あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

西暦2015年霜月蝶人花鳥風月狂歌三昧

2015-11-30 16:50:57 | Weblog


ある晴れた日に 第348回


われもまた一匹の獣であるMGMのライオンとなりて吠えておれば

友ありて利他だ利他だと叫んでいたが今頃どこでどうしているか

北海道には棲息しないのになぜヤマトシジミ

家の中でくたばっておる文月尽

また朝日は昇る頭領を無くした息子たちの上に

昆虫は動物の仲間でねその中でいちばん気持ち悪いのが人間なんだよ

赫赫たる業績遺し我よりもいち早く泉下に沈みし人々

三十年飽きず眺めし山麓にウサギ跳ねると初めて知りぬ

「ああそうかそうするよ」といつも長男のわれに素直なりし

水無月や不穏のうちに日々過ぎる

こなた鶯かなたガビチョウ日中歌合戦 

小林散髪屋へ行って一晩寝て鏡を見たらエグザイルの後ろの方で踊っている奴の頭のように突っ立っていた

<不味くはないが美味でもない>と書き込みありし中華でランチする

自動車になぎ倒されしてふてふの瑠璃色の羽羽羽

賛成はしないが反対もしなかった人々が巻き込まれてゆく戦争

憲法を返せ北方領土を返せ拉致被害者を返せ国立競技場を返せいますぐに

この夕べ人々はみな惑星にしてゆるやかな円弧に従い歩みゆく

莫迦な親がガツンと一発喰らわせなったのでいつも偉そうにしている莫迦

お隣の躾の悪い飼犬の無駄吠えに耐える日曜の午後

カワセミを見るといいことがあるというけれどそうでない日もある

ゆくゆくは天皇になるてふ少年が両親と観たのは昆虫映画

どのような昆虫よりも人間が気持ち悪いといずれ知るだろ

勤務中写経をしていた上司ありき今頃どこでどうしているか

拡散も転送も希望せずぽつぽつと紡いでいる私だけの言葉

遺されしスノードームはいつも冬美は恐ろしきもののはじまり

死に近く食草ならざる草に産む認知症の蝶哀れなり

そいつらを見付け次第リモコンで切ってゆくぶち切ってゆく猪八戒

青空に白い雲が浮かんでいる絵に「呪い」てふタイトルをつける画家

あのねえ人世は生きてるだけで辛いのよ偶には楽しいのよ

バングラデシュの誰かが縫ったユニクロのカジュアルシャツ着てコンビニへ行く

ブタブタ人嫌いじゃないのは石ちゃんだけ

見境なく産卵するや紋黄蝶

グールドの唸りは深し五月闇

ドロンドローンアランドローン

人は死ぬ誤嚥で御縁で五円で御免


 マツコデラックス伊集院光安倍晋三左の者の共通点を挙げよブタブタ  蝶人
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十一月の歌

