あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

伊藤比呂美著「いつか死ぬ、それまで生きる わたしのお経」を読んで

2023-01-31 10:20:09 | Weblog

伊藤比呂美著「いつか死ぬ、それまで生きる わたしのお経」を読んで

 

照る日曇る日 第1856回

 

仏典は、中村元氏がバーリ語から訳したオリジナルしか意味がない、と愚かにも思っていたのだが、そうではなかった。

 

著者が言うように、経典は何語に翻訳されようが、世界的な詩人が歌い、物語る「カタり」の世界で、インドに端を発した源流が、中国、朝鮮を経由してこの島国に流れつき、「源氏」、「平家物語」、「梁塵秘抄」のような随筆文学、語り物、説話集、説経節になったり、和歌や謡曲、歌舞伎、そして「法華経」や「般若心経」のようなお経の主題や基調音に滔々と流れ込んだのだった。

 

本書で伊藤選手は、そんなお経を、現代詩としてホンヤクしているのだが、それが抜群に面白い。

 

中村元「ブッダ最後の旅」(大パリニッパーナ経)」の

「さあ、修行僧たちよ、お前たちに告げよう。『もろもろの事象は過ぎ去るものである。怠ることなく修行を完成させなさい』」を鳩摩羅什が翻訳した個所を、伊藤選手は、

「きみたち、乞食をして生きようとする者は、一心に道をゆけ。求めろ。励め。世間の一切。動くものも。動かぬものも。いつか壊れる。そして減くなる。」と意訳し、ここで突然「ソクラテスの弁明」が登場する。

 

「さあもう行かなくちゃ。私は死ぬため。きみたちは生きるため。どっちがいいかは、誰も知らない。かみさまだけがご存じだ」

 

というて、ソクラテスは死んでいくのだが、その姿は、どことなくブッダの最期に似ているようだ。

 

  くわくわと昼寝している息子なりこのままずっと寝ていてもいい 蝶人

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半蔵門国立劇場で竹芝其水作「通し狂言遠山桜天保日記」をみて

2023-01-30 20:25:39 | Weblog

 

蝶人物見遊山記第354回

 

国立劇場がまもなく改築工事に入るので、(お互い)生きているうちに、尾上菊五郎をひと目見ておこう、と、決死の思いで半蔵門に向かいました。

 

出しものは、正月らしく歌舞伎の恩人、遠山の金さん。

菊之助、松緑、時蔵などがすったもんだの挙げ句、金さん役の菊五郎がうまく裁いて、お馴染みの「これにて一件落着!」で終わる、お目出度い演目でしたが、じつはこれで終わりにならず、大詰で一同再登用して、華やかな舞踊の数々を披露してお開きとなりました。

時蔵と菊之助の踊りは、格別艶だったな。

 

んでさらにその後は恒例のお祝儀撒きだったが、2階席はほとんどガラガラ。こんな入りで大丈夫かいなと思われる前途多難なさよなら公演でしたあ。

 

んな感じで睦月27日に千秋楽を迎えた国立劇場でしたが、ここからちょっと離れた「伝統芸能情報館」では卯月9日まで「上方浮世絵展」が開催されているのでお見逃しなきよう。

 

  この臭気誰のものぞと見回すがそこに居るのは我一人のみ 蝶人

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高橋源一郎著「ぼくらの戦争なんだぜ」を読んで

2023-01-29 10:24:04 | Weblog

高橋源一郎著「ぼくらの戦争なんだぜ」を読んで

 

照る日曇る日 第1855回

 

安倍国葬以後、ますますきキナ臭くなってきた「新しい戦前」のニッポン。そんな今こそ「この前の15年戦争」を、ざっくりと振り返ろうじゃないか、というのが本書のテーマである。

 

いきなり登場するのが本邦と各国の新旧の国語や歴史の教科書で、ニッポンと中国、韓国、仏独の教科書との違いに悶絶しそうになる。小学生向けでは楽しそうだった教科書が、中高校ではだんだん索然とした憂鬱な「教科書」に豹変していくのは、「書き手が国家そのものだからだ」という指摘は鋭い。

 

第2章「大きなことばと小さなことば」では、1944年に日本文学報国会から出された「詩集大東亜」と、無名の兵士6名による1942年の「野戦詩集」が対比されている。

 

「詩集大東亜」からは、軍国主義に左袒し、愛国の旗を激しく振り回す高村光太郎を先頭とする189名の有名詩人の大政翼賛詩集の一部が紹介されているが、滝口修造などほんの一握りの例外を除き、旗振り役の高村や堀口大学が大言壮語した鬼畜米英詩は、あの人がこんな詩を!と目を剥くほどに酷い代物である。

