闇にまぎれて tyojin cine-archives vol.1290~1312
1)園子温監督の「ちゃんと話す」
どんなにつらいことでもあいての眼をみつめながらしっかり話す。
それこそが人倫の基本である。
外見はアモラル風でも心の中はまっすぐな園子温の真骨頂が、この映画に現れているようだ。
2)園子温監督の「映画みんな!エスパーたち!」
基本的にはどうでもいい映画であるが、徹底的にエロと裸を正面から露出する根性は見上げたものなり。
それにしても真野恵里奈は可愛いなあ。
3)園子温監督の「リアル鬼ごっこ2015劇場版」
修学旅行の女子高生たちが、ヒロインのたった一人を除いて、バスごと真っ二つになるシーンにはぶったまげた。
原作はどうだか知らないが、この題名にインスパイアされてこんだけ徹底的に恐怖とサスペンス映画をノンストップででっちあげる園監督の才能は素晴らしい。
それにしてもトリンドル玲奈は可愛いなあ。
4)園子温監督の「気球クラブその後」
部活の気球クラブに集った若者たちの青春を荒井由美の「翳りゆく部屋」をモチーフに抒情的に謳い上げる。
園子温は永作博美のいいところを引き出してみごと永遠のミューズに仕立て上げた。
5)園子温監督の「園子温という生きもの」
これを見れば園子温というクリエータの生き方と考え方がよく分かる。
6)園子温監督の「うつしみ」をみて
園監督の映画では主人公が道路の真ん中を走るシーンが多いが、本作においてもヒロインの澤田由紀子が走る、走る、走る。
恋人の少年との物語も種々錯綜するわけだが、ともかくともかく全編にわたって走る、走る、走る!
奔る破天荒の映画ずら。
7)園子温監督の「希望の国」をみて
もう一度大震災が起こってもなにも教訓が生かされない国ニッポン。
希望どころか絶望あるのみ。されど絶望の虚妄なること希望に相同じい」てふ魯迅の言葉を噛みしめたい。
父親役を演じる夏八木勲が生涯最後の熱演を見せるが、この夫婦は自殺する必要はないのではないか。
全編にわたってマーラーの第10番のアダージオを使いながら、誰が指揮しるどこのオケの演奏なのかをクレジットしないで放置しているナクソスと制作会社にも文句を云いたい。
8)園子温監督の「BAD FILM」をみて
高円寺を舞台にした中国派、日本派の武闘対立がホモ派、レズビアン派、通訳派などの台頭、介入によって対立軸が大きく揺らいでいくのが興味深い。
ラストの2人の女性への思い入れは、いささか情緒的に過ぎる。
9)園子温監督の「自転車吐息」
若者の「居場所がないんだあ」という呻きにいたく共鳴する。
その通り。だから昔の若者は反逆した。いまの若者は自虐するしかないのだろう。
どうせ苦悶するなら、内向するより外向したほうが健康的だと思う。
10)園子温監督の「LOVE SONG 」
園子温主演脚本監督の短編8ミリ映画だが、まあ彼のファンだけが喜んで見る作品だろう。
11)園子温監督の「Ocm4」
永瀬正敏を起用して色覚異常の世界を描こうとした意欲作だが、面白いとはお世辞でもいえない。
12)園子温監督の「ひそひそ星」
特殊撮影に大金を投じたSFを退けて身近な素材、たとえば普通の主婦や住宅を主人公にした宇宙配達旅行の物語。
東日本大震災の被害に遭った町や村が出てくるが、これを地球を遠く離れた異星として眺めることはできない。
むしろ新宿や渋谷を出せばよかったのである。ゴダールはそれを1965年の「アルファヴィル」でやってのけている。
13)園子温監督の「桂子ですけど」
桂子という21歳の女性が22歳になるまでの心象風景を描いている。
やたら時計が出てきて煩わしいが、別にどうということもない映画だ。
14)園子温監督の「TOKYO TRIBE」
井上三太原作の漫画の映画化。新宿、渋谷、池袋などの東京の盛り場を取り仕切るトンピラグループの相克をオリジナルラップミュージックを使って全編ミュージカル仕立てで演出している。
まるでウエストサイドストーリーの現代版のようだが、特に清野菜名が素晴らしい。
15)園子温監督の「新宿スワン」
2015年公開の和久井健原作の漫画の映画化ずら。
歌舞伎町を舞台に繰り広げられるスカウトマンたちの争闘をダイナミックに描く。
綾野剛、山田孝之は役にはまったが、伊勢谷友介、沢尻エリカはちょっと頂けない。
16)園子温監督の「ラブ&ピース」
さえないリーマン長谷川博己の途方もない夢が、最愛のペット亀の助けで叶うまでの道行きを比類ない想像力で盛り上げる演出は見事。
人形や動物など捨てられたクリスマス・ギフトのファンタスティクな擬人化、西田敏行や麻生久美子のキャステイングもド壺にハマリ、園畢生の代表作に仕上がった。
園の作詞作曲による「ピカドン」も素晴らしい。
17)園子温監督の「奇妙なサーカス」
母の前で父親に犯される娘、父親の娘の寵愛を許せない母親は娘を殺そうとし、父親の手足を削いで「生きダルマ」にして監禁する。
階段から突き落とされて死んだはずの娘は性転換して男になっていて流行作家になっている母親の前に現れて……。
異様なスリルとサスペンスが最後までつづく猟奇怪奇性奇ジェットコースタームーヴィー。
18)園子温監督の「父の日」
2001年製作の12分の短編。「父の日」に恋人を連れて父を訪ねた姉妹が、父をかたる男に2人とも犯されてしまうお話だが、そのブッラクユーモーアがなんともいえずおかしい。
19)園子温監督の「ヴァギナ&ヴァージン」
2012年。8分間の超短編。スクリーンの向こうの暗闇から黒い眼が現れてことらぞじっと見る。ケージの音楽にも似て。
20)園子温監督の「男の花道」
1986年製作の劇場未公開の学生映画。
法政大学のキャンパス内やゴミだらけの外堀、自宅近辺など身近な場所と家族、友人、監督本人をフル動員した熱血の実験映画というよりはホームムービー。
不条理に怒れる70年代風若者の野獣的な創作魂のごときものに圧倒されて終わる。
21)園子温監督の「決戦女子寮対男子寮」
1988年製作の劇場未公開作品。
走る、走る、走る! 映像が突出するのは、若者が世界への突出を目指してもがきにもがいているからだ。
22)園子温監督の「愛のむきだし」
愛する人を前にすると激しく勃起するという「愛のむきだしテーゼ」によって貫かれた波乱万丈、魑魅魍魎、超絶激烈な3時間57分の大長編スペクタクルなり。
盗撮、レズ、誘拐、テロル、殺人、恋愛、いろいろ出てくる物語なり。
登場人物の大半がカトリックやオウムを思わせる新興宗教の信者で、ヒロインの満島ひかりがコリント書13書の「信・望・愛のうち最大のものは愛である」と説く聖句を激白するシーンは、大島渚の「日本の夜と霧」のモノローグと並ぶ日本映画史上のハイライトずら。
そして山あり海ありのピカレスクロマンの最後を締めるエンデイングも素敵だ。
この映画の出演者はみないいが、とりわけ渡辺真起子が素晴らしい。
園作品では役者はその存在理由のすべてを問われるために安易な気持ちでは出演できなだろう。
されど愛する人の前では勃起できない男もいることを分かってほしいずら。
芸能界を引退したる江角マキコ今頃「どん兵衛」啜っておるか 蝶人