あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

西暦2024年睦月蝶人映画劇場 その6

2024-01-31 15:54:32 | Weblog

 

 

闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.3501~18

 

1)ガイ・ハミルトン監督の「007死ぬのは奴らだ」

1973年のシリーズ第8作。鮫に食われそうになるロジャー・ムーアだが予定調和的に黒人をやっつけるずら。

 

2)ガイ・ハミルトン監督の「黄金銃を持つ男」

1974年のシリーズ第9弾。これまでで一番きれいなボンドガール、モード・アダムズ登場。

 

3)ルイス・ギルバート監督の「私を愛したスパイ」

1977年のシリーズ第10弾。奇妙なことに英ソが連合して海洋学者に対抗するが、ボンドガールが今一、今二。

 

4)ルイス・ギルバード監督の「ムーンレイカー」

1979年のシリーズ第11弾。ヴェネチア、リオを経てなんと舞台は宇宙へ!本作でボンドと銀歯大男は味方同士になる。

 

5)ジョン・グレン監督の「ユア・アイズ・オンリー」

1981年のシリーズ第12弾だが、詰まらない出来栄え。救いはキャロル・ブーケの美貌くらいか。

 

6)ジョン・グレン監督の「オクトパシー」

1983年のシリーズ第13弾。謎の蛸女オクトパシーとアマゾネス軍団がインドを舞台に大活躍。

 

7)ジョン・グレン監督の「美しき獲物たち」

1985年のシリーズ第14弾。ロジャー・ムーアは本作でお役御免となったが、グレース・ジョーンズの起用が異色だった。

 

8)ジョン・グレン監督の「リビング・デイライツ」

4代目ボンド、ティモシー・ダルトン初登場の1987年のシリーズ15弾。なぜかチェコのチェリストとのラブストーリーを展開。

 

9)ジョン・グレン監督の「消されたライセンス」

ライセンスを奪われたボンドが亡き友の復讐に立ち上がる1989年のシリーズ16弾。

 

10)マーチン・キャンベル監督の「ゴールデンアイ」

5代目ボンド、ピアース・ブロスナンがかつての親友006と戦う1995年のシリーズ17弾でなかなか面白い。

 

11)マイケル・ウィルソン監督の「トゥモロー・ネバー・ダイ」

英国と中国を戦争させようとする奴らをやっつける正義の味方ボンド!

1997年のシリーズ18弾。

12)マイケル・アプテッド監督の「007/ワールド・イズ・ノット・イナフ」
1999年のシリーズ19弾。はじめはおぼこ娘と思ったソフィーマルソーが、突如悪女の本性をむき出しにして5代目ボンド、ピアース・ブロスナンの首を中世の拷問器具で締めあげる。女は怖いなあ。

 

13)リー・タマホリ監督の「ダイ・アナザー・デイ」

2002年のシリーズ20弾。ピアース・ブロスナンの最終作だが、この5代目ボンドがいちばんヒューマンなボンドかも知れない。

 

14)マーチン・キャンベル監督の「カジノ・ロワイヤル」

2006年のシリーズ21弾。冒頭のモノクロ画面の中で最新版ボンドのダニエル・クレイグが初めて人を殺すが、この瞬間もはや誰も人を信じられない文字通りの暗黒時代に突入するのである。カジノの対決を見ていると狭心症の発作に襲われた。

 

15)マーク・フォスター監督の「007/慰めの報酬」

2008年のシリーズ22弾。恋人を殺されたジェームズ・ボンドが報復に走ろうとして、英国紳士とはとても思えない乱暴な活劇を繰り返す異色の2008年度作品ずら。主役のダニエル・クレイグはかつてのボンド役とは似ても似つかない風貌で、英国人だがどこかプーチン大統領に似ていて個人的には好きくないずら。なんでジョージ・クルーニーなんかを起用しないんだろうね。
イタリアのシエーナでのカーチエースから始まりナッソー、アフリカ、また欧州と世界各地を目まぐるしく移動して観客の目を楽しませてくれるが、「トスカ」が上演されているオーストリアのブレゲンツ音楽祭で悪者たちが連絡を取り合うというめちゃくちゃな設定には驚いた。しかし心中の孤独と苦しみに耐えつつ群がる敵をどんどん殺し、上司のMを演じるジュディ・デンチをはらはらさせるボンドもまあ悪くはなかったずら。