2015-11-29 10:32:22 | Weblog


ある晴れた日に 第347回

朝から晩まで風が吹き
ムクロジの葉っぱが落ちる
実も落ちる

太郎には太郎柿、次郎には次郎柿、
宮部みゆきには太郎次郎柿
ゲゲゲの鬼太郎には輝太郎たもれ

紫式部には西村早生柿、清少納言には高瀬柿
和泉式部には越前柿
熟熟熟柿は柿右衛門にたもれ

早秋柿、新秋柿、愛秋豊 
伊豆柿、陽豊柿、天王柿
ムクドリ、ヒヨドリ、木守柿

平核無柿、蓮台寺柿
鳥も喰えない祇園坊
老い先短い鴉には老鴉柿たもれ

見よ大木家の塀の上
棘で固めた柊の
白き小さな花馨る

源義経には甲州百目柿、武蔵坊弁慶には大富士柿
佐々木小次郎には夕紅柿、
宮本武蔵には葉隠柿たもれ

紀の川柿、刀根早生柿、西条柿
富士柿、鶴の子柿、四ツ溝柿
トンビは瞑想に耽ってる

芭蕉には富有柿、蕪村には愛宕柿
正岡子規には御所柿、
山頭火には市田柿

漱石には太秋柿、森鴎外には横野柿
三島由紀夫には花御所柿
ドナルド・キーンにはシャロンフルーツ

庄内、八珍、おけさ、まっくろ黒柿
とっておきの渋渋渋柿三百個
超腹黒い安倍蚤糞へたもれ

朝から晩まで風が吹き
ムクロジの葉っぱが落ちる
実も落ちる


  美味そうな柿がいっぱいなっている鳥が寄らぬは渋柿のあかし 蝶人
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西暦2015年霜月蝶人花鳥風月狂歌三昧在庫処分編その5

2015-11-28 14:17:47 | Weblog


ある晴れた日に 第346回


屁理屈で捻くり回した歌詠んでいったいなにが楽しいんじゃ

なにゆえに男性ダンサーのあそこはあんなに大きいいったい何が入ってるんだ

なにゆえに数字の1をiと書くイッヒMozart電話も一番

セッテンバー紅葉が燃える歩道橋の上で君を待ち伏せ

真夜中の携帯が待ち受けている冥界からの便り母上の声

われのことを豚児と書かれし日もありきもういちど豚児と呼んでくれぬか

友達の友達は友達なので羽仁未央ちゃんは霊界の友

展覧会に雑巾の絵を出す息子どなたか一枚買うてくだされ

アハハハハとキャスターが笑ってるあれはほんとに笑っているのか

なにゆえに耕君は九月のカレンダーに取り替えるまだ八月の二十五日なのに

おのずから好きな人好きなもの好きな国など少なくなる年ふるにつれ

人の齢春夏秋冬空の雲過ぎにぞ過ぎてまた冬となる

侵略の反省もお詫びもしたくないかわりにいつでも戦争できるようにする

友達の友達は友達なので安倍晋三は赤の他人

粛々と進めるのが得意大好きです人の意見は全然聞かずに

粛々という言葉を使います反対意見を無視するときは

ネット右翼になりすましヘイトスピーチしてたらいつの間にやらアベシンゾウ

キンポウゲコデマリミズキヒメウツギ草花の名前を覚えることだけが生きる喜び

チューリップナガミヒナゲシフジボタンナズナモクレンツルニチソウ

ライラックシャクナゲカタクリシャガシランキブシタンポポヒツジグサ

オオデマリコデマリウツギタイサンボクツツジハナモモモッコウバラ


東西の正横綱はマンガラジャラブ・アナンダ ムンフバト・ダバジャルガル 蝶人
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国立劇場で通し狂言「神霊矢口渡」をみて

2015-11-27 13:18:53 | Weblog


茫洋物見遊山記第193回


あまりに書斎に座ったきりでは心身が腐ってしまうと危惧して寒さと雨を冒して半蔵門まで辿りつき、平賀源内作の「神霊矢口渡」全4幕を見物してきました。

近年では大詰めの「頓兵衛住屋」がよく単独で上演されるそうですが、今回は序幕の「東海道焼餅坂の場」、2幕目の「由良兵衛之助邸の場」、3幕目の「生麦村道念庵室の場」と併せてほぼ100年振りに4幕通しで上演されました。

3幕目では、中村吉右衛門演ずる由良兵衛之助が、足利尊氏に降伏したとみせかけて、主君の新田御家復興をもくろみ、尊氏の部下の目の前で自分の子や忠臣を斬って捨てますが、こういう愁嘆場は歌舞伎ではよくある話なのでさしたる感銘を受けませんでした。

物語のクライマックスである4幕目の「頓兵衛住屋」では、かつて新田義貞の子、義興を謀殺した悪役の渡し守頓兵衛(中村歌六。吉右衛門を凌ぐ存在感を発揮)が、義興の弟義岑をも矢口の渡しで葬り去ろうとしますが、絶体絶命のピンチを救いに登場したのはなんと死んだはずの義興の亡霊。

