あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

主婦の友社版「誰もが泣いて喜ぶ愛と感動の冠婚祖祭その他諸々挨拶&スピーチ実例集No.48」

2021-02-28 13:31:58 | Weblog

蝶人狂言綺語&バガテル―そんな私のここだけの話第373回

○社長就任式/本人のあいさつ
このたび第35期株主総会ならびにその直後に開かれました取締役会におきまして、当社代表取締役社長の大任をおおせつかりました城山裕次郎であります。
皆様ご高承の通り、当社の当期連結決算は、売上・経常利益・税引き後利益とも昭和31年の東証一部上場以来、史上最低の数字を計上し、2期連続の無配という異常事態を迎えてしまいました。
過日、前社長より突然わたくしに社長をやれとご指名がありました折に、わたくしごとき経験に乏しい若輩者にとってはあまりにも荷が重い職責ゆえ何度も固辞させて頂きました。
しかしながら前社長はじめ諸先輩の懇望もだしがたく、あまつさえ当社の創始者であります石田会長の「もうお前しかいない。年寄り全員でバックアップする思いっきりやれ」とのお言葉に励まされ、非才を顧ず、「清水の舞台から飛び降りて火中の栗を拾う」決意で遂にお引き受けしたような次第であります。
さりながらいったんお引き受けした以上、わたくしは、愛するわが社のため、社員の皆さま、株主の皆さま、そして何よりもわが社の顧客の皆さまのために粉骨砕身、全身全霊を挙げて努力致したいと存じます。
わたくしは、この際、わが社におきましても「聖域なき4つの構造改革」を断固として実施いたします。具体的には、①ヒト・モノ・インフラの3要素の「自前主義」を断固排除し、海外の先進企業数社との業務提携を推進し②企画・生産・販売・流通の本社機能の一部を社外にアウトソーシングし、③人件費を含む諸経費の3割カットを敢行することによって、④70年の歴史を誇る当社をわたくしの任期中の2年以内に黒字転換いたしたいと固く決意致しております。
わたくしは会社再建の道はこれ以外にないと確信しております。社員と社員ご家族、当社の関連お取引先の皆さまにも少なからぬ犠牲を忍んで頂かねばなりませんが、何卒当社の窮状をつぶさに理解していただき、ともに会社再生に立ち上がって頂きますようお願い致しまして就任のごあいさつと致します。
○アドバイス
1) 社長就任スピーチは、大勢の社員を味方にするか、敵に回すか、傍観者の立場に立たせるかが決まる決定的瞬間である。
2) 経営状態が思わしくない時ほど、トップ交代によせる社員の期待は熱く、大きい。従って、その発言内容やスピーチの仕方、壇上での挙措、態度は、単なるあいさつ以上の意味を持つ。
3) 現状をどうとらえ、どのような経営手法をどう駆使して、難局をどう打開してゆくのか。空理空論や威勢のよさではなく、自分の語法で簡潔明瞭に語ることが重要。可能な限り情報を公開し、経営危機を共同で打開しようと呼びかけてみよう。

「カラスどもがよってたかってトンビを苛める」「そんなこたあどうでもええやん」 蝶人
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2021年如月蝶人映画劇場その2

