碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

池田信夫「原発についてのまとめ」を読む

2011年06月06日 | 日々雑感

日ごろ愛読している池田信夫さんのブログ。

「原発についてのまとめ」と題する長文が掲載された。

もちろん池田説に対する異論・反論もあることは知っている。

でも、私にとっては参考になる場合が多い。

この原発に関する「まとめ」もそうだ。

以下に転載し、事態の推移と共に、時々確認していこうと思います。


このごろ同じような原稿の注文とインタビューが続いて(ほとんどは断った)、いい加減うんざりしてきたので、ここで今まで私の述べてきたことを日付順にまとめて、この話題には一区切りつけたい。週刊誌のみなさんは、これを私のコメントとして引用していただいて結構です(週刊誌の取材には原則として応じない)。

1.炉心溶融は初期の段階で予想されていた:
3月12日の記事で、私は官邸の資料の「燃料溶融」という言葉に注意をうながし、炉心が溶けているとすれば事態は深刻だと指摘した。3月14日の記事では、枝野官房長官が「炉心溶融の可能性」に言及したことを紹介し、不用意にこの言葉を使うと混乱すると警告した。

2.首都圏への影響はない:
3月17日のニューズウィークで、福島事故はチェルノブイリのように「死の灰」が広範囲にまき散らされる大災害にはならないと予想した。したがって首都圏の人々が心配することはない。

3.原子炉の耐震性は証明された:
3月19日の「アゴラ」で書いたように、1000年に1度の大地震でも40年前のオンボロ原子炉が緊急停止し、配管も破断しなかった。この点で原子炉本体の耐震性は確かめられたので、今回の事故の原因となった予備電源などを改善すれば原発のリスクは極小化できよう。

4.東電は破綻処理すべきだ:
3月23日の記事では、東電を救済する特別立法に反対し、法的に破綻処理すべきだと論じた。ただ5月25日のJBpressでも書いたように、国の賠償責任もまぬがれないので、東電だけをスケープゴートにして政府が逃げることは許されない。

5.原発は火力より相対的には安全だ:
3月31日の記事では、石炭火力による死者が原発よりはるかに多いというWHOの統計を紹介し、死亡率を基準にすると原子力は火力より安全なエネルギーだと指摘した。

6.最大の問題は電力会社の地域独占:
4月6日のJBpressでは、原発が集中立地していることによるリスクを指摘し、その背景にある地域独占を是正するために発送電の分離が必要だと主張した。これは資源の有効利用やイノベーションを促進するためにも重要だ。

7.原子力の研究開発は必要:
4月21日の記事で紹介したビル・ゲイツの意見に私は賛成だ。原子力は相対的には安全で環境負荷も小さく、イノベーションの余地がもっとも大きい。当面は日本で原発を新設することは無理だろうが、運転は止めるべきではなく、研究開発は続けたほうがいい。

8.放射線の影響は誇張されている:
4月26日の記事でも書いたように、200mSv以下の微量な放射線が人体に与える影響は実証されていない。発癌性という基準では、喫煙のほうがはるかに危険だ。癌を減らすには、脱原発よりタバコを禁止するほうが効果的である。

9.「自然エネルギー」は原発の代わりにはならない:
4月28日のニューズウィークでも書いたように、再生可能エネルギーを推進することには賛成だが、それが原子力の代わりになるというのは幻想だ。それは向こう20年は補助金なしで自立できないエネルギーであり、電力コストを上げる要因になる。

10.原発に代わるエネルギーは天然ガス:
4月30日の記事で書いたように、原子力の欠点は安全性より経済性である。コストだけでいえば石炭が有利だが、大気汚染やCO2などを勘案すると天然ガスが総合的に有利だろう。埋蔵量もシェールガスは200年近くあり、問題ない。

11.放射性廃棄物の問題は解決できる:
5月3日の「アゴラ」に書いたように、放射性廃棄物の問題は、技術的には解決可能である。最大の障害は政治的(感情的)な反対だ。

