エリザ・スア・デュサパン著「ソクチョの冬」
照る日曇る日 第1865回
北朝鮮の国境近くの小さな町ソクチョを舞台に、著者と同じく、仏蘭西人を父に、韓国人の母を持つ若い女性の暮らしと恋、複雑な人間関係、そして峻烈にして美しい自然を散文詩のように綴った掌編恋愛小説である。
こんな辺境の地に、こんな多感な若い女性が、懸命に人世を生きているんだ、という世界同時代感覚が実感として湧き上がってくる。
この節の巷ではやる自動車はトヨタにあらずテスラの電気車 蝶人
エリザ・スア・デュサパン著「ソクチョの冬」
照る日曇る日 第1865回
北朝鮮の国境近くの小さな町ソクチョを舞台に、著者と同じく、仏蘭西人を父に、韓国人の母を持つ若い女性の暮らしと恋、複雑な人間関係、そして峻烈にして美しい自然を散文詩のように綴った掌編恋愛小説である。
こんな辺境の地に、こんな多感な若い女性が、懸命に人世を生きているんだ、という世界同時代感覚が実感として湧き上がってくる。
この節の巷ではやる自動車はトヨタにあらずテスラの電気車 蝶人
えとぶん おおたけしんろう「ジャリおじさん」を読んで
照る日曇る日 第1864回
プロットはいいかげんだし、肝心の絵はごちゃごちゃしているだけでいつまで経っても焦点が定まらないし、絵本としては水準以下の凡作ずら。
です・ますの語尾明瞭の女子アナだけど意味内容は分明ならず 蝶人
照る日曇る日 第1863回
『ヤマザキ、天皇を撃て!』を読んで驚き、あの衝撃的な映画「ゆきゆきて神軍」をみてもっと驚いたのは今を去る35年前の1987年でした。
右手の小指がない奥崎謙三の幽鬼のような顔付きだけは記憶に鮮明ですが、肝心の映画の中身などすっかり忘却の彼方に消えていたので、そのシナリオが付録についたこの映画製作ノートを興味深く読みました。
通読してやはり凄いと思ったのは、不動産業者を殺し、昭和天皇にパチンコを放ち、皇族のポルノビラをばらまき、何度も牢屋に入りながら懲りずに出てきて、またまた事件に首を突っ込む稀代のアナキスト&殺人犯の筋金入りの反戦後民主主義原理主義であります。
人間性を破壊する軍隊とその頂点に君臨する天皇にたいする責任の追及を、いいともたやすく放棄した大多数のニッポン人と違って、奥崎謙三選手は、一個人の肉体を引っ提げて反軍隊、反天皇、反権力の一本道を爆走します。
その狂気の濃さ、発火する暴力とテロルの執拗さに辟易しながらも、我らが主人公の傍でキャメラを回し続ける原一男の根性も凄い。もはや映画もドキュメントも明後日に擲って、奥崎「先生」の行状のすべて(恐らく新たな殺人事件の現場であろうとも)、を記録しようとするのです。
原のキャメラが回される中で、奥崎が(惜しみなくゲバルトを用いて)、「お前は戦場で何をやったのか?」と問い詰めると、その相手は、次々に真実を告白する。その姿は、カトリックの「告解」に似ている、と井出孫六氏は解説しているのですが、なるほどと頷けます。
ハクビシン、タイワンリスは処分するがタヌキは助ける市役所職員 蝶人
西暦2023年如月蝶人映画劇場その3
闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.3226~35
1)ニコラス・レイ監督の「夜の人々」
ニコラス・レイの初長編にして代表作品。後の「ボニーとクライド」とは全く風合いの異なる1947年の純愛物語。
2)ゴダールの「イメージの本」
さんざん映像と音楽の大冒険をやってのけた果ての2019年の作品。されどもはや何の斬新さも無いのが哀しいずら。
3)キアロスタミ監督の「ホームワーク」
1995年のイラン映画。小学生にカメラを向けて「宿題」についてインタビューをするのだが、質問役が無能で下らない答えしかでてこない退屈な失敗作。されどイランはシーア派の宗教教育を子供時代から植え付けていることが分かる。
4)ベンジャミン・リー監督の「画家と泥棒」
苦労して描き上げた代表作を2人の悪党に盗まれた女性画家が、あろうことかその犯人の一人と付き合う中で芸術と人世の真実に触れていく2020年ノルウエー製の嘘のような本当のどきゅめんたりーです。
