碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

被災地映像のバーチャルとリアル

2011年05月19日 | 「東京新聞」に連載したコラム

隔週の水曜日、『東京新聞』に連載しているコラム「言いたい放談」。

今回は、被災地である仙台市荒浜地区を訪ねた際の実感を書きました。


現地に立って知ったこと

震災報道に関する取材で仙台市荒浜地区に行ってきた。道路はつながったものの、今もほとんど手つかずの被災地だ。あえて高校生の息子も同行させた。

仙台駅から乗ったタクシーの運転手さんに言われた。「親子で来てくれたんだ。嬉しいねえ」。そして、「ボランティアとかじゃなくてもいいから、みんなに見てもらいたいよ」。

海岸方面へ向かう途中まではごく普通の町並みが続く。それがあるラインから一変するのだ。

住宅が立ち並んでいたはずの地域全体が瓦礫を残して消滅していた。それは九十年代に訪れたサラエボの、内戦で傷ついた街の風景とも異質のものだった。

どうすれば、こんなふうになるのか。見渡す限りのあらゆる建物を破壊し尽くす力とは、いったいどれほどのものなのか。

律儀ともいえる均等さで、広い範囲を一気になぎ倒していった容赦のなさに、二人とも言葉が出ない。

原形をとどめているのは小学校の建物だ。しかし、その教室の中には押しつぶされた自動車が三台も入り込んでいた。

この二ヶ月間、テレビや新聞などメディアを通じて大量の映像・画像を見てきた。

恥ずかしいことに、それで被災地の様子を知っているような、わかっているような気になっていた。

けれど、現地に立ってみると全然違っていた。何もわかってなどいなかった。それを知ったことが一番の収穫だ。

(東京新聞 2011.05.18)


