蝶人狂言綺語&バガテル―そんな私のここだけの話第373回
○社長就任式/本人のあいさつ
このたび第35期株主総会ならびにその直後に開かれました取締役会におきまして、当社代表取締役社長の大任をおおせつかりました城山裕次郎であります。
皆様ご高承の通り、当社の当期連結決算は、売上・経常利益・税引き後利益とも昭和31年の東証一部上場以来、史上最低の数字を計上し、2期連続の無配という異常事態を迎えてしまいました。
過日、前社長より突然わたくしに社長をやれとご指名がありました折に、わたくしごとき経験に乏しい若輩者にとってはあまりにも荷が重い職責ゆえ何度も固辞させて頂きました。
しかしながら前社長はじめ諸先輩の懇望もだしがたく、あまつさえ当社の創始者であります石田会長の「もうお前しかいない。年寄り全員でバックアップする思いっきりやれ」とのお言葉に励まされ、非才を顧ず、「清水の舞台から飛び降りて火中の栗を拾う」決意で遂にお引き受けしたような次第であります。
さりながらいったんお引き受けした以上、わたくしは、愛するわが社のため、社員の皆さま、株主の皆さま、そして何よりもわが社の顧客の皆さまのために粉骨砕身、全身全霊を挙げて努力致したいと存じます。
わたくしは、この際、わが社におきましても「聖域なき4つの構造改革」を断固として実施いたします。具体的には、①ヒト・モノ・インフラの3要素の「自前主義」を断固排除し、海外の先進企業数社との業務提携を推進し②企画・生産・販売・流通の本社機能の一部を社外にアウトソーシングし、③人件費を含む諸経費の3割カットを敢行することによって、④70年の歴史を誇る当社をわたくしの任期中の2年以内に黒字転換いたしたいと固く決意致しております。
わたくしは会社再建の道はこれ以外にないと確信しております。社員と社員ご家族、当社の関連お取引先の皆さまにも少なからぬ犠牲を忍んで頂かねばなりませんが、何卒当社の窮状をつぶさに理解していただき、ともに会社再生に立ち上がって頂きますようお願い致しまして就任のごあいさつと致します。
○アドバイス
1) 社長就任スピーチは、大勢の社員を味方にするか、敵に回すか、傍観者の立場に立たせるかが決まる決定的瞬間である。
2) 経営状態が思わしくない時ほど、トップ交代によせる社員の期待は熱く、大きい。従って、その発言内容やスピーチの仕方、壇上での挙措、態度は、単なるあいさつ以上の意味を持つ。
3) 現状をどうとらえ、どのような経営手法をどう駆使して、難局をどう打開してゆくのか。空理空論や威勢のよさではなく、自分の語法で簡潔明瞭に語ることが重要。可能な限り情報を公開し、経営危機を共同で打開しようと呼びかけてみよう。
「カラスどもがよってたかってトンビを苛める」「そんなこたあどうでもええやん」 蝶人