2021-02-27 11:38:48 | Weblog

闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.2488~97

1)三谷幸喜監督の「short cut」
中井貴一、鈴木京香の行き詰った都会の夫婦に、田舎者の梶原善がからんで、山道で繰り広げられる2011年のノンストップ映像バトルでその出たとこ勝負のような即興性が素晴らしい。食えるかどうか分からない野草をばりばり口にしたりする鈴木選手、蛇を掴まされる中井選手の熱演は見事。しかしあの里山にあれらの園芸商物は繁茂しないずら。
2)三谷幸喜監督の「大空港2013」
松本空港という環境をフルに活用し、今は亡き竹内結子が大活躍する見事なパニクルドラマずら。田野倉一族の人々の強烈な個性と葛藤をこれでもかと見せつける。それにしても惜しまれるのは竹内選手である。
3)三谷幸喜監督の「記憶にございません!」
記憶喪失になった悪評紛々の首相中井貴一が正義の味方の良い子になっていく過程を面白おかしく描く2019年の喜劇映画。脚本も配役もよろしい。
4)トム・ヴォルフ監督の「私は、マリア・カラス」
2017年のドキュメンタリーだが、今まで見たこともなかった映像もたっぷり使って、この不世出の天才の藝術と短すぎた生涯を淡淡と描いていて見事である。
5)アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトウ監督の「バードマン あるいは無知がもたらす予期せぬ奇跡」
人気活動写真「バードマン」で有名な主人公が一転してお藝術芝居に挑戦して悪戦苦闘する2015年のシュールな悲喜劇映画。ラスト近くで彼がNYの空を飛ぶシーンは感動的である。
6)アレン・ヒューズ監督の「ブロークンシティ」
2013年の陰謀サスペンス映画だが、別にどおってこたあないやね。
7)衣笠貞之助監督の「狂った一頁」
1926年製作の本邦初の新感覚派の前衛映画。精神病院を舞台に独逸の「カリガリ博士」の影響を受けた字幕なしのサイレント映画。何事も実験は大事だが、見物している方はそれほど面白いものではない。
8)ヒッチコック監督の「白い恐怖」
1945年のサイコスリラー映画で、精神科のバーグマンが白色恐怖症のグレゴリーペックを危機から救う。ラストで真犯人が自殺するのはちょっと甘すぎるオチずら。ペックの悪夢シーンをダリが設定したらしい。
9)ヒッチコック監督の「汚名」
1946年のスパイ映画。ブラジルを舞台に、父親が独逸のスパイという汚名をすすごうと娘のイングリッド・バーグマンがケーリー・グラントの助けを借りて素人スパイをする話が詰まらない。けどヒッチはこういう話が大好きだなあ。
10)ドゥッチオ・テッサリ監督の「アラン・ドロンのゾロ」
ご存知ドロンのゾロだじょお。こういうドロンが一番良かったかも。1975年製作。

 「台湾リスが蜜柑を全部食べちまった」「そんなこたあどうでもええやん」 蝶人
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千葉聡著「今日の放課後、短歌部へ!」を読んで

2021-02-26 15:48:09 | Weblog

照る日曇る日 第1546回

1968年神奈川生まれで、卒業後上菅田中学校、戸塚高校の国語教師を歴任し、現在は桜丘高校に勤務しながら歌人の道を驀進する「ちばさと」君による短歌エッセイずら。

少なからぬ短歌もインサートされてはいるが、面倒くさいので引用はしない。でも中高生たちとの忘れがたい交流をつぶさに綴ったこの本を読んで、私は今どきの教育の現場と若者の鮮烈な生態?を初めて認知できたような気がして、とても参考になった。

生徒たちに真正面から向きあう「ちばさと」のような熱血教育者がいるかぎり、この国にもまだ未来があるという思いに満たされてとてもうれしかったのである。

またこのちばさと選手は、どうやら私も昔いたことがある弘明寺に住んでいるらしく、彼の歌と生き方をいっそう身近に感じることができたのでした。


「コロナ禍で五輪が御臨終なんだって」「そんなこたあどうでもええやん」 蝶人
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主婦の友社版「誰もが泣いて喜ぶ愛と感動の冠婚祖祭その他諸々挨拶&スピーチ実例集No.47」

2021-02-25 14:53:25 | Weblog

○忘年会/部長のあいさつ

皆さん、皆さんのおかげで本年も無事に年を越すところまでこぎつけることができたようです。*1

きのう社長も専務もソロバンをはじきながら泣いて喜んでおったようです。社長専務になり代わりまして、厚く厚くお礼申し上げます。どうもありがとう。
昨今の景気減速やIT不況、あるいは失業率5%突破という環境悪化にもかかわらず、わが平和靴産業は奇跡的に倒産もせず、銀行に借金もせず、売上も減らさず、多少利益は減りましたが、ほぼ予定通りの数字で年末を迎えることができました。

