あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

家族の肖像~親子の対話 その67

2023-09-30 11:50:12 | Weblog

2023年7月

 

お父さん、いまどこ?

病院だよ。

お母さんは?

トウキューで買い物だよ。

 

ウエハラミツキ、髪短くしたね?

そうね。短いね。

 

あしたあ、ハス見にいってえ、セイユー行きます。

そうか、お父さんも、一緒にハス見に行っていい?

いいですお。

 

女たらしって、なに?

だらしないひとのことよ。

 

ぼく、これからお昼寝しますお。

してくださいな。

 

お父さん、録画した?

コウ君、バッチリしましたよ。

 

お父さん、いま録画みますよ。

そうですか。じゃあ見ましょうね。

はい、分りましたあ。

 

お父さん、「寂しい」の英語は?

ロンリーだよ。コウ君、寂しいの?

寂しくないですお。

 

「菱」はタを突き出してるよね。

なぬ、おや、確かに突き出してるね。

 

お父さん、大好きですお。

お父さんも。

 

お母さん、リハビリって、なに?

傷ついた手とか足とかを元に戻すことよ

 

テラオさん入院したの?

そうよ。

治りますよ。ぼく祈りますよ。ほら、治りましたお!

あら、あら。

 

おじさん、ウエハラミツキ好き?

好きですよ。

おばさん、ウエハラミツキ好き?

好きですよ。といっときゃいいのね。

おねえさあん、ウエハラミツキ好き?

好きですよ。―小林理髪店にて

 

お父さん、金曜日にフクモト・リコ、録画してくださいね。

分りましたあ。

 

ウエハラミツキ、髪の毛短くしたお。

そうだね。コウ君よく見てるね。

 

お父さん、起きてください!起きてください!

いま何時?

7時ですお。

分りましたあ。

 

   中秋の名月の夜の満月が月下美人の花弁をひらく 蝶人

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マリーズ・コンデ著・大辻都訳「料理と人生」を読んで

2023-09-25 13:57:25 | Weblog

 

照る日曇る日 第1966回

 

「あとがき」によれば、作者は1934年にカリブ海の仏領グアドループに生まれ、数多くの著作と世界の有名大学で講義や講演を行ってきた著名な作家で、2018年には、ノーベル賞の代わりに特別に設置されたニュー・アカデミー文学賞を受賞している。

 

生涯にわたって世界各地を旅し、その土地ゆかりの人々と巡り合い、名物料理を味わい、自分でも料理を楽しんできた作者が、その過ぎ越しをしみじみと振り返り、もはやそれほど長くない行く方を額に手を当てて眺めやる趣のある半生記だが、私の心に一番しみたのは、本書の終わりに近い18章の「夢の旅、旅の夢」だった。

 

それは、もはや充分に老いて、旅行などその気があっても実行できなくなってしまった作者が、若くて元気な日に自分がした旅を、牛の食事のように何度も夢の中で辿り直した記録である。

 

枕元に呼び出されたインドネシアやチリへの現実と幻想が入り混じったような虚実皮膜の旅行記は、どこかプルーストの有名なあの本の記述にも似ているようだ。

 

「ニューヨークを発つとき、セネカ・パパガッロは翌年わたしたちをエチオピアに呼ぶと約束してくれる。だがその約束は果たされず、彼からは一通のポストカードも手紙もeメールも来なかった。当たり前だ。彼はわたしの想像が生み出した人間なのだ。でもいまだ確信があるわけではない。笑顔が眩しく人のいいこの大男に、本当には会っていないと言えるだろうか?」

 

と、作者は呟いているが、実際は、もはや寄る年波と身体の障害でペンを執ることすらできなくなった彼女の言葉を綴っているのは、その生涯の大半を共にしたパートナーの英国人リシャールであるという。(「訳者あとがき」に拠る)

 

