あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

鎌倉国宝館で「ひな人形展」をみて

2024-02-29 09:31:53 | Weblog

 

蝶人物見遊山記第379回&鎌倉ちょっと不思議な物語第459回

 

 毎年この季節、すなわち梅は咲いたが桜はまだあ、という頃合いになると、国宝館で開催される超マンネリのお雛様展。

3月3日の桃の節句にテレビなどで紹介される新出来の変わり雛とは違って、ここに並んでいるのは江戸時代の古式豊かなコレクション。その大半が豪農や豪商が愛玩してきた一品で、私の大好きな大ぶりの享保雛を眺めていると時の経つのを忘れます。

でもこんなんのに真夜中に出会ったら、相当怖い思いをするのではないかしら。
なお当展は、来る4月14日まで華やかに開催されております。

     指導力なき宰相がかって出る前代未聞の猿芝居を見よ 蝶人

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西暦2024年如月蝶人映画劇場 その6

2024-02-28 18:18:10 | Weblog

西暦2024年如月蝶人映画劇場 その6

 

闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.3544~48

 

1)マーク・フォスター監督の「オットーという男」

トム・ハンクスが何回自殺しようと思っても、その都度邪魔が入ってできないという2022年の喜劇映画。

 

2)マルセル・カルネ監督の「ジュリエット」

ジェラール・フィリップ青年が、恋人シュザンヌ・クルーティエを青ひげ公の屋敷で追い求める1951年の幻想的恋愛映画。

 

3)マリエル・ヘラー監督の「幸せへのまわり道」

トム・ハンクス主演の「いつものように感動的な」、2019年のハリウッド映画ずら。

 

4)ニコライ・アーセル監督の「ダークタワー」

スティーヴン・キングの原作を、2017年に映像化した幻想物語。

 

5)アンドレア・バーロフ監督の「ザ・キッチン」

夫をFBIに逮捕された妻たちが、マフィアになって!?NYで派手に戦う2019年の犯罪映画ずら。

 

    円安でインバウンドとやらが押し掛ける 私は君らを歓迎できない 蝶人

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「祖父佐々木小太郎半生記」~佐々木小太郎古稀記念口述・村島渚編記「身の上ばなし」よりその5

2024-02-27 14:56:42 | Weblog

遥かな昔、遠い所で 第121回


第5話 父帰る その3

 

父は隠岐にいる間のことをあまり語らなかったが、やはり腕に覚えのある桐買いをやり、これを加工して下駄の素材を造っていたものらしい。ところが運悪く火事に遭って焼け出され、おまけに連れていた芸者に逃げられ、寄る辺はなし、せんすべ尽きてようやく松江に渡り、そこで歯科医をしていた君美村出身の四方文吉氏に泣きついて旅費を借り、綾部まで帰ってきたということで、しばらくは乞食同様の見過ぎをして放浪していたものとみえて、からだ一貫のほかは一物も持たず、着のみ着のままの着物は垢だらけシラミだらけで、これを退治るのに妻は困ったということである。

 

妻はどこまでも父に親切だった。一人では寂しかろうと福知山の実父に相談して、身内から後家さんを連れてきて一緒にし、離れの一室を与えて寝起きさせたが、二年ほどすると女が病死してしまった。

 

すると今度は町内のさる後家さんに話して、西本町裏の小さい家に住んでもらい、そこへ父を同居させ、生活費全部を支払って世帯を持たせた。その間は父も気安く私の店に出入りして、夷市などで忙しい時には、随分よく手伝いもしてくれた。

 

ところが父と同居していた未亡人が、息子の朝鮮移住について行ってしまった。その時父はすでに七十を過ぎていたので、家に引き取った。父は孫娘の守りなどをして好いおじいさんになりきり、昭和四年四月、七十五歳で死んだ。

 

最後の二年ほどは盲目になったが、楽しみのない父を慰めるために、私は早くラジオを買った。綾部にも、福知山にもまだラジオ屋がなく、大阪から五つ晩泊りで技術者が来てとりつけたが、町では郡是、三ツ丸百貨店の次だった。

 

なお父は私の信仰に倣ってキリスト教に入り、死の前年に丹陽教会の岡崎牧師から洗礼を受けた。

 

