あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

岡野玲子著・夢枕獏原作「陰陽師10 大裳」を読んで

2019-12-31 08:43:25 | Weblog


照る日曇る日 第1332回


安倍晴明が何を悩んで命を削るような労苦を重ねているのかは分からんが、焼失した宮殿を再建するためには師匠の賀茂保憲と共に地鎮の安摩の舞を舞う必要があったらしい。

しかしその尋常ならざる自己犠牲と努力のために、晴明は愛する真葛ちゃんを失おうとしている。


   国蝶のオオムラサキと共に滅びるや民主主義絶滅危惧国ニッポン 蝶人
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アンドレ・クリュイタンス「ワーグナー・バイロイト・全ライヴ」10枚組を聴いて

2019-12-30 10:03:51 | Weblog


音楽千夜一夜第442回


アンドレ・クリュイタンスは昔から好きな指揮者で、ベルリン・フィルを振ったベートーヴェンの交響曲全集などを愛聴してきたのだが、このワーグナーはなんじゃらほい。

彼がバイロイトで録れた1955年夏の「タンホイザー」、57年の「ニュルンベルグのマイスタージンガー」、1958年の「ローエングリン」の3曲を収めた独ドクメント盤のモノラルCDを、いくら聞いても聴いても、さしたる感銘を覚えないのはとても残念じゃッた。残念、残念、残念じゃッた。


シューベルトの「未完成」を聴き思うこといかなる生も未完成なり 蝶人
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蝶人師走色々映画劇場その7 

2019-12-29 11:34:18 | Weblog


闇にまぎれて tyojin cine-archives vol.2093~95


1)アンドリュー・ヘイ監督の「さざなみ」
結婚45年を迎えた夫婦の心中のさざ波を事細かに描くがちと辛気臭い。しかしシャーロット・ランプリングも歳を取ったなあ。原題は45年間ずら。

2)ブライアン・デ・パルマ監督の「スカーフェイス」
キューバからマイアミに追放された反カストロ派のアル・パチーノが裏社会の顔役に成り上がるが、あえなく自滅していく鳴り物入りの哀れな物語。この頃のミシェル・ファイファーは色つぽい。

3)ルカ・ルチーニ監督の「ミラノスカラ座~魅惑の神殿」
よい指揮者に恵まれ全力を振り絞った時のスカラ座のオケは世界最高ずら。加えてなんとコーラスが凄い。そんな世界の至宝のこれまでを振り返る。


  万歳を48唱したならばさすがの右翼も疲れただろう 蝶人
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河出版ナボコフ・コレクション「ロリータ、魅惑者」を読んで

2019-12-28 13:44:35 | Weblog


照る日曇る日 第1331回



河出書房新社から出版されていたナボコフ選集もとうとう5巻目が刊行され、これが最後かと思うと、なんとなく寂しいものがある。

「ロリータ」は新潮版と同じ若島正氏の訳であるが、今回はナボコフによるロシア語版との異同が付録についているが、いずれにしても、本作がナボコフの代表作であることは変わりない。

少女への性愛志向は残念ながら私にはないが、誰にそれがあっても仕方がないし、法令は別として、それをとやかくいうてもはじまらないだろう。

しかしここで作者が褒め称える天使の美しさと妖しい蠱惑の言語表現は、それ自体が芸術の別乾坤として燦然と屹立していて、それまでの文学にとっては未踏の領域であった。

この原作は鬼才スタンリー・キューブリックによって映画化されたが、肝心のヒロインに魅力がなく、米国映倫規制で性愛シーンが峻拒されたためにひどく見劣りする出来栄えに終わってしまって残念だ。



人も世もたそがれてゆく師走なり泣くも笑うもこの時なるぞ 蝶人
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伊藤比呂美著「たそがれてゆく子さん」を読んで

2019-12-27 10:16:27 | Weblog


照る日曇る日 第1330回



アメリカ西海岸の病院で90歳近い夫を看取り、その空白を愛犬クレーマーとの同衾で埋めながら世界中を激しく動き回る還暦を過ぎた詩人の行状記ずら。

軽妙洒脱な筆致の中に黄昏ゆく人世の悲哀がぽっかりと浮かび上がってくる。

そして、セックスやチンポコのことをこのようにさらりというてのけるところにこの人の正直で飾りのない人柄がよく表れている。

著者は最近早稲田大学で講義をしているらしいが、先日その様子がSNSでアップされ、見ると、彼女も、学生も教室狭しと踊っていた。恐らくツイストではないかと思うが、こういう授業なら私も出たいと思ったことだった。