『アンノウン』のベルリン、メルセデス、ヒッチコック

2011年05月18日 | 映画・ビデオ・映像

映画『アンノウン』を観た。

米国人の医学博士マーティン・ハリス(リーアム・ニーソン)が、訪問先のベルリンで交通事故に遭う。

助かったものの、意識を取り戻してみると、一緒に来ていた妻が自分のことを、なんと「知らない」と言い張るのだ。

しかも、妻の隣には自分と同じ名前を名乗る男がいて、「夫」として振舞っている。

そんなバカな。

「マーティン・ハリスは私だ、そいつは偽者だ」と叫ぶが、自分を自分だと証明できるものは身につけていない。

それに、事故のせいで記憶に欠損がある。

つまり「私こそが私だ」と主張するにも、どこか自信がなくなってくる。

これは怖い。

とにかく、脚本がよく練られている。

そして、リーアム・ニーソン、頑張ってます。

前作『96時間』も悪くなかったけど、これはもっといいです(笑)。

女優陣には、『イングロリア・バスターズ』のダイアン・クルーガー。
キュートです。

妻役はジャニュアリー・ジョーンズ。ちょいセクシーです。

それから、ロケ地である冬のベルリンが実にいい。

『ベルリン・天使の詩』などはあるが、映画で頻繁に見かけないこともあり、街の映像が新鮮だった。

タクシーが、とにかくメルセデスばっかり(笑)。

230も、古い190も使われていたけど、たぶんディーゼルだと思う。

それに某国の王子が、メルセデスのスーパースポーツカーである、「SLS AMG」で乗りつけたり。

ガルウイングドアで、お値段2430万円(笑)。

そうそう、作品全体から、ヒッチコックの香りもしました。

おススメできる1本です。


ドラマ「最後の晩餐」の遠野刑事がいい

2011年05月17日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

『日刊ゲンダイ』に連載中の番組時評「テレビとはナンだ!」。

今週の掲載分では、テレビ朝日のドラマスペシャル「最後の晩餐~刑事・遠野一行と七人の容疑者」について書いた。

なかなか見ごたえのある1本でした。


ドラマ「最後の晩餐」のお手柄は
自前の魅力的な刑事を生み出したこと


先週土曜の夜、テレビ朝日がドラマスペシャル「最後の晩餐~刑事・遠野一行と七人の容疑者」を放送した。

主演が佐藤浩市、脚本は「白い巨塔」などの井上由美子。共演者には西田敏行や黒木瞳も並び、期待を裏切らない力作だった。

恋人を殺されたシェフ(成宮寛貴)が恨みをもつ面々を自分のレストランに招待し、一挙に罰を与えようとする。

しかし途中まで、彼らが成宮に殺される理由が視聴者にも、佐藤たち警察側にもわからない。

彼らは成宮の恋人の死に直接関係ないからだ。

やがて真相が明らかになり、成宮と佐藤が対決するクライマックスがやってくる。

このドラマ最大のお手柄は遠野一行という魅力的な刑事を〝自前〟で生み出したことだ。

最近のドラマは小説や漫画の原作物が多い。

それはそれで面白いが、やはりオリジナル脚本による新鮮な物語も見たいのだ。

その点、遠野はいい。

彼には自分が逮捕した犯罪者(ARATA)の女(斉藤由貴)を妻にしたという過去がある。

それは警察組織では許されない結婚であり、かつての相棒・杉崎捜査一課長(六角精児、好演)との反目の原因にもなった。

しかも、出所したARATAは斉藤由貴に未練があり、彼女の気持ちも揺れ動く。

こうした背景が遠野の人物像に微妙な陰影をもたせているのだ。

続編を見てみたいと思う。

(日刊ゲンダイ 2011.05.16)


・・・・ただ、ただですねえ、少しご都合主義だったのが、爆発炎上した店内に飾ってあった「最後の晩餐」の模写が全くの無傷だったこと。

そして、やや納得いかないのが、佐藤浩市の妻が斉藤由貴だったことだ。

佐藤浩市とARATAの両方から思われる役が、近年膨張気味のヌイグルミ体形と相まって、NHK朝ドラでは“うるさいおばちゃん”にしか見えない斉藤由貴でいいのか(笑)。

力作の中の惜しいミスキャストでありました。


ずさんな番組作りに、またもやBPOが動く

2011年05月15日 | テレビ・ラジオ・メディア

日本テレビ、テレビ東京、そして毎日放送に対して、BPOが動いた。


日テレ「やらせ」報道にBPOが意見書


放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は13日、日本テレビの報道番組「news every. サタデー」に放送倫理上の問題があったとして、意見書を出すことを決めた。

早ければ5月中に公表される。

同番組は、ペットビジネス特集でペットサロン運営会社社員と知りながら、店の利用者として報じた。

川端和治委員長は「報道の基本を制作現場が分かっていない。幹部も現場を把握できていない」と指摘。

構造的な問題があるとして改善を求めることを明らかにした。

このほか、事実確認を怠ったため番組が宣伝に利用されたとして審議していたテレビ東京の「月曜プレミア! 主治医が見つかる診療所」と、毎日放送(大阪市)の「イチハチ」のバラエティー2番組についても意見書を出す。

(共同通信)



・・・・いずれのケースも、番組作りとしては、がっかりするほどレベルの低い“やりくち”。

「3.11」以来、あらためてメディアとしての真価が問われているテレビにとって、残念すぎる話だ。

自分の首を自分で締めるのは、いい加減にやめないと。


言葉の備忘録49 山際淳司『スローカーブを、もう一球』

2011年05月14日 | 言葉の備忘録

授業で取りあげた『NHK特集 江夏の21球』。

そのベースとなったのが、山際淳司さんが書いた同名ノンフィクションだ。

舞台は、1979年の日本シリーズ第7戦。

その翌年、雑誌「ナンバー」が創刊され、そこに山際さんは、短篇「江夏の21球」を寄稿し、実質的に作家デビューしている。

『スローカーブを、もう一球』には、「江夏の21球」をはじめ、高校野球に材をとった表題作などが収録されている。

備忘録に入れたのは、巻頭の「八月のカクテル光線」の中の一文で、スポーツだけでなく、山際さんが書いてきたスポーツ・ノンフィクションの醍醐味をも、伝えているように思う。



「ゲーム」――なんと、面白い言葉だろう。
人は誰でも、自分の人生の中から最低一つの小説をつむぎ出すことができるように、どんなゲームにも語りつがれてやまないシーンがある。
それは人生がゲームのようなものだからだろうか、それともゲームが人生の縮図だからだろうか。
――山際淳司「八月のカクテル光線」
        (『スローカーブを、もう一球』収録)

