あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

なにゆえに 第31回

2016-09-30 11:31:20 | Weblog


西暦2016年長月蝶人花鳥風月狂歌三昧


ある晴れた日に 第407回



なにゆえにわが神仏のみが尊いか他の神仏をてんで知らない

なにゆえに論理は感情に流される論理は隠しに仕舞ってあるので

なにゆえに政治家は人気取り政策を連発する支持率が下がれば没落する

なにゆえにブロムシュテットの音楽は詰らない高齢の指揮者は良い指揮をするのに

なにゆえにロシアに向かってニコニコ笑う安倍蚤糞の破綻をそらす

なにゆえに写楽はあっさり消え去った目をそむけたくなるものをつきつけた

なにゆえに英国製のスピーカーは滋味がある滋味深い民が作っているから?

なにゆえに錦織はマリーに初めて勝った最後の最後まで諦めなかった

なにゆえにまたもや暑さがぶりかえす秋場所はまだ早すぎると夏巻き返す

なにゆえにきゃりーぱみゅぱみゅの正式名称はきゃろらいんちゃろんぷろっぷきゃりーぱみゅぱみゅだったらおいらはげんなじるふとべんすきいまるこーにぱっぱあーの

なにゆえに天然ウナギのウナジロウに罠を仕掛けるわたしの大事な友達なのに

なにゆえに拒食症の少女は死んでしまったあんなに優しい心の持ち主だったのに

なにゆえに突然腰が痛くなるやはりベッドは身体に合わない

なにゆえにモリドモリドと喚いている盛り土なんだからモリツチでしょうが

なにゆえに息子は3分おきに電話する職員さんから「注意」をされた

なにゆえに民進党はぐらぐら揺れる統一思想も団結もなし

なにゆえにモリツチ問題に夢中になる面白くて面白くて仕方ないから

なにゆえにパラリンピックでは金メダルがとれないしょうぐあい者福祉がそのレベルだから

なにゆえに9月の19日に蝉が鳴く鈴木志郎康氏の回復を願って

なにゆえにわが血圧はどんどん上がる安倍蚤糞への怒り込み上げ

なにゆえに先場所は厳しかった立ち合いが今場所はどうでもよくなる

なにゆえに次々に歯が壊れてゆく歯歯歯詩集を書けと如くに

なにゆえに次々に台風が発生する長男の施設行きを妨害するべく

なにゆえに息子は今日も施設へ行かない雷が鳴ると予報したから

なにゆえに歯医者に行ってもまだ歯が痛む歯医者の歌でも作れば治るか

なにゆえにマリナーズ青木を交代させる左投げ投手だって苦にしないのに

なにゆえに今日もまた歯医者へ飛びこむ昨夜は痛みで眠れなかった

なにゆえに新刊ばかり読みあさる死ぬ前に古典を読破できない

なにゆえにまたしても歯がずきずき痛むどこかの誰かの呪いのせいか

なにゆえに五輪が悪の輪を生みだすいますぐ止めよ五輪臨終

なにゆえに物食えば痛みが走る物は喰うなといわんばかりに 


         蟷螂の喰ふて喰はれて九月尽 蝶人
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ドラマ「夏目漱石の妻」をみて

2016-09-29 11:57:27 | Weblog
ドラマ「夏目漱石の妻」をみて


狂言畸語輯&バガテル―そんな私のここだけの話 op. 243



 そおゆう題名のテレビドラマをNHKの衛星放送でやっていたので、これはこれはと思ってついしまいまでみてしまったが、どうも全体的に作りごとめいて真実味に乏しいので、だんだん白々しく味けなくなってしまった。

 まず役者。ヒロインとかその父親役はまあこんなもんだろうが、肝心の漱石をやる役者が吹けば飛ぶようなまるで屁のような男で、まるきし存在感がない。子規なんかも親近感を持てない馬鹿面をしている。探せば他にもっとましなのがいたのではなかろうか。