あるいは、今を真面目に生きようとすれば、テレビの画面がみなそうであるように、ただひたすらに踊り狂うしかないのかもしれない。泣くも笑うもこの時ぞ。この時ぞ。



子が腹に居ると知りてメトからの招きを固辞した佐藤しのぶよ 蝶人
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ヤコブス・デ・ウォラギネ著「黄金伝説1」を読んで

2019-12-26 13:00:05 | Weblog


照る日曇る日 第1329回


ヤコブス・デ・ウォラギネ(1230頃-98)はジェノヴァ近郊生まれの福者で、中世において聖書と並んで最も多くの人々に読まれたこの聖者列伝をあらわした。

本日は聖夜につき、第50章の「主の(マリア)お告げ」を読んでみると、「新訳外典のひとつ「偽マタイ福音書」の記述が引用されていて興味深い。

不安に駆られる処女マリアを「あなたの親戚のエリサベトも児を宿しています」というて、天使が力づける。

エリサベトはイエスに先行して神が地上に下ろした洗者ヨハネの父で大祭司のザカリアの妻なのだが、不妊といわれ、しかも老年なのに6か月の男児が胎内に居るというのである。

するマリアは立ちあがって山に急ぎ、エリサベトの元に至り、彼女に挨拶をした途端、エリサベトの胎内で「子供のヨハネがおどった」と書いてある。のちにヨルダン川でイエスを洗礼する、あのヨハネが、である。

そして「マリアはエリサベトの元に滞在し、ヨハネが生まれるまで3カ月の間彼女の世話をして、自らの手でヨハネを抱き上げた」というのだが、このような前振りがあれば、福音書のイエスの誕生も、いっそう迫真の度を加えたのではなかろうか。


 緒方さんも中村さんも居なくなり暗くて寒い日本の冬です 蝶人
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加藤典洋遺著「大きな字で書くこと」を読んで

2019-12-25 13:26:21 | Weblog


照る日曇る日 第1328回


今井さんとか巽君の逝去に紛れてあやうくド忘れするところだったが、本書を手にとって5月に死んだ加藤典洋氏のことを思い出した。

彼は私の友人カド君が、かつて国会図書館に勤務していた時の同僚で、カド君が誘ってくれた若杉弘指揮都響によるブラームスの交響曲のコンサートで同席したのが初めての出会いだった。

カド君は彼がノートに書き殴った「中原中也論」を読んだ(まされた)ことがあるそうだが、本書によれば勿体ない事にその記録は、モントリオール行きの国際便未着によって永久に失われてしまったそうだ。

私は彼から頂戴した処女作「アメリカの影」を読んで大きな衝撃を受けたが、感想と共に戸田ツトム氏の装丁を誉めると、「自分で探して頼んだ」とうれしそうだった。

その後しばらくして、私がJLGに製作を依頼したCMが出来た時、仏語に不調法な私のために作中の登場人物のセリフを邦訳してくれたのが加藤氏で、私はお陰で蓮實重彦編集長から執筆依頼された映画雑誌「リュミエール」の原稿を書くことが出来たのだった。

余談はさておき、氏の遺作となった本書には、彼の父親が干刈あがたと同じく警察官だったので、全共闘時代に絶対に逮捕されたくなかったこと、吉本隆明の「試行」の「情況への発言」の「きわめて精緻かつ丁寧な」元原稿を、過激で乱暴な物言いに「校正」していたのは書誌学者の青山毅であったとか、思いがけない発見もある。

これまで知ることのなかった彼の来歴、懐かしい幼少時の思い出や心温まるこぼれ話が随所に散りばめられており、他の格調高い著作とはおのずから違った側面を窺うことができて楽しいが、読むほどにその早すぎた逝去が惜しまれてならない一冊である。



 知らぬ間に大人になりし後藤久美子ゴクミに似たる娘生みたり 蝶人
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蝶人師走色々映画劇場その5 

2019-12-24 14:55:19 | Weblog


闇にまぎれて tyojin cine-archives vol.2085~88


1)是枝裕和監督の「幻の光」
是枝裕和監督のデビュー作。突然夫に死なれた女性のとまどいを江角マキコが好演。しかし中堀正夫のキャメラはその必要も無いのにピンを甘くし、北村道子の衣装はその必要も無いのに都会的にすぎる。

2)是枝裕和監督の「そして父になる」
産院での赤子取り違えの悲劇を描いてリアル。2組の家族の貧富や生き方の違いが鮮やかに浮き上がってくる。福山雅治は下手糞な歌なんかやめて俳優専門になったらどうか。

