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あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

なにゆえに第8回~西暦2014年葉月蝶人花鳥風月狂歌三昧

2014-08-31 10:15:52 | Weblog


ある晴れた日に 第255回


なにゆえに私の記憶は失われてゆくキャベツの皮がはがれてゆくように

なにゆえに真昼間からウナギはくねくね踊ってる健ちゃんに元気な姿を見せるため

なにゆえに丁寧に説明しますなどとカッコつけてるはなから譲る気はないくせに

なにゆえにまだ短歌をうたっているの「たのしみは」の橘曙覧が応援してくれるので

なにゆえに大音量の音楽をかけている海辺は波の音にゆだねよ

なにゆえに四季書林は潰れたか顧客を馬鹿にする店主の傲岸

なにゆえに図書館カードを暗記しているケータイの番号は覚えていないのに

なにゆえにうなぎやマグロが減ってゆく日本人が美味い美味いと食べまくるから

なにゆえにイスラエルはガザに攻め入る敵をみな殺しても未来はない

なにゆえに彼女は発作を起こすのか私が彼女をいじめたから

なにゆえに君の心を傷つけた冷酷無慈悲な人ゆえ

なにゆえに最高血圧167最低血圧96どこか問題があるのだろうか?

なにゆえに決死の訴えに耳を貸さぬ夜郎自大の権力亡者よ
 
なにゆえに今日の私はご機嫌なの母校が三回戦を突破したから

なにゆえにウクライナで旅客機が撃ち落とされる誰一人喜ぶ者はいないのに

なにゆえに島崎委員を追放するや原子力委員会は借りてきた猫

なにゆえにカードだと物をばんばん買えるのか自分の金ではないような気がして

なにゆえに最近君は嬉しそうなのこの国が外国のために戦争できる国になったから

なにゆえに突如早すぎる総括をする神戸の港から船出もせずに

なにゆえに油蝉は私の掌を鋭く刺すのてっきり水が出てくると思ったので

なにゆえに中上健次は中上健次となりおおせたか土方のように小説を書いた

なにゆえにキーン翁は日本人になったコロンビア大学で源氏を読んだから

なにゆえに拓郎はまだ歌い続けている人間なんてらあらあらあだから

なにゆえに酒井君はラインナップと書いたのか私はラインアップ派だったが

なにゆえに女王様の殴る蹴るが楽しいのそのまま天国へ行けるから

なにゆえに屋根に上ってヴァイオリンを弾く生きるってことは悲しいことだから


なにゆえに職業欄に「自由業」と書くいかにも自由に暮らしているようなので 蝶人
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すべての言葉は通り過ぎてゆく 第12回

2014-08-30 14:04:39 | Weblog

西暦2014年水無月蝶人狂言畸語輯&バガテル-そんな私のここだけの話op.183


北海道で柴犬が身を賭して熊を追い払ったそうだが、当然のことだ。可愛いだけの世のアホ莫迦洋犬と違って、飼い主の言語と意思と恩義を解する彼らは、主人の生命の危機を察知し、それを救うこともできる。02年に死んだ愛犬ムクのように。6/28

ボブ・ディランの音楽は、一人義太夫節である。酸いも甘いも噛み分けた西洋浄瑠璃をベースに、太棹三味線と笛が巧みにからんで惻惻と情に訴える。6/28

1969年に鴨下天順カメラマンは「ボブ・ディランでは踊れないよ」なあんてほざいたが、確かに浄瑠璃の住大夫のような彼のカタリを身体化・舞踏化できない人には到底無理な話だったろう。6/28

浄瑠璃を愛する保守派の私は、日本語のフレーズの意味に対応した拍とメロディの予定調和を逸脱したポップソングに、大いなる違和を覚える。その先駆をなしたサザン・オールスターズやドリカムに対しても。6/28

「古今」で始まり「新古今」で頂点に達し、「新続古今」で終わった二十一代集においてわれわれが見るものは、伝統に対する二十一の敬ひ方にほかならない。丸谷才一「日本文学早わかり」

単なる飢ゑの解消を料理に高め、単なる性欲の充足を恋愛に変へるのが人間の文化の基礎である。勅撰集の恋歌は、人間関係の大本はエロチックなものだといふ認識を手をかへ品をかへて吹きこんだ。丸谷才一「日本文学早わかり」