それなら、ここに登場する「笑顔が眩しく人のいいこの大男」は、作者のコンデとリシャールと、そして、いまこの文章を読んでいるあなた、によって立ち上げられ、織りなされた三者協同の「見果てぬ共同の夢」のようなものかもしれない。

 

さはさりながら、「同性愛者の息子を素直に受け入れることができなかった」と、自伝に書かざるを得なかった、誠実な作家にして“普通の母親”の傷口の疼きは、何回ノーベル賞をもらったとしても、到底収まることはなかっただろう。

 

 朝比奈が最後に振ったアレグロ・マ・ノン・トロッポ・エ・ウン・ポーコ・マエストーソ 蝶人

 

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山本タミエ画集「タミ絵」を眺めて

2023-09-24 11:21:01 | Weblog

 

照る日曇る日 第1965回

 

ふれあい鎌倉ホスピタルの隣の「山本餃子」で、ニンニクの入らない本格的な餃子を供されている山本理央さんから頂いた画集を、ときどき眺めています。

 

じつは「山本餃子」には知り合いの写真家シドモトさんの案内で一度しか行ったことがなかったのですが、その時お店の壁にかかっていた3幅の絵がとても面白くて、写真を撮らせてもらったことがありました。それが理央さんの祖母のタミエさんの絵だったのです。

 

彼女の父方の祖母、タミエさんは1912年、四国の小豆島に生まれ、髪結の仕事を経て同響の山本善次さんと結婚。5人の子供に恵まれ大阪、神戸、京都、東京、横浜などで暮したが、夫の死後の1990年、脳梗塞に襲われて左半身がマヒしてしまった。

 

ところが、その数年後の80歳を過ぎた頃、孫の岡村晃さんのすすめで絵を描きはじめた絵が、無類に自由で素晴らしいのです。

 

恐らくは故郷の小豆島で子どもの頃に慣れ親しんだ遊び仲間や草や花や木や小鳥やネズミや犬や猿や馬や牛や蛇たちはもちろんですが、ついでになぜか恵比寿、大黒天、福禄寿などんの七福神もワハハ本舗のように登場してきて、ポップでシュールで、明るく、楽しくて、だけどどこかちょっっぴり寂しくて、さながらこの世の果てのような極楽夢のような世界だあな。

 

生まれると同時に母を亡くしたタミエさんの悲しみが伝わってくるような1枚も印象的ですが、わたしは「天高く 白かて 赤かて みんなかて」と書かれた運動会の絵が能天気に懐かしくて好きですわ。

 

   教頭がみだらなことをしたというみだらの中身はどこにも書かれず 蝶人

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岡田暁生・片山杜秀著「ごまかさないクラシック音楽」を読んで

2023-09-23 08:58:56 | Weblog

 

照る日曇る日 第1964回 

 

ふざけた下らないタイトルに怒りを覚えて一度は投げ出した対談本だったが、我慢して最後まで読んでみて本当に良かった。

 

所謂クラシック音楽の歴史とその興亡を生き生きと描き出して読者を飽かせることのないじつに内容豊かな対談である。

 

4つの楽章の交響曲が、性的な揺れ動きと関連していること、その性的運動を持続させながら、ひたすら愛のエクスタシーにまで高めた、ワーグナーの「楽劇」の物凄さを論じた211ページあたりは面白かったし、ストラヴィンスキーやショスタコなどロシア/ソ連の音楽が、人間を西欧的なヒューマンなものとしては描かず、「ただの木偶」として描いていることの怖さ、を指摘する276ページなどは、もっと面白かったずら。

 

今は亡き「レコード芸術」なども、この2人のクラシック音楽自滅寸前のお楽しみを自虐的に語る世紀末&世界の終り的対談などを連載していれば、まだ暫くは自滅せずに続いていたのではないだろうか。

 

  auとかauショップのお知らせだけがジャカスカ入る阿呆莫迦ケータイ 蝶人

 

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はらだたけひで作「パシュラル先生」を読んで

2023-09-22 17:15:04 | Weblog

 