これがモーツアルトの歌劇「ドン・ジョヴァンニ」に出てくる騎士長の亡霊そっくりなのでびっくりしました。

そして舞台下手の頓兵衛の娘がいる住屋、琳派風の波に浮かぶ義興の亡霊、頓兵衛が乗った船の3つの要素が、鮮やかなトライアングルを構成していて、とてもダイナミックな美術装置の妙を見せていました。

義興がひょうと放った矢がいつの間にどう消えて頓兵衛の首を射ぬいたのかよく気をつけて見ていたのですが、その早業のトリックが見抜けなかったのはわたくしの眼がすでに節穴と化しているからなのでしょう。歳はとりたくないものです。

役者は中村吉右衛門、歌六のほかに又五郎、歌昇、種之助、錦之助、芝雀、東蔵などが出演しているのですが、昔ながらの声音を作っているのは吉右衛門のみ。歌舞伎は隆盛と伝えられているようですが、はたして進歩しているのか退化しているのか、よく分からない今日この頃です。


  おもざしを隠しつつ通り過ぎたと妻はいう哀れなるかな昭和の大女優 蝶人
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原節子死す

2015-11-26 14:08:23 | Weblog


そんな私のここだけの話op.215&鎌倉ちょっと不思議な物語第361回

 原節子嬢が9月5日に95歳で亡くなっていたというニュースを聞いて、ああついに来るべきものが来た、という感慨に襲われた。このひとだけはいつまでも死なないのではないかとひそかに考えていたのだが、天網恢恢そうは問屋が卸さなかったのである。

 原節子という人は詰らない作品の詰らない役にもたくさんでており、必ずしも演技がうまかったとは思わないが、小津をはじめ成瀬、黒澤両監督のメガフォンに助けられ、その存在自体が既に何者かであるというような希少な価値を獲得するに至っていたかけがえのない俳優のひとりであった。

 晩年は私の家にほど近い浄明寺の隣に隠棲しておられたので、時々散歩がてら生垣の向こうの離れを覗きこんでみたが、それらしい人影はついに見当たらなかった。


これで日本映画史は最終コーナーを回り、とうとう日本の大女優はひとりもいなくなってしまったことは淋しさの極みである。

 
 「わたし悪いんです。悪い女なんです」原節子は永遠に死なない 蝶人



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西暦2015年霜月蝶人花鳥風月狂歌三昧在庫処分編その4

2015-11-24 11:59:50 | Weblog


ある晴れた日に 第345回


瑠璃蜆また瑠璃蜆てふてふてふ瑠璃子と瑠璃男の瑠璃色ダンス

蝶よりも蛾を低く見るそのこころ人種差別のはじまりなるか 

何気なくを何気視線を目線と平気で書く奴等とは今日を限りに絶好じゃなくて絶交

失せ物ありシャープの液晶テレビの取り説&保証書

今日もまた観光客が押しかける(嫌なんだけど)ようこそ!ようこそ!