共同体の狂熱から、限りなく遠ざかるべし。

息子が「お父さんイジケちゃだめでしょう?」と朝一番に尋ねるので、「そう、イジケちゃだめだよ」と答えた。今日はイジケないようにしよう。6/28

パソコンで作業しているときにいちばん不愉快なのは、入力モードがカタカナの大文字になってしまうことである。失せろビッグ・ブラザー、消えろビッグ・カタカナ!6/23

私は日本文学の核心にあるものは、天皇が貴女たちに言ひ寄る恋歌にあると思っています。丸谷才一「恋と日本文学と本居宣長」

それにしても不気味で異様な世の中になったものだ。そうとは思っていない人たちが多いので、なおのこと。6/26

ついこないだまで大きな白い犬を散歩させていた60代の「金目」の男性が、突然亡くなってしまった。

その必要もないのに、あの醜悪な厚顔を執拗に登場させるNHKのニュースは、完全に安倍自民党の広報メディアに成り下がってしまった。6/20

朝日新聞は、おのれの主義主張を曲解し侮辱する右翼誌の広告を、なぜ平気で掲載しているのか。出す方も載せる方もおかしい。6/19

大学生40人ほどに「新聞を読んでいるか?」と尋ねたら、誰ひとり読んでいなかった。新聞には未来はない。そしてもしかすると大学生にも。

あなたは現実を生きていないと言われてしまった。では私は、過去を生きているのか?それとも近未来を? でなければ、時空を超えた裏世界を?

私は集団自衛権も、その行使も容認できない。憲法の解釈改変にも、閣議決定にも、自公協議そのものにも反対である。

もはや何の興味もなくなった人物が、さももっともらしい口吻でお馴染みの講談を垂れ流すのを耳にするのは苦痛であり、時間の浪費であり、残り少ない人生にとって大いなる無駄でもある。

確かに私らの意識の中には、常に「今」しかないのであるが、その「今」の中には、さいぜんまでの近接過去と、ついこれからの近接未来が、三層構造でないまぜになっているのである。6/17

森戸橋にはもう1匹もいないが、朝夷奈峠のヘイケボタルは、今宵を盛りと星空に乱舞していた。「私という川」に慕い寄りながら。6/16

安倍の恫喝に忽ち腰砕けの公明党。集団自衛権の「限定的」承認はアリの一穴。これで専守防衛も憲法9条も全て骨抜きになるだろう。6/15

この間の大雨で、毎晩乱舞していた蛍も、せっかく相模湾から遡上してくれた絶滅危惧種の天然オオウナギも姿を消してしまった。6/14

一連の文章の、主語と述語、名詞と助詞の間で突然痙攣的に発語を切断する奇妙な習慣を、わが国の首相は、その教育課程のどこで身につけたのだろう。美しい国を目指すなら、その前にまず美しい日本語を喋ってほしいものだ。

ヨハネの首が、お盆に盛られたような月が不気味に輝く夜、無数の星々に混じって、
星と同じくらいの大きさのホタルたちが夜空に舞っている。

さて問題です。葬式と結婚式がぶつかったらどっちに行くべきか?

あれだよね、みんな役所とか会社とか学校とか上司とか経営者とか国とか権力者とか天皇とか秘密保護法とかをやたら気にしているから、自由に物も言えなくなってるんだよね。

「平和」は公明党の党是。小判鮫のように自民にひっついて漁夫の利をかすめることしか念頭にない矮小な政党だが、いまこそ乾坤一擲清水の舞台から飛び降り、集団自衛権強要にノーと言うべき時だ。

NYヤンキースの黒田が、2点取られただけでまた負けた。この人はいつも貧打に泣かされる。これまでいったい何勝損したことか。きっと腹の中は煮えくりかえっているだろうが、それでも黙々と投げ続けるこの選手が好きだ。

94歳で亡くなった叔母は、あどけない少女のような顔をしていた。かすかにほほえんでいた。

昨日は三日月。朝夷奈峠ではリリシジミが大量に発生した。
蝶はおおかた同じ日に一斉に誕生するが、人間も同じではないだろうか。

蛍の一生も、蝶の一生も、ウナギの一生も、人の一生も、ほんの一瞬のこと。輪舞するヘイケボタルを眺めながらそう思うのだ。

昨日は一しずくの精液、明日はミイラか灰、それゆえこの地上における束の間を「自然」の意志のままに過ごして、やがて安らかに憩うがよい。丸谷才一訳マルクス・アウレリウス「瞑想録」

