東京ステーションギャラリーで「甲斐荘楠音の全貌」展をみて
精液2023年葉月蝶人物見遊山記第372回
どういう風の吹き回しか親切な同伴者の導きによって最終日間近の本展をみることができました。感謝感謝。
甲斐荘楠音(1894~1978)という京の都の絵描きさんの名前なんて、風の噂にも聞いたことがなかったが、大正から昭和のはじめにかけて「革新的な」作品を世に送った日本画家らしい。
主に派手な着物をまとうた女性のくねった姿を得意としたようだが、その独得の妖艶さとなにやら不吉に翳った面妖な顔立ちにどこどこ惹かれていくものがある。怖いどすえ。
どうやらこの画家は女装趣味もあったらしく、歌舞伎の女形に扮した写真も沢山出ていて、例えば絵を描く雀右衛門といった趣。色街の禁断の世界に出入りしながら、世話物の裏表を知り尽くしたような気配もうかがえる。
だからこそ、のちに時代劇映画全盛時代の時代考証や、市川右太衛門の舞台衣装を自ら製作できたのでしょうが、個人的には映画界に軸足をおかずに、本業の日本画の革命に挺身して欲しかったと思うのですが、やはり安定したくいぶちのほうに目が眩んだのでしょか。
左眼にはレンズが入り葉月尽 蝶人