つい最近、私たちの業界大手のクツトミさんが倒産するなど、厳しい逆風下にあってこれは実に素晴らしいことであり、また日頃の皆さんのご努力の賜であると、営業部長の私としましては心より感謝しております。*2

しかし、考えてみますと、この成功のもっとも大きな要因は、商品企画室の優れた感性と技術をテコにした、生産、営業、販促三位一体となった当社のトータルマーケティングシステムの勝利だと考えます。*3

世の中全体がストレスに覆われるなかで、よりリラックスしてはけるビジネスシューズ、超軽量で超安価、雨風に強く、フィットネス抜群のシューズは、いまもなお、うちの「レボリューション」を除いて国内市場に存在しません。アメリカのマンハッタンでも、いまビジネスマンのほとんどが、このスポーテイー・カジュアルタイプのビジネスシューズを履いています。
ITや半導体やらパソコン暮らしが厭になったサラリーマンが、緊張とストレスを癒してくれるわが社の「レボリューション」をこぞって愛用してくれているのです。*4

皆さん、消費者ニーズに立脚した商品ほど強いものはありません。企画室では「レボリューション」の大成功に気をよくして同じコンセプトによるOL版を来年早々に完成させるそうです。来年の年末もきっとまたうまいビールが飲めることでしょう。おっと、その前に皆さんの奮闘努力に感謝しつつごいっしょに乾杯しましょう。
一年間ほんとにご苦労さまでした。来年もまた頑張りましょう!

○アドバイス
*1家族的な会社なのであろう。不在のトップを引き合いに出して笑いをとっているが、好成績の忘年会ならではのノリであろう。社員に対して心から感謝しているさまがうかがえる。
*2感情論だけではなく理論的に会社業績の背景について分析し、この企業の将来にわたる優位性を指摘し、社員のプライドをくすぐりつつ、来期へのネジを巻こうとしている。
*3いわばシューズのユニクロ化をもくろみ、それに成功した企業であろう。ニッチマーケットでの勝利例である。
*4ちゃんと来期への展望をメッセージしているのは立派である。


  貧富の格差に応じてアクアからレクサスまでを用意している 蝶人
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茂木大輔著「N響で出会った名指揮者たち」を読んで

2021-02-24 11:52:35 | Weblog

照る日曇る日 第1545回

オケのメンバーだった人が、このように自分の体験を公にしてくれるのは、クラシック音楽の好きな人間にとっては大歓迎で、N響やこのオケを振った指揮者の多くは、あまり小生の好みではないが、「よくぞ書いてくれた」と、まずは拍手を送りたい。

著者は、1990年の11月から2019年の3月までの30年近くに亘って、N響でオーボエを吹き鳴らしながら数多くの指揮者と交流してきたわけだが、有名無名を問わずそのマエストロの指揮ぶりや音楽のありようについても、頑張って書いてくれているので面白く、双方の人となりまで伝わってきて、「ああ彼はそういう人だったのかあ」と認識を新たにする挿話が、ふんだんにありました。

ヴァーツラフ・ノイマンを皮切りに、サヴァリッシュ、シャルル・デュトワ、小澤征爾、ズビン・メータ、プレヴィン、エッシェンバッハ、サンティ等々、著者が交流したマエストロは枚挙に暇がないが、私の心がずむと動いたのは、尾高忠明、広上淳一、そして今は亡き岩城宏之との思い出に触れた短い記事でしたなあ。

日本のオーボエ奏者かずかずあれど、私が一番高く評価しているのは宮本文昭選手であるが、彼と同様に著者もN響を引退した後は、またしても指揮者を志望しているらしい。
願わくば途中で指揮棒を放り出して完全リタイアしてしまった先輩のようにならず、日本のハインツ・ホリガーを目指して精進してほしいものだ。

