照る日曇る日第1457回
2018年から2019年まで「世界」に連載された「映像世界の冒険者」に補足、全面改訂された映画評論家の最新論考である。
陳凱歌、王兵、テオ・アンゲロプロス、ジャン=リュック・ゴダール、デレク・ジャーマン、アレチャッポン・ウイラーセータクンなどは名前と作品は知っていたが、その他のクリス・マルケル、センベーヌ・ウスマン、アレクサンダー・クルーゲ、ラウル・ルイス、アレウセイ・ゲルマン、マルコ・ベロッキオ、ジョアン・セザール・モンテイロ、楊徳昌、ジョスリーン・サーブ、タル・ベーラ、モフセン・マフマルバフ、ヌリ・ビルゲ・ジェイランなどの映画監督とその主要作品などは、恥ずかしながらみたこともきいたこともない不勉強なわたくしゆえ、いろいろご教授頂いて有難うございます、としか言えない体たらくずら。
残された日々の中でこれからどれくらいフォローできるだろうと不安と楽しみが入り乱れるような気持ちである。
なお著者は「JRGは1冊の書物を読み通すということにまったく関心がない。若き日に映画観から映画館へとハシゴをし、何本ものフィルムを断片の連続としてしか観ようとしなかったように、書物においても気ままにひょいとと取り上げ、飽きたらただちに次の書物に移るという読み方をしているはずである」という指摘をしていて興味深い。
それで思い出したことがある。1985年6月29日、スイスのロールで彼に会った時、坂本龍一の「音楽図鑑」のカセットと、最近鬼籍に入った戸田ツトムの「東京図鑑」をお土産に渡したら、彼はその二つを目にもとまらぬ素早さで吟味し、前者を取り置くと同時に、後者を可哀そうにもあっさりと捨てたのであった。
その翌日の夜、私は偶然パリのサンラザール駅の向かいにあるHotel Concorde St.Lazareのバーで偶然JRGに会ったのであるが、その時彼は、私が声を掛けるまでドイツ語の分厚い本を熱心に読み耽っていた。
余談ながら岩波の本に誤植があるのは残念だ。
この夏もまた生き延びて葉月尽