12.炉心溶融は致命的な事故ではない:
5月17日の「アゴラ」に書いたように、福島第一の炉心は1日で溶融していたが、それによって圧力容器が破壊される最悪の事故は起こらなかった。だから事故の重大性を「炉心溶融」で語るのはミスリーディングで、圧力容器や格納容器の状態を基準にすべきだ。

こうみると、私の立場は事故が起こった直後から一貫していると思う。一貫していればいいというものでもないが、福島事故はチェルノブイリとは違うのだ。

もちろんまだ原子炉は安定していないので被害が広がるおそれが強いが、それは人身事故ではなく、BPのメキシコ湾事故(被害額3兆円以上)と同程度の史上最大級の環境汚染である。

このような事故を二度と起こさないように安全性を高めるべきだが、海底油田をすべてやめろということにはならない。

だから本質的な問題は、原発の代替エネルギーがあるのかということだ。逆にいうと、原発より安いエネルギーがあるなら、安全だろうとなかろうと原発は必要ない。

コストでは(少なくとも短期的には)天然ガスが有利なので、残る問題はCO2だけだ。この点では原子力が優等生だが、「温室効果ガスを25%削減する」という国際公約さえ放棄すれば、新設する発電所は天然ガスに転換することが賢明だと思う。

(池田信夫blog 2011.06.05)





映画ならではのサイコスリラー『ブラック・スワン』

2011年06月06日 | 映画・ビデオ・映像

『ブラック・スワン』を、ようやく観ることできた。

ダーレン・アロノフスキー監督作品。

「バレエ『白鳥の湖』の主演に抜擢され、潔白なホワイト・スワンと官能的なブラック・スワンの二つを演じることとなったバレリーナが、プレッシャーなどにより徐々に精神を壊してゆくサイコスリラー」という内容だ。

