あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

西暦2015年水無月蝶人花鳥風月狂歌三昧

2015-06-30 09:20:24 | Weblog



ある晴れた日に 第319回


戯れに死者の名で呼ぶ蛍かな

われもまた一匹の獣であるMGM映画のライオンとなりて吠えておれば

ウラナミアカシジミを今年初めて見ました2015年5月24日午前9時

安倍晋三マツコ・デラックス伊集院光猪八戒豚豚男は皆嫌い

ファションが教えてくれることそれは売れなければなにを言ってもだめだということ

へらへらとマルクス兄弟になりきって歌ってる君は「有頂天」のケラ

見るたびに思うこと新宿の美術館のゴッホは偽ものではあるまいか

遥々と鎌倉にまでやって来て紫陽花を見物する人人人

北鎌で降りて江ノ電に乗ってらあらあとそぞろそぞろ歩くは紫陽花派のおばはん

あまりにも早く茶色い染みがつきだした命短し乙女椿

人世をもう一度生きてみたいかねア人世をなんちゃらかんちゃらもう一度 

人間は弱いもんだな人間は弱いもんです人間なんて

台湾リスの仔を滑川に蹴飛ばせば得足りや応と青大将が呑みこむ 

いちどみていいとおもってまたみればあんまりおもしろくもないのはどうして 

安倍晋三がドラエモんが「どこでもドア」を開いたらそこはいつでも戦場だった

賛成はしないが反対もしなかった人々が招き寄せる戦争

戦争が近付いているんじゃない我われがどんどん戦争に近付いている

春逝きし君のスノードームはなぜか冬いつも静かに雪が降ってる

御成通りに太鼓屋できたドデスカデンドデスカデンデン

ぼんやりとテレビ見てれば次々に吐き気催す奴らが出てくる

コンビニに行きて帰りて誤嚥して六十九歳で果てし人はも

アベシンゾウのあべこべ男が首相ならたちまち日本はよくなるだろうに

この程度のブラームスを聴いてブラボーと叫んでいるチェリビダッケ読響の4番を知らずに

失せ物いずこありや早田雄二さんが撮ってくれたわが20代の肖像写真

裏駅の時計は午後4時を廻りたりものみな息絶え虫になるとき

由比ヶ浜の砂の下に昏々と眠り続ける若武者の歯よ

「白川以北一山百文」東北の反薩長のルサンチマン大東亜戦争を勃発させたあ

なにゆえになにゆえシリーズは続いてるなにぬねごっこが楽しいからさ

ユジャ・ワンはいつも超ミニべアバック見ているうちに演奏が終わる


  失われた青春を牢屋で作りだしていると坂口弘語れり 蝶人
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なにゆえに 第16回~西暦2015年水無月蝶人花鳥風月狂歌三昧

2015-06-29 10:05:02 | Weblog



ある晴れた日に 第318回


なにゆえに同じ日にいちどに生まれ出るルリシジミは天からの瑠璃色の手紙

なにゆえに世界の果てまで戦争に行く専守防衛をかなぐり捨てて

なにゆえに錦織が負けるとそっぽ向く日本人は日本人以外関心がない

なにゆえにコーランを抛りだすこれを読んでも偽イスラム国は分からない

なにゆえに憲法前文を虚仮にする現実を変える武器は夢と理想のみ

なにゆえに紋白蝶が多発するみんなジューン・ブライドになりたいからさ

なにゆえに次回は伊勢志摩サミット靖国の代わりに伊勢神宮に参拝させちゃう

なにゆえに異論を聞かずにごり押しをする憲法違反の戦争法案

なにゆえに維新は自民に秋波を送る以心伝心の右翼なるゆえ

なにゆえに戦争を政府自身が引き寄せる憲法前文に唾しながら

なにゆえに最高法規を尊重しない安倍晋三は憲法99条違反

なにゆえに公明党はノンと言えない所詮は自民の小判鮫ゆえ

なにゆえに絵を描けば画家歌や俳句を詠めば歌人俳人とたやすく名乗る

なにゆえに猫はブランド缶詰しか食べないの犬はなんでもがつがつ食うのに

なにゆえに歌手はカヴァーをしたくなるカヴァーガールになりたいからさ

なにゆえに池田ノブオはテレビ通販に出る生涯ふぁっちょん小僧だから

なにゆえに息子の悲鳴が電話から聞こえる無神経な職員が「注意」したから

なにゆえに黒木メイサはドラマに出ないうちの息子が待ち望んでるのに

なにゆえに幾たびも同じ短歌を投稿してるしかも一度も入選はせず

なにゆえにおいらは戦に巻き込まれてゆく選挙で自公に入れなかったのに

なにゆえに隣の犬の無駄吠えが止んだ謎は深まる日曜の午後

なにゆえにまたしてもテレビで鎌倉をやるそれでなくても大混雑なのに

なにゆえに突如野兎が跳びはねる誰かが夏草を刈ったから

なにゆえに悪魔のような政治家が国を乱す君が選挙を棄権したから

なにゆえに坊主頭が沖縄を侮辱するそれでもマスコミは黙っているのか

なにゆえに忘れた頃に歯が痛くなる忘れてはならないものを思い出させるため



 なにゆえに親に隠れて葛根湯を飲んでるどこが悪いと自分では言えずに 蝶人
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そのように~六月の歌