現行憲法が禁じる積極的交戦権の行使を、一時的与党内の一協議や、一内閣の一閣議決定などで容認できるわけがない。自称右翼の軍国主義者は狂っているのではないか。

是非に及ばず。

昨夜の森戸橋は、およそ30匹のヘイケボタルが乱舞して、じつに幻想的な光景が繰り広げられていた。さらに待望のオオウナギもこの夏初お目見得!

グレイゾーンとかレッドカードとかやたら重箱の隅を突いているようだが、集団自衛権を行使すれば、自動的に戦争になると分かっているんだろうか。

人生は夢、というけれども、長い過去の時間をふりかえらずとも、つい先きほどのことまでが、夢のような気がするのである。小島信夫「浅き夢」

久しぶりにモーツアルトの「フィガロの結婚」をベームで堪能した後で、アーノンクールを聴いたのだが、あまりの空虚さに慨嘆。アルマヴィーヴァ伯爵が許しを乞い、夫人がそれを許すラストで、何の感動も感慨も湧き起こらない。ほんとに空っぽの形態模写演奏なり。

北朝鮮が拉致調査に同意。だから、隣国をやたら敵国と見做す集団自衛権発動ごっこなんかやめて、地道な平和外交を貫けばいいのだ。

昔、大徳寺の大とう国師は出家発心ため自分の赤坊を食べているところへ夫人が戻って来て卒倒した。このようなことを知って一休は入門した。小島信夫「小さな講演のあと」6/1


なにゆえにカードだとばんばん買えるのか自分の金ではないような気がして 蝶人

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ノーマン・ジュイソン監督の「屋根の上のバイオリン弾き」をみて

2014-08-29 11:54:51 | Weblog


bowyow cine-archives vol.683


あの有名な「サンライズ、サンセット」の歌が鳴り響くこの長すぎる映画は、主人公の娘たちの嫁入り話と帝政ロシアのユダヤ人迫害が2大テーマとなっている。

ノーマン・ジュイソンの演出はかったるいが、ジョン・ウイリアムズの編曲は見事。屋根の上から聴こえてくるバイオリンはアイザック・スターンで、この人は明朗な歌をうたわせるが、メニューインと同様、音程に難がある。

 されどこのユダヤ系のバイオリニストは、絶対音感と超絶技巧を誇示しながら、無機的な音楽ならざる音楽をまきちらす最近の若手より、はるかに豊かな音楽を届けてくれたのである。

 そういえば泉下の森繁久彌は、いまごろどうしているだろう? 去年の7月に死んだ酒井君もどうしているだろう? 

 生きている人より死んだ人のほうが慕わしく思われる今日この頃であるなあ。



 なにゆえに屋根に上ってヴァイオリンを弾く生きるってことは悲しいことだから 蝶人
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ハル・アシュビー監督の「帰郷」をみて

2014-08-28 14:38:10 | Weblog


bowyow cine-archives vol.682


ベトナム戦争で負傷し、この戦争の醜い本質を知ったボイトが、平凡な人妻ジェーン・フォンダに惚れて「君は美しい」と言いながら抱くのであるが、正直いって私はこのひとは人間より猿に似ていると思っているので、ボイドのような気持ちには到底なれなかった。

彼女の父親はジェーンより遥かに優れた役者だが、彼もとちらかというと猿に似た風貌をしており、別にそれがいけないとか非難しているのではないが、ときどきひどく気になるのであえて書き遺しておいた。

背中を背後から敵に撃たれて車椅子の人となってしまったボイトだが、幸いにも性器はやられていなかったので、ジェーンに対して大きな喜びを与えることができた。

このシーンでの彼女の演技は迫真に迫る者があったが、コキュとなってしまった彼女の夫が軍服を脱ぎ捨てて海に向かっていくラストは素直にうなずけないものがあった。


  なにゆえに彼女は発作を起こすのか私が彼女をいじめたから 蝶人

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ルイ・レテリエ、コリー・ユン、オリヴィエ・メガトン監督の「トランスポーター1,2,3」を見て