ところでああた、なんでN響を去るときに、可愛い後輩の池田昭子しゃんを次期首席に推薦しなかったのかしら。

 我を見てギャンギャン吼える阿呆犬よ殺してやるからそこで待ってろ 蝶人
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主婦の友社版「誰もが泣いて喜ぶ愛と感動の冠婚祖祭その他諸々挨拶&スピーチ実例集No.46」

2021-02-23 11:07:45 | Weblog

蝶人狂言綺語&バガテル―そんな私のここだけの話第371回

○忘年会/取引先のあいさつ

今晩は、木下印刷の木下です。松下商会さんのお仕事をさせていただいてまもなく30年になります。*1

島倉千代子の唄じゃないけど、人生と同じで、企業もやはりいい時、悪い時いろいろありまんなあ。電機関係もいい時はいいけれども、ことしは“松下さんいのちの木下”にとっては最悪でした。
けさの新聞では、会社創設以来はじめてのリストラと出ておりましたが、なあにいまどき世界中見渡してもリストラのない会社はとうてい一人前の企業とはいえないです。*2

不肖、木下印刷も毎年リストラしております。
大手をリストラされた優秀なIT専門家を三顧の礼でお迎えし、日本の若年労働者は、どうも最近勤務態度がよろしくないので、東南アジア、中東の海外戦力を活用し、規模こそ極小ですが、山椒は小粒でもピリリと辛い超軽量国際機動印刷集団を旗印に頑張っております。

ですので、どうか松下さんも頑張ってください。*3

確かにいまはどん底です。しかし、朝のこない夜はないのです。

○アドバイス
*1経営危機に陥った大企業と長年にわたって共存共栄してきた下請け企業の社長のあいさつである。まわりくどい言い方をしない社長のキャラクターを反映していて好感が持てる。
*2みずからの現場体験をさらけだして元請企業を声援しようとしている。中小企業の国際化も進んでいる。
*3オヤジの浪花節を笑うなかれ。


    紅白の梅満開の空き家かな 蝶人
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アガサ・クリスティ著・高橋豊訳「動く指」を読んで

2021-02-22 11:08:24 | Weblog

照る日曇る日 第1544回

飛行機事故で負傷した男が、その妹と共に隠棲したロンドン近郊のリムストックで起こる謎の殺人事件。それを解決するのは最後のほうで遅ればせながら登場するご存知マーブルおばさん。けれどもそれまでの95%で大活躍するのは語り手でもあるその男なので、これならマーブルが居なくてももしかすると解決したかもしれない。
最後に捕まったのは思いがけない人物だったが、それは二の次で、この「動く指」の面白さは、犯人探しそのものよりも、このリムストックという小さな町とそこに住む個性豊かな様々な住民のプロフィールにある、と断言できよう。
珍しくクリスティが指を動かしながら夢中になっているのは、いつもの謎解きではなく、英国作家お得意の人物と自然描写そのものである。

 コーナーを左に曲がって一直線ゴールを目指せどテープは見えぬ 蝶人
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主婦の友社版「誰もが泣いて喜ぶ愛と感動の冠婚祖祭その他諸々挨拶&スピーチ実例集No.45」

2021-02-21 11:04:23 | Weblog

蝶人狂言綺語&バガテル―そんな私のここだけの話第370回

○新年会/部長のあいさつ

新年明けましておめでとうございます。*1

去年のことはあんまり思い出したくないけれど、一昨年あんなに爆発的に売れたパソコンがまったく駄目。夏になって猛暑がやって来てエアコンが売れ出したと思ったら、メーカーがどこも品切れになっちゃって年末に〆てみたら、なんと前年の3ポイント負けということで、まことに残念無念な結果でした。
それと隣町の山路電気さんの怒涛のバーゲン攻勢にしてやられちゃったので、今年は安値競争に巻き込まれないでいかにシェアを維持するかよく研究したいと思います。*2

