碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

「民放全局の19時台視聴率が1ケタに」という局Pの嘆き

2011年06月18日 | テレビ・ラジオ・メディア

昨日(17日)、「J-CASTニュース」に興味深い記事が掲載された。

14日(火)の19時台、民放の視聴率が軒並み1ケタだったというのだ。

そのことを“発信”したのが局P(放送局のプロデューサー)だった、という点も面白い。


タイトル:
「民放の19時台視聴率が1ケタになった」 テレ朝プロデューサーの「ツイッター」に「当然」の声

テレビ朝日の藤井智久ゼネラルプロデューサーが「ついに民放全局の視聴率が1ケタになった」とツイッターで呟いているとネットで話題になっている。

1ケタになったのは19時台全ての番組。もともと19時台はゴールデンタイムの入り口で、視聴率や広告収入が見込めたドル箱。

しかし、10年ほど前から不振が続き、メインターゲットとしていた小学生から高校生がテレビから離れてしまったという。

  「見たい番組がない」など大量のリツィート

藤井ゼネラルプロデューサーは2011年6月15日、ツイッターで「ついに昨日、19時台の民放は全局、視聴率が1ケタになった(関東地区)」と呟いた。

昨日というのは14日(火)のことで、新聞のテレビ欄を見ると「泉ピン子宮古島に来襲」「AKBVS戦隊ヒーロー」「熟女4人が下町電車旅」などの番組が並んでいる。

この呟きがネットで大きな反響を呼んでいて、
「正直、見たい番組が、ない…TV 本当にもういらないかも・・・」
「5年後にゴールデンが全局一ケタでも驚きもしない」
などと「当然」と受けとめるリツイートが大量に寄せられている。

放送評論家の松尾羊一さんによれば、昔から19時台はゴールデンタイムの入り口として、まずは小学生から高校生を集める番組制作が行われた。

20時台になれば会社から家族が戻り、家事も一段落。家族全員でテレビを見ながら団欒する、という流れがあった。

しかし、携帯電話やゲーム、パソコンなど普及によって19時台の視聴者は10年前から急速にテレビ離れしていった。

  復活のヒントは池上彰に学べ

視聴率が下がると制作費が削られるため魅力的な番組が減るスパイラルに陥り、起死回生策としてマンガやゲームでヒットした作品を持ってきたりもしたが、

「他のメディアでヒットした作品におもねても、テレビで成功するわけではない。若い人は感覚が鋭いため納得のいかないものは見ない」

さらに、番組が一部の人しか興味を示さないような狭い内容になってきた。こうしたことが視聴率が取れなくなった原因だと松尾さんは説明する。

もう19時台の視聴率復活は難しいのかというと、復活のヒントはあるのだそうだ。

実は、19時台で高視聴率を記録した番組があり、それはテレビ朝日系で08年から19時台に放送した池上彰さん司会の「学べる!!ニュースショー!」。

この番組はティーンエイジャーが主な視聴者で大うけだった。10年からは放送が8時台に移り「そうだったのか!池上彰の学べるニュース」に番組名が変更になった。

「見てわかりやすいし、勉強になるだけでなく楽しめる。この応用としてドラマやクイズ、バラエティー番組を制作する。そこに若い人達のニーズがあるのではないかと思います」

そう松尾さんはテレビ業界に対し提言している。

(J-CASTニュース 2011.06.17)



・・・・記事を読んでの最初の感想は、「そうか、これって初めてなんだ」というもの。

てっきり、ここ数年の中で、「民放全局の19時台視聴率が1ケタ」という事態を経験していると思っていた。

「ついに・・・」と藤井Pはつぶやいたそうだが、逆に、「よくここまで、そうならずに来たもんだなあ」と感じる。

申しわけないけど、記事にあるようなラインナップが続くなら、「19時台横並び1ケタ」はこれからも続発するはず。

松尾先生(と私は呼んでいます)の提言にも、しっかり耳を傾けるべきだと思います。


「朝日ニュースター」番組審議委員会が開かれた

2011年06月18日 | テレビ・ラジオ・メディア

CSのニュース・報道チャンネル「朝日ニュースター」。

“ジャーナリズムTV”を標榜するこの放送局の、番組審議委員会に出席した。

各放送局は法令により、放送番組の改善を目的とした番組審議委員会を設置しなくてはならない。

そして、客観的評価を行えるように、必ず外部の人間で構成されている。

現在の朝日ニュースター番組審議委員会のメンバーは・・・・


委員長:
大石 裕(慶應義塾大学教授)

委員:
坂東 眞理子(昭和女子大学学長)
田中 優子(法政大学教授)
隈元 信一(朝日新聞編集委員)
碓井 広義(上智大学教授)
砂川 浩慶(立教大学准教授)
兼高 聖雄(日本大学芸術学部教授)


