おらっちしかいない職場に知らない男がやってきて、「お前んとこの課長が帰ってきたらすぐに連絡せよ」と命令するとすぐ立ち去ったが、おらっちそいつが誰だか分からないので課長が戻っても放置しておいたずら。6/1
私は花園中学の女子中学生と手に手を取って、朝のラッシュで大混雑している京都駅に到着したが、それからどうしていいのか分からんかった。6/2
短文をつくったあとで、この文章にはどんなハッシュタグをつけるべきか大いに迷って、とうとう朝を迎えてしまったよ。6/3
友人から挨拶を頼まれたので、おらっちは昔書いた「なんでも挨拶事典」を引っ張り出して、よさそうなクダリをそのまま引用したかったのだが、んなもん皆無だったずら。6/4
若い2人のために別荘を建ててやったというのに、さして感謝も感動もしていないのは、なぜだろう? もしかしてワシの建築センスがダサイのではないのだろうか?と思うと、気が気ではなかった。6/5
商品を1個づつ手に取って、大勢の写真が販売に出る効率の悪さが、堂々とまかり通っている不思議さよ! これで人並み以上の給料が出ているのだが、ますます不思議だ。6/6
はじめは北に向かって歩きだしたのだが、思い直して、今度は南に向かって歩き続け、とうとうナニワエに着いたのよ。6/7
結果的には、予がその殺人事件の判事を担当することが分かっていたので、犯行以前の彼の動向を探ってみたのだが、どう考えても、あんな残酷な人殺しを実行するような人物とは思えなかった。6/8
容疑者を取り調べながら、「これが重要なんだよ、重要」と偉そうにいいながら黒板に「重要」と書いた重の字が間違っていることに気づいて、おらっち大層恥ずかしかったのよ。6/9
A君は秒速18km、B君は15kmの目にもとまらぬ超快速剣で、群がる兵士を切り捨てていたが、最終的に最も多くの敵兵を退治したのは、ほかならぬ秒速3kmの吾輩だった。6/10
草笛城の外観は、城壁が抉れて物凄い様相を呈していたが、世界中のアナキストたちが、八方破れのそのアナーキーな状態を讃美してやまなかったので、お隣の若月城も城壁の一部をわざと崩したりしていた。6/11
工業団地の土地を一応確保したコウドウカンは、自社の4区画を、それぞれトヨタ、NTT、ソフトバンク、大洋漁業などに提供してやったので、ひどく感謝されたのよ。6/12
健康診断を受けていると、市役所の職員が大事にしているという写真をこっそり見せてくれたのだが、その写真が、あっという間に脱走して、一人で遠くの方へ行ってしまったのよ。6/13
宮沢賢治記念館の公演の最後に登壇した花巻青年団の若者たちの風貌が、揃いも揃ってミヤザワケンジに生き写しだったので、とても驚いたが、よく考えると、あれもこれも当地によくある顔なのだった。6/14
予の豪邸が、時ならぬ大火で焼け落ちたので、町内の貧民どもが、なにか金目のものがないかと大挙してやって来たので、ドタマにくるぜよ。6/15
サキちゃんに誘われて京都に出て、そこから左京を歩き始めたら、汚い東屋にコ汚いおばはんがいて、それがサキちゃんの母親だったので驚く。それからさらに歩いて、西部講堂でマルセルメイエのパントマイムを見物したのよ。6/16
世界最高級のヴァイオリニストとして内外の尊崇を浴びている彼だったが、いくつかの有名曲を絶対に手掛けないのは、それを弾くと、おのれが死んでしまうと知っているからだった。6/17
ここイランでは、ウイルスのワクチンの入手が困難なので、罹患しないよう、毎日アラーの神に祈っている次第だ。6/18
長針が12時にやって来た時に、しっかりつかまえたので、時計は無事に元に戻った。6/19
あまりにも地味な身なりの男なので、誰一人注目しなかったが、あにはからんや彼こそ真の予言者なのだった。6/20
家族全員が出かけて私しかいなかったとき、もう若くないピンクのラバースーツを纏った女がやってきて、「もうすぐ地球に大洪水が起こるから、これを買っといた方がいいですよ」と勧めたが、「わしはまたノのアの箱舟に乗るからいいや」と断った。6/21
わが社は、書体づくりをしている社員5名の超小企業だが、このたび明朝の新書体づくりの社内コンペを行ったところ、新入社員のモリサワ君が最高級の成績だった。6/22
マイナカードによるAI検索で、リベラルないしは反権力派と見做されると、直ちに警察の特殊部隊が派遣され、有無を言わさず検挙され、徹底的に拷問された挙句に抹殺されるのだった。6/23
獣皮のテントで開かれたバッロック音楽の演奏会に退屈したので、おらっちは一人で夜のジャングルの中に入っていったのよ。6/24
お母さんとセイユーで買い物している間、コウ君はお昼のお弁当を選んだり、アイスクリームを買ったり、トイレに入ったり、週刊誌を立ち読みしたりするので、けっこう忙しいのだ。6/25
泌尿器科の医師であるおらっちは、若い時から年が年中クラシック音楽、わけてもモザールをまるでBGⅯのように流し続けていたので、たまにコンサートで聞いても生々しいBGMとしか思えないのだった。6/26
もはや余命半年の旧態以前たる百貨店に勤めているおらっちだったが、そこは腐っても鯛、毎週のように立ち上げられる「なんたらフェア」や「きゃんたらセール」に忙殺される毎日だった。6/29
そろそろ実家暮らしをやめて町に戻ろうかと思いつつ、息子の姿を求めて2階を覗いてみたら、なんとなんとどの部屋にも彼の友人たちがグースカ、グースカと高らかに鼾をかきながら眠っているのだった。6/30