あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

弥生尽~西暦2023年弥生蝶人狂言綺語&バガテル―そんな私のここだけの話第412回

2023-03-31 15:34:13 | Weblog

こないだお正月だったのに今日で3月が終わる。桜はまだ咲いているが、散れば4月が始まり、慌ただしく春が終わって、あっという間に夏、秋冬が過ぎ去り、2023年が終わってしまうのだろう。

 

その間にわれひと共に年をとり、大勢の人が命終し、もしかすると私もその仲間になるのだろう。まことに哀しいような虚しいような当たり前の成りゆきである。

 

それはさておき、先日長男がお世話になっている大和市の施設とホームの面談があり、2つを掛け持ちで家族3人で行ってきました。コロナのせいで直接担当者の貌を見ながら「面談」するのは久し振りだったが、やっぱりどんな些細な話柄でも、目と目を見かわしながら話すのはとても大事なこと。これまではお互いにどんな面容の人物とも分からないで、電話越しに話していたに過ぎなかったのだ。

 

それにしても社会福祉の仕事に携わる人の仕事はますます大事になっていくのに、その待遇や社会的地位がさっぱり認識されず、いっこうに向上しないばかりか、志望者自体が減少の一途を辿っているのは、こんなところで切歯扼腕していてもなーんも始まらないが、大大問題である。

 

  処女のごとく歩み始めし朝ドラが脱兎のごとく幕を閉じたり 蝶人

 

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島田雅彦著「パンとサーカス」を読んで

2023-03-30 09:58:31 | Weblog

 

照る日曇る日 第1874回

 

米国の奴婢として嬉々として奉仕する腐敗堕落した政権を打倒し、自主独立の主権国家、「中立国日本」を、今更ながら敗戦直後の原点に立ち返って夢想する作者による、ああ堂々の超現実的にして超幻視的な虚実皮膜の実験的大河全体小説である。

 

右翼やファシストからは「お花畑の空想」と片付けられかねないメインテーマを終始一貫して堅持しながら、複雑に連鎖するプロットを、それなりのリアリティの膠で接着しつつ、にゃんとかきゃんとか巧みにゴールインする蛮力は、天晴見事じゃ!と讃えたい。

 

感心するのは、全体よりも細部の至る所に転がしてある「本当らしさ」で、殊にCIAというスパイ組織の内部活動をば、まるで自分が見てきたように微に入り細に亘って精確に描写し、既存権力の多種多様な反逆者たちを、まるで仏陀のように、見えない巨大な掌の上で自在に操る作者の超能力と剛腕には、舌を巻くほかはない。

 

ただ「サーカス」という言葉は再三登場するが、「パンとサーカス」という表題の意味を解き明かす文章は、「郵便配達は二度ベルを鳴らす」と同様、膨大な本書のどこにも描かれていないのが残念だった。

 

  山々に山桜咲き里山に染井吉野咲き我が家には大島桜咲く 蝶人

 

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西暦2023年弥生蝶人映画劇場その6

2023-03-29 18:25:43 | Weblog

西暦2023年弥生蝶人映画劇場その6


闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.3261~65

 

1)クリストファー・ノーラン監督の「テネット」

兵隊や車が逆走したりする2020年の桁糞悪いSFである。

 

2)ジョエル・シュマッカー監督の「ザ・クライアント」

どつぼにハマった少年をノーギャラで助ける弁護士をサランドンんが熱演する1994年の殺人ミステリー映画。

 

3)クリント・イーストウッド監督の「15時17分、パリ行き」

題名の列車にあらわれたテロリストを体を張って阻止した勇気ある3人のヒーローたちの2018年の実話物だが、事件に遭遇する前の観光旅行のスケッチのほうが面白い。

 

4)キム・ギドク監督の「春夏秋冬そして春」

孤絶した山奥の池の中にあるお寺で老師の薫陶を受けた少年が、一人前になって我が子を育て上げていく2004年の仏教一代記。よくも生きた毒蛇を平気で掴めるものだ。

 