照る日曇る日 第1963回

 

なんでもパシュラル先生ときたら、

 

 「ときどき お月さまをなでにいく」

 

 「お星さまを とりにいく」

 

 「お星さまは あたたかかったり つめたかったりする」

 

んだそうだ。

 

哲学者のガストン・パシュラールをイメージしたという「パシュラル先生」がその春風駘蕩たる人世観、あるいは恥ずかしすぎて今まで一度も使ったっことのない言葉をあえて使うなら、世界観を、存分に披歴した、さながらポエジーのごとき絵本である。

 

添えられた小さな絵も、また詩的で、素敵だ。

 

なお作者は元岩波ホールの社員で、退職後はジョージア映画の興隆に力を注いでいる人のようだ。

 

  肝っ玉かあさんが3人息子を叱咤する解体仕事の見事な出来栄え 蝶人

 

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家族の肖像~親子の対話その100

2023-09-21 11:34:33 | Weblog

家族の肖像~親子の対話その100

 

2023年7月

 

お父さん、いまどこ?

病院だよ。

お母さんは?

トウキューで買い物だよ。

 

ウエハラミツキ、髪短くしたね?

そうね。短いね。

 

あしたあ、ハス見にいってえ、セイユー行きます。

そうか、お父さんも、一緒にハス見に行っていい?

いいですお。

 

女たらしって、なに?

だらしないひとのことよ。

 

ぼく、これからお昼寝しますお。

してくださいな。

 

お父さん、録画した?

コウ君、バッチリしましたよ。

 

お父さん、いま録画みますよ。

そうですか。じゃあ見ましょうね。

はい、分りましたあ。

 

お父さん、「寂しい」の英語は?

ロンリーだよ。コウ君、寂しいの?

寂しくないですお。

 

「菱」はタを突き出してるよね。

なぬ、おや、確かに突き出してるね。

 

お父さん、大好きですお。

お父さんも。

 

お母さん、リハビリって、なに?

傷ついた手とか足とかを元に戻すことよ

 

テラオさん入院したの?

そうよ。

治りますよ。ぼく祈りますよ。ほら、治りましたお!

あら、あら。

 

おじさん、ウエハラミツキ好き?

好きですよ。

おばさん、ウエハラミツキ好き?

好きですよ。といっときゃいいのね。

おねえさあん、ウエハラミツキ好き?

好きですよ。―小林理髪店にて

 

お父さん、金曜日にフクモト・リコ、録画してくださいね。

分りましたあ。

 

ウエハラミツキ、髪の毛短くしたお。

そうだね。コウ君よく見てるね。

 

お父さん、起きてください!起きてください!

いま何時?

7時ですお。

分りましたあ。

 

 「やっちゃいな!」と言われてやられたyouたちの躊躇逡巡恐怖と打算 蝶人

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Ⅿ・B・ゴフスタイン作・絵/末森千枝子訳「ピアノ調律師」を読んで

2023-09-20 14:03:17 | Weblog

 

照る日曇る日 第1962回

 

名調律師のおじいいちゃんを敬愛する孫娘のおはなしです。

 

ピアニストなんか目もくれず、おじいちゃんを超える名ピアノ調律師を目指しているヒロイン。はたして彼女は、名調律師になれるでしょうか?

 

物語の先の先のもうひとつの物語が楽しみな、そんな絵本です。

 

 「ムクよムク、ここにおいで!」と呼ぶのはよそう庭のお墓で昼寝している 蝶人

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短歌研究文庫版「塚本邦雄全歌集 別巻1」を読んで

2023-09-19 10:31:14 | Weblog

 

照る日曇る日 第1961回

 

全8巻の全集によって塚本短歌の全貌はほぼ明らかになったが、2冊の創作ノートに拠るさ2冊の別巻が加わることになった。

 

例によってえいやっと開いたページの数首を引用してみる。

 

