闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.520
工場ではたらく美しいけれども人と相いれないどこか頑迷な娘に秘められた恐るべき秘密と個人的体験が、たまたま出会った男性との交情のなかでゆるやかに解き放たれてゆく愛と人間性回復の物語である。
その運命の場所をなんと北海油田の掘削所に設定したことがこの映画の成功の最大の要因で、火事で全身にやけどを負った男と悲劇の女とのふれあいを観客は息を呑んで見詰めることになる。
この映画の登場人物が、「ヒトラーがトルコによるアルメニア人大虐殺をひきあいに出し、それらの蛮行がもはや歴史の片隅で忘れ去られていると断じてから、ユダヤ人の虐殺を開始した」と語る言葉には重みがある。
私たちは10年も経たないうちに戦争や津波や原爆や原発の惨劇を忘れ去ってしまのである。