5)アヴァンテイ監督の「ローマの奇跡」

ローマの産院に入院した妊婦たちの群像を描いた2006年の駄作なり。

 

「見世物はみな見せたり」と言うごとく幕下ろしたりジャン=リュック・ゴダール 蝶人

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中沢啓治「はだしのゲン第4巻」を読んで

2023-03-28 11:03:25 | Weblog

中沢啓治「はだしのゲン第4巻」を読んで

 

照る日曇る日 第1873回

 

戦争が終わってマッカーサーと米軍が進駐してきたが、ゲンたちの暮らしは悲惨そのものだ。

 

戦時と同様、相変わらずの飢えに追い詰められて多くの人々が死の淵に立つ。

 

そして皆に愛されたゲンの妹友子の死。

 

しかしゲンは、焦土の絶望の底から、青い麦のように雄々しく立ち上がるのだった。

 

   真珠湾の熱狂とく忘れよと春の冷雨が額を濡らす 蝶人

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神奈川県立近代美術館鎌倉別館で「美しい本―湯川書房の書物と版画」展をみて

2023-03-27 13:50:39 | Weblog

 

蝶人物見遊山記第360回&鎌倉ちょっと不思議な物語第441回

 

 

私は美学に暗く、デザイン音痴で美的生活に縁遠い人間なのですが、もはや本の域を脱して美術工芸品というべき美麗本の数々を眺めて、思わず「これはこれは」と溜息の2つ3つも漏らさずにはいられませんでした。

 

出品作家は、加藤周一、大岡信、谷崎潤一郎、堀田善衛、小川国男、塚本邦雄、車谷長吉、三浦淳史、柄澤齊、白洲正子、村上春樹、杉本秀太郎等々と多士済々ですが、どの作家、詩人、随筆家のどの書物の装丁、挿画にも、当代一流の作り手が駆り出され、完成品は、はなから限定された稀覯本であるしかない、いわば好事家の世界の逸品中の逸品です。

 

湯川書房の湯川成一氏は、1937年に生まれて大阪、次いで京都に店舗を構え、2008年にガンで71歳で他界されたそうだが、彼の仕事は、もはや二度と帰らぬ出版世界の栄光の頂点で、永遠不滅の光彩を放っていえばいえそうです。

 

 大江氏の健三郎さん死んぢまいイーヨー今ごろどうしているか 蝶人

 

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鎌倉市鏑木清方記念美術館で「花咲くよろこび 清方が描いた花々」展をみて

2023-03-26 09:21:10 | Weblog

鎌倉市鏑木清方記念美術館で「花咲くよろこび 清方が描いた花々」展をみて

 

蝶人物見遊山記第359回&鎌倉ちょっと不思議な物語第440回

 

 

毎度お馴染みのコレクションであるが、今回は初公開の「美人と芍薬」や、小石川植物園の桜や水仙など、たくさんの花々のスケッチを見ることができました。

 

清方のお得意は、なんというても、あの柔らかで温かい青や碧の美しい色彩ですが、それと共に、対象の特性をクリアにとらえた正確無比の描線の冴えが見事。そして彼が季節の花々を描く時、その2つの美点が相俟って、私たちはこのうえない生理的快感を味あうことができるのです。

 

なお本展は来る4月9日まで小町通左入るの同館にてひそりと開催ちう。

 

  光触寺の門前にいたタヌサブロー車に轢かれて川で死にたり 蝶人

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西暦2023年弥生蝶人映画劇場その5

2023-03-25 11:24:58 | Weblog


闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.3256~60

 

 

1)スコセッシ監督の「ウルフ・オブ・ウォールストリート」

ディカプリオ主演の2013年の狂乱傑作。文字通りの酒池肉林を「映画を超えて」描き尽くしたスコセッシは凄い。

 

2)イーストウッド監督の「リチャード・ジュエル」

アトランタ五輪の警備員がテロ救済の英雄から一転しt犯人扱いされる有為転変を描いた2019年の実話映画。

 