獄舎にてなき青春の思い出をつくりゆかんと死刑囚歌いぬ

食卓に形見のように立っている榮久庵先生特製醤油瓶

草の名も花の名前も鳥の名も知らずに過ぎし七十年

なんとかチャンとなんとか君が熱愛していて俺とは何の関係もない

錦織が敗れし後はシンとなる熱烈なる我が国のテニスファン

ピース、ピースと泣いていましたパブロ・カザルスが弾く「鳥の歌」

ただ一人ブラボーブラボーと叫んでいる恐らくあれは身内なるべし

香港の散髪屋にて髪を切る洗髪もなく按摩もなしに

釣銭がおぼろになりし商店主と一緒に数え直す秋

七十年も経てば全部忘れてしまうのかよそ様の国に押し掛け罪なき人を殺したことも

安全と生命を守るといいながらとつ国との戦に巻き込まれていく

同盟同盟とどめきながらずるずるエイリアンの内臓にからめとられてゆくニッポン

散華とは呼ばずあえて犬死というそれが本当の慰霊なれば

ガビ鳥よ中国へ帰れお前の大声で鶯の麗しき鳴き声が聞こえない

トウケイがトウキョウに大坂が大阪になってからニホンはニッポンになった

ぺち雲虫郎舎が電畜以欄たですうぬ。だち、あり典膣、具みざて。

体当たりの演技なりき体当たりすれば名演技とはいえないにせよ

さようならはいサヨウナラ左様なら親しきひとが次々に死ぬ

一日の終りに「さんま御殿」見て少女のようにたんぽぽのように笑っている私の奥さん


  九回裏に四点を奪いけり韓国の執念の凄まじさよ 蝶人
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西暦2015年霜月蝶人花鳥風月狂歌三昧在庫処分編その3

2015-11-23 11:02:38 | Weblog


ある晴れた日に 第344回



午前零時銀座通りの真ん中で黄色いウンチが湯気を立ててる

カバライキンカバライキンと叫んでる君も私もバイキン仲間

年に二度寺尾家にやってくる富山ナンバーの薬売りのおじさん

果樹園のてっぺんに立ち眺むれば西に富士山東に東京湾

七十年きれいなお姉さんにあこがれてきましたまだ探しています

生協で一切一三〇円のチリ産シャケを五匹買うことを生活と云う

妖艶な美女をこやしにしながらも今夜も元気にタクトを振るデュトワ

この広い世間のどこいらで景気が回復しているのだろう

闘争を学園紛争と言う人に異を唱えずに黙して帰る

我が国の存立を危うくしている連中が存立条件について論じる不条理

「どちらとも言えない」に○をしてる間に骨を抜かれる我らの九条

卑怯者非国民と呼ばれても銃は握らぬよし殺されるとも

限りなく日の丸から遠ざかりただうじうじと生きてゆきたし

日の丸を振らず君が代を歌わず私利私欲のみを死ぬまで

ガギグゲゴ鼻濁音を絶滅させないためにぐあんばろう

友達の友達は友達なのであの有名な井上八千代さんもSNS友達

今もなお不意に甦る声ありて「スタップ細胞はあります」と言う

白鵬よ偶には負けろよと云ってみる誰も黙っているようなので

「下郎下がりおれ」なぞといひて袈裟がけに斬り倒せばさぞ愉快ならむ

純白のレースのカアテンに覆われてすべての家にひとつの秘密

こんちくしょうと喚きながら投じた石は弟の額の肉を削りき

職が無い職は無けれどひと様の苦しみが分かる息子ではある

真昼間からライトを点けてる自動車に二本の指で消しなと合図す

長男の面差しの裏に住むわが懐かしき父母の姿よ

なにゆえに何匹も犬猫を飼う君は淋しい犬猫病患者

一台のベンツが八幡様を曲がり行く一一九二というナンバー付けて

雪柳椿辛夷桜花母命日に我が見し花 々


   鴎外を三百円漱石を九百円で古本屋は売る 蝶人
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中央公論新社の「決定版谷崎潤一郎全集」について

2015-11-22 13:42:03 | Weblog


照る日曇る日第829回


 げんざい中央公論新社の創業130周年記念事業として同社から刊行されている文豪谷崎潤一郎の最新版全集を毎号楽しみにしている今日この頃ですが、前からちょっと気になっていることをレポートしておきたいと思います。

 谷崎の全集は1930年の改造社版以降何度も刊行されており、今年から出はじめた今回の全26冊シリーズが「決定版」と銘打たれているのですが、知れば知るほどいったいどこが「決定版」なのかあきれてものがいえません。