 

16)サム・メンデス監督の「007/スカイフォール」

2012年のシリーズ23弾。この節の007はただただ悲惨な現実に弄ばれるだけで、夢も希望もない。まことに現在の英国とその諜報部のありようを正直に反映している映画といえようか。
だいたいジュディ・デンチのMとプーチンそっくりのダニエル・クレイグなんて誰が喜んでみるものか。ひたすら初代のショーン・コネリーが懐かしい。

 

17)サム・メンデス監督の「007/スペクター」

2015年のシリーズ24弾。紆余曲折ありながら「ボンドはついにスペクターの親玉を殺さずに逮捕してメデタシめでたしとなる。

 

18)キャリー・ジョージ・フクナガ監督の「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」
ご存知007の2021年の最新作。私が大嫌いなプーチンそっくりのダニエル・クレイグ最後の主演作だが、映画のラストでは猛烈なミサイルの爆発を総身に浴びて絶命する。しかし「今は死ぬ時ではない」ので、奇跡的に蘇えるのかしら。

 

   歴代のジェームズ・ボンドを見比べるコネリー・ボンドは極楽トンボ 蝶人

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

鎌倉雪ノ下2丁目鶯谷の「志一稲荷神社」を尋ねて

2024-01-30 18:01:50 | Weblog

蝶人物見遊山記第378回&鎌倉ちょっと不思議な物語第458回

 

鶴岡八幡宮の西側の雪ノ下2丁目にかつて私の伯父さんのプール付き、裏山付きの大邸宅がありました。それが売却された現在も、玄関口に通じる細い路地だけは当時もままに残っていて、往時を偲んで年に一度くらいはそこに佇むことがあります。

 

そこから巨福呂坂切通に通じる横浜鎌倉線道路を50メートルくらい直進したところで左の急な階段があり、そこを突きあたった所に小さなお稲荷さんがあります。志一稲荷です。

 

南北朝時代に訴訟のために鎌倉にやって来た僧侶、志一上人が、大事な証文を京に忘れてきたので、大困り。すると1匹の狐が、「それではおいらがひとっ走りして取ってきましょう」というて、いうだけじゃなくて実際一昼夜で取ってきてくれたので、お礼の印にと作ったのがこのお稲荷さんという言い伝えがあり、それは吾妻鑑にも出ているそうです。

 

案内板に誘われて急な階段を心臓をパクパクさせながら上り詰めると、質素な稲荷神社がひと箱建っておりました。この辺は鎌倉時代から鶯で有名なところで、三代将軍の実朝がこの地を訪れたそうです。

 

お稲荷さんは別にどうということもなかったのですが、驚いたのはその近所のハンオキの茂みになんと美しいゼフィルス蝶の代表選手、ミドリシジミが数匹飛んだり止まったりしていたことで。通常なら6月の梅雨時に羽化するミドリシジミがなんで今頃こんな鶯山の麓で遊んでいるのか、それこそ志一上人とその友達の狐クンの導きとしか思えませんでした。

 

     ハンノキがあるから生きられるミドリシジミの命の母よ 蝶人

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

多良久美子著「80歳。いよいよこれから私の人生」を読んで

2024-01-29 10:40:30 | Weblog

 

照る日曇る日 第2012回

 

長崎で被爆し、娘に先立たれ、障碍者の息子と80代の夫を抱えながらも、たくましく元気に生き延びていく女性の、たくさんの写真入りの人世記録なり。

 

9歳年上のユーチューバーの姉も元気に暮らしていて、巻末の姉妹の対談を読んでいると、おらっちもぐあんばらんといかんなあ、という厳粛な気持ちになってきます。

 

「吾輩は桐島聡である」というて死ぬある意味見事な人世だった 蝶人

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高橋源一郎著「一億三千万人のための『歎異抄』」を読んで

2024-01-28 08:30:40 | Weblog

照る日曇る日 第2011回

 