・・・・私はともかく、なかなか豪華な顔ぶれであり、このまま有料のシンポジウムを開いても十分にお客さんを呼べるほどだ(笑)。

実際、一堂に会しての話し合いは実に刺激的なものだった。

残念ながら、その詳細を語るわけにはいかないが、朝日ニュースターのWEBサイトで概要が公表された・・・・


審議内容と委員からの主な意見は以下のとおりです。

議題1
2011年度新編成について


<審議内容と主な意見>
●「科学朝日」「海堂ラボ」など特定分野を深く伝えていくコンテンツは良い。
今後、農業や環境などジャンルを決めて、特化して伝える姿勢は、広く浅くワイドショー的に伝える手法と一線を画して局の売りにもなるのではないか。

●実力のある女性をもっと起用すべきである。

●全体的に一色なイメージだ。対話型の討論、集団討論の番組が多く、番組表を見てもその違いがよくわからない。

●30代以上の社会的関心の高い人々の「知識を得たいという欲求」にこたえるコンテンツを土日の午前中に編成するのはどうか。

●視聴者の年齢層を拡大するためにも、中学生や高校生をターゲットにするコンテンツがあってもよい。


議題2
東日本大震災の報道への取り組みについて


<審議内容と主な意見>
●地上波に出ないようなゲストを呼んで番組を作ることには大いに勇気が必要だったに違いないが、一連の報道でそうした姿勢を貫いたのは良かったと思う。

●特色ある震災報道を評価したい。今、メディアに対する不信が高まっており、今後、テレビメディアとしてこの局が、どんな路線を打ち出して伝えていくのかは重要だ。


議題3
番組「ニュースにだまされるな!」について


<審議内容と主な意見>
●この番組は良かったと思う。番組の良し悪しは、ゲストの人選でほぼ決まってしまう。何も知らなかった人にとって、この番組はとても勉強になったと思う。

●ゲストが多く、発言が埋没してしまった。話が盛りだくさん過ぎて、時間が足りない。

●テーマが具体的で、他の番組に比べてよかっただけに、司会の金子勝氏には、もっと他の出演者の話を引き出すための「質問のチカラ」を持って欲しい。

●番組の最後に、司会の金子勝氏と中村うさぎ氏が、今日の話の中身を振り返る時間を作ってみるのも良いのではないか。

このような質疑応答や意見交換が行なわれました。



・・・・というわけで、朝日ニュースターには、いろんな意味で(笑)ここでしか見られない報道・討論・解説番組が並んでおり、番組審議委員ということを抜きにしても、かなり面白い。

「ニュースの真層」
「ニュースにだまされるな!」
「愛川欽也のパックイン・ジャーナル」
「闘え!山里ジャーナル」
「宮崎哲弥のトーキング・ヘッズ」
「激論!クロスファイア」などなど