これだけ秋葉原や量販の超大手がぐんぐんのしてくると、われわれ中小の町の電気屋さんは、もっともっと地域に密着して、いわゆるニッチのサービス専科に徹しないと21世紀のサバイバルはなかなか難しいと思います。
いやあ、これって全部社長の受け売りで申し訳ないけど、基本的に正しい戦略だと思います。*3

まあ、こむずかしい理屈はこれくらいにして、わが広瀬商会も年初からガンガンいきまっせ。

○アドバイス
*1あまり堅苦しくない場面であるが、管理職という立場上あまり無内容な話もできないので苦心している。
*2大手の攻勢に巻き返しを図る中小企業のサバイバル作戦を示し、出席者の注意を喚起する。
*3最後は、やり手営業部長の本音をむき出しにして年初の景気をつける。


 4匹のメダカが水盤に棲んでいて4通りの個性を発揮するなり 蝶人
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小沢昭一対談集「日々談笑」を読んで

2021-02-20 13:48:26 | Weblog

照る日曇る日 第1543回


話芸の達人による対談集。お相手は柳家小三治、松島トモ子、内海吉江、金子兜太、高瀬礼文、郡司正勝、網野善彦、バルタバス、清川虹子、井上ひさし、関敬六、佐野洋子、小宮悦子、阿川佐和子、立木義浩、黒鉄ヒロシ、柴田政人という有名人たちである。

有名人というてもなんで小沢選手の対談の相手に選ばれたのかさっぱり分からん影の薄い人物もいるのだが、そういう時には小沢本人が天馬宙を行くがごとき能弁を振って沈黙の相手を圧倒するので、感心するほかはない。
網野善彦のような学者とやるときは、小沢も一人前の学者になって対等以上に論陣を張るので、そのインテリゲンチャンぶるには驚くしかないが、内海吉江や井上ひさしと浅草のフランス座や若き日の渥美清のアナーキーについて語るときは、役者体験が大いに物をいう。これくらい人を見て軟硬両様臨機応変に法を説ける芸人もいないだろう。

終わりごろにカメラマンのタッちゃんが登場したのだが、むかし昔おらっちのリーマン時代に、彼のクレジットを誤植して、寒いさむいクリスマスイヴの晩、六本木の酒屋でジャック・ダニエルを買って、彼のスタジオに謝罪に行ったことを思い出しちまったよお。


 「ゴンちゃんをしばらくみないねどうしたの」「12歳で昇天したのよ」 蝶人
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主婦の友社版「誰もが泣いて喜ぶ愛と感動の冠婚祖祭その他諸々挨拶&スピーチ実例集No.44」

2021-02-19 15:02:10 | Weblog

蝶人狂言綺語&バガテル―そんな私のここだけの話第369回

○新年会/新入女性社員のあいさつ
あけましておめでとうございます。昨年暮れに入社したばかりの新人の伊藤小百合です。どうかよろしくお願い致します。*1

入ったばかりで生意気なようですが、この会社は皆さん親切に仕事を教えてくださいますし、家庭的な雰囲気ですし、ほんとにいい会社にはいったなあと母といっしょに喜んでいます。*2

この機会をお借りして、ちょっと自己紹介させてください。
私の趣味は2つあります。ひとつはオートバイです。毎年夏は愛車に跨って全国のいろんな温泉を訪ねています。日本百名山ならぬ、日本百名湯を3年間で全国制覇しようと思っています。

もうひとつは、俳句を詠むことです。去年の大晦日に温泉ではなくて近所の銭湯に入ったら、脱衣所に「去年今年貫く棒の如きもの」という句が張り出してあったのがきっかけです。
番台のおばあちゃんに聞いたら、高浜虚子という偉い俳人の作品だそうです。

俳句とオートバイ、この2つをテーマに今年もガンバル伊藤です。皆さまどうぞよろしくお願いいたします。

○アドバイス
*1 新人とはいいながら結構言いたいことを言ってしまうタイプが増えた。先輩に対して失礼にならないように要注意。
*2 新年会という晴れの場を利用して、ちゃっかり自分を売り込もうとしている。一昔なら考えられなかったことだが、現在ではくつろいだ雰囲気のもとでこんな気軽なトークが行われることもある。