今から思えば、それはどうすることもできない宿命的のものではあったが、私はあまりに父を憎み、父に冷たかった。おちぶれ果てて隠岐から帰ってきた時、もし妻がいなかったら、私は父を家に入れなかったかもしれない。

 

「おらが女房をほめるじゃないが」私は死んだ先妻に感謝せねばらなむことが数々ある。なかでも私が冷酷であった父に対して、私の分まで孝養を盡してくれて私に不孝の謗りを免れさせ、不孝の悔いを残さずにすませて呉れたことは、妻に対する最大の感謝である。

 

「飢餓海峡、面白いです」てふメールあり「飢餓陣営」てふ雑誌を読んだ友 蝶人

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井原西鶴著・田中貴子訳「好色五人女」を読んで

2024-02-26 11:41:33 | Weblog

 

照る日曇る日 第2022回

 

お夏清十郎、おせん長左衛門、おさん茂右衛門、お七吉三郎、おまん源五衛門の5つの物語に登場する5人の女の悲喜交々の噺なり。

 

落語の喋りを意識した訳者の現代日本語が、キビキビしていて面白い。

 

向田邦子の小説「隣の女」に出てくる「好色五人女」からはじまる解説も抜群に面白く、「何かが降ってこないと書けない」憑依型中世文学研究者が、なぜ畑違いの翻訳に10年もかかったかが縷々語られていて共感を呼ぶ。

 

知的障害の知的が気になるもしかして知的な障害者なのかと 蝶人

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西暦2024年如月蝶人映画劇場 その5

2024-02-25 10:31:37 | Weblog

 

闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.3539~43

 

1)イヴ・アレグレ監督の「狂熱の孤独」

コレラが猖獗を極めるメキシコの僻地で酒浸りの元医師ジェラール・フィリップと夫に死なれた孤独なミシェル・モルガンが愛を見出す1953年の異色作。秀作ではあるが、このメキシコロケが稀代の色男の寿命を縮めた。

 

2)ルーベン・マムリーアン監督の「喝采」

1928年のショービジネスに生きる親子の喜怒哀楽物語。トーキー映画初の移動撮影に成功。

 

3)カール・ドライヤー監督の「「裁きは終わりぬ」

恋人の依頼に応じて嘱託殺人の罪を犯した女性を裁く7人の裁判員を描く、1949年の法廷劇。

 

4)ジョン・ファーロウ監督の「夜は千の眼を持つ」

1941年のミステリー映画。謎の奇術師エドワード・ロビンソンの予言が当たりに当たる。

 

5)リュ・スンワン監督の「モガディシュ」

ソマリアの首都から余儀なく共に脱出する南北朝鮮大使館の人々。ナイロビ空港での別れが感動を呼ぶ2021年の韓国映画なり。この映画に限らず総じて韓国映画は面白く、本邦のそれはつまらない。

 

   ガザの人ラファの人には何もせず裏金作りに励む政治家 蝶人

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「祖父佐々木小太郎半生記」~佐々木小太郎古稀記念口述・村島渚編記「身の上ばなし」よりその5

2024-02-24 09:53:45 | Weblog

 

遥かな昔、遠い所で 第120回


第5話 父帰る その2

 

大正五年、師走も近い冬の一夜、綾部の町には人声も絶え、寒い木枯らしが町を吹いてガタガタと障子に音雄を立てていた。

 

真夜中近い頃、入り口の戸をホトホトとたたく者がいる。静かに、あたりを憚るように。

「どなた?」と訊ねても返事がない。うかり開けられぬと思ったが、泥棒とも思われないので、妻菊枝と二人で立っていって開けてみると、父だった。

 

父帰る! この寒夜に上に羽織るものもなく、汚れた筒袖姿の、四年見ぬ間に六十の坂を過ぎて、追いやつれてみすぼらしい父が、ションボリと戸の外に立っていた。

おずおず敷居をまたいで中へ入るなり、土間に身を投げくどくどと前非を悔いて詫びいる父に対して私の眼に涙は浮かばず、私の口はやさしいいたわりの言葉を発することができなかった。

 