 

けれども高名な職業詩人ではなく、中国に派遣された一兵卒たちが交々つづった詩編には、小さなことばで戦争の真実が表現されており、大きなことばで大戦争を謳い上げる大詩人と、著しい対照をなしている。

 

長沙A作戦の時だった。/志那兵が死んでゐたのだ。/彼は静かに手をあはせてた。/佛さまのやうな顔して。(山本和夫「佛」より引用)

 

第3章で大岡昇平の「野火」、第4章「ぼくら戦争なんだぜ」で向田邦子の「ごはん」と従軍作家の林芙美子、さらに古山高麗雄、後藤明生を論じた後で、高橋選手は転向作家としてもっとも誠実に戦争に対峙し、戦時下の読者に向かって語りかけた戦争作家、太宰治を再評価しているが、その当否は、どうぞ本書を手に取って直接お確かめられんことを。

 

   半世紀連れ添いし君に捧げたり鬱金香の五十本 蝶人

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詩人になりたい!?~これでも詩かよ 第308回

2023-01-28 14:06:15 | Weblog

 

ある晴れた日に 第707回

 

 

久しぶりに、息子のケン君が、遠方の下宿から帰宅した。

 

晩御飯を一緒にした後で、グレープフルーツを食べながら、四方山話をしていると、とつぜん妻君が、「あなた死んだら、何になりたいの?」と尋ねたので、おらっち即座に

「生まれ変わって、詩人になりたい」と答えたら、彼女は眼を丸くして私をみた。

 

まるで、わたしという人物を、生まれて初めて見たような、驚きのまなこで、まじまじとみつめたのである。

 

「へえー、それで朝から晩までパソコンに向かっているんだ。なるほど、詩人ねえ。詩人かあ」

 

息子は、「お父さんみたいな、ちゃらんぽらんな人間が、詩人になれるわけないじゃん。詩は、命がけで書くもんだよ」と嘲笑った。

 

そうか、命懸けかあ。なら、やっぱし詩人は無理かあ。

そんなら、今度生まれかわったら、蝶になろう。ギフチョウになろう。

 

春浅い郷里の里山で、食草のカンアオイを求めて、夢のように浮遊する超希少種を脳裏に想い浮かべながら、おらっちは、両の腕を、ゆるやかに羽ばたかせた。

 

  朝夷奈の峠を2人で歩む時ケサランバサラン春を告げたり 蝶人

 

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平野啓一郎著「死刑について」を読んで

2023-01-27 11:54:48 | Weblog

平野啓一郎著「死刑について」を読んで

 

照る日曇る日 第1854回

 

巻末には死刑についての世界各国の現状のデータが開催されている。すべての犯罪について廃止している国は108か国、通常犯罪のみに廃止が8か国、事実上廃止が28か国、そして日本、アメリカ、イラン、中国、北朝鮮などの存置国が55か国で、世界は死刑廃止の趨勢にあるといえよう。

 

「目には目を、歯には歯を」という、昔ながらの復讐感情は、我々現代人の中でも生き残り、滾り続けて止まないが、それを許せば古代同様のアナーキーに逆戻る。では国家による2番目の殺人を許容するのか、と言われればノンと言わざるを得ぬ。とすればやはり我々は殺人犯を殺さず、罪を悔悟し更生させなければならないのだろう。

 

以前は死刑存置派だった著者。しかし被害者家族に接する中で、被害者の視点から書いた長編小説「決壊」を書き終えた時点で、死刑反対論者に転向していく。そんな道行を振り返りながら語られる廃止論は説得力があり、読む者の心を深く刺す。

 

「国民はすべての基本的人権の享有を妨げられない。(中略)基本的人権は侵すことのできない永久の権利である」と憲法第11条で謳われているにもかかわらず、ニッポン人は人権意識が希薄であり、その「享有」を持て余して、権力の圧迫があればやすやすと返上しかねない脆さを大公秀吉の時代から堅持しているのであるが、人権と自立を中途で放り出す未開性こそが死刑存置論の本質なのだろう。

 

「ご臨終です」と宣告されたるおばちゃんが甥の「おばあちゃん!」に生き還りたり 蝶人

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妹よ~これでも詩かよ 第307回

2023-01-26 10:22:57 | Weblog

ある晴れた日に 第706回

 

妹よ

お前は 私の懸命の追跡を あざ笑うように

北白川学園の 黄色い菜の花畑の 向こうを

手に手をとって 逃げて 行ったね

 

妹よ

お前は 希望を喪って 若狭の海辺を彷徨したが

まるで天佑のように 立ち直って

第2の人世を 歩みはじめたね

 