 ダリを父として大雪の(大阪or魚市)の箱に睡魔のごとき海鼠ら

 

 仙人掌の掌に熱き掌を重ねつつ かくのごと不毛の愛の刻経つ

 

 死せる杉原一司は生きて酔へばその唇むらさきのマルドロールよ

 

 みしみしと重き若者一月の骨牌の赤き女王を踏みて

 

これらは第3歌集「日本人霊歌」、第4歌集「水銀伝説」、第5歌集「緑色研究」、第6歌集「感幻樂」に時代にひそかに書き継がれたものらしいが、ではそれら公刊歌集の作品とくらべてみると、特に抜きんでた秀作揃いかというと、そうでもなく、敢えて言うなら総じて試行錯誤に励んだ習作程度の出来栄えであるから、作者自身も生前は公表しなかったのではないだろうか?

 

塚本短歌の熱愛者や研究者にとってはヴェールを取り払われた幻の垂涎の作品かも知れないが、私のような門外漢には、猫に小判、豚に真珠の作物であった。

 

   大杉と野枝を殺せし甘糟の子孫と見做して長く憎みき 蝶人

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西暦2023年長月蝶人映画劇場その4

2023-09-18 10:12:40 | Weblog

 

闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.3391~95

 

1)ジョン・ベリー監督の「その男を逃すな」

ロクデナシのジョン・ガーフィールドに惚れたシェリー・ウィンタースが家族に大迷惑をかけるが最後の最後に恋人を撃ってケリをつける1951年の犯罪映画。

 

2)シドニー・ランフィールド監督の「腰抜けペテン師」

1951年ボブ・ホープ主演のどたばたコメディだが、こんなにひどい代物とは!

 

3)フィリップ・バン・レウ監督の「シリアにて」

シリア内戦を夫を戦地に送った肝玉母さんの立場から描く緊迫の戦争ドラマ。戦争とはこういう地獄の惨劇なのだと思い知らされる。

 

4)キム・ボンハン監督の「ありふれた悪事」

強権政治に冒され、内通していた普通の人間が、その惨めさに目覚めて立ち上がる姿を見よ!

 

5)7アントワーン・フークア監督の「エンド・オブ・ホワイトハウス」

なんとまあホワイトハウスが北朝鮮ゲリラに乗っ取られ大統領が捕虜になつてしまう2013年の活劇映画。

 

   実態は何もなくてもプレミアムと言われたら即プレミアムなの 蝶人

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佐藤幹夫個人編集「飢餓陣営2023年夏号」を読んで

2023-09-17 14:47:46 | Weblog

 

照る日曇る日 第1960回

 

宮澤賢治の一幕物の悲喜劇戯曲「飢餓陣営」は知っていたが、同名の季刊雑誌があると知ったのはつい先ごろのこと。フェイスブックの友人に加えて頂いた雑誌主宰の佐藤幹夫さんとの繋がりによってでした。

 

個人雑誌なんて吉本隆明の「試行」以来だなあ、と遠い思い出に耽りつつ頁を開いていくと、3月に亡くなった大江健三郎の追悼を柱に、大勢の論客の力の籠ったエッセイや論考、多彩な詩歌、刺激的な対談の数々が、回り灯篭のように転回されるので一驚しました。

 

たとえば大江健三郎特集では、笠井潔氏への総論的なインタビューを皮切りに、神山睦美、添田馨、岡本勝人、松山愼介、高野尭、浦上真二各氏の論考が犇めきあいますが、私としては沖縄出身の松原敏夫、東中十三郎両氏による漫才のような掛け合いの対談、「大江健三郎の文学、「大江が語る沖縄」が殊の外面白かった。

 

しかし、最後を締めるのはやはり主幹の佐藤幹夫選手で、なんと彼は、この特集のために大江の初期作品群から代表作の「万延元年のフットボール」までを読み直し、その文学的意義梗概と今日的問題点をきちんと書き出しているのは、さすがです。

 