デジタルテレビになって、CSがかなり見やすくなったので、一度チェックしてみてください。


今週の「読んで書いた本」 2011.06.17

2011年06月17日 | 書評した本たち

今、電車の中で読んでいるのは、大沢在昌さんの『新宿鮫Ⅹ 絆回廊』(光文社)。

久しぶりの“新宿鮫”新作だ。

ページが減るのが惜しくなり、時々読むのを止めて、地下鉄の暗い窓外を眺めている(笑)。


「今週、読んで(書評を)書いた本」は、以下の通りです。

伊集院 静 
『いねむり先生』 集英社

阿川佐和子 
『咲くも咲かぬも花嫁修業』 東京書館

山口 淳 
『PAPA&CAPA~ヘミングウエイとキャパの17年』 阪急コミュニケーションズ

高三啓輔 
『字幕の名工~秘田余四郎とフランス映画』 白水社



・・・・色川武大(阿佐田哲也)さんと伊集院静さん。

先生と呼べる存在のありがたさ。

『いねむり先生』を読んでいると、我が師・浜光雄(児童文学者・はまみつを)先生を思い出します。


* 上記の本の書評は、発売中の『週刊新潮』最新号(6月23日号)に掲載されています。



フジテレビ「マルモのおきて」の大善戦

2011年06月16日 | 「東京新聞」に連載したコラム

『東京新聞』に連載しているコラム「言いたい放談」。

今回は、フジテレビ「マルモのおきて」について書きました。

日曜夜9時、TBS「JIN―仁―」の真裏という、一種“火中の栗”みたいな枠(笑)での大善戦。

いや、お見事です。


「マルモのおきて」好調のワケ


フジテレビのドラマ「マルモのおきて」(日曜夜九時)が好調だ。

視聴率も同じ時間帯のTBS「JIN―仁―」に迫る16%台である。

描かれているのは亡くなった親友の遺児(芦田愛菜と鈴木福)を引きとった独身男(阿部サダヲ)の日常生活であり、びっくりするような事件が起きるわけではない。

それがなぜ大作ドラマに負けない強い支持を得ているのか。

理由はいくつかある。

悪人が一人も出てこない、ほのぼのとしたホームドラマであること。

ポテトチップスのCM以来、キモカワイイ俳優として認知された阿部サダヲの快演。

「パパと呼ばないで」の杉田かおる、「おしん」の小林綾子に匹敵する天才子役ぶりを発揮している芦田愛菜の魅力等々。

しかし、もしもこのドラマが震災前の放送だったら、それほど評判にならなかったはずだ。

「3・11以降」という社会的背景が大きく寄与している。

親友とはいえ他人の子どもを預かり育てるマルモは、いわば究極のボランティア男だ。

そして大事なことはマルモもまた子どもたちに支えられ、助けられているという事実だろう。

誰かをケア(手当て)することで、自身もケアされていく。

しかもマルモはそれを義務や責任ではなく、当たり前のこととして明るく楽しそうに実践しているのだ。

早くも続編が見たくなってきた。 

(東京新聞 2011.06.15)


テレビ東京の「連続不祥事」をめぐって

2011年06月15日 | テレビ・ラジオ・メディア

テレビ東京の連続不祥事が報じられている。

まず、産経新聞。

テレ東「ありえへん∞世界」沖縄離島に誤解生む放送 BPO「悪質」と審議へ

放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会(川端和治委員長)は10日、沖縄県南大東島の農家を取り上げたテレビ東京の情報バラエティー番組「ありえへん∞世界」について、「放送倫理の観点から非常に質が悪い」として、審議することを決めた。

番組は1月25日に放送。南大東島には年収1千万円以上のサトウキビ農家が150~200軒あり、沖縄本島に豪華な別荘を所有していると紹介。イメージ映像として、米国の高級住宅地ビバリーヒルズの建物を映した。

川端委員長は「農家が補助金でぜいたくな暮らしをしているかのように、面白おかしくまとめており悪質」と指摘した。
(産経新聞 2006.06.10)



そして、12日には「月刊MelodiX!」の収録中に事故が発生。

番組内のゲームコーナーで、アイドルユニット「ぴゅあふる」のメンバーが、全治1ヶ月の重傷を負った。

床に立てたバットに、おでこをつけてぐるぐる回るゲームの後で、平衡感覚を失った女の子がスタジオ内の溝に落ちたようだ。

この事故も、なんだかなあ。

14日の「日刊ゲンダイ」は、
テレビ東京「ありえへん」不祥事2連発!
のタイトルで記事を掲載。

2つの不祥事の経緯を説明している。

で、その記事を読んでいたら、私の名前が出てきたので驚いた(笑)。

ちなみに、13日に本紙のコラムで上智大の碓井広義教授がテレ東の「シロウト名鑑」という番組を取り上げて、「低予算・隙間狙い・アイデア勝負」と評価した。

テレ東は安価ながら視聴に耐える良質の番組も制作している。

しかし、今回の2番組は“安かろう、悪かろう”で墓穴を掘った!?

もっと知恵を絞れ。
(日刊ゲンダイ 2011.06.14)


・・・・うーん、年収300万円ほどの農家を、番組を盛り上げるために1000万円だと言ってみたり、ゲームの中身もトホホな上に、結果の予測というか、出演者へのケアが出来ていなかったり。

“安かろう、悪かろう”と言われても仕方ないような話で、残念だ。


テレビ東京「シロウト名鑑」の知恵としゃれっ気

2011年06月14日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

『日刊ゲンダイ』連載中の番組時評「テレビとはナンだ!」。

今週は、テレビ東京の深夜バラエティ「シロウト名鑑」を取り上げました。


知恵もしゃれっ気もある
テレ東の低予算番組「シロウト名鑑」


昨今、番組制作費は減る一方だ。

元々他局より少ない予算のテレビ東京も例外ではない。

ならば低予算を嘆くより、いっそ逆手に取ろうという作り手たちの遊び心が、深夜バラエティ「シロウト名鑑」(金曜放送)を生みだした。

タレントを出せば金がかかる。だから素人がメイン。

だが、素人を面白く見せるには知恵と技が必要。

そこで「池袋ウエストゲートパーク」「木更津キャッツアイ」の人気脚本家・宮藤官九郎と、放送作家の細川徹を進行役とした。

番組構成もできる出演者、実にリーズナブルではないか。

またテーマ設定のゆるさがこの番組の身上だ。

見た目と歌声のギャップを味わう「巣鴨でスーザン・ボイルを探せ!」。

人気子役・芦田愛菜ちゃんにあやかった「スーパー子役を探せ!」。

いきなり「ルパン3世を探せ!」なんてのもあった。

そして先週が「赤羽でAKB48を探せ!」だ。

町をぶらぶら歩いて出会った、キャバクラのお姉さんや居酒屋の呼び込みの女の子を勝手にスカウト。

“本家”の前田敦子と大島優子の壮絶な戦いをよそに、「じゃあ、この娘をセンターで」などと適当に配置していくのが笑える。

しかもこれを「AKB48総選挙」の開票翌日に放送するしゃれっ気と批評性も買いだ。

「低予算・隙間狙い・アイデア勝負」というテレビ東京のお家芸をしっかり体現した1本である。

(日刊ゲンダイ 2011.06.13)