小林秀雄の顰にならって親鸞の弟子唯円が著わした«他力本願»の『歎異抄』を、自分の眼と心で、歎異抄ではなく「タンニショウ」として読み解く高橋のゲンちゃん。

 

有名な第3条の「善人なほもて往生をとぐ。いはんや悪人をや」、第13条の「わがこころのよくてころさぬにはあらず。また害せじとおもふとも、百人・千人をころすこともあるべし」の力のこもった解釈は必読である。

 

さりながら、18歳で学生デモで逮捕されて「10番」と呼ばれ、留置所に収容され「23番」と呼ばれ、「名前」を失った若き日のゲンちゃんが、1207年鎌倉幕府の「専修念仏」禁止令で師法然と共に逮捕され、強制的に還俗されて「非僧非俗」の藤井善彦を名乗らされ、越後に配流された35歳の親鸞に自分を重ねている個所のほうが重要で、ドストエフスキーのあの死刑宣告同様、この貴重な体験あらばこそ親鸞は「シンラン」に、23番は「タカハシゲンイチロウ」になったのである。

 

そんなタカハシゲンイチロウに倣って、私も原文から読もうとしたのだが、鎌倉時代の書き物とはいえこれが意外にも難物で、今回はあえなく挫折してんげり。

 

        東アジア反日武装戦線の桐島聡がほんとの自分にたどり着く日 蝶人

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

鏑木清方記念美術館で「企画展 早春の風情」をみて

2024-01-27 13:05:54 | Weblog

鏑木清方記念美術館で「企画展 早春の風情」をみて

 

蝶人物見遊山記第378回&鎌倉ちょっと不思議な物語第458回

 

 

「清方の言葉と共に」なる副題を副えて供せられた今回の展覧会では、大正7年の乙女が土筆摘む「早春」や、大川に架かる毀たれた木橋を描いた「新大橋之景」、最晩年の「白梅」などが見事だが、今回特に注目すべきは彼が遺した正確無比なスケッチの数々。それらは入場して左手に置かれている大きな引き出しに安置されているのだが、そこに見る「探春」、「沈丁花」、「小田原天神山早春」、「伊豆葛城山」などのスケッチは小品ではあるがその出来栄えの見事さは、おさおさ中、大作に劣るものではない。

 

私はこの展覧会で、「暗香浮動」、「摘草」「梅見」「観梅」「探梅」などの漢字に接して、ただそれだけで「早春の風情」を味わったような気分になったのだった。

 

なお本展は来る2月27日まで同館にて人知れず開催中。

 

鎌倉の小町通の雑踏に暗香浮動の在りかを尋ねて 蝶人

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

神奈川県立近代美術館鎌倉館で「イメージと記号」展をみて

2024-01-26 14:09:10 | Weblog

蝶人物見遊山記第377回&鎌倉ちょっと不思議な物語第457回

 

「1960年代の美術を読みなおす」という副題がつけられ、私が名前も知らない、あるいは名前くらいは知っていても、その活動の実態は見たことも、聞いたこともないような大勢の芸術家の作品が、狭い会場に所狭しと並んでおりました。

 

その中にあっては、いささか場違いの感もある詩人西脇順三郎の「九月」というタイトルの具象と抽象のあわいにある、刷毛でサッとスケッチしたような小さな油彩画、高松次郎の「世界の壁」という題名がついた6、7枚の影絵を組み合わせた巨大なアクリル絵画、そして川村直子の「69-A」というタイトルの柔らかな大腸を数枚重ねたような官能的なアクリル画を、快晴の冬の日につぶさに見物することができたことをけふの無上のよろこびとしつつ、観客無人の会場を後にしました。

 

 

なお本展は来る2月12日まで同館にて寂しく開催中だが、なんで作品撮影を許さないのか不可解なり。

 

毒水に汚染されたるヒノモトの魚を喰って中国退治!? 蝶人

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

西暦2024年睦月蝶人映画劇場 その5

2024-01-25 13:28:50 | Weblog

 

闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.3496~3500

 

1)ロン・ハワード監督の「白鯨との闘い」

2016年の映画化だが、メルヴィル原作の「白鯨」ってこういう話だったかなあ。グレゴリー・ペエクのエイハブ船長とは全然違う話ずら。

 

