あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

家近良樹著「西郷隆盛」を読んで

2018-07-31 11:14:04 | Weblog


照る日曇る日 第1109回



ミネルヴァ書房から出ている日本評伝選の1冊ですが、年譜、後書、人名索引まで入れると580頁に垂んとする大作で、それだけに著者の熱い思い入れを感じることができます。

この本は、これまでの研究を総括し、最新学説を参照しつつ、西郷の誕生から自死までを、時系列でじっくり書き込んであるので、現在某右翼放送局でオンエア中の大河ドラマが、いかに史実を捻じ曲げた、面白狙いの超出鱈目番組かよーく分かって勉強になります。

慶喜がセゴドンに切腹を命じたり、それに怒った西郷が慶喜の股間にドスを刺して恫喝するなんちゅう先週の漫画的演出を、どうして磯田某を始め、ぬなんと3名もいる考証担当者がダメ出ししなかったのか不可解ずら。まあその他も不可解だらけですが。

それはともかく、西郷は太鼓をドンと叩けばドドンと大きく返す(海舟&龍馬説)という、まるでジャイアンかジャイアント馬場のように、巨大で、偉大で、どんなときにも悠揚迫らぬ大人物かと思っていましたが、これを読むとセゴドンは、よくいえば繊細、悪く言えば神経質で、ほとんど小心者というべき性格だったんですね。

また、いかなる時にも清濁併せ呑んだ「敬天愛人」の大人格者かと思っていたら、さにあらず、好き嫌いが激しく、一度嫌な奴だと思うとずーーとそう決めつけるようなキャラだったと知って、ちょっと安心しました。

本書の白眉は、西南戦争における西郷の敗死が一大チョンボであったことを縷々論証していくくだりで、彼が若き日にときおり見せた戦略と戦術の甘さが、彼自身にとっても想定外の大敗北と非業の死をもたらした経緯を鮮やかに描破しています。

血気に逸る私学校の若者たちに担がれた、「戦大好き人間」の西郷は、徒に命を彼らに預け、噴火山上で自爆するつもりなど、さらさらなかったのです。

明治10年現在の明治政府の支持率と評判は、現在の安倍蚤糞同様地に落ちており、旧士族以外にも西郷待望論は根強いものがありましたから、大久保の西郷暗殺指示疑惑を「尋問」するなどという「私憤」ではなく、「維新政府の不義不正を討つ」という大義を高く掲げ、例えば陸路大集団ではなく海路少数精鋭上京などの戦術を巡らせば、著者が暗示するごとく、西郷軍勝利の可能性はかなりあったと申せましょう。

ところが西郷は、ひとたび自分が立てば、全国から反政府の不平分子が武装蜂起し、熊本城など戦わずして開城するのではないかという、とんでもない幻想と誇大妄想にとりつかれて、現場指揮さえ部下任せにして顧みなかったのですから、大久保政府の近代的装備と堅実で迅速かつ的確な反撃に太刀打ちできるわけがありません。

田原坂の激戦以降は坂を転がり落ちるような一方的な負け戦になり、「晋ドン、コノヘンデヨカ」と無念の最期を遂げてしまいましたが、西郷が全盛時代のような才智をフルに回転させておれば、十分に勝ち目のある戦であったのではないかと、私は思わず切歯扼腕したことでした。

 蘇れセゴドン!我ら民草の先頭に立ち安倍蚤糞を撃破せよ 蝶人
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穂村弘著「水中翼船炎上中」を読んで

2018-07-30 13:23:08 | Weblog


照る日曇る日 第1108回


著者の17年ぶりの新歌集だそうです。装幀がお洒落で、なんと名久井直子選手によるデザインが9パターン!もあるそうですが、私が手にしたのは表A、裏bのAb型。なんか血液型みたいで面白いずら。

  エレベーターガール専用エレベーターガール専用エレベーターガール
  電車のなかでもセックスをせよ戦争へゆくのはきっと君たちだから
  おいしいわいいわかるいわすてきだわマーガリンを褒めるママたち
  夕闇の卓に転がる耳掻きの先に小さな犬が乗ってる

本文は202ページなんだけど、全部で328の短歌が1ぺージに2首しか載っていないという贅沢さ。本なんか1冊も出したことがない私は、溜息をつきながらページを繰っていきましたが、内容的、手法的には、これまでの作風とそれほど大きな変化はなさそうです。