スポーツ・ドキュメンタリーの傑作『江夏の21球』

2011年05月14日 | テレビ・ラジオ・メディア

大学の「現代文化としてのスポーツ」という講義の中で、「スポーツとマスメディア」全2回を担当した。

昨日はその2回目。

スポーツ・ドキュメンタリーを取り上げ、教室で『NHK特集 江夏の21球』を参考プレビューした。

1979年の日本シリーズ、近鉄対広島の7戦目、大阪球場。

広島1点リードの9回裏、 リリーフエース・江夏豊が、ノーアウト満塁のピンチを乗り越え、劇的な勝利を飾った日本シリーズ史上の名勝負だ。

放送されたのは1983年。

番組は、当事者たちの「証言」を駆使して、9回裏の死闘を描いたスポーツ・ドキュメンタリーの傑作である。

今回見直してみて、あらためて、この時の江夏のすごさがわかった。

野球選手というより、勝負師。

一匹狼の剣豪にして、素浪人(笑)。

とはいえ、こういう選手が、現在の野球界に存在することは難しいのかもしれない。

だからこそ、よけいに、マウンドの上で江夏が見せる、一瞬の“不敵な笑い”が魅力的なのだろう。

今週の「読んで書いた本」 2011.05.13

2011年05月13日 | 書評した本たち

伊集院静さんの『いねむり先生』を読了。

何度か、「いいなあ」とつぶやきたくなるようなシーンがあった。

今度は、井上ひさしさんの“未完の遺作”となった『黄金の騎士団』に取り掛かる。

井上さんは上智大OBだが、作中にはキャンパスのある四谷界隈の描写も多い。

何より、こうして読み応えのある小説が続くのは、本当にありがたい。

電車の中で読んでいて、久しぶりで降りる駅を乗り過ごしました(笑)。


さて、今週、「読んで(書評を)書いた」のは、以下の本です。

永江 朗 
『筑摩書房 それからの四十年』 筑摩選書

泉 麻人:編著 
『東京考現学図鑑』 学研パブリッシング

難波利三、藤本義一ほか 
『大阪で生まれた開高健』 たる出版

残間里江子 
『人と会うと明日が変わる』 イースト・プレス  

小坂井敏晶 
『人が人を裁くということ』 岩波新書


* 上記の本の書評は、発売中の『週刊新潮』最新号(5月19日号)に
  掲載されています。


『週刊新潮』で、最近の「モーニングバード」についてコメント

2011年05月12日 | メディアでのコメント・論評

雨が降り続いている。 

沖縄・奄美地方はすでに梅雨入りしているそうだけど、関東も間もなくなんでしょうか。


さて、発売中の『週刊新潮』(5月19日号)に、最近のテレ朝「モーニングバード」と羽鳥アナについての記事が掲載されている。

タイトル:
鳴物入り「羽鳥慎一」新番組がスタートダッシュで躓いた

記事の内容としては・・・・

「モーニングバード」の視聴率は、初日こそ好調な滑り出しだったが、現在は5%前後といまいち。

フリーになったアナは半年間はライバル局に出ない、という不文律を破っての登場の割には、現在のところ、7%の合格ラインに遠く及ばない。

スタッフも「どこがいけなかったのかと頭を抱えている」そうだ。

で、私のコメント部分・・・・


いわば視聴者代表として、その問いに答えるのは碓井広義・上智大教授(メディア論)である。

「躓きの原因は2つあると思います。

1つ目は、羽鳥自身の問題。

真面目な好青年タイプながら堅すぎないところが彼の持ち味でしたが、今回は相棒の赤江珠緒アナを執拗にからかうなど、無理に“軽く”振舞って失敗している。

それを修正しようと一転、眉間に皺を寄せたりして、自身のキャラを見失っているんです。

2つ目は、番組作りの問題。

以前の『スパモニ』は政治や事件などを硬派な視点で取り上げていて、そこに一定の視聴者が付いていた。

新番組ではその特色が無くなる一方、NHK『あさイチ』が力を入れるような生活情報が充実しているわけでもない。

コメンテーター陣も、特段、この人の意見を聴きたい、という人はいない。

いくら人気者でも、羽鳥を見るためだけで視聴はしませんよ」