2)エイドリアン・グランバーグ監督の「ランボー ラスト・ブラッド」

ご存じ乱暴者ランボーの2020年最終作。されどスタローンもアップになると随分年をとったなあ。

 

3)テイラー・シェリダン監督の「ウインド・リバー」

雪深きワイオミングで失踪したネイテブ・アメリカン女性を追う狩人とFBI女性。

胸に迫る2017年の物語。

 

4)ケヴィン・マクドナルド監督の「私は生きていける」

2013年の英国映画で、ヒロインのデージーの態度が前半と後半でがらりと変わるのがわざとらしい。突然テロリストが核弾頭を爆発させたので内戦が始まる、らしいのだがてんでリアリテイがない。

 

5)ハン・ジェリム監督の「非常宣言」

ソン・ガンホとイ・ビョンホンが共演する2022年の韓国映画。致死ウイルスで搭乗員全員が汚染された旅客機を巡るスリラー。緊急着陸を巡って韓国では賛否両派が真っ二つに分断され、日本は自衛隊機が発砲して成田から追い立てられた旅客機の全員一同が空で自滅の道を選ぶあたりが何とも悲愴ずら。

 

「世界観」という名前の人がいるようだおらっちなら目噛んで死ぬだろうな 蝶人

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

町田康著「口訳古事記」を読んで

2024-01-24 15:17:49 | Weblog

照る日曇る日 第2010回

 

参考文献は小学館の「新編日本古典文学全集1古事記」のみ。この校注と訳を踏まえて、町田選手が、さながら大阪弁の寅さんのように、一気呵成に語り下したのが、本書である。

 

例えば「日本統一」の「唄殺し三番勝負」で、神倭伊波礼金毘古命(後の神武天皇)が強敵兄師木、弟師木兄弟と戦う個所では、こんな感じ。

 

「どないしましょう」

「こんなときこそ唄でしょう。唄の力で生きましょう。すべての武器を楽器に!」

「なに眠たいこと吐かしとんけ。けどまあ唄の呪力ちゅのがエグいことは、これまでの戦いによって証明されてとる。やってみましょう」

 

 というので阿呆声を張り上げて、

 

♪盾を並べて伊那佐のお山

 林の中で戦争したら

 腹も減るわれ、島の鳥

 鵜飼の皆さん、助けてチョーダイ

 

といった塩梅で、口語訳ならぬこの口訳が、最初から最後まで続く。

古事記に出てくる八百万の神様が、これほど面白く身近に感じられる現代語訳は初めてだ。

 

洗剤をどれくらい入れたらよいのかとか悩むくらいの悩みがいくつか 蝶人

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

夢は第2の人世である 第132回

2024-01-23 10:49:27 | Weblog

 

西暦2023年長月蝶人酔生夢死夢百夜

 

有名な思想誌の偽物が登場して話題になっているが、そこでは本物そっくりの偽物著者が本物の論旨を借りて、正反対の結論を出している。つまり思想なんて筆先三寸でころころ変わるし、変わっても構わないものなんだ。9/1

 

ある多忙な人物とのインタビューを頼まれたのだが、「4つの質問を4分以内にせよ」という条件がついていたので、そんなアホな、と断ってしまったのだが、うんと簡単な質問なら可能だったと、今頃になって後悔しているずら。9/2 

 

「です・ます体」でものを書くと、その噺をとりまくもっともらしさが次第に消え失せて、噺の真正さと空恐ろしさが浮き上がって来たので、怖くなって、「である体」に切り替えてしまったのよ。9/3

 

A子さんはとても素晴らしい人なんだが、突然選挙に出たら、見事当選してしまったので、ほんにんも、おらっちも、吃驚仰天だった。9/4

 

八百万神が列島に降臨して、1968年をもう1回やり直して、全国民が生き直すことになったらしい。もしかすると、国と民草の運命が、劇的に回天するのではないかと、みな興奮しているようだ。9/5

 