3)スパイク・リー監督の「ブラック・クランズマン」

スパイク・リー健在!コロラドスプリングズで黒人初の警官になった主人公が、KKKを秘密捜査して手柄を立てる2019年のお噺だが、とってつけたようになるトランプがらみのラストは要らないずら。

 

4)ニン・ハイチアン監督の「奪還―ホステージ」

アフリカにおける中国軍PKO活動の2018年の宣伝映画。

 

5)ローワン・ジョフィ監督の「リピーテッド」

2014年のキッドマン主演の難病物。しかしいくら何でも脚本が酷すぎて、リアリテイ、ゼロずら。

 

   短歌てふ4次元世界の中心に奥村晃作「ただごと歌」あり 蝶人

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中沢啓治「はだしのゲン第3巻」を読んで

2023-03-24 10:36:34 | Weblog

 

照る日曇る日 第1872回

 

同じ広島市民なのに、原爆被爆者にたいする差別といじめが、なんと凄まじいことよ!

 

それまで仲睦まじかった同じ家族が、被爆した者としない者とに鋭く切り裂かれる惨い悲劇を、中沢啓治のペンは、容赦なく暴き出している。

 

そして、45年8月15日がやってくる。

 

家族が目の前で焼け死んだ跡地に芽生えた麦の若芽は、かすかな希望の象徴である。

 

   この次のWBCが来る日まで毎日サムライ特集やってろ 蝶人

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家族の肖像~親子の対話その92

2023-03-23 10:19:15 | Weblog

家族の肖像~親子の対話その92

 

2022年11月

 

わたしはミヤモトノブコです。

こんにちは、ミヤモトノブコさん。

ミヤモトノブコ、ミヤモトノブコ、ミヤモトノブコ。

 

お母さん、円安ってなに?

円が安くなることよ。

エンヤス、エンヤス、エンヤス。

 

お父さん、笑ったらウエハラミツキは?

「コウ君、アホ笑いしないでね」っていうよ。

 

あした、「首都圏ネットワーク」見ます、お母さん。

はい、見てくださいね。

 

ウクライナ、外国?

そうだよ。

 

ぼく、充電しましたよーだ。

そうなんだ。

きょねん、おばあちゃんちで個展作ったね。

そうだね。

 

むかし「あおぞら園」で、納涼祭やってたよね。

やってたねえ。

 

ぼく、ふきのとう舎、好きですお。

そうですか。

 

お父さん、いま、どこですか?

ヨコスカだよ。横須賀のどこだか、当ててご覧?

キシモトシカ!

ぴんぽーん!

 

お父さん、きょうイシハラサトミ録画してくださいね。

分かりましたあ。バッチリ録画するよ。

 

去る、居なくなることでしょう?

そうだよ。

 

お母さん、あしたトマトシチューとお、キノコ語ご飯とお、ピーマンの肉詰めにしてくださいね。

分かりましたあ。

 

お父さん、出かけるの英語は?

Go outだよ。

Go out、 Go out、 Go out!

 

お母さん、ぼく、ずっと耳ふさいじゃったんですお。

そうだったの。

そうなんですお。

 

あ、は、アクザワさんの、あ、でしょう?

そうだね。

 

ミワさん、体調崩しちゃったんでしょう?

そうねえ、崩しちゃったんだよね。

 

首都圏ネットワーク、好きだよ。

そうなんだ。

ウエハラミツキ、見ますよお。

見ましょうね。

 

「ガンバロウ、エイエイオオ!」ってなに?

頑張ろうね、のことよ。

 

お母さん、イノウエユウキ印刷してね。

イノウエユウキシって?

首都圏ネットワークだよ。

 

お母さん、なんで「舞いあがれ!」飛んじゃったの?北朝鮮がミサイル打ち上げたから?

でそうよ。

舞いあがれ! 舞いあがれ! 舞いあがれ!