  2号車より3号車より美しい僕ら1号車のガイドさん
  五組ではバナナはおやつに入らないことになったぞわんわんわんわ
  次々に葉っぱ足されてむんむんとふくれあがった夜の急須は
  戸袋がなんかやだった蝙蝠森餃と蜘蛛と蜥蜴が混ざりあう闇

しかし、「私の言葉はまっすぐな時の流れに抗おうとする。自分の中の永遠が壊れてしまった今も、水中で、陸上で、空中で、間違った夢が燃え続けている」と、著者自らが「あとがき」で解説しているように、本書には、明確なテーマがあります。

  遠足のおにぎりここで食べようかあっちがいいか 吹いている風
  大晦日の炬燵蒲団へばばばっと切り損ねたるトランプの札
  夕方になっても家に帰らない子供が冷蔵庫のなかにいた
  童貞と処女しかいない教室で磔にされてゆくアマガエル

それはプルーストが小説でやったように、さまざまな「失われた時」を求めて、そのおぼろげな記憶の断片を、書斎のコルクボードに美しい蝶のように開陳するという試みです。

  クリスマスの炬燵あかくておかあさんのちいさなちいさなちいさな鼾
  ふとももに西瓜の種をつけたまま畳の上で眠っています
  結婚してくれるひとはいないのかい、いないのか、いないのかい、いないのか
  ゆらゆらと畳に影を落としつつ丹前姿になってゆく父

著者はあえて現在に背を向けて過去に遡り、失われた少年時の懐かしい思い出を、堆く積った塵や埃の塊の中から発掘し、それらを掛け替えのない宝石のようにぎゅっと胸に抱きしめ、「新しい過去」を、もう一度、いまここで、改めて生き直そうとしているように見受けられます。

   ああ遂に羽生2冠負けて将棋界8人8強の戦国時代 蝶人

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しりあがり寿著「弥次喜多inDEEP3」を読んで

2018-07-29 12:33:21 | Weblog


照る日曇る日 第1107回



「幸(三)」では、弥次さんが幸にもうけた赤子を世に出すと、地球が蒸発すると「賽の河原の奪衣婆」が予言するのだが、その瀬戸際で助けがあり、事なきを得る。

しかし「晩餐会」の三連ちゃんは怖い。黒リンパが描かれたふすまを開くと、なんと地獄が現出するのである。

ジゴクガ、デタ!


   くたばれよお願いだから消えてくれトランププーチン安倍麻生 蝶人
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しりあがり寿著「弥次喜多inDEEP2」を読んで

2018-07-28 12:42:22 | Weblog


照る日曇る日 第1106回



明日は台風12号が関東地方を直撃するのではないかと戦々恐々としているが、本作の「台風の宿」ではなんと21号から27号まで7つの台風が一挙に来襲するのである!

弥次さん喜多さんは、ただただ猛威におそれおののくしかないが、その翌朝、台風は単なる「ただの低気圧」に変わり、村人たちは「ああいった自然のモノにいちいち目くじらたててもなあ」と述壊する。

ここには台風も戦争も、すべてのものは通り過ぎていく、と割り切っているこの国の民草の「一過性の哲学」があざやかに示されているようだ。

「幸(一)」では、死んだきむすめの幸を弥次さんがユッサ、ユッサと強姦してしまう。


  おらっちの不肖の息子や娘たちの最低の奴らが自民党にいて 蝶人

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穂村弘著「ラインマーカーズ」を読んで

2018-07-27 12:45:51 | Weblog


照る日曇る日 第1105回



著者の第一歌集「シンジケート」に加えて「ごーふる」、「ドライ ドライ アイス」、「蛸足配線」、「手紙魔まみ」、「ラヴ・ハイウェイ」などのエッセンスを加えた超お買い得のコンピレーショーンである。

 金髪のおまえの辞書の「真実」と「チーズフォンデユ」のラインマーカー

こんなことを言うてもしょもないことだが、ちょっくら、かの塚本邦雄選手を思わせる「半端ない」造歌創造の自在な発露に、いろいろな刺激を受ける。

並の歌人が歌を詠んでも、それはただ既存の歌に一を加えたに過ぎないが、この歌人の場合はそれ以上のもの、ちょっと大げさだが事件のようなものになっている。やっぱり世の中に天才という奴はいるのである。