妹よ、

お前を 助けてくれたのは 運命のひと

限りなく優しい 寛恕の男が

限りなく弱い 迷える羊を 救ったね

 

妹よ

お前を 助けてくれたのは 聖マリア

限りなく優しい 慈愛のひとが

限りなく弱い 一人の女を 強くしたね

 

妹よ

お前は 死に至る病に 侵され

想像を絶する 苦痛に耐えながら 毅然として 逝ったね

その顔は まるで聖テレーズのように 気高く 美しかったね

 

妹よ

お前に また会う日まで さようなら

いつか どこかで

また会う日まで

 

今まさに数寄屋橋に赤尾党首が立ちて天下の銀座4丁目に理非曲直を明らめんとす 蝶人

 

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わたなべしげお 文・おおともやすお絵「おとうさん あそぼう」を読んで

2023-01-25 20:38:04 | Weblog

わたなべしげお 文・おおともやすお絵「おとうさん あそぼう」を読んで

 

照る日曇る日 第1853回

 

おとうさんクマとこぐまが遊んでいる、というよりおとうさんクマがこぐまをおんびしたり、肩車をしたり、飛行機になってやったりして遊ばせている展開です。

 

そのなかで、「おとうさんがおうまになってはいしどうどう!」というシーンが出てきますが、クマなのにお馬さんとは笑えます。

 

 今まさに「世界のオザワ」が舌ぺろり「ブラ1」コーダを料理せんとす 蝶人

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西暦2023年睦月蝶人映画劇場その6

2023-01-24 14:00:11 | Weblog

 

闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.3198~3202

 

1)平山雄一朗監督の「ツナグ」

辻村美月原作の2012年のSFファンタジー。一度だけ会いたい死者に会えるという設定を生かした物語を、松坂桃季、樹木希林、八千草薫などが好演。

 

2)新海誠監督の「天気の子」

2019年のアニメ映画。映像は透明感があって美しいが、人物の造形は平凡。陰陽師の本歌取りのような古めかしいプロットと低級な主題歌、歌詞、音楽にはてんでついていけない。

 

3)平山秀幸監督の「太平洋の奇跡」

米軍の総反攻が始まったサイパン島の日本軍指揮官の2011年の物語だが、自決に至らず彼の部隊が帰国できたのは何よりだったが、基本的人権を無視した東條の「戦陣訓」の罪は大きい。

 

4)三浦大輔監督の「何者」

氷河期の就活の困難さとやるせなさを見事に捉えた2016年の秀作であるが、役者はいまいちずら。

 

5)行定勲監督の「ナラタージュ」

原作は読んでいないが、余りにも通俗的なお噺と、主演の有村架純とか松本潤とかの未熟な演技に愛想をつかした2017年の凡作。

 

 強盗やオレオレ詐欺の志願者をツイッターで募るニッポンチャチャチャ 蝶人

 

 

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わたなべしげお文・おおともやすお絵「いってきまあす!」を読んで

2023-01-23 10:44:38 | Weblog

 

照る日曇る日 第1852回

 

おかあさんに「いってきまあす!」というてひとりでお散歩に出かけたこぐまくん。

 

途中で降りられなくなって困ったところを、おじさんくまに助けられて、2人で手をつないで町を歩きます。

 

なんてことない絵本だが、2022年に亡くなった大友康夫選手の優しい絵を眺めているだけで、不思議なやうらぎを覚えます。

 

   雰囲気が急に陰ると君が云う「お母さん、笑ってください」 蝶人

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かがくいひろし作「だるまさんの」を読んで

2023-01-22 09:57:18 | Weblog

 

 

照る日曇る日 第1851回

 

ご存じ「だるまさんシリーズ」の1冊。「だるまさんの」と問いかけて、

 

め、て、は、け、お、と順番にディテールをクローズアップしていく手法だが、

 

それがユニークな造形とリズム感の推力によって、1冊の楽しい絵本に仕上がる。

 

不思議だ。

 

  平時すら安全運航できない軍隊に戦争なんてできっこないじゃん 蝶人

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西暦2023年睦月蝶人映画劇場その5

2023-01-21 11:53:13 | Weblog

闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.3188~97

 

1)フェデ・アルバレス監督の「蜘蛛の巣を払う女」

小説「ミレニアム」シリーズの第4作の2018年の映画化だが、まあ詰まらないね。

 

2)マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ監督の「狂った血の女」

ムッソリーニ政権化のイタリアで行き死にした実在の女優ルイザ・フェリーザの悲劇を描いた2008年の政治と愛恋の物語だが、別に「狂った血の女」と思えないずら。

 