 

 

 舞い上がり勝った勝ったと浮かれてるいいことなんぞ他にないので 蝶人

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佐藤幹夫著「津久井やまゆり園「優生テロ」事件、その深層とその後」を読んで

2023-03-22 14:07:36 | Weblog

佐藤幹夫著「津久井やまゆり園「優生テロ」事件、その深層とその後」を読んで

 

照る日曇る日 第1871回

 

「戦争と福祉と優性思想」という副題の付いた長い長い、しかし重い重い論考を、やっとこさっとこ読みあげて、もう健忘症の全国民から忘却の彼方に置き去りにされようとしている7年ほど前の大殺傷事件を、改めて生々しく思い出した次第です。

 

この事件のあと、私の長男がお世話になっている施設の当時の理事長さんが「今こそ障害者を施設から地域へ移行する絶好のチャンス」と力説されていたのですが、私には違和感がありました。

 

昔から障碍児者を、施設に閉じ込めず、一般社会で自立して生きられるようにすべきだ、という考え方があることは承知していましたが、それは正しい方向だとしても空想的な理想論に近く、実際には、施設がなければ生きていけない障碍児者は昔も今も数多いのです。

 

私たちは、障碍者の地域移行をますます促すと共に、少なすぎる施設をますます随所に開設していかねばなりません。もとより施設の良し悪しはあるけれど、施設自体が悪いのではなく、良い施設と悪い施設がある。悪い施設を、改善改良革命しなければならないのです。

 

繰り返しますが、施設を活用しない限り生きていけない障碍児者が沢山います。だから、とりあえず今回の事件への施設側の対応としては、それぞれの施設の職員と共に「植松的な思想と行動」についての徹底的な対話を交わし合い、その中から、事件の再発を防ぐ対策を考えていくことこそ喫緊の課題だと思ったのですが、あれからおよそ7年が経過しても、当事者たちによるその種のアプローチが行われた形跡もないのは誠に残念なことです。

 

さて本書です。著者は、2016年7月26日の未明に発生したこの大事件の軌跡を、当時の報道や公判記録によって的確に再現しています。

 

そして著者は、この「優生テロ」がなぜ発生したのか、その本源は何かについて、障害福祉、社会福祉、施設問題、優性思想と生命倫理学、障害学、精神鑑定、児童心理学と犯罪心理学、精神医学と精神病理学、戦争心理学、刑法、刑事裁判と責任能力問題、犯罪被害者問題、匿名報道と報道、テロリズム、非暴力思想、永山則夫と宮崎勤事件、ナチスとアウシュヴィッツ、総力戦体制と福祉等に関わる先学の著作や資料、考察を自在に駆使し、さらに法廷における自らの植松本人との「実験的視線対峙!」を含む植松聖の人格研究を踏まえて、思想的、哲学的思考を粘り強く推進しながら、広大な俯瞰的視座の元に一元的に把握しようと試みています。

 

亡き弟が障害者であった著者は、巻末に『植松死刑囚に送った父親の「手記」』という自筆の手紙を添えていますが、私はこの「エピローグ」を、涙なしに読み終わることはできませんでした。これを読んで心を動かされない者は、それこそ植松が言う「失心者」でありましょう。

 

  ニッポンが米国に絡め取られるごとくニッポンに絡め取られる私 蝶人

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「夢は第二の人世である」或いは「五臓六腑の疲れである」第124回

2023-03-21 10:33:01 | Weblog

 

西暦2023年睦月蝶人酔生夢死

 

 

峰と峰の間の鞍部に、「おとろま」とか「ふくこう」とか、「こんろん」とかいう言葉が蟠っているみたいなので、現地で確かめたいと思うのだが、いつそこへ辿りつけるのかさっぱり分からない。1/1

 

ホステス役の彼女は、ランチが出来るレストランを必死で探したが、見つけられなかったので、おらっちはさりげなく「確かこの道を左に曲がると、おいしいイタリアンのお店があるはずですよ」と、助け船を出したのよ。1/2

 

この店では「週刊朝日」しか売っていないというハンデイィキャップを、逆手にとってPRすべし、と何げなくおらっちが提案したら、上司が「俺もそう思う」と乗ってきたために、おらっちは、久し振りに朝日新聞広告部のアルガ氏を訪ねることになった。1/3

 