次の特集は「津久井やまゆり園事件とその後の問題―テロリズム/安楽死/ロストケア」ですが、ここでも笠井潔氏の「心的外傷としてのテロリズムの時代」という問題提起から始まって、脇田喩司、赤田圭亮、水田恵各氏のエッセイが読み応え充分に並び、「津久井やまゆり園事件」について論じた佐藤幹夫氏の記念碑的労作「津久井やまゆり園「優生テロ事件」その深層とその後」の優れた書評で閉じられます。

 

その他、小浜逸朗、福間健二氏への心のこもった追悼文が続きますが、八面六臂の大活躍を繰り広げる佐藤主幹を別格として、今回私の心を強く打った詩華と文章は、古田嘉彦氏の「足跡」、水島英己氏の「心が静かな日 雲は無言ですすむ」、佐藤通雅氏の「安家小」そして木村和史氏の「家をつくる」&「福間健二さんと河合民子さん」でした。

 

「結局わたしは、努力をしないままここまで来てしまった。小説家にもなれなかった。細々と文章を書き続けているが、それが何なのかいまだに分かっていない。(中略)自然にはっきりしてきたことがある。それは、何者にもならない。どこまでも普通の人を生きるという強い思いだ。」と万感の想いを込めて綴る木村和史さん。

 

文は人なり。とはよく言ったもの。私は、この数行に出会えただけで、この雑誌を買って本当に良かったと思ったことでした。

 

   https://www.aozora.gr.jp/cards/000081/files/1921_17653.html

 

     世の中は一寸先は闇である大谷沈み藤浪輝く 蝶人

 

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高橋睦郎著「日本二十六聖人殉教者への連禱」を読んで

2023-09-16 15:21:48 | Weblog

 

照る日曇る日 第1959回

 

秀吉のキリスト教弾圧によって1597年2月5日に長崎の西坂の岡で処刑された26人の殉教者一人ひとりに捧げられた26の哀悼詩である。

 

例えば、「第9の十字架」に磔された少年は、次のように歌わえる。

  

 聖ルドビコ茨木同宿 殉教者の中の最も幼い十二歳

 自分のために用意された十字架に跳びついて唇づけ

 パライソ イエズス マリア!と叫んで息絶えた 

 主と運命とに深く愛された幼な子

 われらのために祈りたまえ

 いついかなる時もわれらに無垢の快活を与えたまえ

 

1962年以来この地には、敬虔なカトリック信者でもあった舟越保武による彫心鏤骨の傑作「長崎二十六殉教者記念碑」が立っているが、作者自身の書き下しに拠る「長崎二十六殉教者像の制作を終えて」という栞の一文が、まことに感動的である。

 

吉本は好きなんだけど吉本主義者は嫌いなりマルクスは好きなんだけどマルクス主義者は嫌いなように 蝶人

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すえもりちえこ作・つおみちこ絵「パパにはともだちがたくさんいた」を読んで

2023-09-15 10:49:03 | Weblog

照る日曇る日 第1958回

 

1983年に亡くなったテレビ番組のデレクターだった夫を悼む妻の作品。

 

最後の頁に1行「天にひとりを増しぬ」と書かれているが、この節、地上の人材は減る一方。天は優れた人材であふれるばかり。

 

それにしても、末盛憲彦が演出する「夢であいましょう」をもっとみたかったなあ。

 

  「アレ、アレ」というまに政治は変わります民主党政権の時もそうだった 蝶人

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ブレーズ・パスカル著・塩川徹也・望月ゆか訳「小品と手紙」を読んで

2023-09-14 11:55:43 | Weblog

 

照る日曇る日 第1957回

 

誰でも枕頭の書というのがあるだろうが、私のはかつては「プルタルコスの対比列伝」、「モンテーニュのエセイ」だったが、今は「パスカルのパンセ」を枕元において、ちびちび読むのがここ数年の夜の日課である。

 