3)是枝裕和監督の「海よりもまだ深く」
売れない作家を演じる阿部寛のキャラクターが面白いが、これから彼および元妻の真木よう子はどうなっていくんでしょうね?
題名は「海よりもまだ深く」ではなく「「海よりもなお深く」ではなかろうか。

4)是枝裕和監督の「歩いても歩いても」
2008年の是枝原作、脚本、監督の作品。いしだあゆみの「ブルーライトヨコハマ」とキチョウの逸話で1本の(映画をつくってしまう蛮勇には驚いた。ゴンチチの音楽がいい。


 30年務めし気象庁を辞めてテレビ局のお天気キャスターになりし61歳 蝶人

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中山みき述「古記」「みかぐらうた・おふでさき」を読んで

2019-12-23 15:45:14 | Weblog


照る日曇る日 第1327回

四方田犬彦氏推薦の「古記」をネットで探して読んだが、「古事記」「日本書紀」のくにおこし神話と比べてその自由かつ論理的、気宇壮大な創造性にいたく感心す。これは天皇制近代国家の弾圧に抗して中山選手は謳いあげた感動的な創世記である。

それに関連する同じ天理教開祖による「みかぐらうた」は天理教最初の教義書、「おふでさき」はその教えの根幹をなす教義歌であるが、平易かつ明快にその「神楽勤め」「陽気ぐらし」の本質を自分の口で物語っており、なるほどなあと譜に落ちるが、唐への対抗を再三力説するのはよろしくないと思うのである。

   谷底のデクノボーどもせりあがり世界一列高山砕け 蝶人
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岡野玲子著・夢枕獏原作「陰陽師9 玄武」を読んで

2019-12-22 13:32:57 | Weblog


照る日曇る日 第1326回


本巻では数ページカラーが入るが、なんとまあ色っぽいことよ!

「瓜仙人」の方士、丹蟲先生の造形が好ましい。

前巻で安倍清明が玉置まで行かなかったために、内裏が完膚なきまでに炎上してしまうが、都はその都度不屈のたたずまいで再建されてきたのである。



 鎌倉の銀座アスターを尋ぬれば美形のウエイトレスが給仕してくれる 蝶人

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国立劇場で歌舞伎2本立てをみる 

2019-12-21 13:36:47 | Weblog


蝶人物見遊山記第327回


まずは近松半二作の「近江源氏先陣館」。大坂の陣で敵味方に分かれた真田信之、幸村兄弟を鎌倉時代の佐々木盛綱、高綱兄弟に置き換えた一族悲劇の物語だが、前者のイメージはあまり思い浮かばず、むしろアンチ北条に終息するまとめ方になっている。

それにしても二股膏薬を貼る盛綱、大人の不可解な共同戦略の犠牲になる高綱の子、小四郎の訳知り顔の切腹など、半二の脚本はどうにも後味が悪い。

かてて加えて松本白鸚の細くて甲高くて外へ向かわず喉の中へ内攻するセリフの連発は、ますます観劇の印象を暗くして、泣くに泣けないお涙頂戴演目であった。

後半の「蝙蝠の安さん」はチャップリンの「街の灯」を原作にした珍品だが、木村錦花の脚色に松本幸四郎の演技が見事にはまっていて、これは思いがけない師走の贈り物であった。

 
 八千草薫と同年生まれの今井さん彼女と同じ10月24日に死んだ 蝶人
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いつまでも

2019-12-20 21:09:03 | Weblog


これでも詩かよ 第271回



ヨハン・シュトラウスⅡ世の「無窮動」op257を振りながら、カール・べームは「いつまでも」というた。

京都府綾部市西本町25番地の履物店に「品良くて、値段が安くて、履きやすい、買うならここと、下駄はてらこ」と書かれた看板があったので、フマ君が「まだ営業してますか?」と尋ねたら、セイザブロウさんとアイコさんとマコっちゃんとゼンちゃんとミワちゃんは、口を揃えて「いつまでも」というた。

夕方、鎌倉市十二所の光触寺の山門に可愛いコダヌキが目を光らせていたので、「お前さん、いつまでそんなとこで油を売っているんだね」と尋ねると、「いつまでも」というた。

「我が家の太陽は誰ですか?」と尋ねたら、コウ君が「お母さんですお」というので、さらに「太陽はいつまで輝くの?」と尋ねたら、「いつまでも」と答えた。

緒方貞子、中村哲、今井和也、柴田駿、今年も忘れがたい多くの人々がこの世を去った。
荒れ果てた不毛の地で懸命に生きる私たちを、どうか温かく見守っていてください。
いつまでも。