で、いきなり言っちゃえば、やはり傑作です(笑)。

特にヒロイン、ニナ役のナタリー・ポートマンの演技は、アカデミー賞主演女優賞も納得。

どこまでが現実で、どこからがニナの妄想なのか。

観客だけでなく、ニナ本人も混沌としてくるあたりの見せ方が怖い。

途中、何ヶ所か、文字通り背筋が寒くなるシーンもあった。

『レオン』の女の子が、『スター・ウオーズ』などを経て、ここまで到達したわけです。

ライバルのリリーを演じたミラ・キュニス、母親役のバーバラ・ハーシーも好演だった。

それにしても、あのカメラワークは絶品。

ステージ上だけでなく、鏡が置かれた練習場でも、カメラはナタリー・ポートマンを追って自在に動き回るのだ。

緻密な映像設計とそれを実現する高度な技術が、役者たちの名演を支えている。


今週の「読んで書いた本」 2011.06.05

2011年06月05日 | 書評した本たち

書評を書かせていただいて10年になります。

毎週、自分の専門分野(メディア関係)以外の本、小説やノンフィクションなど、いわゆる一般書を5~6冊読んで、書評を書きます。

それが10年続いているわけです。

それで、よく人から「速読術とか使ってるんですか?」と聞かれることがあります。

そんな時は、正直に「速読はしてません」と答えます。

速読術みたいなハウツー本は読んだこともないし、全く知りません。

速さを意識、というより何かを意識したりせず、むしろ集中して読むほうが、結果的には早く読めたりします。

ただ、複数の本を同時並行で読むことはします。

自分の机で読む本。

電車の中で読む本。

トイレの中で読む本(笑)。

そうやって1週間たつと5~6冊を読んでいるのです。

あとは原稿にする作業が待っています。

書評は、同じ版元が並んだりしないよう、編集段階で調整されますから、毎週、掲載される冊数は異なります。


「今週、読んで(書評を)書いた本」、正確には「今週、掲載された書評」は、以下の通りです。

田辺聖子 
『われにやさしき人多かりき~わたしの文学人生』 集英社

川村 湊 
『福島原発人災記~安全神話を騙った人々』 現代書館

垣谷美雨 
『夫の彼女』 双葉社

長島明夫ほか編 
『映画空間400選』 INAX出版



* 上記の本の書評は、発売中の『週刊新潮』最新号(6月9日号)に
  掲載されています。



ギャラクシー賞贈賞式の様子、沖縄で放送

2011年06月04日 | テレビ・ラジオ・メディア

ギャラクシー賞「報道活動部門」で、優秀賞を受賞した「オキナワ1945島は戦場だった」。

制作した琉球朝日放送のニュースで、贈賞式の様子が放送されました。

以下のサイトで、私の「講評」部分も含め、ニュースの動画を見ることができます。


琉球朝日放送 報道部:
http://www.qab.co.jp/news/2011060328379.html


第48回ギャラクシー賞贈賞式の報告④ テレビ部門

2011年06月03日 | テレビ・ラジオ・メディア
(撮影:放送批評懇談会)


テレビ部門の大賞は、秋田放送「NNNドキュメント’11 夢は刈られて 大潟村・モデル農村の40年」。

優秀賞には、NHK「ダーウィンが来た!生きもの新伝説 アリューシャン クジラと海鳥 世界一の大集結」。

日本テレビ「Q10」。

NHK・ETV特集「枯葉剤の傷痕を見つめて~アメリカ・ベトナム次世代からの問いかけ」。

「マイベストTV賞グランプリ」が、フジテレビ「フリーター、家を買う。」

「特別賞」に、テレビ朝日「相棒」。

「個人賞」は、福山雅治さん。

会場に現れた福山さん、目の前で見ると、やはりオーラがありました(笑)。

受賞の言葉では、「龍馬伝」で父親役だった故・児玉清さんへの思いを語り、その後のマスコミ向け撮影タイムも、実に誠意あふれる対応でした。

第48回ギャラクシー賞贈賞式の報告③ CM部門

2011年06月03日 | テレビ・ラジオ・メディア

昨日行われた、第48回ギャラクシー賞贈賞式の報告の続きです。

「CM部門」は・・・

●優秀賞その1
祝!九州 九州新幹線全線開CM180秒
http://www.youtube.com/watch?v=UNbJzCFgjnU

笑顔のウエーブがつながっていく。やっぱ感動する。

●優秀賞その2
東京ガス CM 家族の絆・お弁当メール篇
http://www.youtube.com/watch?v=Xgp3aPR-llM&NR=1

会場で流されたこのCMを見ていたら、不覚にも泣きそうになった(笑)。

●大賞
白戸家「選挙」シリーズ
http://www.youtube.com/watch?v=lIDIIteuJhg

木村多江さんが、何げにいい芝居をしていて可笑しい。

それから、受賞とは別に、白戸家シリーズの中で好きな1本がコレ。
 ↓
1度しか放映されなかった白戸家CM
http://www.youtube.com/watch?v=ZHqsVXmYM5k&feature=fvwrel

このCMで使われている曲は、金子由香利さんのシャンソン「時は過ぎてゆく」。

♪ 眠ってる間に 夢見てる間に 時は流れ 過ぎてゆく・・・・時は 時は あまりに短い

いいんだよなあ、これが(笑)。

第48回ギャラクシー賞贈賞式の報告② ラジオ部門と「DJパーソナリティ賞」

2011年06月03日 | テレビ・ラジオ・メディア
(当日、会場で配布された資料)