その住宅会社では、おらっちが画用紙に悪戯書きした童話風、あるいは漫画風のスケッチに基づいた一戸建て住宅が、ジャカスカ現場で採用されていったので、おらっちは時折恐ろしくなったものだ。9/6

 

道端に栗が落ちていたので、それを拾って進んで行くと、子どものコジュケイに出くわしたが、黙って電柱の陰に消えていった。そのとき、一陣のそよ風が「アリガトウ、サヨウナラ、ゲンキデネ」と囁くのだった。9/7

 

20代の若さで夭折した、天才キダンを悼む人々の群れ!9/8

 

ジャニーyouのおらっちは、ウィーン少年合唱団の童たちをアルファベット順に呼び寄せ、毎晩彼らに奉仕させて、おらっちの精液を愛らしい口唇に注ぎ込んでいたが、誰一人知る者はいなかったずら。9/9

 

某社のホームページの評判が悪いので「なんとか改善してほしい」と頼まれたので、冒頭の気持ち悪いブグウギ人形のダンスシーンを削除したら、それだけで注目率が倍増したのだった。9/10

 

頼んでいた本がようやく届いたが、とても時間がかかった。日本歴でいうと明治、大正、昭和、平成、令和、緑藻、弁義、下痢と流れ下って、いまは雲古の時代だが、そのかみの明治の初版本を発注したのだから、推して知るべしである。9/11

 

施設の職員なんて安月給に決まっているのに、長男は時々ヒガさんにファミレスに連れて行ってもらって、大好物のロースカツを御馳走になっているらしい。困ったことだ。9/12

 

住み込みのバイト学生の私は、「その子を落語が分る人間に育ててくれ」と両親から頼まれていたのだが、私自身あまり落語に詳しくなかったので、落語塾は諦めて、誰でも入れる千駄ヶ谷中学校に入学する結果に終わった。9/13

 

おらっちはスーパーで「トイレットペーパーを拡販せよ!」と命ぜられたが、なにをどうしたらいいかさっぱりわからずにうろうろしていたら、「君はてんで売り上げを伸ばせなかった」と店長にいわれて、直ちに解雇された。9/14

 

お隣のAさんたちと一緒に、集団検診を受けたのだが、Aさん一家が、突然モザールのオペラのアリアを歌い出したので、みな吃驚だった。9/15

 

久し振りに電気屋さんに来てもらったのだが、新しい電化製品が物凄く多機能になっているので驚く。しかも以前は10年だった耐用年数が5年に短縮されたので、思わず「原発とは大違いだね」といってしまった。9/16

 

「こんちは、イデですがあ」というて、茶色い下駄のような顔つきの男が入って来たので、すぐに誰だか分ったのよ。9/17

 

久し振りに倫敦へ行ったら、ロイヤルアルバート・ホールで、ハイドンの倫敦交響曲の演奏会をやっていたのだが、誰が指揮しているのかは分からなかった。9/18

 

あたいは、最初の子どもを堕ろされたので、2番目の子どもは絶対に堕ろさないぞ、とぐあんばって産んだのだが、しばらくして、棄てた。9/19

 

おらっちが、治安維持法で牢屋に入れられている間、なけなしの私財を保管しておいてくれと頼んだのに、案の定その女は、おらっちがシャバに出て来ると、行方を眩ませていた。9/20

 

毎年来る年金情報の書類で、障害者手帳の発行日を記入させる項目があるのだが、なんでこんな細かいことを書かせるんだと、頭に血が上るが、それらを書き込んだ書類を、1枚1枚確認する役人の顔を見ると、AI貌であった。9/21

 

棄てても捨てても、婦人便所の壁に浮き上がる4月の蛇じゃった。そこで、カッウーの建設に協力した人たちは。全員殺されたが、しばらくすると、みな蘇えった。9/22

 

ともかく戦争中のことなので、そのホテルの大半は軍隊が占拠し、わずかに残った地下2階にわたしらは押し込められ、地表を出歩くことも許されなかった。黒澤監督と小津監督を除いて。9/23

 

名前からしてウオータービルという建物の中に我が社は入居していたが、雨が降る度にフロアが水浸しになるので、社長のおらっちは、いつも大喜びでピッチピッチチャプチャプランランラあン!と歌いながら、長靴を履いて踊っていた。9/24