5)エレーヌ・ファリエール監督の「壊れた二人」
マゾ中年男に最後まで付き合って殺してやる2013年の人妻の愛の物語ずら。
6)「闇の処刑人」
昼は人権派弁護士、夜は闇の処刑人ルーク・ゴスが大活躍する2019年のよくあるアクションスリラーずら。
7)アニエス・ヴァルダ監督の「アニエスによるヴァルダ」
2019年に没したヌーヴェルヴァーグの巨星による最良の回顧録にして遺作。最晩年の彼女が最先端のアートに挑戦していたのを知って驚いた。
8)P.B.シュムラン監督の「博士と狂人」
実話に基づいてオックスフォード大辞典編集の内幕を明らかにする2020年の興味津々の秘話。それにしても全世界の英語使用者に向かって用例を大募集するところから作業を開始したとは驚き。本邦でも見習ったらどうか。
9)キム・ジウン監督の「反則王」
ソン・ガンホ主演の2001年のリーマン・コメデイ。ダメ銀行員が一念発起して覆面プロレスラーになりきるところがたまらないずら。
10)アンソニー・マン監督の「胸に輝く星」
無宿者賞金稼ぎのヘンリーフォンダが、新米保安官アンソニー・パーキンスを鍛える1957年の親小鷹西部劇。
考えてみればおらっちだって何も無い生涯無一物とはよう言うた 蝶人
西暦2022年長月蝶人酔生夢死幾百夜
ヨシダさんは、下から順番に各製品の製造の仕方とその要点を誰にもわかるように、ゆっくり説明していったので、我われ新人は、心から納得しながら、膨大なメモをこさえることができたのよ。9/1
僕のいろんな内臓の部位は、順番に切り取られ、熱冷ましをしてから、次々に食べられていった。9/2
リュドミラ夫人は。植民地の経営には無関心で、現地の子供たちと遊んでいるのが大好きでした。ブラジルでも、コンゴでも、中南米でも。9/3
戦闘で斃れたばかりの若い兵士の目玉をつつく飢えたカラス共を、わしらは、シッ、シッと言いながら追い払ったが、彼奴等は、すぐに舞い戻ってくるのだった。9/3
モリ・シンイチ選手が宇宙旅行に出かけたのだが、搭乗に一番大事な「電子合言葉」を失念したらしく、公衆電話で問い合わせて来たので、MORI SHINITIだよと教えてやった。9/4
「それはオカシイ」と、最初に言い出した人が、いつのかにか沈黙するようになり、その代わりに、その他大勢の有象無象が、大声で追従しているのだった。9/5
せんだっての台風で、最大の被害を蒙った出入り口を、修復しなければならなくなったので、おらっちは、そこを「高倉門」と名付け、亡くなった社員の名を刻んだ。9/6
「77年間お待たせしました!」と、おらっちが叫んだが、誰一人として、振り向く人はいなかった。9/7
記念式典がまもなく始まるのだが、おらっちは、新旧2つのカルテットのために、演奏曲の調整と痛み分けをしないわけにはいかなかった。9/8
ウクライナ軍は南部で決戦に出たが、ロシア軍の反撃に遭って、欧米から提供された最新兵器を使い果たし、たくさんの死傷者を出したので、当分の間は戦闘中止の已む無きに到ったようだ。9/9
その旅館では、家族旅行にやって来た夫婦を別々に寝かせておいてから、別の夫婦と一緒に寝かせ、朝になると、また元の夫婦を一緒に寝かせるというサービスを自慢にしていた。9/10
おらっちは、去年ロシアがパリコレに出した、「007型のサーカス・ジャンプスーツ」を、巴里の超分解センターで、テッテ的に調査したところ、無数の戦争ポイントが内蔵されていることが、分かったのであった。9/11
そこには8本のスピーカーが並んでいたが、そのうちのどれが鳴っているのか、に、すべての注意を奪われていたので、コンサートの感想など、なにも無かった。9/12
ユニークなその課長は、「今日はお前たちを鍛え上げるぞ」と宣言して、課員の全員を引き連れて飛鳥山公園に花見に出かけ、呑めや歌えやの大宴会を、繰り広げたのであったあ。9/13
カーツ大佐は、食堂で受け取った機密メモを、時折眺めながら、お昼のカツランチに、舌鼓を打っていた。9/14
「戦争か、反戦か」を決める野球大会が開催された。反戦チームは、9回2死満塁の絶好のチャンスに登場したリリーフエースが、4番を空振りの三振に仕留めたのだが、その裏にサヨナラ負けを喫したので、翌日第3次大戦がはじまった。9/15