 その理由の第一は、谷崎の代表作である「源氏物語」の邦訳が欠落していることです。それは別枠で同じ中公から出ているから買いなさいということかもしれませんが、「源氏物語」のない谷崎全集なんて、五郎丸の抜けたジャパンラグビー、小西得郎の解説のない野球中継、権藤監督のいない大洋ホエールズ、淀川長治のいない日曜洋画劇場、吉田秀和の音楽評のない朝日新聞、尾崎紅葉の連載がない読売新聞(以下略)、のようなものではないでしょうか。

 さらにこの「決定版」では「源氏物語」と並ぶ谷崎選手の傑作「細雪」が2冊にまたがって分載されています。これは叢書の書式を簡便軽量にしたかったからでしょうが、その了見が間違っています。

 かつてソニーとフィリップスがCDの規格を決めたとき、1枚のCDに搭載する容量をカラヤン指揮ベルリンフィルのベートーヴェンの交響曲第9番が収録できるように設定したのは有名な話ですが、本全集の編集担当者がまず考慮すべきであったのは、この主著「細雪」を全1冊に収容できる書式をまず決定することであったはずです。

 ちなみに小生が愛蔵している昭和41年版の全集には、「源氏物語」も4巻を費やして入っているし、「細雪」も第15巻にきちんと収めています。最新版には旧全集に漏れた新原稿もちらほら入っているようですが、それはチュウチュウネズミのようなもの。「決定版全集」は、ネズミがいてもライオンとゾウのいない動物園のようなもの、岡井隆と奥村晃作のいない歌壇、鈴木志郎康のいない詩檀、富士山のない大和です。

 重厚長大を嫌う読者の利便を考慮するのは結構ですが、いやしくも「決定版」と銘打つ以上は、死せる谷崎と大編集者滝田樗陰、嶋中元社主がみても満足のいく書式と体裁でなければなりますまい。

 最後に問題があるのは全集につきものの解説、解題、月報のたぐいです。私蔵旧全集の月報は毎回10数ページもあって、その中の有名作家によるエッセイや回想録、評論家による充実した作品解説は、各巻の内容に匹敵するくらい読み応えがあります。

 ところが「決定版」についているのはそっけない「解題」とたった4ページの「月報」のみ。さすがに月報では当代の有名作家が筆をとっていますが、あまりにもスペースが短すぎるのでどれもこれも通り一遍の走り書きの感想文にすぎず、彼らだってこんな駄文が後世に残されたら恥ずかしいのではないでしょうか。

 編集委員の千葉俊二、明里千草、細江光という方々がどのような立派な研究者・権威ある編集者なのかはいっこうに存じ上げませんが、たとえば現在河出書房新社から刊行中の「日本文学全集」の解説や新潮社の 「新装版・新潮日本古典集成」、インスクリプト社の「中上健次集」の月報、解説の比類ない充実ぶりをこの際じっくりと検分していただきたいものです。

 それとも右翼進駐軍で文藝音痴の読売新聞社がにらみをきかせているので、旧中央公論社のスタッフにはそのような自由が許されていないのかしらん。


  日曜の魔法使いの妻がつくる林檎ケーキほど美味きものなし 蝶人
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速報! 生誕100周年記念「柿本幸造 絵本原画展」in鎌倉のご案内

2015-11-21 13:02:42 | Weblog



鎌倉ちょっと不思議な物語 第360回



鎌倉に55年間住んだ絵本作家、故柿本幸造さんの絵本原画展が開催されます。

誰もが知っている「どうぞのいす」や「じゃむじゃむどんくまさん」から隠れた名作まで、錦秋の3日間に限り、貴重な原画が勢ぞろいしています。

どうぞお子様連れで鎌倉までお運びください。会場は駅から歩いて2分の鎌倉生涯学習センター(きらら鎌倉)ギャラリーで、入場は無料です。



                  記

2015年11月27日から29日 10時から17時まで
(初日は13時から、最終日は16時まで)

問い合わせ03-6868-3785 NPO読書サポート


  鎌倉の十二所に住みし柿本さんの眼どんくまさんに似て限りなく優しい 蝶人
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三谷幸喜選手をどう評価するか?

