照る日曇る日 第574回
織田信長が本能寺で明智光秀に斃され、その光秀が羽柴秀吉に斃されたあとで、織田家の宿老達が清須城に集まって後継者を決めた「清須会議」。ここにドラマを見出し、自在な想像をふくらませて一場の物語を仕立ておおせるとは、まことに才人三谷らしい思いつきであり、また鮮やかな手際をみせつけている。
ここでは重厚で頑迷な「親父殿」柴田勝家と軽薄にして機略自在の秀吉を両極に据えて、織田家の兄弟や丹羽長秀、前田利家、池田恒興、黒田官兵衛、寧々、お市の方などのいずれも一癖もふた癖もある多彩なキャラクターが、まるで芝居の登場人物のように思い思いのモノローグをつぶやき、それがそのまま小説になっていく。
秀吉が三法師をかついで登場するお芝居でお馴染みのシーンももちろん出てくるが、当初信長の次男信雄を支持していた秀吉が、途中で三法師に切り替えるあたりの伏線もまるで史実のように巧妙で、これが演劇や映画になればさぞ面白いだろう。
生れたての春風運ぶや無人バス 蝶人
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