夢は第2の人世である 第143回
西暦2024年葉月蝶人酔生夢死夢百夜
既に世界中が戦争状態なので、戦争から目を背ける映画が、世界中で大ヒットしている。8/1
小二郎がもっと声を大にして仲間たちを説得すれば、近藤選手を死なせなくとも良かったはずなのに、しばらくすると彼の身代わりみたく組織を抜け出して外国に留学したのは、いったいどーゆー風の吹き回しだったんだろう。8/2
「お父さん録画した?」という息子の問いかけが絶え間ないので、それが実際の声なのか、電話の声なのかもわからずに、いまも続いている。「お父さん、録画した?」8/3
私の目の前で一人の知人が斬り殺されたので、何故だと訊ねたら、「こいつはお尋ね者の敵の内通者なんだ」というのだが、そいつをどれくらい信用したらいいのかが分からない。8/4
日曜日が来るたびに、僕らはいやいやながら、教会へ行かされた。僕らはやけくそになって、「ニチヨオサンビテエー、ニチヨオサンビテエー」と怒鳴りながら、仕方なく教会へ行ったんだ。8/5
世界中でどんどん人が死んでいくが、おそらくこの国では、おらっちだけがいつまでも死なないで生き残るだろうという噂が一部で流れていたようだったが、意外にもあっさり死んぢまったようだった。8/6
町内会長は、すぐに酔っぱらうのだが、酔っぱらうと、すぐに巨大なマサカリを振りかざして町内の家々に乱入するので、住民は怖れ慄いていたのだ。8/7
なんでこんな悲惨な事件が起こったのか、てんで分からないのだが、ともかくまたしても関東大震災が起こってしまったので、おらっちと次男は、車で大和の施設にいる長男の救出に向かい、妻は一人で自宅を守ることにしたのよ。8/8
長男を無事に助け出すことが出来たので、これ幸いと3人で車に乗って自宅まで帰ってきたら、ライフル銃で武装した正体不明の怪しい男が玄関口にいたので、急いで車から降りたおらっちは、コルト1発で彼奴を仕留めたのよ。8/9
コウ君が「タナカミナミのビデオ録ってくださあい!」と絶叫するので、急いで録ったのだが、60分の正規版ではなく、5分間の短縮版だったので、こはいかに!?と頭を抱え込んでいるところ。8/10
われは国内ではそれなりのレベルの選手であるし、われの唯一無二の必殺技が評価されて、今回の五輪に出場したのだが、いざ初戦で相手と対戦したものの、われはわれの必殺技をど忘れしてしまい、予選で敗退の憂き目にあったのよ。8/11
モモとマツヤマのコンビが、初めて映画で主演したので、その記者会見が開かれることになったのだが、彼らのテーノーぶりを熟知しているジャーマネのおらっちは、ハラハラドキドキしながら見守っているとこ。8/12
2つの連続ドラマの放映中に、同時多発的に爆発シーンが起こったので、上を下への大騒ぎとなった。8/13
極右の富士テレビで「ガチャンピン、ムック、ひらけポンキッキ!」と歌いながら踊っていたら、社員全員からシカトされたので、おらっちは彼奴ファシストどもから嫌われているのだと分かった。8/14
バスに乗り遅れるなとばかり、みんなも行く戦争に行ってみたが、いいことは何一つなく、おらっちの歩兵大隊のうちで、無事帰国できたのは1%だけだった。8/15
パクられた有名芸能人の牢屋情報を、ネットでライブ公開しているそうだ。が、おらっちは絶対に見ないだろうな。8/16
社長の私が留守中に、私のダミーのAIの評判を聞いたら、当の私よりも高く評価されていたので、「だからAIなんてゼッタイ信用できないんだ!」と確信した私は、ダミーの首根っこを引っこ抜いて、滑川に投げ捨ててしまった。8/17
サンフランシスコで買ったお気に入りの腕時計を修理に出したのだが、いつまで経っても返ってこないので、「まだかいな」と問い合わせたら、さる大金持ちの外国人が「いくらでも買うから」と言って、大枚はたいて持って行ったというので、おらっちは激怒したよ。8/18
トミタ課長の格調高い演説を、わいらあ革命3兄弟が嘲笑ったので、動揺した課長は、わが軍のミサイルの矛先を全部クの字に折り曲げてしまったので、せっかくの台湾有事にはさっぱり役立たなかった。8/19
ド・クインシー公爵は、昔白いドレスの若い娘の後ろ姿をみて突如ムラムラし、背後から抱きすくめて、まるでさかりのついた雌雄の犬のように交尾したのだったが、20年後に自分の隣に優美に微笑んでいる公爵夫人がその娘だったとは、我ながら信じられなかったよおだ。8/20
金ヶ崎で浅井軍に敗れ、信長から殿軍を命じられた秀吉は、「ここでなんとか生き永らえたら、甘い汁も吸えるだろう」と考えることもできたが、俺たち下っ端には、まるで救いのない、地獄のような後退戦が続くのだった。8/21
聞こえず喋れない少女の世話をしていた知り合いの官女が、娘の財産を蕩尽したというので、2年後に北町奉行に検挙され、酷い拷問を受けているそうだ。8/22
巴里の3つ星レストランへ行ったら、爺のくせに若者の顔をしたアラン・ドロンが、レストランじゅうにつるしたイカめがけてライフル銃を撃ちまくっているのだが、こいつが百発百中なので、店長もボーイも「イカス、イカス、イカス、セ・レ・レガンス・ド・ロム・モデルヌゥ」とフランス国歌のように歌いながら拍手喝采している。8/23
閉会式で演奏された曲は、親会社の重役でさえ聞いたこともなく、誰一人理解できなかったが、そこがまた、こよなく佳いのだった。8/24
100m短距離走で優勝したのは、アパッカで覆われたフローライン人間だったが、ダントツでゴールインしてからも、スピードを少しも落とさずに、遥か彼方までぐんぐん走っていくのだった。8/25
タクちゃんヒーちゃんとおらっちは、電気的に繋がっているので、双方の様子を瞬時に伝達したり、共同でモノを作り上げることもできるのだった。8/26
余りにもたくさんのロケットなので、場内管理者は適当な感覚をおいて「出発」と書かれた旗を振ると、待機していた大中小のロケットが、その都度焔を吹いて打ち上げられるのだった。8/27
視聴率が取れるテレビの新番組の企画を頼まれて、いろいろ考えてみたが、結局お涙頂戴の母ものくらいしか頭の中に浮かんでこないので、我ながら嫌になってしまったずら。8/28
番ったのか、まだ番わないのか知らないが、昨日と同じ雌雄のキチョウは、庭のシュウカイドウの上で、いつまでも戯れている。8/29
谷間に聳え立つこの古い尖塔には、東西南北に無数の小さなスタジオ兼用の部屋があり、そこでは複雑怪奇にしてデリケートな写真が撮れるので、世界中のキャメラマンの憧れの的になっているそうだ。8/30
世の中のテレビがことごとく阿呆莫迦番組を放送しているので、それとは正反対の、真摯な超優良番組を作ったのだが、残念ながら視聴率ゼロだった。8/31
「耕君は中脳辺りが弱いんでしょう」と正美先生は言うておった 蝶人