特に「手紙魔まみ」という一乾坤を、無からでっちあげて、まみちゃんだのゆゆだの、ほむほむだのが、勝手に飛翔する磁場を創造したことが一等偉いのである。

 おしっこを飲むとかそういうのじゃないのまみが貴方を好きな気持は

 水準器。あの中に入れられる水はすごいね。水の運命として

 じつは、このあいだ、朝       なんでもありません

 「前頭九枚目より五枚目をただちに前線へ派遣せよ」

 まみの話をきいてるの?不思議だわ、まみの話をきくひとがいる

そう、まみの話を聞く人は思いのほか大勢いたのである。


   確定囚13名を死地に送った 神はそなたを許さないだろう 蝶人
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新潮日本古典集成版・木村正中校注「土佐日記 貫之集」を読んで

2018-07-26 13:59:43 | Weblog


照る日曇る日 第1104回


「土佐日記」は土佐守になった紀貫之が、その赴任先からの帰還をあえて女の視線で叙述してみせた紀行文の傑作と思っていたのだが、どうもそれだけの単純な代物ではなさそうだ。

木村正中氏の解説によれば、貫之が土佐滞在中に醍醐天皇、藤原兼輔をはじめとする彼の有力な庇護者や友人知己の多くが亡くなってしまい、帰京した貫之は過去の歌檀的声望とは裏腹に、不如意と喪失感、鬱勃たる孤独と悲傷のうちに晩年を迎えなければならなかった。「土佐日記」はそんな貫之の「どうしようもない人生の喪失感を癒すべく、まさに自慰的な行為として」書かれた、というのである。

それはともかく「土佐日記」でいちばん読む者の胸を打つのは、京で生まれ、土佐で亡くした女児の記述である。

 なかりしもありつつ帰る人の子を ありしもなくて来るが悲しさ

 生まれしも帰らぬものをわが宿に 小松のあるを見るが悲しさ

京では子がなかったのに、土佐で生まれた子と一緒に帰る人もいるというのに、伴ってきた愛児を死なせて帰らなければならない悲痛を、あえて女の視線で詠んだ貫之の歌には、物語の修飾を突き抜けた悲嘆が感じられるが、その悲嘆こそが、土佐守時代以降の貫之の生のむなしさを象徴しているのである。

「土佐日記」の中の歌も、「貫之集」の中の歌も、彼の歌いぶりは例えば「新古今集」の主な歌人たちのように求めて技巧におぼれることもなく、明快真率で好ましい。

  「土佐日記」は紀貫之の示威でなく爺の自慰とはつゆ知らざりき 蝶人
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サラサーテの声の謎

2018-07-25 13:49:00 | Weblog


音楽千夜一夜第416回 

こないだ、漱石の弟子である内田百閒という人の「サラサーテの盤」という本を読みました。

内田選手の随筆は、どんな小品も個性的な文体と文章で綴られ、ことにそのいささか怪奇趣味に傾いたところには、凡百の作家には真似の出来ない、独特の風韻が湛えられています。

この書籍では、特に芥川龍之介と森田草平について触れた「亀鳴くや」「實説帀艸平記」などが絶品で、まだお読みにならない方にはお薦めです。

書物の表題となった短編「サラサーテの盤」では、主人公の亡くなった友人の奥さんが、主人公の住まいを訪れ、「夫の蔵書やレコードを返してくれ」と頼むのですが、その登場や退場のありかたが、まるで実在の女性とは思えず、要件も佇まいもさながら中世の幽霊のようで、読んでいても相当無気味です。

そしてその不気味さを、まるごと映像に置き換えたのが、鈴木清順監督の幻想映画「ツィゴイネルワイゼン」であります。

この鈴木選手は、むかし鎌倉の長谷に住んでいたことがあり、彼が東京に去ったあとを襲ったのが、他ならぬ娘時代の私の妻の一家だということで、私には格別の思い出のある監督なのです。

海風の吹く長谷の彼女の家を訪ねた折の、私の生涯最初の短歌は、「鎌倉の海のほとりに庵ありて涼しき風のひがな吹きたり」というもので、これを俳人の井戸みづえさんから「吹きおり」に直しなさいと言われた話は、別のところに記したとおりです。

それはともかく、鈴木選手は、内田選手の「サラサーテの盤」と「雲の脚」、「すきま風」などの短編のエッセンスを骨にして、鎌倉の由緒ありげな寓居や、現在では交通禁止になってしまった釈迦堂の急勾配の切通を用いて巧みに味付けし、どこか泉鏡花を思わせる幻想的な映画を創造することに成功しました。