急に勉強したい気分になって、我ながら不思議だったがあ、隣の可愛いおねいちゃんの十五夜のノートを、丸ごとコピーしたり、ついでに同棲を始めたりして、すっかり青春してしまったずら。1/4

 

その国の、出来立ての長大なミサイルの先端部には、なにやら日本語が書かれているようなので、近づいてよーく見ると、「雪んちょ学園」と記されていたので、その訳を聞くと、開発者の母校である小学校の名前だった。1/5

 

「これなら、あなたにも出来るでしょ」と言われて、おらっちは、深い穴の奥底を覗き込んだが、あまりに暗くて何も見えなかった。1/6

 

PCをやっていたら、突然ハチャメチャな文章が飛び込んで来たので、仕方なく直していると、またハチャメチャな文章が飛び込んで来たので、「お前は誰だ。おらっちに仕事の依頼ならそう言え。無料じゃないぞ」と怒鳴ったら、引っ込んだ。1/6

 

さんざん歩き回った挙句に、「ごめんなさい、この近くにランチが出来るレストランを御存じですか?」とその女が尋ねるので、目の前の高層ビルを指さして、この中にいっぱいありますよ」と答えたもんだ。

 

おらっちは、よくは覚えていないのだが、なんとかきゃんとかして、地球の爆発を止めたので、みんなから「やったね、おめでとう!」と礼を言われたのよ。1/7

 

ホームレスなフーテン生活をしていたおらっちを頼って、見知らぬホームレスがやってきたので、仕方なく、ホームレスの友達に借りた広いテントに入れてやって、毎晩2人で寝ている。1/8

 

そのターミナルの地下室には、車両基地があったので、おらっちは、夜毎の美魔女を連れ込んで、朝までマグ割ったのよ。1/9

 

氏はあろうことか、私がつい先ほどまで彼の美貌の細君と同衾していた臥所まで案内し、意味ありげな目つきで、私を見た。1/10

 

私は自分の詩集の最終校正を急いでいる最中に、恩師の生誕100周年特別行事の司会を頼まれ、何度も固辞したのだが、どうしてもと強要されたその席で、狭心症の発作が起こって、救急車で病院に運ばれたのだが、運の無いことには、あっけなく命終しちまったよ。1/11

 

FBのメセンジャーで対話しているんだが、お互いの言葉が、空中衝突しては、地べたに落っこちてしまうので、スムースな意思疎通が、てんでできないのだ。1/12

 

寝台列車に乗っているはずだのに、実際はバスの後部座席を寝台替わりに眠っていたらしいが、窓から見える景色は、ともかくステキだった。1/12

 

おらっちは、深町雄二という役者として喰えるようになっても、依然として俳優協会に7つの名前で登録をしていたので、深町雄二主演の映画の通行人で、おらっちの別名の飯田太郎が、出演することもあった。1/13

 

旧ソ連に併合され、祖国の歴史、文化、言語まで抹殺されそうになってきたので、おらっちの使命は、それらをなんとかして奪還することだと思い決めたのだが、とりあえずどうしていいのか、てんで分からないのだ。1/14

 

祖国の軍事政権から追放されて、私は長らく隣国で亡命生活を続けていたのだが、そのうち母国の言葉や伝統文化にうとくなってきたために、母国の人々から非難され、誹謗中傷され、とうとう命まで狙われるようになってしまった。1/15

 

久し振りの巴里。さて今夜はどうしようかと考えていたら、フランス映画社の若くて髪黒々の柴田社長から、「ササキさん、ウチの新しいシャシンの試写会があるんだけど、どうですか?」と誘われたので、喜んで同行することにしたが、いつの間に巴里にフランス映画社が進出していたんだろう。1/16

 

施設でナ―君がコウを苛めるというので、心配したが、ナ―君は好きな女の子に振られた腹いせに、みんなに当たり散らしていることが分かったので、胸をなで下ろしたのよ。1/17

 

群衆の中に「理非曲直を明からめよ」と大書したプラカードを掲げた男がいたので、懐かしの赤尾党首かと思って近ずいたのだが、赤尾病院の院長先生だった。1/18

 