2015-11-20 11:23:13 | Weblog


闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.945&946


初期の映画はみな面白かったが、だんだん化けの皮がはがれてきたような気もする。
しかし才能はある人なので、来年の五郎丸、じゃなかった真田丸に期待してるずら。


○三谷幸喜監督の「THE有頂天ホテル」をみて

いわゆるグランドホテル・スタイルの喜劇ずら。三谷は数多くの登場人物をうまくアレンジして盛りだくさんな大晦日どんちゃん騒ぎを盛り上げ映画的感興をもたらしている。YOUはミスキャストずら。


○三谷幸喜監督の「ステキな金縛り」をみて

この監督は近頃手抜きがひどくてつまらなかったが、これは面白かった。落武者の幽霊(西田敏行)が裁判の証人をつとめるという設定がうまく行った。されどラストの泣かせはしつこすぎるずら。


  お相撲はモンゴルに譲り韓国には野球ゴルフを勝たせてあげよう  蝶人
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谷崎潤一郎著「谷崎潤一郎全集第17巻」を読んで

2015-11-19 13:36:06 | Weblog


照る日曇る日第828回


この巻に収められたのは「蘆刈」、「春琴抄」、「陰翳礼讃」を含めた「摂陽随筆」、単行本未収録の「夏菊」他計2編などであるが、なんといっても「蘆刈」が圧倒的に素晴らしい。

著者自身を思わせる主人公が、ある日ふと思いついて、後鳥羽上皇ゆかりの水無瀬離宮に散策に出かけるところからはじまる短編小説であるが、主人公が宵闇迫る巨椋池に月見に行こうと淀川の中州に向かう渡し船に乗った途端、物語は現代を遊離して遠い昔の夢幻能の世界に彷徨いはじめる。

そして私たちは月の下で邂逅した一人の男のモノローグを聴きながら、池の向こうに管弦の響きを実際に耳にし、絶世の美女「お遊さん」の蘭たけた姿態をこの目で眺め、彼女と彼女に恋した男の切ない恋の物語に、心ゆくまでひたることができるのである。

名作の誉れ高い「「春琴抄」も、日本人の歴史的美意識に鋭くメスを入れた「陰翳礼讃」も「蘆刈」の超絶技巧にくらぶれば、一籌を輸すといわざるをえないだろう。

ただ「陰翳礼讃」の中で、著者が、昔日の暗い光の中で演じる能役者の金銀刺繍、濃い緑や柿色の素襖、水干、狩衣、白い小袖のいで立ちが日本人特有の赤みかかった褐色の肌や唇の色によく似合い、能役者が美少年の場合は女を遥かに凌駕する蠱惑の対象になったと説き、よってもって昔の大名が寵童の容色に溺れたと断じるくだりには、まことに説得力があった。