この映画では、主人公の家は釈迦堂切通の浄妙寺寄りに、女の家は大町側にあるようですが、それは切通の向こうが異界であり、彼岸でもあると考えた中世の人々の想念に、忠実に準じているようにも思われます。

えらく話が長くなりましたが、その想念を、音響の側から裏付けるのが今宵皆様にご紹介するサラサーテが自作自演した「ツィゴイネルワイゼン」の録音であります。

1902年に録音されたこのレコードの、ちょうど3分38秒あたりで聞こえる奇妙な男の声はサラサーテ自身のものとされていますが、私の耳には、冥府からの生霊の招きのように聞こえてなりません。

 https://www.youtube.com/watch?v=gv1aBPP7NnY

私はここまで駄文をつづったあと、ふと思いついて久しぶりにその釈迦堂切通まで歩いてみましたが、やはり交通止めの標識が行方を遮っています。切通の上は、松などを乗せた脆い鎌倉石ですから、突然崩落して人身を傷つける恐れがあります。

修理には多額の費用と時間が掛かりますし、その修理自体が景観を棄損する恐れもありますから、おそらく釈迦堂切通が昔のように開通される可能性は限りなくゼロに近いでしょう。

そう思えば、鈴木清順監督が遺したこの映画は、鎌倉時代の古道のありし日の姿を、永久保存した歴史的カプセルでもあるのです。

   くちなしの2輪の花が散りました命にかかわる暑さの中で 蝶人

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しりあがり寿著「弥次喜多inDEEP1」を読んで

2018-07-24 11:01:42 | Weblog


照る日曇る日 第1103回

「真夜中の弥次さん喜多さん」前後篇の続編ずら。

かなり大幅にお伊勢参りから逸脱して、寄り道度をより増加させ、より深く精神の亡失個所に穴を穿つ、その第1弾が本作である。

「白眉様」は日本昔話の伝承を受け継いでいるようだが、「あぽかりぷす・スターの夜」でキリスト教の神様が登場す。

「記憶の雪」では男女の愛の記憶が、「ふりだしの畳」では、落語に似たシュールな怪談が、「紅牛の宿」では、超大なるムチャクチャが、「桜の宿」ではカラオケの歌があの世とこの世をつなぎ、「夢の緒」では、これ以上ない怖い怖いお話が、次から次に繰り広げられていくのでしたあ。

ようやるもんだ。

  大谷が絶賛されているエンジェル首位絶望の16ゲーム差  蝶人

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暑中見舞い2018

2018-07-23 10:48:18 | Weblog


これでも詩かよ 第242回


ああ暑い 
ああ暑い
昨日も 今日も 暑かった

きっと 明日も 暑いだろう 
明後日も 明明後日も 暑いだろ
命にかかわる危険な暑さ

朝から暑いと 人は死ぬ
松本智津夫63歳、中川智正55歳
橋本忍100歳、流政之96歳、浅利慶太85歳

昼なお暑いと 人は死ぬ
常田富士男81歳、桂歌丸81歳
加藤剛80歳、辰巳渚52歳

夜でも暑けりゃ 人は死ぬ
生田悦子71歳、マサ斎藤75歳、オリヴァー・ナッセン66歳
知る人も 知らない人も みんな死ぬ

ああ暑い
ああ暑い
言うまいと 思えど 今日の暑さ哉
詠み人しらずの 暑さ哉

ああ暑い
暑い暑いと 人が死ぬ
今日も 朝から 人が死ぬ
夜になっても 人が死ぬ
葬儀場は 大忙し

熱中症で こども死ぬ 
集中豪雨で 巡査死ぬ 
おお山崩れで おとな死ぬ
憲法違反で 自公死ぬ

30度、35度、40度
見る見る上がる 温度計
バタバタ死ぬよ 人が死ぬ
あちい、アジい、ああ暑い

十二所では ジイサンが
浄妙寺では バアサンが
大船では 若き頑張り屋さんが急死する

お母さんは 泣いている
うちでも みんな もらい泣き
エンエンエンと 泣いている

ああ暑い 暑い暑い ああ暑い
ニイニイ、カミキリ、キリギリス
アユも ウナギのウナシロウも 
白腹見せて ほら、でんぐりがえる!