 次に脚本。お見合いの席で漱石が鏡子を気にいったのは、彼女が「遠慮なく笑ったから」ではなく、「口の中の金歯を隠そうともせず無遠慮に笑ったから」なので、ドラマはちゃんとこの金歯まで映すべきだった。熊本での結婚式では猛烈な暑さのあまり、新郎も新婦の父親も全員上着を脱ぎ捨てているのだが、それもちゃんと描かれてはいなかった。
 鏡子が入水自殺に至る経緯も、その描写も、突っ込みが甘い。

 これを要するに、脚本も演出も昼行燈のように曖昧模糊としていて、見世物としての切れ味が鈍いのである。

 まあいまどき平成末期の体制翼賛放送局に過重な期待を寄せてはいけないのだろうが、偏向政治報道に夢中になるあまり文藝娯楽物には手が回りかねたような、トロイトロイ出来栄えであった。


 ほんたうは面白くもなきお笑いに追従笑いしているタイタニック上の我ら 蝶人


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河野裕子歌集「あなた」を読んで

2016-09-28 13:21:27 | Weblog


照る日曇る日第898回


戦後日本を代表する歌人が出した15冊の歌集の(短歌の他に長歌、ソネットも含めた)無慮無数の秀作の中から、そのエッセンスをより抜いて夫、息子、娘が解説した、文字通り珠玉の1冊である。

私は河野裕子という人に会ったことはないけれど、さだめし優しくて繊細な、「日本の肝ったま母さん」のような人だったのではないだろうか。

 婦といふはよき文字なり帚もち掃き暮らすうち年を取りゆく

この人の歌は、不思議なことに、たとえそれが悲しい歌、寂しい歌でも、勁く明るく元気な歌だなと思う。それはこの人が夏の日向に咲く大輪の向日葵のような向日性のおおきな「愛」の女性であり、古代なら天照大神、近代なら与謝野晶子を思わせる輝かしい生命力と神話的な存在感を天賦されていたからではないだろうか。

 菜の花のあかるい真昼 耳の奥の鼓室で誰かが ぽ、ぽんぽん

琵琶湖を昏い水盤に譬えるような宇宙的、巨視的なまなざしは、そこから発しているのではないだろうか。

 たつぷりと真水を抱きてしづもれる昏き器を近江と言へり

だからというて彼女が大ぶりで大雑把な歌を詠っていたわけではない。
ホタル、オタマジャクシ、朝顔、コスモス、かたばみ、ペンペン草、猫、幼いころから親しんでいた身辺の動植物の断片はまことに生き生きしている。

 金魚鉢の中に入れば水ぬるく あ、ぶつかる横あ、ぶつかる後ろ
 何でい、へつちゃらでい ガワガワの外皮立てゐるキャベツの畑

そして自他の人事百般に注がれる歌人の視線は、刺すように鋭い。

 この医師の人物をはかる目つきして嫌なわたしよ診察室出づ
 名前呼ばれ診察室に入るとき嫌だらうなあ医者のこころは

この歌集を読むと、歳をとるごとに作品から修飾の過剰が削ぎ落され、派手な油絵から簡素な水墨画に変遷していくような歩みを観取することができるし、その遥かなる昔より彼女は死を意識し、死の影の下を歩んできたことも分かるのである。

 具体とか細部が大事と言ひながら大雑把でよろしと批評を括る
 冬枯れの日向道歩み思ふなり歌は文語で八割を締む

2010年8月12日、河野裕子は、正岡子規の有名な遺句に匹敵する絶唱三歌を遺して、この世に別れを告げた。

 あなたらの気持ちがこんなにわかるのに言ひ残すことの何ぞ少なき
 さみしくてあたたかかりきこの世にて会ひ得しことを幸せと思ふ
 手をのべてあなたとあなたに触れたきに息が足りないこの世の息が


  黙々と凡愚を貫けばそれもまた非凡なる生と呼ばれるべきか 蝶人



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自由律詩歌 その7

2016-09-27 11:23:32 | Weblog


ある晴れた日に 第405回



突然お汁粉が食べたくなりました

冷雨に打たれながら蝶や鳥はどうしているのだろう

いいねいいねどこがいいのかわからないけど

すべてのイタドリの中に蛇が居る

妻君がいないと不安になる

神々もご照覧あれ

とんでもハップン

突然仕事が舞い込んできた

びっくりぽん!