・・・・以前、宮藤官九郎さんと仕事をしたことがある。

「噂の探偵QAZ(カズ)」という深夜ドラマをプロデュースした際、若き日の官九郎さんに、役者として出てもらったのだ。

この時、主人公の探偵が今は亡き古尾谷雅人さんで、官九郎さんは、悪役である“謎の総帥X(エックス)”の手下。

そのXを演じたのが、なんとプロデューサーである私なのでした(笑)。

マスコミ学会春季研究発表会

2011年06月13日 | テレビ・ラジオ・メディア

地下鉄で早稲田へ。

大隈公にお会いするのも、秋に呼ばれる就職セミナー以来。

お久しぶりです(笑)。



14号館402教室で、マスコミ学会春季研究発表会のワークショップだ。

タイトルは「地域メディアの役割~地域テレビ局の報道活動の現状調査から」。



司会者:碓井 広義(上智大学)
問題提起者:田原 茂行(常磐大学)
討論者:村上 雅通(長崎県立大学)

全国各地の放送局で展開されている、個性あふれる報道活動について話し合った。

今回のメインイベントは、田原さんによる実例を挙げての現状調査の報告だ。

説明の中で番組のDVDも流された。

熊本放送「熱血ジャゴ一座只今参上!」
南日本放送「やねだん~人口300人、ボーナスが出る集落~」
日本海テレビ「鳥取方式による校庭芝生化普及キャンペーン報道」
富山観光アニメプロジェクト「泣かせる空に会いたい」

ポイントとなったのは、見る人が「希望」や「可能性」を感じるジャーナリズム。提案型ジャーナリズム。そして人と人をつなぐジャーナリズムだ。



村上さんからは、「ジャゴ一座」も「記者たちの水俣病」も、どちらもジャーナリズムであり、地方活性化のお手伝いである、といった話を聞かせていただいた。

また会場の参加者の方々からも、「公共社会への貢献」など、いくつものご意見があった。

皆さん、3時間という長帳場、おつかれさまでした。

地域懇談会の開催

2011年06月12日 | 大学

いわゆる保護者懇談会にあたる「地域懇談会」が開催された。

これは全国各地で行われるので、四谷キャンパスは東京会場ということになる。




プログラムとしては・・・・

理事長や学長が挨拶をする「全体集会」。

学科ごとに分かれて説明を行う「学科別集会」。

希望する保護者との「個人面談」。

就職・留学・学生生活に関する「個別相談会」。

そして、教員や職員との交流の場である、立食パーティ形式の「懇親会」。



また同時開催として、学生が案内する「キャンパスツアー」や、学生サークル団体による演舞などの「イベント」もあった。

私たち教員にとって、全国各地から来てくださった保護者の皆さんと直接、コミュニケーションできる機会であり、有意義な1日でした。

ぜひ、また来年もお越しください。

今週の「読んで書いた本」 2011.06.11

2011年06月11日 | 書評した本たち

村上春樹さんが、9日にバルセロナで行ったスピーチが興味深い。


「核へのノー、貫くべきだった」村上春樹氏が受賞スピーチ

スペイン北東部のカタルーニャ自治州政府は9日、バルセロナの自治州政府庁舎で、今年のカタルーニャ国際賞を作家の村上春樹さんに授与した。

村上さんはスピーチで、東日本大震災と福島第1原発事故に触れ、原爆の惨禍を経験した日本人は「核に対する『ノー』を叫び続けるべきだった」と述べた。

「非現実的な夢想家として」と題したスピーチで、村上さんは福島第1原発事故を「(日本にとり)2度目の大きな核の被害」と表現。

戦後日本の核に対する拒否感をゆがめたのは「効率」を優先する考えだとし、政府と電力会社が「効率の良い発電システム」である原発を国策として推進した結果、原発に疑問を持つ人々は「非現実的な夢想家」として退けられたと批判した。

その上で「われわれは持てる叡智(えいち)を結集し、社会資本を注ぎ込み、原発に代わる有効なエネルギー開発を国家レベルで追求すべきだった」と言明した。

(共同 2011.6.10)


さて、「今週、読んで(書評を)書いた本」は、以下の通りです。

誉田哲也 
『感染遊戯』 光文社

山折哲雄 
『法然と親鸞』 中央公論新社

西尾典祐 
『城山三郎伝』 ミネルヴァ書房

鶴松房治 
『池波正太郎の愛した江戸をゆく』 朝日新聞出版

保阪正康 
『日本を変えた昭和史七大事件』 角川oneテーマ21



* 上記の本の書評は、発売中の『週刊新潮』最新号(6月16日号)に掲載されています。



『読売新聞』で、ドラマ「鈴木先生」についてコメント

2011年06月10日 | メディアでのコメント・論評

ドラマ「鈴木先生」(テレビ東京)についてのコメントが、『読売新聞』に掲載されました。


ドラマ「鈴木先生」視聴率低迷
高評価とギャップなぜ?