 

原発の建設に協力した連中は、殺されても、殺されても、地獄の釜底から蘇って、原発音頭を歌い、猫じゃ猫じゃを、踊り狂うのだった。9/25

 

おらっちは、組織の上層部からの特命を受けて、上司Мと共に特殊任務に就いたが、いつものように、大嫌いなМの指示は、いっさい無視して、行動した。9/26

 

ヘンデルのオラトリオでヘンデルノートの私は、歌詞を忘れたので、テキトーに歌いながら、相手役の女の方Hへ近づき、彼女がきちんと下着をつけてるのか否かを確かめよとしたのだが、舞台が薄暗くて、よお分らんかった。9/27

 

月明かりで時計をみると、まだ1時12分である。これから朝までちゃんと寝られるか、心配で心配で仕方がないが、うまく寝つけるまで、五言絶句を作り続けようと思った。9/28

 

夢の女に出会ったので、手を繋いで歩き始めたのだが、ふと思いついて女の手をギュギュと握ってみると、女もギュギュっと握り返したので、なんだかひどく安心したことだった。9/29

 

巣伊水筒の中で、あんきに泳いでいた2匹のメダカが食べられたのは、次のような、長い長い噺が、あるからだった。9/30

 

       憲法の第9条を抱きしめて黄泉比良坂を下っていこう 蝶人

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

西暦2024年睦月蝶人映画劇場 その4

2024-01-22 09:19:25 | Weblog

 

闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.3491~95

 

1)ガイ・リッチー監督の「コードネームUNCLE」

CIAとKGBが腕を組んで謎の犯罪グループをやっつけるという60年代のナポレオン・ソロ物を2015年にリメイクしたスパイ映画。エリザベス・デビッキが色っぽい。

 

2)エドワード・ノートン監督の「マザーレス・ブルックリン」

2019年のハリウッド映画でNYを縦にする独裁者に抗う私立探偵をノートン自身が演じる。自閉症かと思ったがチック症候群に仕立てたなのね。

 

3)メレディス・ダンラック監督の「ポイズンあるスキャンダルの秘密」

夫の変死の謎に挑む妻の噺だが、別にどうってことなし。

 

4)ケネス・ブラナー監督の「ベルファスト」

まだ生きとったのかのベルファスト出身のブラナー選手が、2021年の今頃になって69年の北アイルランド紛争を取り上げたのはガザの戦争を予見していたかのようだ。デンチおばさんまだ生きていた。

 

5)パク・サンヒョン監督の「潔白」

シン・ヘソン主演、2021年韓国の骨太法廷サスペンス。認知症の母親を無罪放免を勝ち取ったはずだのに、真犯人はその母親だった!

 

 

  先のこと息子にいうて聞かせれば話の途中で「分りましたあ」 蝶人

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

鎌倉国宝館にて「鶴岡八幡宮古神宝展」をみて

2024-01-21 09:54:40 | Weblog

鎌倉国宝館にて「鶴岡八幡宮古神宝展」をみて

 

蝶人物見遊山記第376回&鎌倉ちょっと不思議な物語第456回

 

国宝とか古神宝とか、源氏の氏神とか武門の守護神とか、宗祇の首座とか、やいのやいの騒いでいるが、中に入って眺めているといつもにも減じて、盛り下がったコレクションに、気持ち推し下がる。

 

いくら国宝だからと言って、金ぴかの刀や矢にさしたる感動も湧かないのは、ひとり私だけではないだろう。

 

ゆいいつの見ものは、やはり頼朝が、後白河法皇から貰った「籬菊螺鈿蒔絵硯箱」くらいだろうて。

 

     人殺し殺しに殺すイスラエルもうこれぐらいにしたらどうなの 蝶人

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

西暦2024年睦月蝶人映画劇場 その3

2024-01-20 11:27:55 | Weblog

闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.3486~90


1)チョ・ウィソク監督の「MASTERマスター」

韓国のネットワークを支配している大企業の社長イ・ビョウホンの犯罪を暴く特捜カン・ドンウォンの2016年の大活劇映画。

 