ところがぎっちょんちょん

あれか、これか

あれがこれなのか

基督も博士もいない聖夜哉

口では言えないから、ガンガン足を踏みならしているんだ

お前らなんか死んでしまえと言えないから、自分の頭をガンガン殴っているんだ

美しい七十代

壊れたジッパーになっちまった

ヘイトスピーチに驚いてスピーカーが壊れた

お客さん、謝罪は金じゃあありませんぜ

元従軍慰安婦の皆さん、これで良かったでしょうか?

最終的に不可逆的ずら

国内亡命者の冬である


   耕ちゃんさえ笑うておってくれたなら俺たちなーんも要らへんわ 蝶人


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電信柱は夢を見る~これでも詩かよ第189番

2016-09-26 10:44:32 | Weblog


ある晴れた日に 第405回



谷戸の真ん中の電信柱のてっぺんには、
いつも大きな鳶がとまっていた。
ところが半年前から、その姿を見かけなくなった。

きゃろらいんちゃろんぷろっぷきゃりーぱみゅぱみゅ
げんなじるふとべんすきいまるこーにぱっぱあーの
いったいこれはどうしたことだろうね。

どうしたことかと訝しんでいたのだが、せんだってその理由が分かった。
いつの間にやら、電信柱が激しく傾いていたの。
これでは鳶だって、おちついてあたりを睥睨できないでしょう。

ほかの電信柱はどうなんだろうね?
近くの電信柱を見上げると、大きく右に傾いているではないか。
その隣のコンクリートのやつも、その隣もやっぱり右に傾いている。

きゃろらいんちゃろんぷろっぷきゃりーぱみゅぱみゅ
げんなじるふとべんすきいまるこーにぱっぱあーの
新事実だ! 新発見だ!

これは最近ますます右寄りに傾いている凶暴な政権党員の仕業ではないだろうか?
急いでわが在所の電信柱をきょろきょろ探したら、左に傾いているものも、ちゃんとまっすぐ立っている電信柱もあったので、ちょっとばかり安心したよ。

でも、それはもしかして、おらっちの目の錯覚ではないだろうか?
と少し心配になったものだから、県道204号の電信柱を、この眼で、まじまじ、「まあけっとりさーち」してみました。

すると、
右 32本
左 23本

まっすぐ 11本  
合計 66本
という結果だった。

ところでいま気がついたんだけど、
「右傾は逆から見れば左傾」なんだね。
これって、わりとあーたらしい物の見方ではないでしょうか?

きゃろらいんちゃろんぷろっぷきゃりーぱみゅぱみゅ
げんなじるふとべんすきいまるこーにぱっぱあーの
おどろきもものきさんしょのき

でも右顧左眄せず自立している電柱は、なんとなんとたったの6分の1だったんだ。
さあて、ここで問題です。
「どうしてあんなに多くの電信柱が傾いているのでしょう?」

「電信柱の荷物が、重すぎるから」
ブッ、ブ、ブ、ブ、ブウーッ!
おねえいちゃん、そんな生易しいことではニャアですぜ。

「フクイチで手いっぱいの東電が、電信柱どころではないから」
ブッ、ブ、ブ、ブ、ブウーッ!
おにいさん、世の中なめたら、いかんぜよ。

草木も眠る丑三つ時、電信柱は夢を見る。
毎晩まいばん、夢を見る。
頭に天が落ちてくる、怖いこわーい夢なんだ。

山河も眠る丑四つ時、電信柱は等伯が描いた「松林」になる。*
「おいらはたしか電信柱だったのに、どうして松になってるんだろう?」
芸者ワルツを歌いながら、電信柱はゆらゆら揺れる。