この冷たい私とは反対に、私の妻は父に対してやさしかった。食事を供し、着替えを与え、暖かい寝床に寝させていたわった。その後もけっして悪い顔を見せず、明け暮れの世話をよくし、私に内緒で小遣い銭なども与え、キチンとした身なりをさせて大切にした。

 

しかしながら妻のこの仕打ちが私には苦々しかった。「そんなにまでせんでもよい」と口に出して叱ったりもしたが、ひたすらに父を憐れむ妻の純情にほだされて、私の頑な心も少しづつほぐれていった。

 

プーチンに夫を殺されし妻ユリア「激しく闘う」と宣言したり 蝶人

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吉本隆明著「吉本隆明全集33」を読んで

2024-02-23 11:10:00 | Weblog

 

照る日曇る日 第2021回

 

もう半世紀以上昔のある期間、この人が出していた「試行」という雑誌を購読していたが、その内容の大胆不敵な独自性はともかく、同時代の論客に対する敬意と謙虚さを欠いた唯我独尊で獰猛な物言いに閉口して、すたこらさっさと遠ざかったことがある。

 

全共闘世代の多くの人が、彼を「本邦最大の独創的な思想家!」なぞと絶賛し、宣揚する気持ちはよく分かるが、いま冷静に彼の主著を読み返せば、ホンマカイナ、ソオカイナ、と眉に唾したくなるような命題や断定におめにかかることがあるのである。

 

またカール・マルクスその人と無数のマルクス主義者が全く違うように、吉本隆明とあまたの吉本主義者とは何の関係もない、と心得ておくべきだろう。

 

さて1999年から2001年にかけて書かれた、「詩人・評論家・作家のための言語論」、「僕なら言うぞ」、「老いの幸福論」、「今に生きる親鸞」の4冊を合本したのが本巻であるが、いずれも講演会での語り下ろしのように平易に書かれているので、わりあいスラスラ読める。

 

でも、晩年になってのその平易さが、若書きよりかえって曲者なのかもしれない。とも思うのである。

 

まず「「詩人・評論家・作家のための言語論」では「言語にとって美とは何か」に登場する「自己表出」と「指示表出」を、三木茂夫の方法論に絡ませているのが興味深い。

 

吉本は、人間の身体は植物部分と動物部分と人間固有の部分で成り立っているという。

そしてこの内臓と直結した植物部分は、人間の言葉の「自己表出」に係わり、動物部分は目や耳などの感覚器官を通じて、言葉の「指示表出」と繋がっているというのであるが、これはいささか我田引水、牽強付会に過ぎる概念れんらくといえよう。

 

「僕なら言うぞ」の中には吉本流の戦争論があって、シモーニュ・ヴェイユの「戦争は労働者、民衆同士の人殺しだから駄目だ」という絶対平和論を宣揚している。

 

また「歎異抄」の親鸞の唯円への教えを念頭に、「「何故殺人はいけないか?」と問われたら、彼にナイフを持たせて「やってみろ」といえばいい。絶対にやれないから」と答えているが、今では植松聖のように本当にやってしまう連中が出てきたので、吉本流ではダメだということが分かる。

 

国が戦争を始めたら「逃げろ、逃げろ」などと説くが、いったい狭いこの国のどこへ、どこまで逃げられると思っているのだろう?

 

「今に生きる親鸞」では、悪人正機、非僧非俗、一念義、生死不定、本願他力、自然法璽の偉大な宗教家を論じているが、私には「おのずから」を本質とする自然法璽の実体が、脳内視界茫洋として理解できない。

 

また、よし一念義、本願他力で浄土に行けたとしても、往相、つまり現世の諸問題(「戦争、貧困、慈善等の小慈悲」には一切係るな、浄土から此岸に「還相」した段階で大慈悲を以て万事解決するから、と説く親鸞=吉本選手には、てんで共感することができない。

 

かの梅原猛と同様、この人が何度の何度も繰り返し執拗に語っている個所ほど、その中身が怪しいといえそうである。

 

   じゃったじゃったじゃったわいらあそんな人世じゃった 蝶人

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「祖父佐々木小太郎半生記」~佐々木小太郎古稀記念口述・村島渚編記「身の上ばなし」よりその5

2024-02-22 11:09:03 | Weblog

 

遥かな昔、遠い所で 第119回


第5話 父帰る その1

 

前にも述べた通り、私の父は酒好き遊び好きで、飲む、打つ、買うの三拍子を、いずれ劣らず達者にやったものだ。それがいつまでたっても目が覚めず、四十を過ぎても五十を越してもまだやまず、かえってひどくなるというだらしなさ……もともと商売上手と人にもいわれ、世間の気受けもよく、金も相当儲けてきたものであるが、何分お人好しで、勝負事をしても人に取られるばかり、(おもに花をやった。本バクチはやらなかった)そのくせ大きなことが好きで、コメや相場に手を出して、身上にまたしては大穴をあける。金のかかる女出入りも絶え間がない、といった具合だから好い目の出よう道理はなく、母が忠実に守る履物屋の店もだんだんさびれ、借金は増す一方で家計は一日一日と窮地に追い込められていった。

 

その火の車の中で、明治四十三年四十九歳で母は病死した。

気の毒な母! まるで父に殺されたような母! 母をいとおしめばいとおしむほど、父への憎しみが深くなるのを、どうすることもできなかった。母のかたき、と私の父を見る眼は日増しに険しくなった。

 

母の死後ますますヤケになった父は、もはやわが家にも綾部の町にもいたたまれなくなって、大正元年、五十八の好い年をして若い芸者を連れて、世間には内緒で隠岐の島へ逃げて行ってしまった。

 

私はそれを舞鶴まで送って行きはしたものの、父に対する感情はとげとげしく、別れを惜しむというしおらしさなどはどこにもなく、父にもなかった。

 

父を送って帰った夜から、早くも債鬼は門院に迫って、私を借金地獄に追い込んで、貧乏あずりにあがき苦しむ日々が続いた。幸い私はこの四苦八苦の逆境を案外早くきりぬけて、借金払いも大体済ませ家業に忠実な妻と共に、履物店も旧状以上に回復し、生活もほぼ安定し、郡是株の強行買が当たって、だんだん好い目が見えてきた。

 

今までは思い出す隙もなく、もちろん父からは一度の便りとてなく、人のうわさにも聞かず、その消息は一切分からなかった。その父が、ひょっこり帰って来ようとは、夢にも思わぬことだった。

 

プーチンがキムに贈りし高級車んなもんおらっち欲しくはないぞ 蝶人

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こころを濡らす

2024-02-21 11:42:17 | Weblog

 

これでも詩かよ 第307回

 

久し振りに新橋のヘラルド・エースの試写会に行くと、いつものように最前列の左端に座ったヨドチョーさんが、声を枯らして

「映画を見なさい、良い映画を見ればこころが濡れますう」

と、皆に聞こえるように叫んでいた。

 

たぶん先日ここで上映された、『ローマの休日』事件のことをいうておるのだろう。

 

その日、おらっちときたら、あろうことかローマの宮殿で、王女のオードリー・ヘプバーンが「ローマ、断然ローマです」というた瞬間、大の男が大声を上げて、泣いてしまったのだ。ほかの映画批評家連中が、誰も泣かなかったのにい……

 

くそったれ、一人くらい、泣けよ、

こころあらば、こころ濡らして、泣けよ!

 

こころ優しいヨドチョーさんは、おらっちのそんなこっぱずかしい噂を、紳士的に打ち消してくれようとしているんだろう。有難いことだ。

 

まもなく、本日の試写が始まった。

 

上映されたのはタランティーノ監督の『レザボア・ドックス』だったが、あまりの暴力シーンの連続に、おらっちが狭心症の軽い発作を起こしてニトログリセリンの白い錠剤を1粒飲んでいると、真中へんに座っていた落語家のタテカワダンシが、

 

「糞面白くもない、こんなエイガ見てられっか!」

と叫んで、隣の太った手下に「おい、けえるぞ」と告げて、会場からあらあらしく出て行った。

 

ヨドチョーさんも、おらっちも、それ以外の人も、試写会場の扉がグラグラゆれて、外光がチラチラ漏れ入るのを、みんな見ていた。

まるで『レザボア・ドックス』が、スクリーンをはみ出したみたいだった。

 