ラジオ部門の大賞は、北海道放送のラジオドキュメンタリー「インターが聴こえない~白鳥事件60年目の真実」。

白鳥事件(1952年に札幌で起きた警部射殺事件)と聞いても、わからない世代が多くなった今だからこそ、という1本だ。

優秀賞が3本あって、奈良岡朋子、大竹しのぶの共演による、NHK・FMシアター「薔薇のある家」。

2本目は、漫画をラジオドラマ化した、ニッポン放送ホリデースペシャル「ラストイニング 全国高校野球 県予選決勝 聖母学苑対彩珠学院」。

そして、エフエム沖縄「ゴールデンアワー第一部 第二部」の3本だった。

それぞれ、「おめでとうございます」なのだが、ラジオ部門で、個人的にとても嬉しかったのは、「DJパーソナリティ賞」にピストン西沢さんが選ばれたこと。

J-WAVE「グルーブライン」の、ピストンさんと秀島文香さんの時代からのリスナーとしては、ピストンさんのギャラクシー賞受賞は何とも愉快・痛快な話だ。

この日の贈賞式が、「グルーブラインZ」の生放送と重なる時間だったため、ピストンさんは、なんとビデオメッセージでの登場となった。

それも、型どおりの内容ではない(笑)。

会場の大画面に、黄色の帽子?タオル?みたいなのを頭にかぶったピストンさんがバーンと現れた瞬間、会場は「ほほ~」という不思議なものを見るような反応(笑)。

しかもピストンさんときたら、「受賞の話を聞いたとき、ありがたいけど、いくらかかるの? と質問したんですよ」みたいな危ないギャグをかますし(笑)。

そしてメッセ―ジも、勝手に超訳すれば、受賞は嬉しい、でも賞をもらったからといって、大人しくなるようなピスちゃんじゃないよ(笑)という雰囲気いっぱいの楽しいものでした。

いやあ、ピストンさん、「DJパーソナリティ賞」の受賞、本当におめでとうございます!

ピストンさんにはギャラクシー賞。

秀島さんには待望の赤ちゃん。

我々往年の「グルーブライン」ファンには、大変喜ばしい出来事が続いています。


この日、私はこの贈賞式に出ていたので、「グルーブラインZ」は聴けなかったわけですが、どうやらピストンさんは生放送の中で、ギャラクシー賞のトロフィーをヤフオクに出すとか言ってたみたいです。

ピストンさんらしいよねえ(笑)。

第48回ギャラクシー賞贈賞式の報告① 報道活動部門

2011年06月03日 | テレビ・ラジオ・メディア

昨日(2日)、第48回ギャラクシー賞の贈賞式が行われた。

会場は恒例の恵比寿・ウエスティンホテル、ギャラクシールームだ。

CM部門、ラジオ部門に続いて、選奨委員長を務めている報道活動部門の贈賞となる。

入賞作6本の制作者の方々と共にステージに立った。

まず司会の青山高治アナから優秀賞2本の発表。

1本は、宮崎放送の口蹄疫発生から終息宣言までの一連報道。

そして2本目が、琉球朝日放送のステーションQ年間企画「オキナワ1945 島は戦場だった」だ。

続いて大賞だが、こちらは選奨委員長が講評の中で発表することになっている。

だいたい次のような話をさせていただいた。


報道活動部門では今回も、全国各地で行われている番組という枠にとどまらない、様々な報道活動を見させていただきました。

入賞作のテーマも多岐にわたっています。

がん治療と家庭経済の問題、
壁画修復と国際交流、
地元河川の浄化とタテ割行政、
北方領土問題、
口蹄疫報道、
65年前と現在をつなぐ戦争の記憶と記録。

いずれも、限られた時間、限られた人数、そして限られた予算の中で、しかし、「今、伝えるべきこと」を、一種の使命感をもって発信し続けてきた、優れた報道活動です。

選考は、選んでいる自分たち自身の姿勢も問われる、楽しくて辛い作業でしたが、今回の大賞は、見事に選奨委員全員一致で決まりました。

受賞作は、私たちの日常の中から、市民・視聴者にとって切実なテーマを掘り起こしました。

確かな視点で、長い期間、粘り強い取材を重ね、日々のニュース枠や特番などによる、複合的で幅広い報道を続けました。

そして最終的には、行政や企業の変革をも促すという成果も生みだしました。

まさに報道活動のあるべき一つの形を示したものとして、高く評価し、大賞を贈らせていただきます。

第48回ギャラクシー賞「報道活動部門」大賞は、

札幌テレビ
「がん患者、お金との闘い」2007年~2011年 一連の報道


おめでとうございます!