天井が落ちてくる恐怖に耐えられないおらっちが、
夜な夜な身体をくの字に折り曲げるように、
電信柱も、柱を曲げる。クックックッと、背骨を曲げる。

きゃろらいんちゃろんぷろっぷきゃりーぱみゅぱみゅ
げんなじるふとべんすきいまるこーにぱっぱあーの
このせつ、電信柱も、大変なんだ。


 *長谷川等伯(1539-1610)晩年の傑作「松林図屏風」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%BE%E6%9E%97%E5%9B%B3%E5%B1%8F%E9%A2%A8


  なんでもかんでもマイウーと褒める男たまにはマズイマズイと言うてみよ 蝶人


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邦画3本立てずら。

2016-09-25 09:24:24 | Weblog


闇にまぎれて cyojin cine-archives vol.1078&1079&1080


○市川昆監督の「野火」をみて

戦争という極限状態で生き延びるために人肉を食うことができるか否か?
大岡昇平原作のこの映画の主人公はそれを断固拒否するが、私だったらそれは無理矢理猿の肉だと思いこんで口にするかもしれないと思った。
時に凡庸な演出をする市川選手だが、ここでは船越英二ともども深刻な戦争悲劇のおおむね妥当な再現に努めている。

○三村順一監督の「キタキツネ物語」をみて

動物を都合よく人間化して勝手にお涙頂戴のメロドラマに仕立てるのは犯罪的な行為ではないだろうか。珍しい動物の生態をちゃんと描きたいなら科学的なドキュメンタリー映画にすればいい。

○中原俊監督の「優しい12人の日本人」をみて

アメリカ映画の「12人の怒れる男たち」を真似したのだろうが、それを本邦に持ちんだら、とんでもない日本人論映画が出来あがった。登場人物の一人ひとりがみな私たちの身に覚えのある存在ばかりで三谷幸喜の脚本の切れ味は抜群である。

裁判官が命懸けで担うべき裁判を訳のわからん一般大衆におしつける裁判員制度などやめてしまえばよいのだ。



   ああグルダ!フィガロ変奏曲を耳にせず泉下の人となるなかれ 蝶人

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なんちゃら映画3本立て

2016-09-24 15:19:11 | Weblog


闇にまぎれて cyojin cine-archives vol.1075&1073&10747


○ジェームズ・マンゴールド監督の「コップランド」をみて

初めは昼行燈だった保安官シルベスター・スタローン選手が終映間際に決死の大活躍をして悪党揃いの警官をぶっ殺すのだが、いくらなんでもうすのろずらの時間が長すぎます。


○フランシス・ローレンス監督の「コンスタンティン」をみて

もし本当に地獄や天国があったらどうしよう?という恐怖にとらわれてしまうような不気味なホラー映画。出演したキアヌ・リーブスやレイチエル・ワイズも内心恐ろしかったに違いない。


○ジェリー・クレイマー監督の「ムーンウォーカー」

マイケルジャクソンのこれまでの映像をただつなぎ合わせただけのどうしようもない映画。いな映画のていをなしていないビデオクリップずら。


CMなんてまあこんなもんさと作ったCMをCMなんてこんなもんさとみんなで見てる 蝶人

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岩波文庫版・中村健二訳「キーツ詩集」を読んで

2016-09-23 09:25:37 | Weblog


照る日曇る日第898回


ジョン・キーツ(1795-1821)はイギリス・ロマン派を代表する詩人で、たった25歳の若さで幸い薄きこの世をみまかった。

この文庫本ではその主要な作品を、明快な日本語でクイクイ読むことができるが、英文では相当難しいのではないだろうか。

私の尊敬する先輩の一人は英文科でこのキーツを、もう一人は仏文科でロートレアモンを卒論の対象に選んだが、その理由を尋ねてみると、いずれも遺された作品が少ないからやりやすいということだった。

キーツも短命だったかそりゃ少ないといえば少ないが、作品の多くがミルトンのようなしんねりむっつりした歴史劇の総括文のような趣で、こんなのに向き合うと結構消耗したのではないだろうか。