水中に浮かんでいる詩は、素早く救い上げないと、あっという間に波間に沈んでしまう。9/16
仏におうては、仏を殺し、人におうては、人を殺してきたその男は、もはやその生き方を変えようとしても、てんで変えられなかったずら。9/17
運動のために、断崖絶壁のように聳え立つゼンダ城の外壁にぶら下がっていたら、キタジマ君が、縁を掴んだおらっちの両手を振りほどこうとするので、「冗談はよせやい」というたが、聞こえぬ振りをしてなおも続けるので、だんだん怖くなってきた。9/18
海の向こうからやって来る、新種を含んだ魚類の数々は、細大漏らさず魚類大臣であるおらっちに報告することが、義務づけられていた。9/19
キャンパスのはずれの田舎に「古文研」という名札をつけた古い小屋が建っていて、中には一人の青年が、その名の通り古い書物に囲まれて座って居たので、ああ自分も本当はこんな仕事がしてみたかったんだ、と、激しい嫉妬と羨望に駆られたのよ。9/20
川沿いの両岸の2つの街だけをしらった所いづれも別べんひせかいになってウンチへうたいったんで、きっと内陸部もやられているだろう。9/21
私なんか、なーんもしてないのに、モノスゴイ勢いで、町全体が流され、生きている人も、死人も、もろともに、流されていくのだ。9/21
ここ安アパートの3階でも、戦争がおっぱじまり、血を血で洗う熾烈な戦いから帰還した連中を、4階の天井桟敷の人々は、扇子を開いて「あっぱれ、あっぱれ」と褒めたたえた。9/22
「ブンガクオーという馬は絶対にいけます!」と、その道では権威者のウミウシ氏がのたもうたので、有り金全部を単賞レースに投じたら、3000万円ほどの儲けがあったので、おらっちはそれで「文学王」という名の古本屋兼出版社を、設立することができたのよ。9/22
いきなり敵兵に頭からザックリやられたおらっちを、当の敵兵も、味方の兵士たちも思わず息を呑んで見つめているので、おらっちはもしかするとここで息絶えてしまうのではないかと次第に薄れていく意識の奥で思った。9/23
車が突如停まってしまったので、よく調べてみると、誰かが、ガソリンタンクに、石や砂を入れたらしい。この村は危険だ。9/24
LAのベニスの海岸で寛いでいたら、どこかで見たような顔をした、年齢不詳の女性が隣に座っているので、こんにちは、から始まっていろいろ話をしたのだが、いくら喋っても接点がないので、たぶん赤の他人なのだろうが、えらく気になる人物だ。9/25
おらっちとコウ君は、2人揃って道頓堀のグリコのようにゴールインする計画だったのだが、途中で思い直して、それぞれが全力疾走することにしました。結果は、親子同時のワンワンフィニッシュ。応援に来てくれたシロウヤスさんも、大喜びでした。9/26
「兵士なんか復員してから3年経ったらデクノボウに戻ってしまうのよ」と、その軍人が力説するので、なるほど、それならプーチンが何百万人を総動員しても、所詮は烏合の衆なんだな、と一安心していた。9/27
「この人の、昔と今の作品うおー、年代順に並べて、比較検討してみませう。さすればあ、この人があ、進化するより、むしろ退化し続けてきたことがあ、直ちに明らかになるでしょうよ」と、誰かが、おらっちのことを陰口していた。9/28
英国を代表するシェークスピア学者が来日したのでインタビューをしたんだが、この男は「シェークスピアのどんな作品も詰まらない」と断言するので、驚いてしまった。「詰まらない作品ならなんで研究するんだ」と聞いたら、「他の作家の作品もみな詰まらないのだが食うためにシェ氏を選んだんだ」と答えた。9/28
仰向けのままで、瞑った目をパッと開くと、小さなダイアモンドが、顔の上にポロッと転がり出る。また瞑った目をパッと開くと、小さなダイアモンドが、顔の上にポロッと転がり出る。瞑った目をパッと開くと、小さなダイアモンドが、顔の上にポロッと転がり出る……。9/29