・・・・この後には関係者の言葉として、羽鳥が所属した事務所の宮根誠司の真似をしても無理だということ。

また、コメンテーターの選定には、移籍を仲介した大手芸能プロへの論功行賞的なものが影響していること。

「島谷ひとみにコメントされてもねえ」のコメントがリアルで可笑しい。

さらに、テレ朝社員の言い分として、以前の硬派な番組作りに慣れたスタッフの大半を切ったこと。

プロデューサーは、分かりやすくて楽しい番組を目指したらしいが、「震災直後に“楽しく”といわれても、羽鳥だってスタッフだって困りますよね」とのこと。

そんな同情論を受けて、記事の最後は、「勝負はこれから」と羽鳥アナを励ます論調になっている。

羽鳥アナ自体は貴重な人材だと思うので、制作陣は、ぜひ番組のカラーを打ち出して(創出して)あげてください。

第48回ギャラクシー賞入賞作品をめぐって

2011年05月11日 | テレビ・ラジオ・メディア

先日、第48回ギャラクシー賞入賞作品が発表された。

私が審査に関わっている報道活動部門の入賞作品は、以下の6本です。


<報道活動部門>
・「がん患者、お金との闘い」2007年~2011年 一連の報道 (札幌テレビ放送)

・壁画修復から見つめた 幻の画家アーニョロ・ガッディにおける一連の放送活動 (テレビ金沢)

・報道キャンペーン「堀川のキセキ~人・街・川」 (東海テレビ放送)

・NHK「北方領土プロジェクト」 (日本放送協会)

・口蹄疫発生から終息宣言までの一連報道 (宮崎放送)

・ステーションQ 年間企画「オキナワ1945 島は戦場だった」 (琉球朝日放送)


・・・・この中から、大賞、優秀賞、選奨などが選ばれる。

その発表は6月2日の贈賞式で。

そして、他の部門の入賞作品は以下の通りです。


<志賀信夫賞>
・後藤 亘


<テレビ部門>
・映像'10「母との暮らし~介護する男たちの日々」 (毎日放送)

・「カントクは中学生」 (沖縄テレビ放送)

・BBTスペシャル「不可解な事実~黒部川ダム排砂問題」 (富山テレビ放送)

・「Mother」 (日本テレビ放送網 ケイファクトリー)

・ETV特集「よみがえる戦場の記憶」 (日本放送協会)

・NHKスペシャル 終戦特集ドラマ「15歳の志願兵」 (日本放送協会)

・ドラマ24 第20弾特別企画「モテキ」 (テレビ東京 オフィスクレッシェンド)

・ダーウィンが来た!生きもの新伝説「アリューシャン クジラと海鳥 世界一の大集結」 (日本放送協会 NHKエンタープライズ)

・「Q10」 (日本テレビ放送網)

・探偵!ナイトスクープ「レイテ島からのハガキ」 (朝日放送)

・ETV特集「枯葉剤の傷跡を見つめて~アメリカ・ベトナム次世代からの問いかけ」 (日本放送協会 NHKエデュケーショナル)

・「時代劇法廷 被告人は田沼意次」 (日本映画衛星放送 バンエイト)

・NNNドキュメント'11「夢は刈られて 大潟村・モデル農村の40年」 (秋田放送)

・ハイビジョン特集「二人の旅路~日中 激動を生きた京劇夫婦」 (日本放送協会)

特別賞
・「相棒」 (テレビ朝日 東映)

個人賞
・福山雅治
 大河ドラマ「龍馬伝」(NHK)、NHKスペシャル「hotspots 最後の楽園」(NHK)の出演


<ラジオ部門>
・「J-WAVE SPECIAL RHAPSODY IN SPACE~宇宙へ… 魅せられた人たち」 (J-WAVE)

・「ニュース探究ラジオDig」 (TBSラジオ&コミュニケーションズ)

・「この命救済に捧ぐ~カネミ油症42年 被害者たち闘いの記録」 (九州朝日放送)

・FMシアター「薔薇のある家」 (日本放送協会)

・「おじいちゃんの三池炭鉱」 (熊本放送)

・ニッポン放送ホリデースペシャル「ラストイニング 全国高校野球 県予選決勝 聖母学苑対彩珠学院」 (ニッポン放送)

・HBCラジオ開局60周年記念ドキュメンタリー「インターが聴こえない~白鳥事件60年目の真実」 (北海道放送)