ああ 人が死ぬ 人が死ぬ
性別 年齢 国籍も
有名 無名も 無関係
暑い暑いと 人が死ぬ

毎日毎日 暑くても
年が年中 暑くても
死んでは困る おいらの家族
コウ君 ケン君 ミエコさん
絶対死んでは いけないよ

ゼンちゃん、ミワちゃん、シンヤくん
マリちゃん、ヨウコちゃん、エイコさん
ナホちゃん、タクちゃん、リョウちゃんも
しっかり生きねば 困ります
死に物狂いで 生きませう!

ずっと寝た切りのコウジュ君
難病に苦しむキムラ君&ヨコヤマ君
敬愛するスズキご夫妻、オクムラさん
この夏なんとか 乗り切って
どうか 長生き してください!

死んでほしくは ないけれど
死んでもいいのは 独裁者
天下無双の 一強or一狂
死んでもいいのよ 遠慮せず

ああ 人が死ぬ 人が死ぬ
性別 年齢 国籍も
有名 無名も 無関係
暑い暑いと 人が死ぬ

万一おいらが 死んだなら 
これが遺作に なるのかな
ちょいと問題 かもしれないが
暑さのせいさ 許してね 

ああ 人が死ぬ 人が死ぬ
今日も 朝から 人が死ぬ
夜になっても 人が死ぬ
知る人も 知らない人も みんな死ぬ


  かくすればかくなるものとは露知らず阿呆莫迦が選びし最悪政党 蝶人


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鎌倉芸術館にて「鎌倉交響楽団第111回定期演奏会」を聴いて

2018-07-22 11:26:31 | Weblog


音楽千夜一夜第415回&鎌倉ちょっと不思議な物語第403回



無謀にも生命の危険を顧みることなく、棺桶に片足を突っ込んだ老人が、よたよたとやってきました。相変わらずの猛暑でうだる大船界隈まで、久しぶりの鎌響です。

このオケは昨年6月に、何者かによってすべての打楽器、楽譜、譜面台を台車ごと盗まれるという大変な被害に遭いましたが、幸い851765円のカンパが集まり、そのお金で楽器を新たに購入し、今回がそのお披露目のコンサートということでした。

曲目は1)モザールの「後宮からの誘拐」序曲、2)ブラームスの「ハイドンの主題による変奏曲」、3)ブルックナーの交響曲第5番の3曲でしたが、もちろんおめあては演奏時間が80分にも及ぶブルックナーの超大曲でした。

いくら地方オケの名門といってもアマチュアのオケですし、名うての難曲です。かててくわえて、この気違いじみた猛暑。きっと練習も思うに任せなかったに違いありません。
けれども私がひそかに果たして第4楽章まで無事に辿りつけるだろうかと案じたのは杞憂に終わり、まことに聞きごたえのある充実した名演奏でした。

オケのスタミナと技量を勘案したのか、指揮者の富平恭平選手は、はじめは処女の如くういういしく、半ばは熟女の如くしたたかに、そして最後の最後のクライマックスでは、それまでに蓄えたあらゆるエネルギーを最終コーダの最高点において爆発させ、この至難の大曲を脱兎のごとく鮮やかに着地させたのでした。

かのチェリビダッケやヴァントの最高の演奏のような、その場に「神が顕現する」が如き至高の境地にまでは末だし、でしたが、終始冷静沈着にして、要所要所をビシバシと決めた富平選手、そしてその要求に些かの余裕すら残して見事に応えた鎌響と名コンマスの五味俊哉氏に拍手喝采! パチパチ。

 ティンパニーが叩き始めたら最後です指揮者だってとめられないよ 蝶人


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新潮日本古典集成・久保田淳校注・「新古今和歌集上」を読んで

2018-07-21 09:56:05 | Weblog


照る日曇る日 第1102回

昔は「万葉集」、「古今集」と時代が下るに従って、直情径行の真率と簡素の美質が失われて、殊に「新古今」まで来ると、実感にそぐわない観念的で人工的で空疎な脳内積木組み立て細工の産物としか思えず、長らく捨てて顧みなかった私め、なのですが、今回改めて再読してみると、当然のことながら、けっしてそのような軽蔑唾棄すべき代物ではなかったので、ほっとひと安心しているところです。

「新古今」の特徴は、その構成が一大ニッポン交響詩のように壮麗なプロポーションを保っていることです。
序文から始まって四季折々の歌、賀歌、哀傷歌、離別、羇旅、戀、雑、神祇、釋教に至る展開は、戀歌を脊梁とする美しいアーチ橋のよう。そこには後鳥羽上皇の意(と執念)を体した、定家ら5名の撰者の設計意図が働いているのでしょう。