建築業界の大会が、今年は長野県で開催されたが、世界的に有名な建築家が、会場のてっぺんに登って、そこから講演の蘊蓄満載のレジュメをまき散らしたのだが、それを拾い損ねた聴衆が、みな天井に登り始めたので、「建築家は来るな、来るな」と、杜子春のように絶叫したのよ。1/19

 

大学の授業料を払いに来たのだが、天気がいいので、日光浴をしていたら、向かいの垣根に怒りのチビ太の大好きなタコが、3匹もぶら下っていたので、これ幸いとお土産にしたのよ。1/20

 

SMSで#イナゲヤ→#六つ子→#イエスキリストと辿ってみたら、「新製品「イエスキリストを焼いたコーヒー」を試してみませんか?」と聞かれたので、妙な名前だな、と思いつつ飲んでみたら、美味かった。1/21

 

イナゲヤの実際の店で買いものをして、レジに行ったら、「10円のおつりがありますが、これを使って新製品「イエスキリストを焼いたコーヒー」を試してみませんか?」と聞かれたので、即お願いした。1/22

 

日テレが、フジを潰したり、TBSが、NHKを潰したりしている。1/23

 

競馬場にやって来たのだが、馬も人もいない。いや、たったひとりだけいたのだが、彼は、自分の靴を一生懸命磨いていた。1/24

 

その某重大事件をテーマにした映画を見るためには、ややこしい操作が必要なので、そのテレビでは、通常の番組を見ることができなかった。1/25

 

菊之助は、団十郎が逗子で売っているダイコンガウンが大好きだというておったので、土産に持っていこうと思ったのだが、あまりにダサイので、止めてしまった。1/26

 

もう終わりの見えた患者だったので、その医師は、延命治療すら放棄してしまったようだ。1/27

 

僕は、太っちょのドンガバチョと一緒に、春を訪ねて諸国一見の旅に出たのだが、ドンガバチョが、夜な夜なしつこく布団の中に忍びこんでくるのには参ったずら。1/28

 

大昔に命終したはずのコンドーさんが、満開の桃色のチューリップのようなドレスを纏って、いと華やかに登場したので、みんなびっくり仰天だった。1/29

 

あっと思った時には、すでにカバンがなかった。恐らく電車の中に置き忘れたのだろう。すぐに駅員にその旨を告げたのだが、「どんなカバンですかあ?」と聞かれた私は、はてさて一体どんな形で、どんな色のカバンかさえ、さっぱり思い出せないのだった。1/30

 

照明器具のある所が、そのままある街の平面図になり、それがPCのモニターに飛び込んでいくのを見ていた助手のタカハシが、「ササキさん、僕も大阪支店へ連れて行ってくださいよお」と甘えたので、即座に却下した。1/31

 

  憎たらしい逸ノ城が着々と勝ち進みゆく大相撲春場所 蝶人

 

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西暦2023年弥生蝶人映画劇場その4

2023-03-20 10:32:26 | Weblog

 


闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.3251~55

 

1)シアン・ヘダー監督の「コーダ」

聾唖家族と共に育ったヒロインが歌手を目指して旅立つまでを向日葵的に描く2022年の健全健康映画。映画内容的には価値は低いが、社会的・人世的には偶にこういう大甘映画もないと困ります。

 

2)ピョン・ヒョク監督の「スカーレットレター」

刑事が2人の女の板挟みになる2004年のよくあるメロドラマ。哀れイ・ウンジュの遺作となった。

 

3)ソン・ヨンソン監督の「依頼人」

ハ・ジョンウ&チャン・ヒョク主演の2011年製作の法廷スリラー。

果たして夫は妻を殺したのか否かと最後まで引っ張っていくが後味の悪い結末ずら。

 

4)ホン・ギソン監督の「イテウォン殺人事件」

去年群衆大量圧死事件が起こって話題になったイテウォンのハンバーガー店で実際に起きた殺人事件の謎を解明しようとするが、2名の容疑者のいずれとも特定できないで終わる2011年の消化不良の裁判映画。

 