本書はその「パスカルのパンセ」とは別の著作を1冊にまとめたもので、「パンセ」がキリスト教の護教論だとしたら、それ以外の領域に属する科学論文や身内に宛てた私的な書簡などで多彩に構成されている。

 

「幾何学的精神について」という断章では、「最良の書物とは、読者が自分でもこれなら書けたかもしれないと思うような書物だ。」などと俗耳に心地よい科白を吐き、高尚、崇高を退けてむしろ卑近、普通、平俗を推し?ているが、1654年11月23日夜に、突如降臨した「回心」の有名な記録「メモリアル」などは、奇蹟的な霊感に満ちて俗人を寄せ付けない。

 

パスカルはルイ13世から14世、宰相リシュリューからマザランの時代をたったの39年間、さながら流れ星のように光り輝いた天才で、その病いがちで短い生涯の大半を敬虔なジャンセニスト、数学者、科学者、宗教哲学者として生きたが、意外なことに「計算機」を発明してスエーデンのクリスチーナ女王に献呈したり、「真空」の有無についてデカルトと論じあったりしているのは、その人間性がとても身近に感じられ、親しみが持てる逸話である。

 

パスカルが33歳のとき、重い眼病を患っていた姪のペリエ嬢が、ポール・ロワイヤル寺院の聖遺物を患部に押し当てると、間もなく症状が消えて完治するという「奇蹟」が起こった。

 

これを知ったパスカルの妹シャルロットが、身内の反対を押し切って修道女になってしまうのだが、神仏の加護で母親の眼病を奇跡的に完治できた私の祖父小太郎や、熱心なカトリック信者となって生涯を全うした妹のことを思いだし、まっこと感慨深かった1冊でした。

 

    大谷は一天俄かにかき曇りノーコン藤波光り輝く 蝶人

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タシャ・チューダー作・末盛千枝子訳「すばらしい季節」を読んで

2023-09-13 14:10:56 | Weblog

 

照る日曇る日 第1956回

少女サリーを巡って流れる春、夏、秋、冬のすばらしい1年間。時代の変遷にめげずに、世界中の少女がサリーのように平穏無事な暮らしが送れたら、どんなに嬉しいことだろう。

 

原題は「最初のよろこび」なので、そういう邦題でもよかったずら。

 

   幾百の毬を余さず振り落とし冬に真向かう里の栗の樹 蝶人

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西暦2023年長月蝶人映画劇場その3

2023-09-12 09:53:13 | Weblog

西暦2023年長月蝶人映画劇場その3

 

闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.3386~90

 

1)ババク・ナジャフィ監督の「エンド・オブ・キングダム」

2016年の「エンド・オブ・ホワイトハウス」の続編で今回は英京倫敦のテロで世界各国の指導者が皆殺しになる中SPジェラルド・バトラーの大活躍で米国大統領は首切りを免れるのだったあ。

 

2)リック・ローマン・ロー監督の「エンド・オブ・ステイツ」

2019年の「エンド・オブ・ホワイトハウス」の3作目で、今回はモーガン・フリーマン大統領に仕えるSPジェラルド・バトラーは、突然登場した父親の活躍で窮地を脱するのだたあ。

 

3)ゴードン・ダグラス監督の「明日に別れの接吻を」

悪の限りを尽くし美女の愛を弄ぶ1950年のギャグニー主演映画ずら。

 

4)ジーン・ネグレスコ監督の「仮面の男」

ヨーロッパ全土を股にかけて犯罪を繰り返す悪漢ディミトリオスを主人公の作家のライデンがおっかける1944年のサスペンス映画ずら。

 

5)アルフ・シェーベリー監督の「令嬢ジュリー」

スエーデンの劇作家ストリンドベリの原作を1951年に映画化。哀れ、誇り高い自由娘は悲惨な最後を迎える。

 

  土曜日に「現代の音楽」を聴いたばかりこんなに急いで逝っちまうとは! 蝶人

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