2)チョ・グクヒ監督の「国家が破産する日」

1997年の韓国のIⅯF危機を扱った2018年の社会派サスペンス映画。こういう骨太の社会派ドラマはもうわが国ではほとんどみられない。

 

3)チョン・ジヨン「権力に告ぐ」

これも97年の韓国のIⅯF危機を扱った2019年のサスペンス映画で、同テーマを扱った18年の「国家が破産する日」よりも反権力的な雄編なり。

こういう骨太の社会派ドラマはもうわが国ではインデイーズのみとなった。

 

4)西川美和監督の「ゆれる」

弟オダギリジョーと兄香川の真木よう子をめぐる葛藤を描く2006年のサスペンス映画。演出がゆれているので、映画がきっちり定位できない。

 

5)シドニー・ポワチエ監督の「ブラック・ライダー」

ポワチエがべラフォンテと共演した、先住民と共闘する1972年の異色の黒人西部劇なり。

 

見つかった! 何が? 今年の生き方が! 一喜一憂! 大器晩成!! 蝶人

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

トルーマン・カポーティ著・村上春樹訳「ティファニーで朝食を」を読んで

2024-01-19 09:14:55 | Weblog

 

照る日曇る日 第2010回

 

どちらかといえばヘプバーンがヒロインのホリー・ゴーライトリー役を演じた映画の方が有名で、彼女がヘンリー・マンシーニの「ムーンリバー」を弾くところは別として、原作とは天と地ほどにかけ離れたキャラと演出になっていた。

 

従って、ゴーライトリーの「天然純粋無垢悪」の魅力は、この原作でないと味わえないだろう。

 

このほか本書には、「花盛りの家」「ダイアモンドのギター」「クリスマスの思い出」が併録されているが、もしかするとカポーティの最高傑作は、この「クリスマスの思い出」かもしれない。

 

シャンシャンと鳴る鈴の音よ甦れ能登半島の珠洲の町に 蝶人

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

三浦しをん著「墨のゆらめき」を読んで

2024-01-18 09:22:21 | Weblog

三浦しをん著「墨のゆらめき」を読んで

 

照る日曇る日 第2009回

 

今回の主人公である元ヤクザの書道教室教師の生態が、書の生命力に満ち溢れた魅力とともに鮮やかに描きだされているのに感心した。

 

プロの書き手てとはいえ、よくもこういう前歴の人物を造形したものだ。

 

さりながら、この不思議な主人公と向き合う西新宿の2流ホテルのマネージャーというのがもっと魅力的で、物語は、この2人の交渉と関係性の中でぐんぐん成長していくのである。

 

能登半島の最果てにある珠洲の読み広瀬すずのすずと覚える 蝶人

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

野口武彦著「開化奇譚集 明治伏魔殿」を読んで

2024-01-17 17:44:23 | Weblog

野口武彦著「開化奇譚集 明治伏魔殿」を読んで

 

照る日曇る日 第2008回

 

いったいどこのどういうネタから仕込んだ短編だろうとそのバラエテイの豊富さに驚かされるが、一読どれも面白くて歴史の勉強になる。

 

例えば「粟田口の女」では本邦最終最後の悲惨な内戦として記憶されている西南戦争が、京都では没落寸前の西陣の繊維産業を立ち直らせるなど、膨大な軍事需要を生み出し、社会全体に空前の投機熱をもたらしたという。

 

賊将西郷ドンの悲劇的な最期が、東京に天皇を奪われた死都キョウトをアッという間によみがえらせ、次いで全国的な殖産興業をもたらしたのであった。

 

 作者曰く。

「頭上遥かを歴史の怒涛が通り過ぎていくだけで、なんの波乱も生じない底辺の世界がある」

 

「崩し将棋」から「明治天皇の御者」「巷説銀座煉瓦街」「陰刻銅版画画師」「粟田口の女」と並んだ5つの物語を読みながら、幕末の彰義隊の上野の玉砕から明治10年の西南の役までの舞台背景の元で蠢いた“歴史の黒子たち”の動きを辿るという乙な趣向である。

 

    裏金を貰ったやつは今すぐに議員を辞めよ政治から去れ 蝶人

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする