ある晴れた日に第304回
斉藤斎藤の「NHK短歌」終りぬこれだけは受信料払う値打あったな
小説を一冊書くのは大変なことまして面白い小説となればなおさらのこと
金曜の午前中に訪れたがとっくに閉店していたよ「カフェ金曜の朝」
杜若菫連翹藪椿花咲き乱る恋の細道
官邸の闇をうかがう密偵ドロンたった一機に夜も寝られず
もし私が作詞家なら絶対に自分で作りたかった歌「とんびがくるりと輪を書いたホーイノホイ」
もし私がライターだったら絶対に書きたくない文章「そこには自分探しの旅に出たまま行方不明の自分がいた」
おじいちゃんがアジア大陸を侵略したなんて見ざる聞かざる言わざる僕ちゃん
展覧会に雑巾の絵を出すといういったい誰が買うというのか
弥生三月雲南桜草咲く頃そんなに大切な人だったと気づいてももう遅い
日一日日本嫌いになる日本人多し日本晴
父親の仕出かした罪業の落とし前をつけに旅立つ二人なりけり
蛇長く長長き夜をひとりCOME ON寝む
過ぐる十年湘南の四月二十六日は七割が晴れ
空は晴れ桜は咲いても心は闇だ四月はいちばん残酷な月
隙あらば高級ブランドのスリッパを叩き売るそれがニッポン人ぞなもし
人はみな発達障害にしてアインシュタインもエジソンも自閉症だといい加減なレッテルを貼りはやめてけれ
わが軍は吾輩のもの米帝が行けと言うなら地の果てまでも
月の沙漠で喉が乾けば君が鎖骨の甘露を汲まん
ある作家の奥さんは銭洗弁天で夫の原稿用紙を洗ったと永井龍男いうさてその後いかがなりしや
「ここで飛べここがロドス島だ」と思いつづけいつのまにやら七十年過ぎたり
幻想の共同体の暗がりで国家国家と喚く者ども
世界中「目には目を」となり行きて井筒『コーラン』を読み返す日々
寒くなれば冷たい暖かくなれば熱い風が出るそんなエアコンと暮らしています
「滅びるね」と広田先生はまた言うだろう平成日本の混沌を見て
花冷えや文楽のネット購入に失敗す
桜咲く妻と撮り合う遺影哉
生きることそして死ぬこと桜散る 蝶人