・「ゴールデンアワー 第一部 第二部」 (エフエム沖縄)

DJパーソナリティ賞
・ピストン西沢
 「GROOVE LINE Z」(J-WAVE)パーソナリティとして


<CM部門>
・NTTドコモ ひとりと、ひとつ。 シリーズ「堀北と、カエラ篇」「岡田と謙さん篇」「防水篇」「サダヲと、ベイダー篇」「iD篇」「スマフォミーティング篇」 (NTTドコモ/TUGBOAT/NTTアド/電通/東北新社)

・大塚製薬工場 オロナインH軟膏「手の一日篇」 (大塚製薬工場/Wieden+Kennedy Tokyo/ティー・ワイ・オー/Camp KAZ)

・川崎商会 企業 シリーズ「ドキュメント篇」 (川崎商会/新潟博報堂/ティ・シー・ジェー)

・九州旅客鉄道 九州新幹線全線開業「祝!九州縦断ウェーブ 特別篇」 (九州旅客鉄道/電通九州/ティーアンドイー)

・サッポロビール サッポロ生ビール 黒ラベル シリーズ「大人エレベーター篇」 (サッポロビール/TUGBOAT/大広/ライトパブリシテイ)

・サントリーホールディングス BOSS SIMPLE STYLE シリーズシンプル「連絡白A篇」「連絡白B篇」「いい加減に白A篇」「いい加減に白B篇」 (サントリーホールディングス/シンガタ/電通/MR/ギークピクチュアズ)

・ソフトバンクモバイル 企業 シリーズ白戸家「出馬依頼篇」「墓参り篇」「選挙カー篇」「街頭演説篇」「優勢篇」「当確篇」「当確インタビュー篇」「後日談篇」 (ソフトバンクモバイル/シンガタ/電通/ギークピクチュアズ)

・東京ガス 企業「家族の絆・お弁当メール」 (東京ガス/電通/ホリプロ)

・トキワ トキワ鉛筆「伝えたい」 (トキワ/中部日本放送)

・名古屋テレビ放送 メ~テレ企業 シリーズ「政治ニュース篇」「再放送篇」「サスペンス篇」「メロドラマ篇」「情報番組篇」「野球中継篇」「料理番組篇」「感動アニメ篇」「平日のテレビ篇」「深夜のお笑い番組篇」「昼ドラ篇」「バラエティ番組篇」「ラブシーン篇」「サッカー中継篇」 (名古屋テレビ放送/電通中部支社/エジソンライトハウス)

・パイロットコーポレーション フリクション「変更の多い会社」 (パイロットコーポレーション/電通/エムワンプロダクション)

・パナソニック エボルタ「東海道五十三次」 (パナソニック/博報堂アーキテクト/ハット)

・東日本旅客鉄道 MY FIRST AOMORIシリーズ「トーキョー篇」「恋篇」「ねぶた篇」「居酒屋篇」「新青森駅篇」「開業篇」「デート篇」「旅立ち篇」 (東日本旅客鉄道/ドフ/電通/一倉広告制作所/ピクト)


・・・・リスト全体を眺めていると、この1年間の「日本の放送界」が概観できる。

また個人的には、「DJパーソナリティ賞」に、ピストン西沢さんが選ばれたことが、ひとりのファンとして、以前の「GROOVE LINE」時代からのリスナーとして、とても嬉しい。

ピストンさん、おめでとうございます!

