ある晴れた日に第160回
おほけなくも岡井隆うし慕いまつりわれは生涯一投稿歌人
元部下の突然の死よりも哀しきはその通夜の知らせ誰からも無きこと
月に一度千五百円のイタリアンをいただくほどのささやかな仕合わせ
ハッケヨイノコッタノコッタ夢の中で栃錦と若乃花が戦っていたよ
男性バレリーナの醜い膨らみから眼を背け女性のパンティの色を見ている
太平洋に1日300トン流れる汚染水ノーコン首相にみな呑ませたし
君のその愛国主義が君が住む愛する国を滅ぼすだろう
スタインウェイでなくヤマハを弾いている「教授」みてちょっと嬉しいその程度の愛国者です
残念だが君たちとは全然考え方が違うと言い放ちて一人帰りきぬ
一等賞になれなどと言われてもなんのことやらさっぱり分からんうちの耕君
何ゆえに蓮の葉っぱをちょん切って川に捨ててしまうのか依然謎多き我が家の自閉症児
天井からぶら下がって縊死していたよ旧字旧仮名
門君が越した高崎あたりでは今頃きっと四〇度だろう
あの欲望この欲望消えてゆくなり行き合いの空
遥々と遠き国より帰りたりほんの短き午睡より覚めて
空也の念仏のように思念が現実になってゆく稀代の呪術文士中上健次
健君がとげぬき地蔵で買ってくれた真っ赤なパンツで父は頑張る
ハッケヨイノコッタノコッタ夢の中で栃錦と若乃花が戦っていたよ
相模湾の海底深く沈みゆく第三臼歯に追い縋りたり
エジプトやシリアの人が死にゆく日湘南の海で泳いでいるわたし
今宵また非通知携帯がルルと鳴る何処かの誰かの丑の刻参りか
よろこびもかなしみも消えて行くなりいきあいの空
お握りは空気を入れないでラップしてくださいと警告する妻
教室の女子学生の大半がパンツの膝を出している2003年夏の試験日
目の前で微笑む君が大学院教授畏れ多くて近寄れないよ
現世かはたまた隠り世で鳴くらむか喨々と鳴る油蝉の声
茶葉の陰に茶色の羽根を立てているムラサキシジミよ紫を見せよ
コンクリートの電柱高く幣巻かれ神社の祭礼近づきにけり
妻と手を取りて急ぐや秋祭り
秋祭り神輿の太鼓は変拍子
誰からも見られず散りし月下美人
戯れに北枕にする昼寝かな
ミンミンの声で目覚める午睡かな
ミンミンは真実一路妻を恋う
二人して一合の飯を食う夕べ
去年の蝉もあわせて鳴くや杉木立
季語なぞは弾き飛ばして蝉が鳴く
モーツァルトの迅さ身にしむ白露かな
一輪の彼岸花が咲いている 世界一弱い国でいいじゃないか 蝶人