おらっち、なんせ招待された身だ。

いくら下らない映画でも、ダンシ師匠ほど勇気がないので、出ていけない。

じっと目を瞑り、心臓を抑えに抑えて、地獄のような100分間に耐えていた。

 

ヨドチョーさん、

こころを濡らす映画があるように、

こころを壊す映画もあるのです。

 

なけなしの貯金がどんどん消えていく年金だけでは食べられなくて 蝶人

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西暦2024年如月蝶人映画劇場 その4

2024-02-20 10:09:12 | Weblog

闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.3534~38

 

1)ブライアン・スムルツ監督の「リミット・オブ・アサシン」

2017年、イーサン・ホーク主演の凄腕暗殺者の哀しい末路。

 

2)フランク・タトル監督の「ワイキキの結婚」

ビング・クロスビーが「ブルーハワイ」を歌って、シャーリー・ロスがフラダンスを踊って結婚する1936年の悠長な映画ずら。

 

3)オリヴァー・ヒルシュビーゲル監督の「ダイアナ」

ダイアナ公妃とパキスタン人外科医ハスナット・カーンとの秘められた恋を描く2013年の英国映画。

 

4)マイケル・カーチス監督の「夢で逢いましょう」

作詞家ガス・カーンの半生を辿る1950年の感動的な音楽映画。ドリス・デイが素敵だ。

 

5)ジュゼッペ・デ・サンティス監督の「オリーヴの下に平和はない」

いまのイスラエルのような専制君主が支配するイタリアの暗黒寒村で、孤立無援の羊飼いが最後に勝つというラフ・ヴォネーレ主演の1950年の御話ずら。

 

都市部でも雪だ雪だと騒いだが過ぎてしまえば暖冬だった 蝶人

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家族の肖像~親子の対話 その104

2024-02-19 10:50:39 | Weblog

2023年11月

 

コウ君が「1万円探してください」、だって。

なぬ? 生きがい探してください?

生きがいじゃなくって、1万円札よ。

 

お父さん、ぼく電気つけておきましたお。

ありがとう。

 

お父さん、あしたハシモトカンナのビデオとって。

今度はカンナちゃんですか。はい、分りました。

 

お父さん、ごはんにしよ。

はい、分りましたあ。

 

くらもちさん、ボランテイアだったでしょう?

そうだね。

 

お父さん、録画した?

しましたよ。

お父さん、録画した?

しましたよ。

 

私はイヤミです。ぼく、イヤミ好きですお。

お母さんも。

 

ぼく、ウエハラミツキとハシモトカンナ、好きですお。

そうなんだ。

 

旅立つって、なに?

あの世にいってしまうことよ。

 

旅立つって、引退でしょ?

そう、引退も旅立ちだね。

お父さん、ビデオ終りました。止めてください。

わかりましたあ。

 

取材ってなに?

いろいろ調べたり、聞いたりすることよ。

 

おじいちゃん、おばあちゃん、死んじゃった?

死んじゃったね。

 

中井貴一、最後おうちに帰ってくる?

病気になって死ぬためよ。

 

「ぜひ」「どうぞ」でしょう?

そうね。

 

祈るしか我には出来ぬイスラエル ラファの民草殺すなかれ 蝶人

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石川徹校注・新潮日本古典集成新装版「大鏡」を読んで

2024-02-18 08:41:30 | Weblog

 

照る日曇る日 第2020回

 

西暦1065年5月、京の紫野雲林院を舞台に、大宅世次190歳、夏山重木180歳の2人の超高齢老人がモノガタル、中臣鎌足以降歴代の藤原一族の栄枯盛衰のあれやこれや。

 

なかんずく花山院襲撃事件による「本命」伊周の配流と「対抗馬」道長の浮上など、次から次に思いがけないエピソードが登場して、最後まで読者を飽きさせない。

 

往時に栄耀栄華を極めた藤原道長の大人のお大尽ぶりと、それへの追従が鼻につくが、校注者の考察によれば、本作の作者は、道長の五男の藤原能信で、父の在世中は恵まれていたが、その死後に冷や飯を喰らった彼が、生前の往時を偲んで懐かしき父を顕彰したのが「大鏡」だという。

 

なるほど。

 