2014-08-27 14:47:50 | Weblog


bowyow cine-archives vol.679、680、681


どんなものでも愛車のアウディに乗せて言うがままに配達する運転手ジェイソン・ステイサムがボンドをしのぐスーパーマンぶりを見せる。毎回のようにお決まりのカーチエースがあり、それほどのイケメンとも思えないが、毎回女難にあう。

初回はアジア系の若い女性であるが、冒頭のクレジットが見にくいのは困る。

フランス人が英語をしゃべるのには抵抗があるが、リュック・ベッソンが書く漫画のような脚本を漫画のように絵にしていくのが面白い。

主人公のカンフーゲバルトの際も、トリッキーな動きを動画をやめて静止画のカットつなぎにしてるのが面白く、それを漫画的と称しているのだが、この手法はこの監督の新発見かもしれない。

2作目のやたら機関銃を連発するパンクな女ランボーは出色のキャラクター。1作目に登場したおとぼけ警部とのデコボココンビぶりが楽しい。

3作目のそばかすだらけのウクライナのヒロインは、はじめはとんでもないブスかと思いきやだんだん可愛らしく見えてくるから不思議。

悪人どもによって彼女と主人公とある距離以上に離れると爆発するリストをはめられていたはずなのだが、いつの間にそれをはずしていたのだろう?

橋から川に落ちたアウディが陸地で再び快走したり、やはり橋から走っている列車の上に飛び降りるなど、信じられない漫画的シーンの連続が楽しい。


 なにゆえに酒井君はラインナップと書いたのか私はラインアップ派だったが 蝶人
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羽田圭介著「メタモルフォシス」を読んで

2014-08-26 14:31:13 | Weblog


照る日曇る日第724回


タイトルの「メタモルフォシス」とそれ以前に書かれた「トーキョーの調教」の2作を収めている。いずれも正真正銘?のSM小説で、実体験?と徹底的現場リサーチを生かした迫真的興奮?を味わえる異色作である。

「トーキョーの調教」はテレビ局の男性アナが、自分が講師を務めているアナウンサー養成教室の女子大生に調教を受け、まんまと人生を震撼させられてゆく初期・中期SM段階の心躍る物語であるが、主人公の変態的?欲望が次第に嵩じて、「ボクチャンの乳頭を1個潰してください」と女王様にお願いするあたりで、さすがの私もどうにも付いていけなくなる。

芥川賞候補になった「メタモルフォシス」はそれに之繞がついて、奴隷が、死ぬほどの苦痛を味わいながら殺してくらさいとわれらが親しき女王様にお願いするに至る本格的&終末的SM小説で、若い作者がここまで書いたのは立派だが、書かれた世界があまりにも互換性のない特殊な世界に過ぎるので少しく鼻白む。

でもここに書かれていることが事実だとすると、夕闇の東博や真夜中の谷中霊園では血沸き肉躍る楽しい野外倒錯プレイが毎日行われているらしい。

それはいいとしても、異性から手加減なしに加えられる激烈な肉知的苦痛がどうして至高の快楽に還元されるのか、感受性の鈍い私などがいくら考えても不可解である。


 なにゆえに女王様の殴る蹴るがうれしいのそのまま天国へ行けるから 蝶人


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ロブ・ライナー監督の「ミザリー」をみて

2014-08-25 11:49:11 | Weblog


bowyow cine-archives vol.678


スティーヴン・キングの原作によるホラー・サスペンスであるが2時間にわたってたっぷり怖がらせ、楽しませてくれるよくできた見せもの映画である。

流行作家を拉致監禁してしまうキャシー・ベイツの恐ろしさも可愛らしさも、全ての女性のそれに共通するものであり、有名人がこれを見たらおっかけやファンにたいする見方が一変するのではないだろうか。

ミザリーという女性名を冠した通俗小説の主人公名が、「悲惨」を意味する英語でもあったり、ヒロインが飼っている豚の名前であったりするのもワサビが効いている。

ただ難をいえば、冒頭の自動車事故からヒロインが主人公の作家を上手に救い出すというプロットは、いくらなんでもあまりに不自然だろう。


なにゆえに図書館番号を暗記しているケータイの番号は覚えていないのに 蝶人
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月光仮面は誰でしょう~「これでも詩かよ」第97番

2014-08-24 13:43:25 | Weblog


ある晴れた日に第254回


モンシロ、モンキ、アゲハチョウ
さよならあんころもち、またきなこ
月光仮面は誰でしょう

のぶいっちゃんとひとはるちゃん
シンデレラはもう死んでれら
悪い奴らを退治せよ!