いつの間にか僕の背中に少年が立つほんにお前はリトル・インディアン 蝶人

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西暦2015年霜月蝶人花鳥風月狂歌三昧在庫処分編その2

2015-11-18 11:15:22 | Weblog


ある晴れた日に 第343回


ノアという箱車が走り去る選ばれし家族とプードル乗せて

要するにただの白い車じゃないかライムホワイトパールクリスタルシャインカラー

車などみな似たりよったりなれど買う人が無理矢理個性をつける
 
或る夜に大イノシシが現われておっとり刀の猟友会員

一身の都合にて入社し一身の都合にて退社していく人はみな

同じニュースを朝から晩まで流しているテレビ局


親しげに皆が挨拶してくれるどこの誰だか知らない人が

癒された元気をもらいました等々々手垢に塗れた言葉を使うな

真夜中の凍結を防ぐために自らを暖めているひとりぼっちの我が家の風呂よ

滑川に落ちた緑の手袋よ五指を開いて我に訴う

「外国人出て行け」と君が叫ぶたび「日本人出て行け」と返るこだま

暗黒の帝王が君臨する我ら今ゴッサムシティの住人 

この道はいつか来た道愚かなるわが民草がたどりたる道

世界一平和な国になるためにあらゆる武器に別れ告げしが 

改正にあらず改悪である悪しき憲法を作るのだから

原発に賛成もせず反対もせぬ人こそが国運を握る

「ねえあたしの遺影撮ってよ」というファインダーの先の義姉の笑顔

親しげに皆が挨拶してくれるどこの誰だか私は知らない

もう二度と会うまい人の手を取りて長い長い握手をしにけり

グルグルとレントゲン台で踊ってる古稀の男の胃検診サーカス

とある日とある街でそれは起きるだろう前代未聞の奇跡や災厄

「でもスタップ細胞はあるかも」言いながら自転車を駅まで走らせる

共同体の熱きほてりを遠ざかりゴールポストに消えゆく球見る

ヒューヒューと喉元過ぎる音さえも明石家さんまは笑いに変えて

ただ一首天下を揺るがす歌詠めば冥土の土産に旅立つものを

「今がいちばん若いのよ」と妻が励ますどんどん歳をとりゆく私

バルテュスの夢見る少女テレーズの白いパンツがどうにも気になる

ただ一本の蓮の蕾が咲かざりき

絶望は希望に似たり寒昴
 
歳時記をバイブルにしながら生きて行くなんておいらにゃ到底出来ないよ

曇天の空より落ちる雪の片障がいの子もまた天の贈物

モンシロなどつまらぬ蝶と思いしがいつか消えゆくしかと見ておく


  みずからの死ぬべう夕べに着る服を夢の中にて考えているなり 蝶人

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西暦2015年霜月蝶人花鳥風月狂歌三昧在庫処分編その1

2015-11-17 11:59:06 | Weblog


ある晴れた日に 第342回



一冊の書物を遺しこの世から立ち去らんとする人の原稿を直す

目を閉じて髭を剃らるるわが息子大仏に似た顔となりけり

ニッポンはアメリカと組んで中国を抑えつけようとしているわれら民草の頭越しに

何匹も犬や猫を飼う人を「犬猫病患者」と呼ぶことにする

君と僕頬笑む瞳のその奥で我らの父母もまた頬笑んでいる

獄舎にてなき青春の思い出をつくりゆかんと死刑囚歌いぬ

「目には目を歯には歯をだぜ!」世界中が憎しみの坩堝に堕ちる

「目には目を」叫びあまねく世に満ちて再び手に取る井筒訳『コーラン』

罪もなく麻酔もなしに異教徒のナイフで首を斬られし君よ

惨劇の火種を自ら撒きながらしすべてを偽イスラム国の所為にする

終着駅は始発駅と思ひたし非業の死者に頭を垂れて

勇ましく天下国家を語りけり我が家の嵐しばし忘れて

職人と梯子を詰め込んで朝の国道を走る軽トラ

いつの間にか「大衆の原像」見失い三途の川を彷徨う吉本

共同の幻想装置の暗闇で吉本隆明嘲笑ってる 

世間では障「害」者などと呼んでいます虫一匹殺せない息子を

障害の「害」という字が気になりて「がい」と改めなお落ち着かず

亡き父のたった一つの形見なれど迷いに迷いて鞄捨てたり

Yes or No右か左か答えられず立ち尽くす間に世は移り行く

偉いなあ手帳の背中に一本の鉛筆を入れることを思いついた人

次々に謎の評論家が現れてあれやこれやの妄論を吐く

小寒や箪笥に眠る割烹着

五七五最後に開く季語辞典

四十年虫一匹殺せぬ息子かな


  四〇年朝日の当たる家に住み苦しきことのやや勝りゆく 蝶人
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戦争映画をみる