・・・・というわけで、札幌テレビ報道部の佐々木律さんに、大賞のトロフィーを手渡したのでした。


100万アクセスに、感謝です

2011年06月03日 | テレビ・ラジオ・メディア

このブログのトータルアクセス数が、なんと100万件を突破した。

正確には、6月2日段階で1001102PV。

いや、びっくりです。

開設から1139日、約3年2ヶ月。

ほぼ毎日、少なくとも誰かが読んでくれていることを励みに、記録を兼ねて書き続けてきましたが、累計100万に達するなんて、スタート時点では想像もしなかった。

ただただ、感謝です。

これからも、これまでと変わらず(笑)、テレビを軸としたメディアのこと、本のこと、映画のこと、大学のこと、その他あれこれを書かせていただきますので、引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。

「金八先生」の退職と「鈴木先生」の登場

2011年06月02日 | 「東京新聞」に連載したコラム

『東京新聞』に連載中のコラム「言いたい放談」。

今回は、中学校を舞台にした2つのドラマ について書きました。

  
「金八先生」と「鈴木先生」


TBSの自己検証番組「TBSレビュー」に出演した。

三十二年も続いて、先ごろ幕を閉じた「3年B組金八先生」の話をさせていただいた。

「金八先生」の特色の一つは、それまで学園ドラマが扱わなかったリアルな教育問題や社会問題を果敢に取り込んだことだ。

「15歳の母」「腐ったミカンの方程式」をはめ、性同一性障害やドラッグなどのエピソードを記憶している人は少なくない。

次に主人公のキャラクター。

ヒーロー的な二枚目ではなく、スポーツもしない。夕陽に向かって走る代わりに人の道を熱く説いたりする。

しかも役柄と演じる側(武田鉄矢)が一体化していた。

かつて教育大学で学んだ武田はドラマの中で教壇に立つ夢を実現させ、視聴者は半実在の教師として金八を支持し、同時代を共に生きてきたのだ。

そしてこの春、「金八」と入れ替わりに登場したのがテレビ東京「鈴木先生」である。

教育熱心ではあるが、中学校の教室は自らの教育理論の実験場。また美しい女子生徒とのあらぬ関係を妄想したりする困った男だ。

しかも鈴木の思考過程は画面にテロップ表示され、映画調の映像と相まって強烈な印象を与える。

ごく普通と思われる生徒の中に潜む悪意や教師の心の奥も描こうとする意欲作。

拒否反応を示す視聴者も多いだろうが、終了までに一見の価値はある。

(東京新聞 2011.06.01)


・・・・「TBSレビュー」のオンエア同録を、授業で、学生たちと一緒にプレビューした。

学生たちにとって、知っている人(というか目の前にいる人)がテレビ画面に出てくるというシチュエーションは珍しい。

しかも、その画面の中の自分(つまり私)にツッコミを入れる出演者自身(これも私ですが)をライブで見るのも、滅多にない状況だったはず。

その上で、番組に対する反応がなかなか面白かったです(笑)。

『アジャストメント』は、ちょっと肩すかし?

2011年06月01日 | 映画・ビデオ・映像

映画『アジャストメント』を観てきた。

理由その1、マット・デイモンの主演だから。

なんだかんだ言っても、彼が出ているものは、ほとんど観てきた。

理由その2、原作がフィリップ・K・ディックだから。

古くは『ブレードランナー』、そして『マイノリティ・リポート』などが映画化されている。

『アジャストメント』の原題は、「アジャストメント・ビューロー(調整局)」。

映画を観れば、「なるほど」と納得だ。

誰かが、私たちの“運命”を調整しているとしたら・・・・というお話である。

マット・デイモンが演じているのは、スラム出身の政治家、デヴィッド・ノリス。

現在は下院議員で、次に目指すは上院だ。

偶然出会ったバレリーナのエリースを好きになる。

エリース役は『プラダを着た悪魔』や『ガリバー旅行記』のエミリー・ブラント。

この二人の恋を、何者かが邪魔するんですね。「運命に反する」と言って。

ま、後はスクリーンでお確かめ下さい(笑)。

全体としては、「うーん、そういうお話なわけ?」というか、「これでいいの?」というか。

もちろん、それなりの“陰謀”なんかもあるんだけど、結局、物々しい「運命調整局」が総力を結集して、この1組の男女に関わっているだけなのが、何だかもったいないような・・・。

もっと壮大な物語をイメージしていた分、ちょっと肩すかし。

はじめから、異色の“ラブ・サスペンス”だと思って観れば、十分楽しめる1本かもしれません。