5)スティーヴン・C・ミラー監督の「ライブレポート」

警官が地元放送局員が持つ中継のキャメラと共に誘拐犯を追跡するという2019年の阿呆莫迦大捕り物映画。

 

  剰余価値を搾取されつつ労働に喜び覚えるマゾヒズムかな 蝶人

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中沢啓治「はだしのゲン第2巻」を読んで

2023-03-19 08:47:02 | Weblog

中沢啓治「はだしのゲン第2巻」を読んで

 

照る日曇る日 第1870回

 

広島にエノラ・ゲイから投下された原爆で、主人公のゲンと母親の目の前で、倒壊した家屋の下敷になった父親、姉、弟の3人が焼き殺されていく姿。作者は、自分がその目で見たこの世の生き地獄を、本作で執拗に描き出す。

 

そこに我々は、悪魔の時代が作り出した戦慄的な地獄絵を、そのまま次代に、そして永久に伝えようとする作者の強烈な意思を感じるのである。

 

  色白きモクレンをハクモクレンと呼ぶハクレンとは呼ばずに 蝶人

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中沢啓治「はだしのゲン第1巻」を読んで

2023-03-18 13:34:38 | Weblog

中沢啓治「はだしのゲン第1巻」を読んで

 

照る日曇る日 第1869回

 

広島で被爆した作者が書き続けた自伝的な戦争漫画の第1巻である。

 

ますは主人公ゲンの5人家族の生計が下駄の絵柄制作で成り立っているという設定にいたく共鳴するのは、かつて郷里のわが家が同じ下駄屋を営んでいたからだ。

 

が、それにしても漫画全体が、現今とは180度正反対の反権力、反体制的なトーンで威風堂々と進行していくことに驚き、今更のように異常なほどの感銘を覚える。

 

この威風堂々たるトーン、それはもう2度と戦争に加担してはならないという堅い決意のもとで再出発した「戦後民主主義」の、初々しくも、雄々しいあの足音だったのだ。

 

   日韓の首脳会談にはそっぽ向き大谷のバントに総立ちとなる 蝶人

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東京ステーションギャラリーで「佐伯祐三展」をみて

2023-03-17 15:29:01 | Weblog

東京ステーションギャラリーで「佐伯祐三展」をみて

 

蝶人物見遊山記第358回

 

「自画像としての風景」というスマートな副題がついた回顧展。2度の巴里滞在の折に1日2枚の猛烈速度で描かれた広告ポスターを含めた街頭風景の迫力は圧倒的ですが、私はそれよりも自画像を含めた肖像画の魅力に酔いしれました。

 

会場入り口に配置されている自画像シリーズも好ましいものですが、彼が妻子や親族をまるで一筆描きのように仕上げた半身像が素晴しい。目鼻口などはぶっとい輪郭で大胆に描かれ、まるで漫画のようですが、被写体に対する好意や愛情がぷんぷん伝わってきます。

 

この時期(1926年)の静物画の「タラバ蟹」も一気呵成に描かれていますが、生命力の輝きと油を盛ることの楽しさが2乗、3乗、4乗になって、見るものの臓腑に飛び込んでくる傑作中の傑作です。

 

画家は、蟹でもニンジンでも、愛娘の顔でも、巴里の町角のエスカルゴ便所でも、ポスターでも、カフェでも、建物でも、自分が気に入ったものを、好きなように描く。描きまくる。命懸けで描きまくる。その切実さと快感が見るものに真っ直ぐに伝わってくる。古今東西こんな剛球投手は殆どいませんでした。

 

そうして、その集大成の最大傑作が、彼の余りにも早すぎた30歳の最晩年に仕留められた「ロシアの少女」です。1928年8月の病死寸前にものされたこの亡命貴族の娘の鼻はL字で描かれ、顔も眼も漫画的ですが、それが同時期の「郵便配達夫」や「扉」、「黄色いレストラン」を凌ぐ凄まじい魔磁力で迫ってくるのはなぜでしょうか?

 

   千両も万両も消えたわが庭にいつしか膨らむ一輪の梅 蝶人

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