2015-11-16 15:00:29 | Weblog


闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.941、942、943、944


○ケヴィン・マクドナルド監督の「第九軍団のワシ」をみて

英国に侵入したローマ軍第九軍団がワシの軍旗を奪われて全滅。その軍団長だった父親の敵を息子がうつ歴史戦争ものずら。

当時はイタリアが先進国で英国が野蛮な後進国だったが、二〇〇〇年後の現在ではその差は無くなった。文明は野蛮人を都会人に変えるが、個々の人間の中味はまったく変わらない。

○ブライアン・シンガー監督の「ワルキューレ」をみて

1944年7月のヒトラー暗殺計画「ワルキューレ」を主導した大佐(トム・クルーズ)の悲劇的な生涯を描く。

まあ後になってみれば「ドイツの良心」と呼ばれてもおかしくない英雄的な人物だと思うが、あのよう圧倒的ナチ独裁時代に己のすべてを犠牲にして「正義のテロ」に挺身できたもんだと驚嘆のほかはない。

私のように因循姑息な人間は逆立ちしたって出来ないだろう。


○ジル・パケ=ブランネール監督の「サラの鍵」をみて

ナチ占領下のパリでヴィシー政権が行ったユダヤ人狩りと収容所送りを背景に描いたある一家の悲劇を描いている。

パリ3区のマレ地区の住人は語る。「ユダヤ人たちが強制連行されていくのを黙って見ていたといわれても、私に何が出来たでしょう?」

然り、然り。否、否。大衆の目の前で、歴史はいつもこのように転回する。


○エドワード・ズウィック監督の「ディファイアンス」をみて

第2次大戦中にドイツに占領され村を追い出されたポーランドのユダヤ人たちの「果敢な挑戦」を伝える史実に基づいた劇映画ずら。

父母子兄弟を虐殺された村人たちは三々五々森の中に逃げ込むのだが、最初はバラバラだったが次第に反ナチ戦闘集団として組織化されてゆく過程が興味深い。

この映画では実力を備えた有能な指導者のおかげで1200人ものユダヤ人が生き残ったが、極東のどこかの国とはずいぶん様子が違ったようだ。

途中まで共闘するソ連軍のユダヤ人差別がくっきりと描かれている。


「目には目を」叫びあまねく世に満ちて再び手に取る井筒訳『コーラン』 蝶人

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家族の肖像 その8~「これでも詩かよ」第161番

2015-11-15 10:49:31 | Weblog


ある晴れた日に 第341回


「お母さん、輸血ってなに?」
「怪我をしたときに他の人の血を入れることよ」
「宇宙戦艦ヤマトの島大介さん、輸血したお」
「そうなの?」

「マコトさんとファミリーナの田中さん、好きだお」
「マコトさんってお父さんのこと?」
「そうですよ」
「ありがとう」

「お母さん、向こう岸てなに?」
「川の向こう側のことよ」

「キョウコさんが、気をつけてお茶飲むのよと言ったお」
「誰が?」
「キョウコさんが」
「ああ、亡くなったおばあちゃんがそういったのか」

「お父さん、トシヒコちゃん結婚したの?」
「結婚したよ」
「お父さん、トシヒコちゃん、子供できたの?」
「できたそうだよ」

「鎌倉郵便局は本局だお。しばらくお待ちください。ただいま修理をしております。
 ぼく、鎌倉郵便局の真似をしたお」

「お父さん、こちらこその英語は?」
「ミー、トゥかな?」
「こちらこそ、こちらこそ、こちらこそ」

「ハッピーバースデイ歌いますお」
「今日は耕君のお誕生日だからね。お父さん、お母さんと一緒に歌いましょう。耕君は何歳になりましたか?」
「41歳だお」

「さて耕君、今日の晩御飯はなんでしょう?」
「分かりませんよ。なにがつくもの?」
「ヒがつくものよ」
「ヒ、ヒ、ヒレカツ!」
「あたりー!」


   狂信が君を殺して我殺しアラーを殺して世界を殺す 蝶人
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