ギリシアやローマ神話に通暁している人でなければあんまり興味も関心も湧かないのではないだろうかと思ったが、違いますかねHさん。

しかしキーツときたら大したもんだ。よくも20代にして古典の教養を踏まえ、そのうえで近代的な個我のほむらを鮮やかに燃え立たせることができたものだ。


  小便の饐えた臭いが鼻をつくパンツとズボンは履いているのに 蝶人


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自由律詩歌 その6

2016-09-22 10:09:18 | Weblog


ある晴れた日に 第404回




雨よ上がれ

アサギマダラはフジバカマが大好き

金より体だが金も欲しい

阿呆犬よ吠えるな

もう腕立て伏せは無理だ

この恨み晴らさでおくものかあ

ビタミン剤なしで今日をぐあんばれない

犀の角のごとく歩まん

此岸から彼岸彼岸から此岸へ

雲雀を見たい聴きたいいますぐに

あの難関を突破しなければあの詩は書けない

世界苦よりも虫歯の方が痛い

自己滅却の罪重し

人殺しするために己を殺す勿れ

あの日あの時私の右手を強く強く握りし人よ

行けども行けどもこの道は死骸累々

三毛猫が横腹を太陽に晒している

季節よりも季語の中に季節あり

季語を捨て山頭火旅に出る

もっと、もっと、もっと!

海辺より聞こえてくなり三尺玉

「今がいちばん若いのよ」と言って妻が私を励ましてくれた

太平洋旅行社のバスが鎌倉街道を駈け抜けた

病院へ行くと病気になる

おいらはいつでも丸腰だぜ

いつでも最新作が代表作

とくとく徳度する

無意味なことばかり言い続けたい


因業な奴め

ミク友とミルクホールで飲むミルク

嬉々として空母に乗り込むガキ大将

死んで花実を咲かせやしょう

安倍蚤糞は海外逃亡

さっき朝だったのにもう夕暮れか

人は人我は我なりまた朝が来る

快晴だ 鳶がピンヒョロと鳴いている

快晴なので鳶がピンヒョロではない歌を唄ってる

寄らば斬るぞえ

ひとさし舞おうぞ無に帰する前に

ひとさし舞ってみしょうぞすべてが無に帰する前に

耕君、蓮佛美沙子のカレンダーが来たよ!

死を畏る勿れ


   果てしなき空騒ぎ続く列島を次々に襲う雨台風 蝶人
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平成中公不完全版全集の「谷崎潤一郎全集第3巻」を読んで

2016-09-21 10:56:30 | Weblog


照る日曇る日第897回

ここでは彼一流の悪魔主義を徹底的に発露してみせた「お艶殺し」「お才と巳之助」を柱に「金色の死」に収められた「創造」「独探」、それから天才児の末路を描いた「神童」、藤原時代の彫刻師の内面を描いた戯曲「法成寺物語」などをスクープして読み応えがある。

「お艶殺し」と「お才と巳之助」は、いずれも凡夫が妖艶な悪女に地獄の底まで引きずり込まれる谷崎得意のマゾヒズム小説であるが、この被虐の世界の裏も表も奥の奥まで舌舐めずりしながら書きつくす作家の透徹した筆致は空恐ろしいほどである。

本人は「これは藝術にあらず、通俗でげす」などとやに下がっているが、とんでもない。こういう作品こそがこそは大谷崎独自の真骨頂であり、彼が本邦を代表する大作家である所以なのである。
「独探」ではどことなくゾルゲやラフカディオ・ハーンを思わせる謎めいた外国人が登場して谷崎本人と思しき作家との交流をつづった物語であるが、最後はこの男が題名通りドイツのスパイであったことが判明して幕を閉じる。

 それでも谷崎は彼をスパイとは思い切れないでいたようだが、まことに興味深い人物ではある。


    道端に落ちた栗は誰のもの誰のものでもないと私が拾う 蝶人
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平成中公不完全版全集の「谷崎潤一郎全集第10巻」を読んで