佐々木家の紋付の柄も忘れ去り下駄のてらこは店を閉じたり 蝶人
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「ハンス・クナパーツブッシュ・コレクション3管弦楽集」全70枚組CDを聴いて

2019-12-19 13:53:24 | Weblog


音楽千夜一夜第441回


ベートーヴェンからブラームス、ブルックナー、リヒアルト&ヨハン・シュトラウス、ハイドン、モザール、ウエバー、シューマン、ワーグナーなどの交響曲、管弦楽曲を、これでもかこれでもか、と詰め込んだご存じVENIAS特製のボックスセットずら。

いずれもいつかどこかで聞いたことのある「天下一品の名演奏!」なのだが、どうもこのVENIASの音づくりが気に入らない。

「モノラルでも聴きやすい」とかいうて売りまくっている人気レーベルなのだが、音の圭角、粒立ちにカンナをカケて削った人工的な調音なので、そりゃあ聴きやすいかもしれないけど、金玉を抜かれた宦官のレコード?を聴かされているようだ。

さらに下品な喩えで申し訳ないけれど、「伊エルミタージュ盤のブラームスの2番は勃起しているのに、VENIAS盤ではインポテンツになり下がっている。」のよねえ。

大枚はたいて買い込んで嘗めるように聞いたはいっときの極楽。なんのことはない地獄の一丁目行きとは成り果てましたあ。

  あれほどの赤子を死なせたのだから土下座くらいで済むはずはない 蝶人

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蝶人師走色々映画劇場その4

2019-12-18 15:40:28 | Weblog


闇にまぎれて tyojin cine-archives vol.2080~84


1)クリント・イーストウッド監督の「ヒアアフター」
あの世とこの世を結ぶ絆についての心温まる物語。ある一線でオカルトに傾斜しないのがいい。2010年の製作。東松監督作曲の音楽がいい。

2)ジョン・フランカンハイマー監督の「ブラック・サンデー」
1977年製作のハリウッド映画。イスラエルの鬼子であるテロリスト集団がスーパーボウルの会場に浮かぶ飛行船から爆弾を落とす計画を立てたが、ロバート・ショウに阻まれる。

3)ポール・トーマス・アンダーソン監督の「ファントム・スレッド」
主演のダニエル・デイ・ルイスが、オートクチュール・デザイナーを好演。
本作で俳優を引退しデザイナーに転身するといううが、そんな冗談はやめにしてもらいたいものだ。レウトランの給仕アルマ(ヴィッキー・クリープス)をみそめて伴侶にしていくが、おぼこなはずの彼女が徐々に女の本領を発揮し毒キノコを飲ませたり食べさせたりして尻に敷いていくあたりが見ものずら。

4)ジョン・ヒューストン監督の「マッキントッシュの男」
国際諜報員ポール・ニューマンが活躍するスパイ物だが、ウオルター・ヒルの脚本がなややこしくてどういう話かよく分からずじまいなりき。

5)ニコラス・ジャレッキー監督の「キング・オブ・マンハッタン」
題名が大げさすぎる。「家族を守る」と称して嘘に嘘を積み重ねた実業家リチャード・ギアは、ようやく罠から脱出したと思った途端、怒れる妻スーザン・サランドンの罠に嵌ってしまうのであったああ。


  君の名を唱えつつ死んだ兵のため土下座のひとつもするべきだった 蝶人
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岡野玲子著・夢枕獏原作「陰陽師8 大陰」を読んで

2019-12-17 15:07:37 | Weblog


照る日曇る日 第1325回


今回の主題は大日照り。京を襲った天災をおどろおどろしく描く。
結局は安倍晴明が若狭を経由して天の河まで飛んで行ってしまい、見事に豪雨を降らせるのだが、彼女による「付記」を読むと、本編よりももっと面白い。

なんで下級官吏の晴明が藤原兼家やその妾である時姫も住んでいた内裏の鬼門である土御門町口に広大な邸宅を構えることができたかといえば、「晴明と兼家の子、道長は母方の時姫をとおして血縁であった」からではないか」というのである。

なるほどもしそうなら兼家=道長=晴明の強固な三位一体関係もさもありなんと頷ける。これでは正妻の道綱の母が息子共々権勢の陰にうち捨てられたのも無理は無い。

作者はさらに晴明の母について信太の森の女狐にまで捜索の手を伸ばし、興味深い想像の翼を羽ばたかせるのだが、これほど旺盛な好奇心と豊かな学識あればこそ、この作品が見事な輝きを放っているのだと改めて思い知らされた。


  ピアニストとしては一流だけど指揮者としては二流半のアシュケナージ  蝶人
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