今回再読してもっとも心耳に響いたのは、ほととぎすを歌った「巻第3夏歌」の連作でした。私は長い間ほととぎすの鳴き声を聞きたくて、ほぼ30年間、朝な夕なに谷戸の奥山に向って耳を澄ませていたのですが、なかなかその機会に巡りあうことは叶いませんでした。

 夏草は茂りにけれど ほととぎす などわが宿に 一声もせぬ 延喜御歌

ところが昨年あたりから、その典雅な忍び音に時折遭遇する機会があり、ひとたびそれを耳にすると、「時々」が「折々」に、「折々」が「屡」に転じるという僥倖に接するようになったのでした。おそらくは長年にわたって閉じられていた私の耳が、突如ひらかれたのでしょう。
 
 有明の つれなく見えし 月は出でぬ やまほととぎす 待つ夜ながらに 摂政太政大臣

 聞かずとも ここをせにせむ ほととぎす 山田の原の 杉のむらだち 西行法師

 ほととぎす 声待つほどは 片岡の もりのしづくに 立ちやぬれまし 紫式部

そしてこの夏、前代未聞の酷暑のなかで本書を開いていると、突然の啓示のように、垂涎の的の夢のような鳴き声が、再三にわたってもたらされ、今から何百年前の人々が、その冥界からの便りを、今か今かと待ちわびたその気持ちが、わが事として追体験されるようになったのでした。

 鳴く声を えやは忍ばぬ ほととぎす はつ卯の花の 陰にかくれて 柿本人麻呂

 ほととぎす ひと声鳴きて いぬる夜は いかでか人の いを安く寝る 中納言家持

 わが心 いかにせよとて ほととぎす 雲間の月の 影に鳴くらむ 皇太后大夫俊成

久保田氏による巻末の解説によって、この本の総合プロデューサーである後鳥羽院が流謫の地にあって最後まで切継ぐ(編集)を続けたことも初めて知りましたが、改めて読むと、その後鳥羽院と崇徳帝の作品が一入心に沁みる「新古今集」なのでありました。

   ニッポンの夏みな酸欠の河と化しわれも金魚きみも金魚 蝶人

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しりあがり寿著「真夜中の弥次さん喜多さん2」を読んで

2018-07-20 11:57:27 | Weblog


照る日曇る日 第1101回

弥次さん喜多さんは駿府から丸子、岡部の宿へと旅を続けていくのだが、実際は駿府の宿で2人の腕がくっついてしまい、そこからお伊勢さんの近道だという三途の川を目指すのだが、丸子の宿では喜多さんはエクスカリバーを手に入れた代わりに弥次さんを失ってしまう!

しかし私は何を書いているのだろう? 

喜多さんがもののはずみに殺してしまった弥次さんを取り戻すために、賽ノ河原の奪衣婆は、喜多さんを連れて三途の川の源流を目指す。そこでは生と死がつながっているのである。

再び言うがし私は何を書いているのだろう?

三途の川では、なんと前巻に登場した空の守が出てきて奪衣婆ともども喜多さんを助けてくれるのだが、弥次さんをこっそりこの世に戻してやる計画が失敗して、生死の門がぐちゃぐちゃになってしまう。

大混乱に陥った三途の川の港を正常に覆すためには奪衣婆が空の守と交わって、新しい生命の門を創出しなければいけないのだが、そればっかりはと空の守が固辞するのだが、それではいつまで経っても新しい生命の門はできず、漫画も進展しないので、とうとう2人がやらかすと、ここに一大奇跡が起こってなんと喜多さんは無事にリアルに復帰するのであったあああ。

しかしまあなんという漫画であることか。続く。

  露台では早や40度を超えて居りそも幾たりが今日は逝くらむ 蝶人
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真夏の洋画10本立ずら

2018-07-19 11:48:20 | Weblog


闇にまぎれて tyojin cine-archives vol.1367~1376


1)アーサー・ペン監督の「左きゝの拳銃」
21人を殺して21歳にして死んだビリー・ザ・キッドの生涯を若き日の名匠ペンが描く。なんといってもビリーのポール・ニューマンと彼を射殺する保安官役のジョン・デナーがはまり役ずら。それにしてもなんで題名を「左利きの」にしなかったのか。

2)アーウィン・ウインクラー監督の「ナイト・アンド・ザ・シティ」
ロバート・デ・ニーロ扮する3流弁護士が、ひと儲けしようと大ばくちに乗り出すが、あえなくすべてを台無しにしてしまう悲しい自滅の物語。
気が弱いくせに強気に出てほぞをかむという経験は誰にもあるだろう。
私はリーマン時代の大失敗を思い出して、主人公にいたく同情したことだった。

3)ヤノト・シュワルツ監督の「ある日どこかで」
時間と時代を超えて男と女が愛し合うといいありえない話をさもありげに描き出すのは強度の幻想力を内蔵するこういう映画ならではの特技である。
それにしても純愛青年を演じるクリストファー・リーヴの初々しいことよ!