2016-09-20 12:54:03 | Weblog


照る日曇る日第896回

なぜ不完全全集かといえば、前にも述べたとおり旧全集にはあった「源氏物語」の翻訳を除外し、手抜きの作品解説でお茶を濁しているからだ。赤新聞の読売に買収されてからの中央公論に昔日の文藝旗手の面影は完全に失われたことは、この一事をとっても明らかである。

されど本巻におさめられた「アヴェ・マリア」「肉塊」はことのほか読み応えがあり、前者におけるニーナ、後者におけるグランドレン嬢への、これでもか、これでもかという無条件拝跪こそは世紀のマゾイスト谷崎潤一郎の真骨頂であり、小説に仮託しておのれの性癖をここまで暴かざるを得なかった作家の蕃勇と病根の深さこそ「悪魔主義」と称するに足りるものだろう。

そのほかに作家が傾倒した映画の台本なども収められているが、特にどうということはなく、キネマ初期の習作といえよう。


  ずりさがりまたずりさがる高音部を額にシワ寄せ持ち上げている森麻季 蝶人
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女性映画3本立て

2016-09-19 11:32:54 | Weblog


闇にまぎれて cyojin cine-archives vol.1072&1073&1074



○ビセンテ・アランダ監督の「女王ファナ」をみて

大航海時代の実在の女王の悲話ずら。結婚した王フェリペを熱愛するあまり嫉妬に狂い精神的に異常をきたし、監禁されて長い後半生を送ることになってしまう。
いまでもこういう一途な女性は大勢いるが、悲劇の女王と違って別の場所に隔離されたりすることはない。


○ジョセフ・ルーベン監督の「愛がこわれるとき」をみて

ジュリア・ロバーツが暴力夫から逃げ回って最後は殺してしまうまでの怖悲しい物語ずら。シューベルトの「死と乙女」を掛けながらレイプする映画があったけど、ここではベルリオーズの「幻想交響曲」を鳴らしながらそれをする。

 そういう手続きがないと興奮しない症候群の人は厄介だ。


○シェイニー・ゲイブル監督の「ママの遺したラヴソング」をみて

亡き母を思慕するスカーレット・ヨハンソンが実の父ジョン・トラボルタと巡り合うまでのやっさもっさを描きます。この2人がなかなかいい味を出しています。


   検閲より恐るべきは自主規制と喝破せし人百壱で逝く 蝶人
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自由律詩歌 その5