テレビ東京系ドラマ「鈴木先生」(月曜後10・00)が苦戦中だ。視聴率は超低空飛行を続け、2%を割り込むことも多い。

一方で、普通の中学校の問題をリアルに描く内容を称賛するファンや専門家の声も多く、これだけ評価と視聴率が食い違うケースも珍しい。その理由を探ってみた。(大木隆士)

ビデオリサーチによると、視聴率(関東地区)は初回の2・6%が最高。これまでの7回のうち1%台が3回、6日も2・1%と上昇の兆しがない。

昨年10月から始まった同局の新ドラマ枠は、今回で3作目。前2作の初回放送は「モリのアサガオ」が5・8%、「最上の命医」が6・5%と今回より高かった。

■内容に問題?
凝った構図、照明を抑えた暗い画面。映画のような肌触りの作品は、小学生との性交渉など際どい問題を描き、他の連続ドラマと一線を画す。

暴走するセクハラ教師も登場、鈴木先生も女子生徒によこしまな妄想を抱くなど過激な内容を、上智大の碓井広義教授(メディア論)は「『鈴木先生』はドラマ界の岡本太郎」と呼ぶ。

「既成概念を壊す新商品で、作り手の覚悟を感じる」という意味で、碓井氏は「取っつきやすいドラマが並ぶ中、見るのに勇気がいる作品があってもいいのでは」と絶賛。

視聴率の低迷を「従来の学園ドラマとはあまりに異質で、視聴者が引いてしまったかもしれない」と分析する。


■社会派は不利?
そもそもテレ東の現代ものの連続ドラマは、ファミリー向けの枠が2000年9月に終了した後、プライムタイム(午後7時~同11時)では10年もの空白があった。「テレ東で現代ドラマを見る」という習慣は薄い。

現代ドラマ復活にあたり、社会派エンターテインメントという切り口を前面に押し出した。「モリのアサガオ」は死刑囚舎房、「最上の命医」は小児外科の現状を描いた。

ドラマ制作を統括する佐々木彰・上席執行役員は「制作費の面でも他局に劣る。他局と同じだと埋没してしまう」と考え、制作現場も「『鈴木先生』は視聴者との約束事を取り払い、ぐさりと刺さる表現にした」(山鹿達也プロデューサー)という。

ギャラクシー賞テレビ部門選奨委員の岩根彰子さんは「鈴木先生」を評価する一人。しかし、社会派ドラマという枠の設定については「週明けから重い話は嫌という人も多いだろうし、セット面などで社会派ドラマは実力が出る」と指摘する。

その上で「深刻にやるだけが社会派ではない。例えば男の介護など、デリケートな素材をあえてコメディーで見せる。低視聴率を逆手に、思い切ったことをしてほしい」と提言した。

■光明はあるか?
読売新聞の「放送塔」欄に寄せられる今期の民放ドラマに関する投書数は、「鈴木先生」が、高視聴率を誇る「JIN―仁―」に次いで2位につけている。

インターネットの映像配信サービス「GyaO(ギャオ)!」の「鈴木先生」1~3話の無料配信の視聴数は30万回。有料配信では先月16日からの1週間、国内ドラマ部門の1位となるなど、視聴率には表れない人気があることもうかがえる。

テレ東では「鈴木先生」の後も社会派路線を継承し、身体的に性別があいまいな人を取り上げた「IS(アイエス)」を予定している。

「ドラマの枠を開拓するには時間がかかる。これまでは、定着するまでドラマ枠を維持できなかった。ぜひ、続けていきたい」と、佐々木氏は決意を語った。

( 読売新聞 2011.06.09)


・・・・記事の中で、岩根彰子さんもおっしゃっているが、当初、これを「社会派ドラマ」という言い方、位置付けでプロモーションしていたのが惜しまれる。

「学園ドラマの異色作」で十分だったように思われます。

さあ、あと数回を残すのみの「鈴木先生」。

どんなエンディング、決着を迎えるのか、楽しみだ。


<このブログ内での関連記事>
「金八先生」の退職と「鈴木先生」の登場
http://blog.goo.ne.jp/kapalua227/e/71a5f565d9b3a02855a895cc5bf1b574

目が離せないぞ、ドラマ「鈴木先生」
http://blog.goo.ne.jp/kapalua227/e/f55aad0f84038a647d371f6786e3c1bd