冒頭で、世界のミフネとドロンが、クラウディア・カルディナーレに襲いかかって、いきなりの片肌をひんむいたので、これはどういう映画なのか、と、おらっちは急いで、その深からぬ記憶を急いで辿ったのだが、さっぱり分からんかった9/30
米帝にコテンパンにやられてからこの国人の猫背直らず 蝶人
沢木耕太郎著「天路の旅人」を読んで
照る日曇る日 第1862回
戦中から戦後の足掛け8年間に「密偵」として中国大陸奥地からチベット、インド亜大陸までを探訪した西川一三の壮大な旅の記録である。
データとしては西川本人の膨大な旅行記「秘境西域八年の潜行」および著者の本人取材に拠っているが、本書の大半を占める大旅行の「リライト」よりも、著者による西川本人の印象記のほうが、遥かに興味深いものがあった。
流れ去る歳月にカレンダー千切れ飛び「ギター侍」どうしているか 蝶人
照る日曇る日 第1861回
「するとタヌキがタンブリンたたいてやってきた」という不思議な接続詞からはじまる「全員集合童話」なり。
カランコロンとかタンタンシャララタンシャララというオノマトペ(擬音・擬態語)をテコに、タヌキや、トラや、カンガルーやシマウマが、それぞれタンブリン、ラッパ、カスタネット、シンバルを鳴らしながら集まってきて、最後に全員集合という、よくあるパターンである。
ひと練りも余さずひり出し歯を磨きしかるのちにゴミ箱に捨つ 蝶人
照る日曇る日 第1860回
「むかす、あったずもな。あるとこに、なんにもかにも 貧乏な家、あったったずもな。」
と語りだされる昔話だが、堀越千秋選手の繊細にして大胆な絵が素晴しい。
ことに「馬」と「盗人」のドローイングは抜群。
「雨漏り」と「ふるやのもりのおばけ」をとりちがえて盗人が逃げ出す最後のオチも、鮮やかに決まった。
毎日のように群がり起こる事件だが死と向きあう君には関係が無い 蝶人
これでも詩かよ 第316回
仏に逢うては、仏を殺し
男に逢うては、男を殺し
戦に逢ては、戦を殺し
死に逢うては、死を殺す
強く、激しく、美しい女性が、この困難な時代の、最先端を切り開くのである。
キーウの女、リュドミラ。
母国ウクライナに攻め込んで来たプーチンの軍隊に家族を皆殺しにされた少女は、固く唇を結んで、目には目を、歯には歯を」じゃない復讐をすることを誓うのだった。
福一の女、ヒドラ
福島第一原発から太平洋に垂れ流された汚染水から誕生した新未来人類、ヒドラ。
別名は「女ゴジラ」。現代に蘇えったお岩が、最終的な世直しに挑む。
死都鎌倉の女、讃岐局
北条一族によって惨殺された、比企家の女の復讐の物語だ。大蛇となった比企能員の娘、讃岐局は、北条政村の娘にとりつき、比企谷の土中に引きずり込んで、いたぶる。
イランの国民的女優、タラネ・アリドゥスティ
反体制デモを支援したために逮捕されたイランのアカデミー主演賞女優。「女性・生活・自由」のスローガンで立ち上がった民草と共に、不撓不屈の反権力の戦いに挑もうとしている。
原宿の女、岡田茉莉子。
偉大な映画監督である吉田喜重に先立たれた日、女優は、毎晩夫と連れだって散歩した原宿の千駄ヶ谷交差点にしばらく佇んでいると、晴れた夜空に月が昇った。
赫奕たる満月だった。
「神倶に在まして」の歌に送られて三宅義子姉の霊青空に舞う 蝶人
闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.3219~29
1)~4)松田定次、小沢茂弘監督の「新吾十番勝負」全4作
1961年から4年までに製作された大川橋蔵主演の阿呆莫迦チャンバラ映画。こういう下らない映画のお陰で日本映画は腐敗堕落の一途を辿ったのよ。
5)石井輝男監督の「黒線地帯」
天知茂に三原葉子、三ツ矢歌子がからむ麻薬犯罪事件だが、1960年のニッポンの妙な熱気がそこここに反映されているようだ。
6)武智鉄二監督の「白日夢64年版」
路加奈子が主演する谷崎潤一郎原作の第1回目の映画化。芸術か猥褻か、で話題になったが、単なるポルノ映画ずら。
7)武智鉄二監督の「白日夢81年版」
愛染恭子が主演する2回目の映画化だが、ドクトル役の佐藤慶と延々と本番を繰り広げる超ポルノ映画なのでいたく感動する。いまこんな映画を作れるひとがいるだろうか?