4)M・ナイト・シャマラン監督の「アフター・アース」
地球滅亡後、他の惑星に移住したウィル・スミス親子の苦闘と冒険を描く。
ひ弱と思われた息子が超人的にぐあんばって、将軍の父親の危機を救う宇宙時代の親子鷹物語であるが、さっぱり面白くないずら。

5)ブライアン・デ・パルマ監督の「アンタッチャブル」
カポネ演ずるデ・ニーロはうまいなあ。
背後からバットで裏切り者を殴り殺すシーンは何度見ても恐ろしい。
正義の味方のチャールズ・マーティン・スミスとショーン・コネリーが殺害されるシーンも可哀想で見るに耐えない。
で、そういうのが得意なのがデ・パルマという監督なのだ。

6)デヴィッド・フィンチャー監督の「ベンジャミン・バトン数奇な生涯」
老人で生まれてどんどん若返りながら人世を終える男の物語。
こういう小説をスコト・フィッツジェラルドが書いていたとは知らなんだが、じつに面白い映画にしたもんだ。
別にブラッド・ピットやケイト・ブランシェットが出なくても成功したと思うが、幕切れで演出がややもたもたするのが残念。

7)フランシス・フォード・コッポラ監督の「ランブルフィッシュ」
影の濃淡が幻想を帯びる演出はチャールズ・ロートンの「狩人の夜」の影響を受けたのだろうか、独特の印象を残す。
主人公の弟をマット・ディロン、恋人をダイアン・レイン、友人をニコラス・ケイジ、兄をミッキー・ローク、父をデニス・ホッパーが演じているが、マット・ディロン、ホッパーが最高にいい味を出している。

8)フィル・アルデン・ロビンソン監督の「フィールド・オブ・ドリームス」
いわゆるひとつの心霊ムービーではあるが、野球大好きロマンが絡んでいるだけに抹香くさくはない。
亡き父親とキャッチボールするラストは、何回見ても泣かせる。
実際に沢村やスタルヒンが出てくるこういう野球場が、日本のどこかにあったら、入場料が200ドルでも、みな押しかけるだろうな。

9)リュック・ベンソン監督の「マラヴィータ」
マフィアに追われて世界中を逃げ回るマフィア一家の凸凹珍道中。
2013年製作のこの欧州製映画は、ディアナ・アグロン、デ・ニーロ、ミシェル・ファイファー、トミー・リー・ジョーンズなどの、壺にはまった演技をみせてくれるのだが、映画とはいえ冒頭からあまりにも安直に人を殺すので、この監督は、殺人に肯定的なのかと、だんだん不愉快になってくる。

10)ブライアン・ヘルゲランド監督の「42」
全米球団から42の背番号が永久欠番に指定されている史上最初の黒人大リーガー、ジャッキ・ロビンソンの感動的な物語。
当時のアメリカ社会の人種差別の物凄さも如実に描かれている。
ロビンソンをブルックリン・ドジャースに勧誘した先見的なオーナー役を、ハリソン・フォードが好演。2013年のハルウッド映画ずら。

  フェアプレーではなかったがフェアプレーポイントの差で決勝進出 蝶人
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しりあがり寿著「真夜中の弥次さん喜多さん1」を読んで

2018-07-18 12:07:37 | Weblog


照る日曇る日 第1100回

十返舎一九の「東海道中膝栗毛」を参照しつつ、出鱈目かつ独創的な道行世界を噴出させたしりあがり寿の漫画ずら。第1回ということもあってややおとなしめの展開であるが、なに、しりあがりに盛り上がっていく。

やはり要は2人の男がホモセクシャルであり、女形の喜多さんは薬づけになっているという設定であろう。2人は愛を立て直し新たなしあわせをつかむためにお伊勢さんに参るのである。