AKB48総選挙という“お祭り”が終わった

2011年06月10日 | テレビ・ラジオ・メディア
(「別冊カドカワ 総力特集秋元康」でのさっしー)

AKB48総選挙が終わった。

個人的には、前回2位の前田敦子の1位返り咲きと、さっしーこと指原莉乃のベストテン入りという、2つの予測が当たったので、まずは満足(笑)。

板野友美は、よく8位に留まったなあ、と思う。

ここしばらく、もっぱら“大人向けセクシー”にシフトしてきた彼女は、中高生男子のファンにしてみれば、「自分たちとは違うステージを狙っている」と映っていたはずで、それでも8位というのは支持層の努力の賜物だ。

また、9位のさっしーに関する心配は、これまで以上の露出によって堂々の人気者となり、ヘンに器用になり、「へたれキャラ」を卒業しちゃうことだろうか。

「自分たちが応援し続けなきゃ」という以前からのファンたちが離れないよう、気をつけていただきたい、ってのもヘンだけど(笑)。

とにかく、AKB48総選挙という“お祭り”は終わった。

ファンの間には、しばし祭りの後の静けさ、寂しさが漂うのかもしれません。

それにしても、前回、大島優子が3万1448票で1位だったことを思うと、今回1位の前田敦子が獲得した13万9892票という数字は、AKB48の巨大化を象徴しており、何だか相当すごいです。


<AKB48選抜総選挙2011 開票結果>
メディア選抜(1〜12位)

1位:前田敦子(19) 13万9892票
2位:大島優子(22) 12万2843票
3位:柏木由紀(19) 7万4252票
4位:篠田麻里子(25) 6万0539票
5位:渡辺麻友(17) 5万9118票
6位:小嶋陽菜(23) 5万2920票
7位:高橋みなみ(20) 5万2790票
8位:板野友美(19) 5万0403票 
9位:指原莉乃(18) 4万5277票
10位:松井玲奈(19) 3万6929票
11位:宮沢佐江(20) 3万3500票
12位:高城亜樹(19) 3万1009票

AKB48総選挙、本夕には結果発表

2011年06月09日 | テレビ・ラジオ・メディア

アイドル工学的にも、メディアビジネス研究としても、AKB48総選挙の過程を、興味深く見てきた。
 
その22ndシングル選抜総選挙の投票が、昨日(8日)締め切られた。

そして最終結果は、今日(9日)18時から、日本武道館で発表だ。

高校生の息子が、ずっと「さっしー」こと指原莉乃を応援しており、冠番組「さしこのくせに」を一緒に見たりしているうちに、こちらも肩入れ(?)するような感じになってきた。

予測としては、前田敦子の1位返り咲き。

そして、さっしーのベストテン乱入(笑)もありではないかと・・・・。

今日の夕方には、ネット上を開票情報が飛び交うはずだ。


ちなみに、昨年の選挙結果は以下の通りです。

<AKB48選抜総選挙2010 開票結果>

1位 31448票 大島優子(中間2位/速報2位/2009年2位)
2位 30851票 前田敦子(中間1位/速報1位/2009年1位)
3位 23139票 篠田麻里子(中間4位/速報5位/2009年3位)
4位 20513票 板野友美(中間3位/速報4位/2009年7位)
5位 20088票 渡辺麻友(中間5位/速報3位/2009年4位)
6位 17787票 高橋みなみ(中間6位/速報6位/2009年5位)
7位 16231票 小嶋陽菜(中間7位/速報10位/2009年6位)
8位 15466票 柏木由紀(中間8位/速報7位/2009年9位)
9位 12560票 宮澤佐江(中間9位/速報9位/2009年14位)
10位 12168票 松井珠理奈(中間15位タイ/速報18位/2009年19位)

11位 12082票 松井玲奈(中間10位/速報8位/2009年29位)
12位 11080票 河西智美(中間13位/速報13位/2009年10位)
13位 11062票 高城亜樹(中間11位/速報11位/2009年23位)
14位 9692票 峯岸みなみ(中間15位タイ/速報15位/2009年16位)
15位 9468票 小野恵令奈(中間12位/速報12位/2009年11位)
16位 8836票 北原里英(中間14位/速報14位/2009年13位)
17位 8049票 秋元才加(中間21位/速報21位タイ/2009年12位)
18位 6921票 佐藤亜美菜(中間19位/速報16位/2009年8位)
19位 6704票 指原莉乃(中間18位/速報17位/2009年27位)
20位 6567票 仲川遥香(中間20位/速報19位/2009年圏外)