空から山へ、山から川へ、川から街へ
どどしし、どっど、どどしし、どっど
三千世界で百合が咲く

ゴジラ、鉄人28号、鉄腕アトム、
耕君、パーマン、ドラエモン
みんな一緒に空を飛ぶ

でんばら、でんばら、でべそ
なーがい、なーがー、あそこ
西本町は、もう日が暮れた

モンシロ、モンキ、アゲハチョウ
さよならあんころもち、またきなこ
月光仮面は誰でしょう


  なにゆえに君の心を傷つけた冷酷無慈悲な人ゆえ 蝶人
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エミール・アルドリーノ監督の「ダーティー・ダンシング」をみて

2014-08-23 12:52:30 | Weblog

bowyow cine-archives vol.677


いわゆるひと夏の恋と情事を描く青春ダンス映画なり。

60年代のアメリカは保守的ではあったが、若者たちの風紀がそうとうに乱れかけていたことを象徴するような映画で、とりわけ男女が腰を密着させてお互いに激しくクネクネする「ダーティー・ダンシング」が見どころとなるが、これはもはや限りなく男女の性交に近い。

チャタレイ夫人と同様に、ブルジュワの可愛いちょっと知的な娘は、教育と財産はないが筋骨隆々たるイケメンのルンペンプロレタリアートに一発で参ってしまうので、親は早く引き離そうと心配するわけだ。

確か「ヰタ・セクスアリス」か「青年」のなかで、森鴎外が「男女が下半身を密着させてダンスをすれば男は必ずエレクトする」と書いていたことを思い出したが、漱石は「三四郎」でもけっしてこういうことを書かなかったのは、そんな元気な男性でも齢還暦を越えればそうならない連中も急増することが分かっていたのだろう。

もっとも彼自身は、たった49歳で早世したわけであるが。


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ミック・ジャクソン監督の「ボディガード」をみて

2014-08-22 15:04:46 | Weblog


bowyow cine-archives vol.676


 世界的人気歌手のボディガードという題材は興味津津だが、ローレンス・カスダンによる脚本がエグすぎるのが問題だ。

 依頼主と関係を持ったり、歌手の実の姉が妹の殺人を依頼したり、しまいにはアカデミー賞の授賞式で撃ち合ったり、要するに娯楽映画なんだからおもしろおかしければそれでよいというあざとい根性が透けて見えるのがあさましい。

 ここでのホイットニー・ヒューストンの演技はいまいちいまにいまさんだが、抜群の歌唱力を誇った彼女の48歳での薬物死は悲しい。


なにゆえにまだ「なにゆえ短歌」を唄っているの「たのしみは」の橘曙覧が応援してくれるので 蝶人
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ドン・シーゲル監督の「刑事マディガン」をみて

2014-08-21 15:16:58 | Weblog


bowyow cine-archives vol.675


冒頭の画面があまりにも暗いので、マーラーの「大地の歌」の「生も暗い、死もまた暗い」のくだりを思い出したが、最後まで暗い映画だった。

ちょんぼでピストルを奪われたNYの刑事リチャード・ウィドマークが、おのれの死と引き換えに、銃と名誉を奪い返す話だが、その道中で現場をほっつきまわる下っ端刑事の夫婦生活の修羅や、上司の不正やもっと上の上司ヘンリーフォンダの不倫などの暗い話が次々に出てきて、最後に主人公は防弾チョッキもつけずに突撃してゆく。