ブライアン・デ・パルマ監督の「パッション」

まだ健在のうさんくさい監督に拠る2012年のうさんくさい犯罪映画ずら。

 

3)ジェシー・バジェット監督の「ライアー・ハウス」

ゴダールの「息も絶え絶え」と同じ題名を据えた2016年のホラー・コメデイ・サスペンス殺人映画ずら。芸達者を揃えたごきげんな演出が冒頭から続くが、だんだんだれてきて、最後はうんざりというパターンなり。

 

4)ジョン・マッデン監督の「女神の見えざる手」

アメリカ議会でときどき出て来るロビイストなる存在についてその活動の一端を垣間見せてくれる興味深い2016年のセイジサスペンス物。しかしこんな奴らの暗躍を許している民主主義とはそもなんぞや?

 

5)ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の「プリスナーズ」

娘を誘拐されたために起るどさくさを描くアホ臭い2014年の犯罪映画。

 

6)ダビ・トルエバ監督の「バスルーム裸の2日間」

偶然浴室に閉じ込められた爺と娘の関係を描いた2011年のスペインのエロチックサスペンス人世哲学映画でとても面白い。セクスするかのしれないと思って見ていたら、やっぱるするので60爺やるじゃんかと思った次第。でもあの可愛いマリア・バルベルデちゃんが阿呆莫迦指揮者のドダメルの妻とは、どたまに来るなあ。

 

7)平柳敦子監督の「オー・ルーシー」

寺島しのぶ主演の2017年の日米合作の秀作映画。南果歩、役所広司が脇を固めるが、平柳敦子選手の演出が冴えわたり、フレッシュな忽那汐里最高!

 

8)アラステア・フォザーギル監督の「アース」

地球環境に焦点を合わせ、BBCが5年かけて製作した2007年のドキュメンタリー映画だが、温暖化で北極梅に沈むホッキョクグマの孤影が癌細胞のレントゲン写真のようにいまも残像している。

 

9)ジャック・ペラン監督の「オーシャンズ」

2009年に製作された仏蘭西の海洋ドキュメンター映画であるが、なんと詰まらない仕上がりだろう。

 

10)ジョン=スチュワート・ミラー監督の「セレブリティ」

政治家の妻が浮気して後始末に往生する2016年のエロチック・イステリー映画。

 

   半世紀花も嵐も踏み越えて君と迎えし金婚の日 蝶人

 

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森佐智子文・MAYA MAXX絵「しろねこしろちゃんやん」を読んで

2023-01-20 11:30:57 | Weblog

 

照る日曇る日 第1850回

 

真っ黒なお母さんネコから、4匹の子ネコが生まれたが、1匹だけはなぜか真っ白。

 

どうして自分だけ違うんだろうとコンプレックスを抱いた白ネコちゃんは、炭を擦り付けたしてなんとか自分も黒くなろうと努力しますが、お母さんにすぐ舐めとられてしまいます。

 

そんなところへ、ぬっと姿を現したのは、超格好いい真っ白なお父さんネコ。

 

「おとうさんはまっしろなしろやんをみて、とてもうれしそうでした。でもいちばんうれしかったのは、しろちゃんでした」という見事な結びも泣かせます。

 

マヤ・マックスの絵は素晴らしい!

 

  実をつけねば斬ってしまうぞと脅され大豊作の夏蜜柑の木 蝶人

 

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和歌山静子作「どんどこどん」を読んで

2023-01-19 11:17:55 | Weblog

和歌山静子作「どんどこどん」を読んで

 

照る日曇る日 第1849回

 

横じゃなくて縦に開くユニークな絵本です。

 

というのも、「つちのなかでどんどこどんこ」地面の中で大きくなっていく、ニンジン、ジャガイモ、サツマイモ、サトイモ、ゴボウ、そして最後にダイコンを、ダイナミックに直列で描いているからなんです。

 

その狙い、文、作画が鮮やかに三味一体となった、とっても素晴らしい、絵本の中の絵本といえませう。

 

なお、1940年生まれの天才作者の和歌山さんは、お隣の逗子にお住まいです。

 

 ウクライナ、イラン、香港、ミャンマーでどんどん人が殺さていく 蝶人

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西暦2023年睦月蝶人映画劇場その4

2023-01-18 11:33:41 | Weblog

西暦2023年睦月蝶人映画劇場その4

 

闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.3178~87

 

1)クリスティーナ・グロゼヴァ監督の「ザ・レッスン」

阿呆莫迦夫の借金が元で追い詰められた女教師が銀行強盗してしまうという2014年のブルガリアの悲しい映画。

 