8)~11)
松田定次、小沢茂弘監督の「新吾十番勝負」全4作
1961年から4年までに製作された大川橋蔵主演の阿呆莫迦チャンバラ映画。こういう下らない映画のお陰で日本映画は腐敗堕落の一途を辿ったのよ。
この星のことなら安心し給え君たちが全滅しても健在だから 蝶人
これでも詩かよ 第315回
はじめまして、ムシュー・ゴダール、私の名前はササキ・マコトです。
マコトは、漢字で書くと「眞」。「眞実」、「眞理」の眞、一字であります。
ちなみに私の弟の名前は「善二」、妹は「美和」。祖父の小太郎がつけてくれた名前ですが、3人揃うと「眞・善・美」となります。
おお、素晴らしい!
メルシボク! これはあなたもご存知のように古代ギリシアの哲学者プラトンが唱えた3つのイデアで、後にカントが具体的に展開しますが、ゴダールさん、私はあなたに、「世界一美しく、世界一真実と善に満ちたテレビCM」を作って頂きたいのです。
ダコー。お安い御用だ。「眞・善・美」は、映像表現はもちろん、全ての芸術に当てはまる普遍的なコンセプトだね。んで、肝心要のギャラはいくらかね?
日本円で、ぴったし1000万。
ブラボー! ブラボー! では大至急、いま貴君が提案されたCMコンセプトを体現したビデオを送りましょう。
驚くなかれ数日後、それはスイスのロールにある彼のオフィスから、本当に送られてきた。
再生してみると、「赤・青・緑の3原色」を横に並べたカラーバーが、無音で延々と映し出され、時折クールベ等の泰西名画がインサートされている、世にも不可思議な代物である。
が、それを見た東大の美学でピカソを研究した私の上司は、「ふむふむ、なかなか面白いじゃないか」、と、高く評価したのだった。
ゆりかごから墓場へ急ぐ君たちに優しく寄り添うマイナカード 蝶人
これでも詩かよ 第314回
ある日、料理をしないし、できもしない男が、
目に美々しい春のヤサイを、買い散らした。
ミズナ、シュンギク、ホウレンソウ
カブラ、ジャガイモ、泥付き長ネギ
すると、男の妻は珍しく激して、かくの給うた。
「不要な食材は、ほとんど暴力である。」
なるへそ。いらんヤサイは、暴力なんだ。
こいつァ春から、目覚まし草。
Contessa,perdono!*
許してたもれ。我が家の伯爵夫人。
*モーツァルト「フィガロの結婚」第4幕大団円、アルマヴィーヴァ伯爵の歌唱。
「社会的微笑」なぞ捨て去って「乳児的微笑」を取り戻そうよ 蝶人
村上春樹著「更に、古くて素敵なクラシック・レコードたち」を読んで
照る日曇る日 第1859回
前著「古くて素敵なクラシック・レコードたち」の好評に応えて待望の続編が登場しました。
パガニーニの「24のカプリース」から、ベートーヴェンの「ピアノソナタ11番」まで、村上選手が秘蔵する懐かしのLPが陸続と登盤。1枚毎の思い出とともにその独断と音楽愛と「普遍的偏見」にみちみちた解説と解釈を、営々と綴っていきますが、不思議なことにその内容は、おらっちのそれとそれほど食い違ってはいないのが不思議です。
昼飯を抜きながら全世界のクラシックレコード屋のバーゲン箱を漁りつつコレクトした村上選手の守備範囲は驚くほど広く、たとえばクルト・ヴァイルの「三文オペラ(組曲&オペラ版)」の7枚や、ラヴェルの無伴奏の「3つのシャンソン」をロバート・ショウ合唱団の名演で聴いた感想などは、『レコード芸術』誌のエラソーなヒョーロンカなぞ、足元にも