贈賞式の当日、会場で、お待ちしています(笑)。



目が離せないぞ、ドラマ「鈴木先生」

2011年05月10日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

『日刊ゲンダイ』に連載している番組時評「テレビとはナンだ!」。

今週は、テレビ東京のドラマ「鈴木先生」(月曜夜10時)について書いています。


長谷川博己演じる中学教師のキャラが際立つ「鈴木先生」


テレビ東京「鈴木先生」は今期連ドラの中で目が離せない1本だ。

まず、NHK「セカンドバージン」で鈴木京香と共演して話題になった、長谷川博己が演じる中学教師のキャラが際立っている。

教育熱心といえば非常に熱心。いつも生徒のことを考えているし、観察眼も鋭い。

しかし、それは教室を自分の教育理論の実験場だと思っているからであり、単なる熱血教師とは異なる。

たとえば担任クラスの男子生徒が小4の女の子と性交渉をもってしまう。レイプだと怒鳴りこんでくる母親。

鈴木はこの生徒と徹底的に話し合う。

そして、たとえ合意の上でも、自分たちが「周囲に秘密がバレる程度の精神年齢」であることを自覚していなかったのは罪だ、と気づかせるのだ。

いや、これで解決かどうかは賛否があるだろう。

ただこのドラマの真骨頂は、鈴木が思いを巡らすそのプロセスを視聴者に見せていくことにある。

“心の声”としてのナレーションはもちろん、思考過程におけるキーワードが文字としても表示されるのだ。いわば頭の中の実況中継である。

しかもその中継には生徒である美少女・土屋太凰(つちやたお)との“あらぬ関係”といった妄想さえ含まれる。

教師も人間であり男であるわけだが、この時点で「中学生日記」や「3年B組金八先生」との差別化は明白だ。

原作漫画(武富健治)の画調はやや暑苦しいが、ドラマは映画風処理を施された映像が心地良い。

(日刊ゲンダイ 2011.05.09)


・・・・このドラマ、脇役陣も楽しめる。

鈴木先生の同僚役で、ぐっさんこと山口智充、田畑智子、それから富田靖子も出ている。

富田靖子は映画『アイコ16歳』から見ている女優さんだ。

もっとドラマに出てきてもいいと思っていたので、結構なことです。

上原ひろみさんと木村多江さん

2011年05月09日 | テレビ・ラジオ・メディア

録画しておいたNHKのBSプレミアム「ジャズ・ピアニスト 上原ひろみの世界」を見た。

うーん、いいなあ、いいノリだなあ、上原ひろみ。

中でも、チック・コリアとの競演は圧巻。



チック・コリアも楽しそうだし。

2人が肩慣らしのキャッチボールから始まり、だんだん剛速球や変化球を投げ合い、受取り合う様子は、ちょっと涙モノでした。




それから、たまたまWOWOWをつけたら、映画「踊る大捜査線」全3作一挙放映をやっていて、ちょうどその1作目のラストだったのだが、ごひいきの木村多江さんを発見。





当時は気がつかなかったけど(すみません)、看護師さん役で、出ていたんですね。

これまた、ちょっと得した気分でした(笑)。


*このブログ内での木村多江さん関連項目
 『週刊現代』の「決定!日本のいい女優ベスト20」に寄稿
 http://blog.goo.ne.jp/kapalua227/e/024b1c568b7455d20780ad1a36c203f5


柘植久慶の小説『東京大津波』を読む

2011年05月08日 | 本・新聞・雑誌・活字

つい先日まで、中部電力は、定期点検中の浜岡原発3号機(静岡県御前崎市)の、7月運転再開を予定していた。

夏場の消費電力を考えてのことだろうが、微妙なタイミングだった。

そして今や、管直人首相の“要請”により「全面停止」がウンヌンされている。

“要請”自体の本当の是非はともかく、安全対策として、何をどこまで行っているのかは、やはり気になる。

東日本大震災が起きてしまった以上、もはや「想定外」という言葉は使えない。

マグニチュード9の地震も、巨大津波も「想定」した上での安全計画でなくてはならないのだ。

古書店で偶然見つけたのが、柘植久慶さんの小説『東京大津波~東海・東南海連鎖地震、ついに発生す!』(PHP文庫)。

2005年5月発行の書き下ろし作品だ。

「新橋と銀座が水没した!」全身ずぶ濡れの男女が震える声で告げると、秋川の背筋が寒くなった。高さ数メートルの浸水があった場合、地下鉄の乗客が助かる可能性など、ほとんど考えられなかった・・・。
200X年3月、震度7強を記録した東海・東南海連鎖地震は“大津波”に姿を変えて、日本の太平洋沿岸を蹂躙していく。水に飲み込まれた大都市の恐怖を、克明に描いた衝撃の近未来小説。