21位 6371票 宮崎美穂(中間17位/速報20位/2009年18位)
22位 6145票 多田愛佳(中間22位/速報21位タイ/2009年20位)
23位 5355票 倉持明日香(中間23位/速報23位/2009年21位)
24位 4634票 大矢真那(中間27位/速報32位/2009年圏外)
25位 4137票 増田有華(中間24位/速報24位/2009年25位)
26位 4106票 平嶋夏海(中間25位/速報25位/2009年26位)
27位 3235票 石田晴香(中間31位/速報34位/2009年圏外)
27位 3076票 島崎遥香(中間35位/速報圏外/2009年圏外)
29位 2693票 仁藤萌乃(中間28位/速報28位/2009年圏外)
30位 2613票 小森美果(中間26位/速報26位/2009年圏外)

31位 2591票 佐藤すみれ(中間33位/速報30位/2009年圏外)
32位 2499票 梅田彩佳(中間29位/速報35位/2009年圏外)
33位 2460票 藤江れいな(中間32位/速報29位/2009年圏外)
34位 2171票 米沢瑠美(中間38位/速報40位/2009年22位)
35位 2030票 高柳明音(中間40位/速報38位/2009年圏外)
36位 1945票 山内鈴蘭(中間34位/速報37位/2009年圏外)
37位 1935票 片山陽加(中間36位/速報36位/2009年28位)
38位 1909票 矢神久美(中間30位/速報33位/2009年圏外)
39位 1854票 松原夏海(中間圏外/速報圏外/2009年30位)
40位 1603票 石黒貴己(中間37位/速報圏外/2009年圏外)



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今週末、マスコミ学会でワークショップ

2011年06月09日 | テレビ・ラジオ・メディア

今週末、
早稲田大学を会場として行われる、
「日本マス・コミュニケーション学会2011 年度春季研究発表会」。

http://wwwsoc.nii.ac.jp/mscom/event/annual_meeting/11spring/261-1.pdf


ここでワークショップを行います。

日時:6月12日(日) 
   14時30分~17時30分

場所:早稲田大学 早稲田キャンパス 
   14号館 402教室


ワークショップ2
地域社会の再生活動に寄与する
地域メディアの役割

~地域テレビ局の報道活動の現状調査から

司 会 者:碓 井 広 義(上智大学)
問題提起者:田 原 茂 行(常磐大学)
討 論 者:村 上 雅 通(長崎県立大学)



<概要>
全国的な地域経済の停滞、過疎化、高齢化の広がりと並行し、地域社会の閉塞状況、共同性の解体が進み、無縁社会と名づけられる状況も広まっています。

また、これと軌を一つにするように、地域社会のインフラの機能を果たすべき地域メディアの経営は困難な状況にあります。

とくにデジタル化投資の負担を背負った地域放送局の経営は悪化しており、マスメディア広告費回復の兆候は、地域放送局には及ばず、キー局による収入配分の減少の中で、社員の大幅削減の方向、自社制作番組の縮小の方針は固定化しています。

戦後の放送制度の核心である地域免許の意義が失われる可能性が強まっていますが、政府は、地域局の意義を口にしつつ、具体的な制度改革を構想できないでいるのです。

しかし他方、この10 数年、こうした社会的状況の流れに抗し、自力で地域社会の再生を目指す市民、地域組織、NPO、農協、自治体の創造的な活動が数多く生まれているのも事実です。

これらの活動の展開を支える上で、地方紙、地域放送局、ケーブルテレビの持続的な活動が直接的に重要な役割を果たしています。

このワークショップでは、各地の事例を挙げながら、地域テレビ局が実践している報道活動の現状を、参加者の皆さんと共に話し合っていきたいと思います。

第48回ギャラクシー賞「報道活動部門」の総括

2011年06月08日 | メディアでのコメント・論評

放送批評懇談会が発行する月刊誌『GALAC(ぎゃらく)』最新号の特集は、「決定!第48回ギャラクシー賞」。

ここに、選奨委員長を務める「報道活動部門」について、総括の文章を寄せています。


「報道活動」を評価する新たな視座を踏まえて


はじめに、東日本大震災で被災された皆さんに、こころからお見舞いを申し上げます。また、困難な状況の中で震災報道に携わる方々に敬意を表します。

今回、報道活動部門選奨委員会は多くの新たなメンバーを迎えた。
いわばリニューアル・オープンである。

そこで審査を始めるに際して、この部門における審査基準について全員で話し合った。その結果、次のような評価ポイントを確認した。

①テーマや視点の時代性・社会性
②取り組みや手法の柔軟性・工夫
③取材・調査の精度
④活動の継続性・日常性
⑤視聴者や聴取者、地域とのコミュニケーション
⑥活動が生み出した成果・影響
⑦放送ジャーナリズムとしての意義

以上の基準項目を踏まえつつ、総合的な評価を行う。また、活動主体の置かれた状況や環境にも目配りしつつ、全国でのさらなる活発な報道活動を喚起するような顕彰を目指す。
(報道活動部門「審査基準」より)

報道活動部門の狙いは、単一の番組では完結しない、収まりきらない取り組みを評価することにある。対象となるのは同じ番組内での連続報道、複数の番組にまたがる調査報道、系列の枠を超えた地域の連携報道、イベント等とも連動したキャンペーン報道などだ。今年度の応募総数は二十一本。本数こそ少ないが、実に多彩な活動を見せていただいた。