   旧字旧カナを使わなければ痛痒を感じる人が作る文語短歌 蝶人
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家族の肖像 その36

2018-07-17 11:47:03 | Weblog


ある晴れた日に 第517回


お父さん、焼き芋の英語は?
www焼き芋、焼き芋。

お父さん、平成16年金八先生怒っていたよ。金八先生「学校へ帰ろう」といってたよ。
そうなんだ。

お母さん、からっぽってなに?
なにも入っていないことよ。
そ、そうですお。からっぽ、からっぽ。

お母さん、くつろぐってなに?
ほら、いまお母さんくつろいでるとこ。

お母さん、キンレンカの花食べられるの?
食べられますよ。

お父さん、時は日と寺ですよ。
そうかあ、そうだね。

ぼく、ナー君、お父さん、岡井先生。
ナー君、ダメ!
ごめんなさい。

泣くなよって、泣かないでのこと?
そうだよ。
泣かないで、泣かないで。

耕君、またブックオフ行きますか?
また行きますお。

お母さん、いまのうちってなに?
そうねえ、いまのうちにお掃除しましょ。

お母さん、ハッピーエンドってなに?
さいごにしあわせになることよ。

なんで205系引退しちゃったの? 古くなったからでしょう?
そうねえ。

耕君、ジュース何本飲んだの?
1本ですよ。
1日に1本ですよ。1回に1本じゃないのよ。
はい、分かりました。

お母さん、まさかって、なに?
まさか耕君がそんな悪いことをするとは思わなかった、ということよ。
ぼく、悪いことしませんお。

お母さん、暴走族ってなに?
そうねえ、バタバタバタでキュウウウウとなるやつ。
暴走族、いやですねえ。
嫌ですねえ。
ボーソーゾク、ボーソーゾク。

お母さん、脳腫瘍つらいでしょ?
辛いでしょうね。

お母さん、ぼく石狩鍋好きですお。
石狩鍋食べたの。
はい、食べました。おいしいですお。

ブーーというのは、ハズレのことでしょう?
そうだね。
ブー。

お母さん、「ほんまもん」印刷してください。
「ほんまもん」、誰が出たんだっけ?
知りませんお。ほんまもん、ほんまもん。

小児療育で「顔をこっちに向けてね」ていわれたお。
身長測定のときの話ね。
ぼく、また小児療育行きますよ。

しぶいって、なに?
にがいことよ。

チチンプイプイって、なに? 魔法でしょ?
まあそうねえ。

お父さん、台風の英語は?
タイフーーン。
お父さん、台風の英語は?
だからあ、タイフーーンだよ。

群馬県、好きだお。
そう。耕くん、群馬県行ったことあるの?
あるよ。

ぼく、さっちゃんが笑ってるの、好きです。
そう。お母さんは耕君が笑ってるの好きです。

お母さん、今後って、これから、でしょ?
そうね。これから、ね。

嘘っぱちって、なに?
嘘ばっかり、ということよ。

お母さん、100円玉、千円札に替えてね?
はい、分かりました。
いつ替えてくれますか?
そうねえ、火曜日か水曜日に。
分かりました。

ロート製薬、めぐすり?
そうよ。

お母さん、「こころ」の放送中止になったのは、ミサイル発射したから?
そうよ。北朝鮮のミサイルよ。誰かに聞いたの?
分かりませんお。

お母さん、ホソカワさんに、「あとで」って言われたよ。会議中って、あとでのことでしょ?
そうだね。
カイギチュウ、カイギチュウ。

お母さん、親しいってなに?
仲がいいことよ。耕君、親しい人いますか?
いませんよ。

お母さん、ヤッタアーて、なに?
「良かったあ!」のことよ。

ぼくは、しあわせになります。お母さん。
幸せになってください、耕君。

お母さん、めざめるって、なに?
目を覚ますことよ。

遅れて申し訳ありません、て、なに?
遅くなってごめんなさい、のことよ。

ぼく、ふれあいの歌、好きですよ。
なかむらまさとしさんの?
そう、そうですお。

お父さん、ぼくに怒ったり注意したりしないでね。
はい、分かりました。

お父さん、感謝の英語は?
サンキューだよ。

お母さん、えこひいきって、なに?
特別に可愛がることよ。

去るってなに? いなくなることでしょ?
そうだよ。
去る、去る、去る。


   世の中は明るい地獄と思いしがここ数日は灼熱地獄  蝶人


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