  いつ死ぬか分からないけどこの部屋を片づけようとはまだ思わない 蝶人
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村上龍著「MISSING」を読んで

2021-02-18 14:25:35 | Weblog

照る日曇る日 第1542回

久かたぶりにこの人の小説を読んだ。
「失われているもの」という副題が付いている通り、作者が己の過ぎ来しかたを振り返り、死んでいるのか生きているのか分からない昔の女や、懐かしい母親の面影を心中に尋ねる、という案に相違した趣向で、この作者には珍しい私小説風心境小説?である。
これまで社会的現実に立脚してドラマをつぐむことが多かった作者にしては珍しく例外的な作品で、それが貴重なのかもしれないが、私としてはかなり退屈な読み物であった。

  おとなりのおにわのおくのブランコがかぜもないのにかすかにゆれる 蝶人
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主婦の友社版「誰もが泣いて喜ぶ愛と感動の冠婚祖祭その他諸々挨拶&スピーチ実例集No.43」

2021-02-17 13:17:11 | Weblog

蝶人狂言綺語&バガテル―そんな私のここだけの話第368回

○新年会/幹事のあいさつ
皆さま、あけましておめでとうございます。私は旧年中の各事業部の協議、談合の結果、めでたく本日の新年会の代表幹事に就任いたしました、当三共エージェンシー市場調査担当の桐野でございます。*1

さて本日はちょっとした趣向がございます。まずテレビ媒体営業担当の矢島君は、皆さまよくご承知の通り、いま話題の社員ロックミュージシャンです。テレビ局の営業部で打ち合わせしていたら制作局のマネージャーが飛んできて、本番5分前なのにこんなところで何油売ってるんですかと怒られた話は、皆さんもうご存知ですよね。

それからマーケ営業担当の木下さんは三味線の趣味が嵩じて、時々男装して歌舞伎座の下座に潜り込み、笛、太鼓に混じって長唄の伴奏を勤めているという噂です。おなじみの社内ロックバンド「三共コモドアーズ」も健在です。*2

そんな訳で本日は、矢島、木下&三共コモドアーズのおめでたい三位一体コラボレーションで新年会のオープニングを飾りたいと存じます。さあ、皆さんよろしくお願いいたします。

○アドバイス
  *1これはかなり型破りな幹事のあいさつだが、時流に敏感な広告会社の若手メンバーが主催する新年会ならありうるケースだろう。社員タレントを抱えている代理店もあった。
  *2新年会がリラックスしてライブコンサート会場になってもいいじゃないか。
  どの人が会長になろうがこの夏にオリンピックができると思えず 蝶人
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主婦の友社版「誰もが泣いて喜ぶ愛と感動の冠婚祖祭その他諸々挨拶&スピーチ実例集No.42」

2021-02-16 11:41:25 | Weblog

蝶人狂言綺語&バガテル―そんな私のここだけの話第367回

○社内旅行の宴会/役員のあいさつ
本日はみなさん一日お疲れさまでした。*1

きょう僕は、敬愛する川端康成先生の「伊豆の踊子」ゆかりの地、天城を訪れることができてほんとにうれしかった。特に冷たい雫がぽたぽた落ちていた天城トンネルに感動しました。だけど残念だったのは「伊豆の踊子像」がぜんぜん山口百恵に似ていなかったことです。
さっき幹事の吉永君が唐人お吉について語っていたけど、私は学校時代に習った年号、1453年を突然思い出しました。安政元年にペリー提督と幕府が日米和親条約を締結して、伊豆の下田港が開港し、その2年後にアメリカ領事官としてやってきたタウンゼント・ハリスがお吉さんと知り合うんですね。*2

そしてこの悲劇は、のちにイタリアの作曲家プッチーニのオペラ『蝶々夫人』の原作に使われ、下田が長崎に、ハリスが海軍士官ピンカートンに、お吉がマダム・バタフライに変身したのではないか、と私は勝手に想像しておる次第です。*3
それでは、その唐人お吉を偲んで、ただいまからアリア「ある晴れた日に」をテノールですが歌わせて頂きます。