東京、名古屋、大阪、高知などが、同時に強烈な地震と大津波に襲われる様子は、フィクションとはいえ、「3・11」を経た現在、かなりリアルに読める。

結果的には、この小説が描いているのは大津波襲来までで、“その後”にくる原発事故のシーンは出てこなかった。

しかし、東海地震が発生した場合、今回の福島ような原発事故が起きないと予想するほうが難しい。

果たして、浜岡原発は本当に運転を停止するのだろか。


『日刊ゲンダイ』でフジのフィギュア放送についてコメント

2011年05月07日 | メディアでのコメント・論評

6日、大学で「現代文化としてのスポーツ」という授業。

これは外部講師を含む、複数の教員がリレー方式で行うものだ。

私の担当は2回連続の「スポーツとマスメディア」である。

この授業の中で、人気スポーツの独占放送は、テレビ局にとっての“キラー・コンテンツ”であり、大きな利益につながる、といった説明をした。

まさしく、その辺りに関わる記事が『日刊ゲンダイ』に掲載され、私もコメントしています。


フジテレビ 世界フィギュア放送に非難囂々
開催国・ロシアの日本応援演出をカット


GW中、もっとも多くの人が見た番組が4月30日の「世界フィギュアスケート2011女子フリー」だ。

ビデオリサーチの調べによれば、関東地区の平均視聴率は29・3%、次いで「女子SP」が27・8%と、放送したフジテレビは視聴率で他局に大きく水をあけた。

そのフジテレビの放送姿勢に多くの批判が寄せられている。

もともと今回のフィギュアスケート世界選手権は、3月下旬に東京で開催される予定だった。代替開催のロシアは震災の日本に配慮。

日本のゴールデンタイムに合わせたプログラムを組み、開会式やフィナーレでは氷上に日の丸を映し、ロシアからのメッセージ「日本にささげる詩」も披露された。

だが、独占中継していたフジテレビの地上肢は、こうした演出をまったく紹介しなかった。

「ロシアが日本のために演出を考えていたことをフジテレビが知っていたとすれば、リアルタイムでなくても放送する努力をすべきです。

”こんなことがありました”くらいなら時間も掛からない」(立教大教授の服部孝章氏=メディア法)

また、5月1日のエキシビションは、前日のリプレーやキム・ヨナの特集で引っ張った上、演技順序を入れ替えて放送。

裏番組の人気ドラマ「JIN-仁-」にぶつけるように日本選手のエキシビションを流したのだ。

あまりのあざとさにネットは「あれもこれもフジテレビはカットしやがって」「フジで見てたのでこんなん全然知らなかった」と大騒ぎだ。

「テレビ全体の収益が落ち込んでいる中で、特定の”お客”が必ず見込めるスポーツイベントはおいしい商品。

中でもフィギュアスケートはキラーコンテンツで、CMスポンサーに高く売れます。

それはウィリアム王子の世紀の結婚中継よりも、安藤美姫のスケート中継の方が視聴率が高かったことからも明らか。

当然ながら裏番組のことは念頭にあったでしょう。

でも、不要な演出で時間を延ばしてまで『JIN』にぶつけたのだとしたら、フジテレビの編成は大人げない」(上智大教授・碓井広義氏=メディア論)


フジテレビは「担当者が不在で事実関係が確認できません」(広報部)とコメントしたが、大事なのは視聴率だけではないはずだ。

(日刊ゲンダイ 2011.05.06)