2)アンドリュー・ニコル監督の「アノン」

2018年製作の分かったようなさっぱり分からぬSFスリラーなり。

 

3)キャスリン・ビグロー監督の「ゼロ・ダーク・サーティ」

CIAの女性職員の視点でオサマ・ビンラディンの暗殺事件を描いた2013年の米国の政治活劇映画なり。

 

4)ドノヴァン・マーシュ監督の「ハンター・キラー潜航せよ」

2018年の潜水艦映画だが、米ロの原子力空母が撃沈されたり、ロシアの首相が国防相のクーデターで拘留されたり、それをアメリカの特攻隊員が救出したり、盛りだくさんの付録つきでしなかなかにコワ面白い。

 

5)ジョージ・スティーヴンス監督の「愛のアルバム」

アイリーン・ダンが「舞踏会の手帖」みたいに思い出のレコードを掛けながらロック・ハドソンとの暮らしを振り返っていく手法だが、肝心の音楽はきちんと提示されていない。それよりもこの夫婦の絆が「養子」を迎えることにあることに違和感を覚える1941年の米映画。

 

6)ウォルフガング・ムルンベルガー監督の「ミケランジェロの暗号」

第2次大戦中のウィーンの画廊を舞台にミケランジェロの肖像画を巡るナチとの争奪戦が巻起こるが、出てくる役者がみな気に喰わない2013年の戦争サクペンス映画。

 

7)ゲイリー・フレダー監督の「バトルフロント」

元麻薬捜査官が体を張って麻薬王と戦う2014年製作のアクションスリラー映画。

 

8)ポール・バーホーヴェン監督の「ブラックブック」

第2次大戦中のナチ占領下オランダを舞台に繰り広げられる独軍とレジスタンスの熾烈な闘争を家族を皆殺しにされたユダヤ人女性を主人公に描く2006年の阿蘭陀映画。

 

9)メル・ギブソン監督の「ハクソー・リッジ」

銃は絶対に握らないと誓いを立てた男が軍隊に入って看護兵となり、沖縄戦で大手柄を立てたという良心的兵役拒否者の実話を2016年に映画化。わが兵はあんなに強かったのだろうか?

 

10)イ・ヨヘン監督の「毒戦」

2018年の旧作のリメイク映画で、麻薬王と戦う取締官の獅子奮迅の大活躍を描くが、ラストの決闘は、どちらが勝ったのか分からないずら。

 

  殺しても殺してもまだ終わらないウクライナ殺して殺してまた殺されて 蝶人

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竹田青嗣著「新・哲学入門」を読んで

2023-01-17 11:49:58 | Weblog

照る日曇る日 第1848回

 

冒頭、「哲学とは、すべての人間の共存とエロス的共生の条件を作り出す『普遍暴力の縮減』のために、普遍的な世界説明を創り出す試みである」、と宣言する著者による哲学入門書である。

 

私は哲学書が大の苦手で、今までプラトンとアリストテレスくらいしか読んだことがないが、それにしてもどうしてかくも糞難しい言葉ばかり用いなければ叙述できないのかしら。著者は、哲学者の中でも平易な語り口を得意にしているそうだが、何回読んでも訳の分からぬ専門用語や概念が、これでもかこれでもかと繰り出されてくるのには閉口した。

 

「まずニーチェとフッサールの達成に依拠しつつ認識問題を解決し、普遍認識の可能性を根拠づけ、次に一切の哲学的存在論がそれを土台とすべき価値の哲学の基礎づけを「善」と「美」の価値審級の発生論として試みた」と総括されているが、かの井上ひさしが言うたように、難しいことを難しいままに綴るのではなく、素人にも分かるようにやさしく書き綴るのが、ほんたうのプロの仕事だと思うのである。

 

まあ超頭の悪いおらっちなど、はなから読者の対象ではなかッたんだろうが、それでも第8章「善と悪」、9章「きれい-きたない」審級あたりから、だんだん良く鳴る法華の太鼓で、クライマックスの10章「美醜」、11章「芸術美」なんかは血沸き肉躍ったから、まあ読んで得したほうなんだろうな。

 

「集合的生の必要が生み出す、禁止と規範の体制に対する人間本能の対抗策、禁止領域を幻想的に乗り越えようとする「侵犯」の試み、それが宗教、エロテイシズム、芸術という形式をとる」(第12章「芸術の本質学」より)

 

どうでもいいけど、この人はフッサールの現象学よりも、バタイユの欲望論の影響を強く受けているのではないだろうか。

 

 倫敦のウィグモアホールのコンサート室内楽をユーチューブで聴く 蝶人

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