それにしても、公凶放送の大河ドラマが、歴史的にありえない誤謬を含めて、藤原一族の面々を、現代俳優のかんばせで刻印してしまうのは、どうにも許しがたい暴挙であるなあ。

 

       最果ての海辺に原発を造らせなかった珠洲の民草 蝶人

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「現代詩手帖2024年1月号」を読んで

2024-02-17 08:59:55 | Weblog

 

照る日曇る日 第2019回

 

図書館から借りてきた劈頭谷川俊太郎翁の「さて」から始まる「現代日本詩集2024」というコンピレーションをざっと読んでみました。

 

んが、去年の12号と同様、大家から中堅、若手に至るまで、心に残る1行もなく、はてさて、現代詩の現況とはこんなものか? まるでぬるま湯につかったまま悠長な浪曲子守唄を唄っているようなもんではないか、と慨嘆することひとしきりでした。

 

安倍蚤糞の「こんな人たちのこんな作品」なんかより、末尾の「カレンダー」にある備仲臣道の「叙事詩ガザを殺すな」や、宮尾節子&佐藤幹夫の対話編「明日戦争がはじまる」、「浜風文庫」で今井義行でも読んで頂いて、いまという時代のリアルまで、遠くその身を運んでいってほしいものです。

 

年取りて平地に乱を起す者源三位頼政ドナルド・トランプ 蝶人

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西暦2024年如月蝶人映画劇場 その3

2024-02-16 09:45:01 | Weblog

西暦2024年如月蝶人映画劇場 その3

 

闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.3529から33

 

1)舛田利雄監督の「完全なる遊戯」

1958年の完全なる駄作。

2)イ・ジュヒョン監督の「レッド・ファミリー」

韓国に派遣され疑似家庭を営む北朝鮮の工作員が苦悩の果てに見出したものは何か?

キム・ギドク原案、脚本による2013年の韓国映画の傑作。

 

3)ジョセフ・マンキーヴィチ監督の「裸足の伯爵夫人」

1954年の波乱万丈の練れたシナリオ。エヴァ・ガードナーは大根役者だとは思うが、その大根性をよく生かしてハンフリー・ボガードと互角に対抗している。

 

4)ニコアス・レフン監督の「ヴァルハラ・ライジング」

2012年の神話の中の黙示録的な物語。

 

5)セルジュ・ゲンスブール監督の「ジュ・テーム・モワ・ノンプリュ」

むしろ端正な映像づくり。若き日のジェーン・バーキンが美しい。

 

 海山が鳥や獣が人間が世界と共に壊れゆくなり 蝶人

 

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家族の肖像~親子の対話 その103

2024-02-15 15:17:24 | Weblog

 

2023年10月

 

「よごさないでね」、とホソカワさんいってくれたよ。

そうなんだ。

 

ならぬって、してはいけないのこと?

そうだよ。

 

フクモトリカ、「こんど充電してね」っていうでしょ?

なぬ?

 

お父さん、明日ビデオにとってね。

分りましたあ。

 

お父さん、大好きですお。

ほんとかな?

ほんとですお。

 

お母さん、早く良くなってね。

分りましたあ。

 

お父さん、お母さん、良くなった?

もうちょっとね。

もうちょっと?

そう、もうちょっとだよ。

 

お母さん、薬のんだ?

のみましたよ。

 

マコトさん、死んじゃったよ。

誰が?

タケナカさんが。

ああ、昔のドラマね。

 

お父さん、御飯ですお。

分りましたあ。

 

お母さん、今日、美容院いったの?

行きましたよ。

 

もりだくさんてなに?

いっぱいいっぱい、ってことよ。

 

お父さん、販売課は第2作業室でしょ?

そうなんだ。

 

お父さん、お母さんは?

さて問題です。お母さんは、どこへ行ったでしょう?

おばあちゃんち。

ブブー。

岸本歯科。

ピンポン。

 

コウ君、こんどキシモト歯科いって、虫歯なおそうか?

い、いやですおおおおお!

なんで。抛っておくと大変なことになるんだよ。

い、い、いやですおおおおお!

 

楽しみは月に2回のエッセイだMon Oncleがfacebookに書く 蝶人

 

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