仙台市荒浜地区にて

2011年05月06日 | 日々雑感

仙台市の若林区荒浜に行ってきた。

きっかけは、先日札幌で、アウンビジョン代表の藤島さんから、取材で訪れた荒浜地区の話をうかがったことだ。

大震災から2ヶ月近くがたとうとしている現在、各被災地での復旧が行われているが、荒浜地区はまだ震災当時から大きく変わっていないという。

したがって、どんなことが起きたのかを知る上でも、「ぜひ今のうちに、荒浜を見ておいてください。いや見るべきです」と言われたのだ。

私自身も見たかったが、高校生の息子にも見せたいと思い、2人で仙台へと向かった。

仙台駅からはクルマだ。

海岸方向へ走る途中までは、ごく普通の街並みが続いた。

それが、あるラインから一変するのだ。

道路の両側の、本来は水田である場所に、さまざまなものが大量に散乱している。

そして、さらに進むと、明らかに住宅が立ち並んでいたはずの地域全体が、すべて薙ぎ払われていた。

それは、90年代に訪れたサラエボの、戦火によって破壊された街の風景とも異質だった。

どうすれば、こんなふうになるのか。

あたり一面、見渡す限りの範囲の、あらゆる建物を破壊し尽くす力とは、いったいどれほどのものなのか。

その光景は、やはり想像を超えていた。

これまでテレビや、写真などの映像で、知っていたような、わかっていたような気になっていたが、全然違っていた。

「何かとんでもないこと」がここで起きた、としか言いようのない有様なのだ。

家々は、土台のみ残して破壊されている。

原型をとどめているのは荒浜小学校の建物だ。

しかし、その小学校の教室には、押しつぶされた自動車がなんと3台も入り込んでいる。

体育館の床は土砂で埋まり、バスケットボールがころがっている。

さらに海岸まで歩いた。

びっしりと並んでいたという防風林が、櫛の歯が抜けるように、へし折られていた。

鉄製のフェンスも津波が来た方向にねじ曲がっている。

磯の香りがして、海が見えた。

堤防に上がると、目の前には砂浜、そして穏やかな海が広がっている。

地元の方のお話では、あの日、「黒い壁」が向かってきた、という。

それを見て、運転していた車を捨てて、逃げたそうだ。

この海が、どうやって10メートルを超す巨大な黒い壁になるのか。

背後の、すさまじい被害を見ていなければ、想像もできない。

津波は恐ろしいほどの幅に広がり、このエリア全体を、それこそ満遍なく、均等に襲っていったことがわかる。

歩いても、歩いても、あたりの光景は変わらない。

他の災害現場との比較など簡単にはできないが、この律儀なほどの均等さで、広い範囲を、一気に破壊していった、その容赦のなさが、見たことのない被害とこの光景を生んでいるのだ。

ふと、あたりがとても静かなことに気がつく。

遠くでゆっくりと動くパワーショベルカーの音は聞こえる。

時々通過するクルマの音も。

そのクルマから降りてきて、歩きだす人たちの姿はある。

でも、ほとんど無音かと思うほど、静かなのだ。

地域全体が真空地帯になったかのようだ。

そろそろ戻ろうかと思った時、かなり遠くから、再会したらしい2つの家族の歓声があがった。

偶然、ここで会えたことを喜んでいるようだ。

「おばあちゃんのウチねえ、なくなっちゃったんだよお」。

大きな声が聞こえてきた。

小さな女の子に向かって話しかけたらしい。

でも、それはとても明るい声で、まるで笑っているかのような言い方で、離れて聞いているこちらが、びっくりするほどだった。

息子が私を振り返って、「おばあちゃん、強いなあ」と言った。

この荒浜に到着して、歩きだしてから、息子はずっと無言だったから、これが初めての言葉だった。

私も、「うん、強いなあ」とこたえた。









































震災報道の自己検証番組

2011年05月05日 | 「東京新聞」に連載したコラム

『東京新聞』に連載中のコラム「言いたい放談」。

5月4日の掲載分で、テレビ朝日の震災報道に関する特番について、書きました。


震災報道の自己検証


先週、テレビ朝日が報道特番「つながろう!ニッポン~テレビが伝えたこと 伝えたいこと」を放送した。

大震災から50日。内容はテレビ自身による震災報道の自己検証だった。

冒頭で地元局カメラマンが撮影した津波の様子が流された。

見たことのない映像も多く、あらためて被害のすさまじさを痛感する。

同時にその証言からは、「今、カメラを回していていいのか。目の前の被災者を救助しなくていいのか」というジレンマも伝わってきた。

また報道局編集長は原発報道に関して、「情報を正確に伝え、根拠のない不安感をあおらない」を方針にしていたと言う。

だが実際には、「冷静に」というメッセージが逆に不信感を生む場合もあった。

さらにテレビが報道した避難所にだけ支援物資が殺到する事態も発生した。

一方は収容しきれないほど物資があふれ、もう一方は学校のプールの水をろ過して飲んでいる。

番組では、報道が誤解や格差を広げたことを自問していた。

検証は時期尚早とか、言い訳ではないのかといった厳しい見方もある。

しかし、報道側が抱えるいくつものジレンマを告白する勇気と、それを踏まえた上での「被災地の人たちと視聴者をつないでいこう」という決意を素直に受けとめたい。

それが今後も継続される報道活動のベースとなるからだ。

(東京新聞 2011.05.04)