西暦2016年水無月蝶人狂言畸語輯&バガテル―そんな私のここだけの話 op. 233
無理矢理文語体で短歌を作ろうとすると、ラテン語で卒論を書いた西脇順三郎になったような気分になる。おらっち寂しいアリストクラートやねん。6/1
「猿蓑」で去来が「鳶の羽も刷ぬはつしぐれ」とやったら芭蕉が「一吹き風の木の葉しづまる」とつけた。これはちょっと凄いものです。すると蕪村さんが「一日に一度「一吹き風の」を口の中に転がすようにしないと私の口に茨が生える」と言った。吉増剛造「我が詩的自伝」6/1
「不明の息遣い」っていうのが芭蕉さんには必ずあるのね。「鴨の声ほのかに白し」。何か聞こえてくるじゃないの。万物の不思議な所から美の声がするんだよ。吉増剛造「我が詩的自伝」
蕪村さんにも西行さんにも芭蕉さんのような獣性、正類性はない。蝉、猿、馬、鴨、蛙………生動してるな。芭蕉さんの「軽み」というのは獣の言葉だった。吉増剛造「我が詩的自伝」
ジェラール・ド・ネルヴァルの「黄金詩篇」の詩句の「愛の神秘は全層の中に息う」は、「愛の神秘は金属の中に息う」の誤植だが、吉増剛造氏は後者もなかなかよいではないかという。6/3
モハメド・アリが死んだ夜、心臓がかなり傷んだ。父も母も心臓で死んだからきっと私も心臓で死ぬだろう。ニトロは呑まずにじっと耐えてその予行練習をした。6/4
昭和天皇が、米軍駐留の日米安保体制と武装放棄の平和憲法を抱き合わせで望んだのは、共産主義を懼れ、天皇制の護持を願ったからであった。6/6
外添都知事に対する若い記者たちの質問、追及の弱さ、甘さに驚く。安倍の会見の時もそうだが、みな未熟な青二才ばかりで、歯がゆい限り。都民や国民になり変って疑惑を徹底的に追及しようとする姿勢も気迫も勉強の成果も感じられない。少しは欧米の記者の質問の仕方を学んだらどうだ。会見中に回答をPCに入力するのは止め、取材対象に肉薄せよ。6/7
日米安全保障条約の案文からして、もし中国との間で尖閣諸島で何か事が生じたとき、自動参戦する義務は米軍にはありません。だから参戦しなくても別に条約違反ではないのです。白井聡「戦後政治を終わらせる」
生産力の向上に寄与しないと判定された人は、社会によって包摂されなくなり、そのプレッシャーによって追い込まれます。白井聡「戦後政治を終わらせる」
2016年の今日、「希望は戦争」はレトリックではなくリアルな話になりました。もちろんそれは資本にとっての「希望」です。経済成長ゼロの状況を打開するために大破壊をやって焼け野原が出現すれば成長が再開できます。白井聡「戦後政治を終わらせる」
来るべきポスト55年体制の政治は、明治時代から現在まで綿々と続いてきた「国家は国民に優越する」という原理を、その原理を奉じる政治家、政治勢力もろともに一掃するものでなけれなりません。白井聡「戦後政治を終わらせる」
外山雄三が作曲した「管弦楽のためのラプソディ」の中にある日本は、偽の日本、あるいは表層のニッポンである。6/12
クラシック評論家の宇野功芳氏が10日に86歳で亡くなったという。この人は政治的にはとんでもない復古主義者だったが独自の臭覚的聴覚と鋭い直観を持っていてとりわけシューリヒトや朝比奈隆、クナパーツブッシュなどの音楽の正しい聞き方を無知な我われに噛んで含めるように教えてくれた。合掌。6/13
談志の落語は、指揮者に例えるとクライバーの音楽のような即時的感興にみち溢れていた。一語一音に込められた生命の切ない輝きが懐かしい。6/14
たとえそれが悪人だろうが善人だろうが、「10万人といえども我行かん」とするとき、雲霞のごとく日本全国から湧き起こって来るバッシングの嵐。これが平成ニッポンの村八分の威力だ。6/15
マスゾエ辞任に続く都知事選の話題によって、人々はマスゾエよりも重要な問題があることをすっかり忘れ去ってしまうことだろう。6/16
先日はベートーヴェン全集を、昨日はワーグナー全集を衝動買いしてしまったが、改めて在庫の山と谷間を調べてみると、まったく同じものを既に何年も前に購入していたことが判明した。安物買いの銭失いであると同時に進行するアルツハイマーの証左であろう。6/17
音楽よ、俺を助けてくれ。6/18
経済書は一瞬にして腐る。値がつけられない。神田「八木書店」主
ハープシコードや弦楽器の再生は難しい。いいスピーカーが欲しいのだが、哀しいことにお金がない。6/19
心に優しさの持ち合わせがない人は、看護や介護の仕事に携わってほしくない。6/20
小田和正や南こうせつの歌曲を支えている低次の抒情の陋劣さに耳を覆いたくなる。6/22
本邦を訪れる海外からの観光客は年間2000万人を超えたそうだが、英国のリバプールを訪れる人は年間5000万人だという。6/23
思えば「1リットルは10デシリットル」くらいの豆知識でこの世を泳ぎ渡ってきたなあ。6/23
アマゾンやauなどにちょっと問い合わせをすると、すかさず「いまの社員の対応はいかがでしたか?5段階で評価してください」などとメールが舞い込む。嫌な時代になったものだ。6/20
憲法改悪の悪だくみを隠ぺいする安倍蚤糞の子供だましの姑息な目くらましに、またしても引っかかる愚かな愚かな「大衆の実像」。6/23
山田耕筰は、その人となりとその思想においてかなり胡散臭い人物だが、本邦のクラシック音楽、とりわけ交響曲、管弦楽、オペラの基礎を営々と築き上げた偉大な音楽家であった。6/24
英国がEUから離脱できるんだから、沖縄が日本から、日本が米国から離脱できないことはないだろう。やってみなはれ。6/25
お互いに東西の落陽の老大国同士、この際腐れ縁の米国と手を切って、EUから離脱した昔馴染みの英国と、新たな日英同盟を結ぶという手もある。6/26
今朝ニイニイイゼミの初鳴きを聞く。今年もまた夏が来た。6/27
私の作品に「麒麟」というのがありますが、あれは「麒麟」という文字から作品が生まれました。昔の人が「言霊」と名付けたのも寔に無理はありません。言葉は1つひとつが生き物であり、人間が言葉を使ふと同時に、言葉も人間を使ふことがあるのです。谷崎潤一郎「文章読本」
自公政権を支えているのは、自公の熱烈な支持者ではなく、政治にご興味をお失いあそばされ、「ろくな政党も候補者も皆無ずら」とのたまわって、投票にすらお出かけにならないご立派な有権者諸君であるが、こういう連中こそ万死に値するのではないだろうか。6/29
「東洋のスイス」が突如生まれいで「中東のスイス」と手を握る夢 蝶人