ああ人生とはなんと果敢ないものか、残された未亡人はこれからどうなるのだろう? 2人の上司はどうやって不正をもみけして生きてゆくのかといらざる心配もしてしまう。

しかしこれが我々の人世なのだと深く思いいたるところまで渋い演技を見せてくれたこれはウィドマークの代表作なのかもしれない。 


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メル・ギブソン監督・主演の「ブレーブハート」をみて

2014-08-20 18:07:41 | Weblog


bowyow cine-archives vol.674

イングランドに反旗を翻し、スコットランド独立をめざす武装闘争を挑んだ主人公ウィリアム・ウォレスが、不幸にも悪巧みによって1305年に捕えられ、拷問刑で斬首される残虐シーンには胸が痛む。

私なんかだったらあんな酷い目にあわされるくらいなら主義主張なんざ全部投げ捨てて敵に膝を屈するに決まっているのだが、このタイトル通り不倒不屈の反逆児は、最後の最後まで志をまげず、自由の大義のために英雄的な死を貫くのである。

そしてその偉大な犠牲が実ってしばらくしてスコットランドは独立を勝ち取ったというのだから、この映画の主人公はいわば建国の父のような存在なのだろう。

それにしてもスコットランドやアイルランドに対するイングランドの尊大傲岸不遜な態度はいかがなものだろう。あれは映画だけでなくおそらく歴史的事実なのだろう。


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三隅研二監督の「眠狂四郎炎情剣」「眠狂四郎無頼剣」&田中徳三監督の「眠狂四郎女地獄」をみて

2014-08-19 18:18:04 | Weblog


bowyow cine-archives vol.671、672,673


悪家老と商人の癒着とか、おなじみの権力闘争とかのあらすじはどうでもよろしいが、若き日の中村玉緒の妖艶なこと。

愚かな浅知恵の人妻に扮した玉緒を市川雷蔵が犯すところを、もっとじっくり描いて欲しかった。

「眠狂四郎無頼剣」では女が藤村志保、音楽が斎藤一郎から「ゴジラ」の伊福部昭に変わり、狂四郎は同じ円月殺法の使い手と対決してこれを倒すが、別にどうということはない。

「眠狂四郎女地獄」は脚本がメチャクチャでじつにくだらない映画だが、うちの親戚の五味龍太郎選手が出演していて、市川雷蔵に過カッコよく殺されるところだけはよい。

 雪の決闘のラストはこの映画にも出ている田村高廣主演の「侍ニッポン」をちょっと想起させる。


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ある夏の歌~「これでも詩かよ」第96番

2014-08-18 11:05:37 | Weblog


ある晴れた日に第253回


ニッポン、ニッポン、
アジアの果てのちっぽけな国、ニッポン

君は今日から、永世中立国として生まれ変わった。
君は今日から、国民主権の共和国として生まれ変わった。

君は永世中立国だから、もう軍隊は要らない。
君は共和国だから、聖なるシャッポも要らない。

ニッポン、ニッポン、
アジアの果てのちっぽけな国、ニッポン

日本国憲法前文と第9条はそのまま残し
御名御璽、天皇条項は全部削除された。

日米安保条約は破棄され、すべての基地は撤去された。
聴け! われわれはいかなる国とも戦争しない。

ニッポン、ニッポン、
アジアの果てのちっぽけな国、ニッポン

さかしらな大人の知恵を捨てた赤ん坊は、おのれの弱さを武器として
よちよちと歩み始めた。

パンドラの箱の奥に残ったひとかけらの公正と信義をあてにして
誇らかに歩みはじめた。

ニッポン、ニッポン、
アジアの果てのちっぽけな国、ニッポン


なにゆえに俺が俺がとしゃしゃり出るアジアの果てのちっぽけなニッポン 蝶人
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スパイク・リー監督の「ドゥ・ザ・ライトシング」をみて

2014-08-17 09:24:37 | Weblog


bowyow cine-archives vol.670


ブルックリンでイタリア系の白人が経営するピザ屋を舞台に、ふとしたはずみで黒人たちの暴動が惹起するありさまを、才人スパイク・リーが主演、脚本、監督、制作している1989年の作品。

人種、国籍の異なる数多くの登場人物が登場するが、その一人ひとりがまことに個性的でその造形が明確に描かれていることに感心するが、「暴動」を描くリーの手つきは極めて作為に満ち満ちており、そのステレオタイプな政治性がかえって彼の得意な天衣無縫の良さを損なっている。


   なにゆえに拓郎はまだ歌い続けている人間なんてらあらあらあだから 蝶人
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