大賞の札幌テレビ「がん患者、お金との闘い」は、金子明美さんというがん患者の闘病を軸に展開される4年間のドキュメント。がんがこれだけ身近になりながら、その経済的負担の重さを知る機会は少ない。高額な新薬。適応されない保険。スタッフは金子さんへの密着取材を続け、医療制度の問題点を探り、三十回もの放送を行ってきた。この報道活動をきっかけに国や保険会社が動き始めたことも高く評価したい。

優秀賞の琉球朝日放送「オキナワ1945 島は戦場だった」は、その手法に注目が集まった。六十五年前の沖縄戦の一日一日を取り上げ、同じ日付での放送を一年間にわたって行ったのだ。今や高齢となった体験者の証言や当時の貴重な記録映像を駆使しながら、決して風化させてはならない、現在の自分たちにつながる問題として報道活動を続けた。

同じく優秀賞に輝いたのは宮崎放送「口蹄疫発生から終息宣言までの一連報道」。畜産王国である地元で起きた惨事を、日々のニュースや特番、また複数の番組も連動させて伝えている。なぜ口蹄疫は広がり、いかにして抑えたのか。粘り強い取材がそれらを浮き彫りにしている。

続く選奨は三本。一本目はNHK「北方領土プロジェクト」だ。かつて島で暮らした住民たちも高齢化している。その証言を集めると共に、実行支配と呼ばれる現地のロシア化の現状をレポート。さらに日ロ交渉に参加した当事者からも外交秘話を引き出している。北海道内と全国での放送を組み合わせた問題提起だ。

次の選奨は東海テレビ「堀川のキセキ~人・街・川」。名古屋市内を流れる“ふるさとの川”の浄化を訴えるキャンペーン報道である。実行可能な水質浄化をはばむ縦割り行政など、多くの問題点を指摘した。

テレビ金沢「壁画修復から見つめた幻の画家アーニョロ・ガッディにおける一連の放送活動」が三本目の選奨だ。地元の大学教授が参加したフィレンツエでの修復作業を伝え続けた。甦った美の魅力はもちろん、二つの街の交流も丁寧に追っている。

最後に、審査会では震災報道について長時間の討議が行われたことを付記したい。結果的には、原発を含め現在も事態が進行中であることを考慮し、応募作の枠を超えて特定の組織や個人を顕彰することは控えることになった。あらためて震災報道全体をとらえ直す機会をもちたい。

(GALAC 2011年7月号)


NHK『下流の宴』黒木瞳のオーバーな演技

2011年06月07日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

『日刊ゲンダイ』に連載中の番組時評「テレビとはナンだ!」。

今週の掲載分では、NHKのドラマ「下流の宴」について書きました。

以前から不思議だったのが、NHKの黒木瞳に対する手厚い配慮、
というか異常な“ありがたがり”具合だ。

もちろん有名女優であることは認めますが、果たして知名度や起用度にみあっった実力派かといえば、かなり疑問です。

今回も、そんな黒木瞳が大張りきり。

その張りきりぶりが、逆にこのドラマの足を引っ張りはしないか。

そんなふうに思っているのです。



黒木瞳はあらゆる演技がオーバー、
これ見よがしでシラケる


テーマもストーリーもいまいちだったNHK「マドンナ・ヴェルデ~娘のために産むこと」。

同じ「ドラマ10」の枠で「下流の宴」が始まった。

主人公(黒木瞳)は医者の娘で国立大を出て、高学歴の夫(渡辺いっけい)がいて、というプチセレブ系妻。

唯一の悩みは高校を中退してフリーター稼業という息子(窪田正孝)の存在だ。

この息子が同じくフリーターの女の子(美波)と結婚すると言い出したから大騒ぎになる。

注目は「息子のため」と言いながら、実は自分の価値観と理想の家庭像を壊されることが許せない母親だ。

このあたりがテンポよく戯画的に描かれているのは、脚本の中園ミホが林真理子の原作を上手にアレンジした成果。今後の展開も気になる。

ただ、困ったのが肝心の黒木である。

「私(黒木本人)は違うけど、愚かな母親ってこうよね」という意識が前面に出て、あらゆる演技がオーバー気味。

もっと言えば、わざとらしいのだ。

ヒステリックな場面を「ほら、これがヒステリックな女よ」。

コミカルな場面を「ね、私ってコミカルな芝居もいけるでしょ」とこれ見よがしに演じられると、見る側は一気にシラケてしまう。

今回の役どころであるアラフィフ世代も、原田美枝子や田中美佐子など女優の層は厚い。

NHKが過剰に黒木瞳をありがたがる理由は何だろう。

(日刊ゲンダイ 2011.06.06)