○アドバイス
*1同じ伊豆旅行における役員のあいさつである。社内行事であるとはいえ堅苦しい内容はさけ、リラックスしたトークを披露している。もうかつての人気歌手山口百恵を知らない若手社員もいるかも知れない。
*2この説は、話者の勝手な思い込みである。
*3宴会の冒頭のあいさつなので、自ら余興の口火を切ろうとするところにこの役員の心意気が感じ取れよう。

 藤沢から歩き続けたわが息子高座澁谷で見つけられたり 蝶人
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主婦の友社版「誰もが泣いて喜ぶ愛と感動の冠婚祖祭その他諸々挨拶&スピーチ実例集No.41」

2021-02-15 11:59:54 | Weblog

蝶人狂言綺語&バガテル―そんな私のここだけの話第366回

○社内旅行の宴会/幹事のあいさつ
本日は早朝よりのバス旅行、皆さま大変お疲れさまでした。*1

幹事をつとめさせて頂いております吉永です。皆さまゆっくり温泉に入られて、旅の疲れを癒されたのではないかな、と想像しておりますが、いかがですか?
沼津から修善寺を通り、川端康成さんの「伊豆の踊子」ゆかりの天城峠に立ち寄り、そして今日はたまたま3月27日。折りよく下田の「お吉まつり」に出くわしまして、大勢の華やかな芸妓衆の踊りを見ることもできました。
しかし唐人お吉が世をはかなんで身投げしたお吉ケ淵はなんだか淋しかったですね。*2

誰ですか、「そんなの知らないよ、俺は朝からビールとお酒飲んでいままで寝てたから」なーんて言ってるのは。はいはい、分かりました。ただいまからパーッと行きましょう。
まず、事業部長に祝杯をあげて頂きまして、本日のメーンイベントの大宴会に突入いたします。*3

なにかございましたら、何なりと幹事の吉永めにお申し付けくださいませ。

○アドバイス
*1年に一度の会社旅行。今年は伊豆の波勝岬の温泉に出かけることになった。幹事さんは神経が張りつめていて大変。
*2 宴会のあいさつどころではないかもしれないが、陽気に楽しくしゃべるのがこつ。地口で即興的にやったほうが成功するかもしれない。
*3 今日一日は、ピエロになったつもりで頑張ってください。


     世の中の半分位を敵に回し退任したり森会長 蝶人
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渡辺清著「戦艦武蔵のさいご」を読んで

2021-02-14 13:03:00 | Weblog

照る日曇る日 第1541回

「爆弾は上甲板をぶち抜いて爆発したからたまらない。30人近くの主計兵たちは一瞬にして誰かれの区別なくぐしゃぐしゃにつぶされてしまった。ふっとんだ首、くだかれた頭蓋骨、どろどろの脳液、ひものようにもつれた腸わた…。むろん床は血でいっぱいだ」

1944年10月18日、レイテ決戦の「捷一号作戦」に参加し、超ド級戦艦武蔵に乗って、群がる敵機に向かって機銃を撃って撃って撃ちまくった挙げ句、シブヤン海深く撃沈された17歳海軍志願兵の貴重な体験記である。

「「うおー、うお、うおー」喉を引き裂くような荒々しい喚き声、その膝からは栓をひねったように血がはじいている。
「森下、おい、しっかりするんだ」。ぼくは駆けよって両方のももに止血棒を巻きにかかった。」

2300名の乗員のうち艦長以下大半の兵士が海没した中で、奇跡的に九死に一生を得た作者は、武蔵の最後の戦いと戦友たちの凄絶極まりない最期を詳細に描いて、戦争の悲惨さと軍部の無謀横暴をあばき出している。

 イソヒヨドリに口笛を吹くが知らん顔綺麗な声をきかせておくれよ 蝶人
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