及ばない深みにいつのまにか到達しているのではないでしょうか。
超有名プレーヤーだからといって無暗にもち上げず、若き日の邦人や無名に近い演奏家のレア盤などにも共感と拍手を惜しまない、いい意味でのアマチュア精神が自然に発揮されているのにも好感が持てます。
50年代のモノラルレコードも多いのですが、CDよりも豊富な情報で満ち満ちているレコードの愛好者が日を追って増加しているこんにち、本書の刊行はまことに時宜を得た好個のガイドブックと申せましょう。
1楽章終りて後にブラボーと叫ぶ勇気のない日本人 蝶人
闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.3208~17
1)バフマン・ゴバディ監督の「サイの季節」
実在のクルド系詩人サデク・カマンガルをモデルにした2012年の恐るべき陰謀と邪悪の映画。美人なモニカ・ベルッチ演ずる妻が可哀想ずら。
2)アスガー・ファルノルディ監督の「誰もがそれを知っている」
2018年の思わせぶりなスペインの探偵映画。ペネロペ・クルスってほんとに美人なのかしら?こうゆう人が家にいたら疲れるだろうなあ。
3)ブレット・ラトナー「天使のくれた時間」
もしもあのとき違う道を選んでいたら?という古くて新しいテーマに挑んだ2000年のハリウッド映画。なんにでも出演して演技が粗いニコラス・ケージが、珍しく好演している。
4)ピーター・ボグダノヴィッチ監督の「マイ・ファニー・レデイ」
才気煥発の演出家による2015年の快作。今どき困っている女に3万ドルを恵んでくれる善良な金持男なんかいないと思うけど、救われた売春婦が巻き起こす捧腹絶倒の喜劇は抜群の面白さなり。
5)パスカル・フェラン監督の「レディ・チャタレー」
ロレンスの小説の2007年のまっとうな映画化。
6)グリンダ・チャージ監督の「カセット・テープ・ダイアリーズ」
ナイロビ生まれのインド系女性監督が、英国の片田舎に生きるパキスタン移民を主人公に多国籍社会に生きる若者の未来を透視する2019年のブルース・スプリングステイィーン味の音楽映画。
7)ゲイリー・マケンドリー監督の「キラー・エリート」
ジェイソン・ステイサムとデ・ニーロがいい年こいて活躍する2011年のアクション・ギャング映画。こんな禿げ男のどこがいいんだろう。
8)コンスタンチン・バスロフ監督の「AK―47」
旧ソ連時代に登場したカラシニコフ自動小銃の2020年の誕生秘話。なるへそこういう経緯でこの稀代の戦争兵器が世に出たのか、とちょっと興味深いものもあったずら。
9)ディエゴ・カプラン監督の「愛と情事のあいだ」
友人夫婦がスワッピングしてみたがどうもうまくいかんかった、というような2012年の噺。
10)モルテン・ティルドラム監督「イミテーション・ゲーム」
第2次大戦の帰趨を決定づけた英軍の独逸の暗号「エニグマ」の解明を巡る2014年の政治的軍事的サスペンス。解明の映画は以前あったが、本作はそれ以降の大問題を取り扱っていて興味深い。
大木家の日の丸を見て考えるはてさて今日は何の日だったか 蝶人
これでも詩かよ 第314回
生
生
生
生
生生生生生生生生生死生生生生生生生生生
生
生
生
生
生
生
生
生
生
楽しみがまた増えました「男女その他のどれかに○をしてください」 蝶人