2016-09-18 11:11:03 | Weblog


ある晴れた日に 第403回


三時に咲くから三時草 

お辞儀をするからお辞儀草

へくそかずらでは可哀想 

そこで誰かがもぐさ花と言うた

ぐるぐるまわれ矢車草
今は何時だ時計草
政治家が政治を辞めると嘘をつき

競技場、エンブレムの次は五輪撤回

そういえば会社の社員番号まだ覚えてる奴隷の番号

デザインの独創性なんて風にそよぐ葦

「九月になれば」と思っていたがなったらなったでいろいろあらあな

モンシロチョウ、
誰が何といおうとも
蝶よ花よと生きていくのさ

70を過ぎてもビンビンなんんですってョあちらの御主人

50を過ぎても見境なしなんですってョあちらの奥様

豚男豚女大繁殖中平成日本列島

9月10日鬼怒川で鬼が怒った

悪夢の時代を生きていく

気狂いに刃物を持たせてしまった

空は晴れたが、心は闇だ。

杉作、日本の夜明けはまだまだ遠いのお。鞍馬天狗

ほんまにこの狂犬鎖につないでおかないとなにをするかわからんな

一度嘘をつくと何度でも嘘をつくようになる

普通の人が住む普通の国

特別の人が住む特別の国

念なう早かった

1億が総白痴となり総下流

1億が総右翼となり総懺悔

1億が総活躍で総玉砕

1億総下流総白痴総懺悔総玉砕

これやこの佐々木眞公十四歳のしゃれこうべ

それともいっそお前と死ぬか

あんぱんまんもがんになる

金と健康が失われると残るは不安と絶望のみ

10月3日に蝉が鳴く

10月9日にも蝉が鳴く

樹下に千匹の幼虫蠢く

みんなみんな冷たかったよ。

質より量のダニエル・バレンボイム

「大衆の原像」なんて吉本選手の頭の中にしかなかった

そんなに人を殺してみたければ、まず自分から殺してみよ

可愛い子には戦争をさせよ

諸国一見の僧になりたし


水島寒月の博士論文「蛙の眼球の電動作用に対する紫外光線の影響」を読んでみたい秋の夜 蝶人


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ドラマな話。

2016-09-17 11:23:02 | Weblog


狂言畸語輯&バガテル―そんな私のここだけの話 op. 242


以前NHKの衛星放送でやっていた「グッド・ワイフ」が気に入って毎回欠かさず見ていたのだが、ある日予告もなしに突然打ち切りになってしまった。以来その続きを待っているのだが、いつまで経っても放映されず、代わりに下らない韓国ドラマとか誰も見ない下らない超大作「精霊の守り人」なんてのをやっている。

仕方なく朝ドラの「とと姉ちゃん」を時々見ているが、主題歌の歌の文句が何回きいても聴き取れない。なんか「ありがとう」と誰かに何かを感謝しているらしいのだが、意味不明。高音部になると発声が息苦しく、音程が外れるのも気になるが、いったい誰が歌っているのだろう。

これは旧友澤田選手が編集長をしている「暮らしの手帖」の発行者&編集長をめぐるあれやこれやの物語だが、商品テストにクレームをつけるメーカーの気持ちはよく分かる。

公的機関でもないいち出版社が、製品を批評するのは構わないが、消費者全体を代表する立場から製品の価値判断をする正義の味方を自認したとすれば、やはり行き過ぎだろう。

最近のドラマの大半が刑事ものである。男も女もおのれが権力の圧政の下に隷従しているしがない民草であることすら忘れて、権力の走狗の奮闘物語に夢中になっているようだが、そのうち海外に堂々と侵略を開始し始めた「花の自衛隊」ドラマに飛び付くに違いない。

スーパーウーマンが大活躍するドラマも後を絶たない。
私はここしばらく「家売るオンナ」というのを見ていたが、これがちょっと面白かった。能面のような顔をした美貌だけが取り柄の演技の下手くそなヒロインから、これしかないという誇張した喜劇的な側面を漫画的にひきだし、みごとに役に生命を賦与することに成功していたのである。

まわりの役者も適材適所で、毎回「家を売る」というテーマから派生する現代人の生活断面を鋭く切り取ってエンターテインメントに仕上げていく手腕はただものではない。よほど腕利きの脚本家が参画しているのだろう。

ワンクールが終って一応のハピーエンドになったばかりだが、ヒロインの過去の秘密はあばかれないままなので、シリーズ化にしてほしいものである。


 この夏も帰省せざりし故郷をグーグルのストリートビューで眺める 蝶人

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スピルバーグ2本立てずら

2016-09-16 10:04:21 | Weblog


闇にまぎれて cyojin cine-archives vol.1070&1071

○スティーヴン・スピルバーグ監督の「タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密」をみて

タンタンの主人公やイラストは非常にお洒落なのに、アニメと実写を最新技術で融合してデッチ上がられた映像世界はそういうハイセンスがてんで感じられない。スピルバーグのアメリカ映画ではなく、ベルギーとフランスの合作でもっと正しく作るべきだろう。

○スティーヴン・スピルバーグ監督の「太陽の帝国」をみて

中国大陸を侵略する「太陽の帝国」を神格化する英国人少年の命懸けの苦労話。
いくら飛行機や零戦が大好きな少年にせよ、あそこまで大日本帝国の軍隊やら軍人を理想化できるものだろうか甚だ疑問に思う。一体スピルバーグはなにを考えているんだろう。


 成長はもうでけへんのやから公平な分配を考えてほしいわ政治家の皆さん 蝶人

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