったようだ。習慣って、そういうものなのかもしれないけど。
今日は2本だが、もはや、どのタイミングで吸うとかいう問題じゃなく、きっと、「あ、今日の分、終わっちゃった」という感じで、それ以上は抵抗しないような気がするのだが、どうだろう。
次々と出てくる新刊を読んでいると、ついこの間読んだ本のことさえ忘れてしまいそうになる。『田村はまだか』は今年の2月に出た本。もう懐かしい。でも、この小説のことは、よく覚えている。とてもよかったからだ。読了後、家族にも薦めたので全員が回し読みしている。
そうそう、2月には、まだこのブログを立ち上げてはいなかったのだ。
深夜、路地の奥にある小さなスナックに5人の男女が集まっている。小学校の同級生で、皆40歳。クラス会の3次会だった。そして彼らは田村を待っている。店に向かっているはずだが、現れない。ふと誰かが口にする。「田村はまだか」・・・。
田村は小学校時代から不思議な男だった。父親はいない。男出入りの激しい母親との二人暮らし。年中ジャージを着て、頭は虎刈り。だが、勉強はできたし走るのも速い。とはいえ、田村が皆から一目置かれていたのは、一人だけどこか大人の風格があったからだ。「孤高の小6」だった。
実に巧妙な小説である。そこにいない田村のことを各人が想い、同時に「忘れられない人」「自分に影響を与えた人」のことを振り返る。それは会社の先輩だったり、年下の“恋人”だったりする。共通するのは「その人がいなければ今の自分はない」と思えるような人物であることだ。深夜のスナック、昨日と今日の境目で、彼らの過去と現在とが交錯していく。それにしても田村はどうしたのか。
朝倉さんの作品の特徴である小気味いい短文の連打と、深い情感をさりげない言葉に託す表現に、益々磨きがかかっている。
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朝倉さんの作品を初めて読んだのは、2005年11月の『肝、焼ける』(講談社)だった。上手い!と思った。新人とは思えないほど、独自の小説世界を巧みに構築していた。こういう嬉しい”出会い”があるから、「本読み屋」はやめられないのだ。
第72回「小説現代新人賞」を受賞した表題作を含む本書は、朝倉さんの初作品集だ。主人公の「わたし」は、年下の男と遠距離恋愛中の独身女性31歳。相手の自分への気持ちがつかめない。そんな「肝、焼ける(じれったい)」状態から脱したくなって、男が住む北の町へとやってきた。
会うまでの微妙な時間を過ごす銭湯や寿司屋。これまでの仕事や恋愛の回想が、ほろ苦くも愛しい。そして、ついに男と向き合う瞬間が近づいてくる。
朝倉さんの文体の特長は、短いセンテンスの連打にある。観察と表現に齟齬と遅延がなく、リズムが心地よい。また、ヒロインの眼から見た若い男女、中高年の男女がリアルでユーモラスだ。そして、全作品に共通するのは、30代女性の日常と本音をすくい上げる力の確かさである。新人とはいえ、すでに自分の「ポジション」を持っているのだ。
他には、小さな田舎町の小さな事務所で働く独身女性の心の軌跡を優しく描いた「コマドリさんのこと」(北海道新聞文学賞受賞作)。同僚である40代独身女性たちの恋や不倫を眺めながら、自身も揺れている若い女性がヒロインとなる「一番下の妹」など、いずれも30代女性の“普通の生活”が非凡に描かれている。
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もしかしたら、このまま「ゼロ本」まで行けるかも、と思えてきた。昨日は3本ということで緊張していたが、意外や、無事1日を乗り切ってしまった。
あらためて認識したのは、「食事をしたら吸う」とか「会議の後は吸う」とか、自分に対して勝手に「決まりごと」を作っていたんだなあ、ということ。「吸いたいから」というより、「吸うことになっているから」吸う、といった具合だったようだ。習慣って、そういうものなのかもしれないけど。
今日は2本だが、もはや、どのタイミングで吸うとかいう問題じゃなく、きっと、「あ、今日の分、終わっちゃった」という感じで、それ以上は抵抗しないような気がするのだが、どうだろう。