2015-06-28 10:21:19 | Weblog


西暦2015年6月の歌~「これでも詩かよ」第150番

ある晴れた日に 第317回


中国の愚公という九十歳にもなるよぼよぼの老人が
家の前にある大きな山を動かそうと、朝から晩までセッセと土を運んだ。
人々は嘲笑ったが、天帝は老人を見捨てなかった。
そのようになった。

弘法大師は「では私が井戸を掘って旱魃を救ってあげよう」と仰って
手にした錫杖をぐさりと地面に突き刺し、
グリグリと回転させてから、エイヤっと引き上げられた。
そのようになった。

カール・ドライヤーの『奇跡』を見よ!
ヨハネスが「インガ、生命に立ち戻りなさい」と命じると
彼女はゆっくりと目を開く。
そのようになった。

「これ、信徒の者よ、汝らの身近にいる無信仰者に戦いを挑みかけよ。彼らにおそろしく手ごわい相手だと思い知らせてやるがよい。アッラーは常に敬神の念敦き者とともにいますことを忘れるでないぞ」(『コーラン』井筒俊彦訳)
そのようになった。

「アーナンダよ、久しからずして修業完成者(ブッダ)は亡くなるであろう。これから三か月過ぎたのちに、修業完成者は亡くなるであろう。修業完成者が生きのびたいがために、この言葉を取り消す、というようなことは有り得ない」(『ブッダ最後の旅』中村元訳)
そのようになった。

幣原喜重郎(第44代内閣総理大臣)の亡霊が70年ぶりに現われ出て
“そうせい侯”(長州藩第13代藩主毛利敬親)の亡霊に額ずいて曰く
「あなたの地元の代官であり、私の後輩でもある悪賢い男が、せっかく私が提案した憲法第9条を無きものにしようとしています。至急御成敗を!」
そのようになった。

西暦2015年6月4日
慈しみ深き主なるエスは、
鎌倉十二所のバス停の隣の家の主人とツバメに
二階の軒下に巣をつくるように命じられた。
そのようになった。


  北鎌で降り江ノ電に乗ってらあらあとそぞろ歩くは紫陽花派のおばはん 蝶人

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家族の肖像 その7~「これでも詩かよ」第149番

2015-06-27 11:44:09 | Weblog


ある晴れた日に 第316回


「お父さん、サクラ、サクラ、サクラ好きですお」
「サクラ、お父さんも好きですよ」
「お父さん、桜は木にツに女ですお」

「お母さん、オオヨワリってなに?」
「オオヨワリ?」
「オオヨワリだお」
「大弱りか。とても困ること、だよ」
「オオヨワリ、オオヨワリ、オオヨワリ」

「さわむらさん、莫迦笑いしてたよ」
「サワムラさん?」
「ブラックプレジデントの」
「ああTVドラマの社長役の沢村一樹かあ」
「莫迦笑い、莫迦笑い」

「ヘーツト、ヘーツト」
「誰がヘーツトって言ったの?」
「綾部の精三郎さんですお」
(二人で)「ヘーツト、ヘーツト」

「お母さん、複雑ってなに?」
「物事がいろいろ混ざっていることよ」
「複雑複雑複雑」

「皇太子さんはキシモト先生によく似ていますよ」
「誰に似てるって?」
「横須賀の歯医者のキシモト先生だお」

「お母さん、原因ってなに?」
「それが起きた理由」
「ゲ、ゲ、ゲンイン、ゲンイン」

「お父さん、赤羽線から埼京線に変わったの?」
「どうもそうらしいね」
「京浜東北線の6扉は6号車だけですよ」
「へええ、そうなの」

「お母さん、ぼく南浦和に泊ります」
「分かりました。いつ泊りますか?」
「分かりませんお、分かりませんお」

「♪もう一度、もう一度 なんの歌ですか?」
「うーーん、聞いたことのある歌だなあ」
「♪もう一度、もう一度 なんの歌ですか?」
「分かったぞ、小柳ルミ子の歌だ」
(二人で)「「♪もう一度、もう一度 なんちゃらかんちゃらもう一度」


人世をもう一度生きてみたいかねア人世をなんちゃらかんちゃらもう一度 蝶人

  
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人間なんて~「これでも詩かよ」第147番

2015-06-26 14:51:37 | Weblog


ある晴れた日に 第315回


人間なんて弱いものだ人間なんて弱いものだ人間なんて弱いものだ人間なんて弱いものだ人間なんて弱いものだ人間なんて弱いものだ人間なんて弱いものだ人間なんて弱いものだ人間なんて弱いものだ人間なんて弱いものだ人間なんて弱いものだ人間なんて弱いものだ人間なんて弱いものだ人間なんて弱いものだ人間なんて弱いものだ人間なんて弱いものだ人間なんて弱いものだ人間なんて人間なんて人間なんて人間なんて人間なんて弱くないのかもしれないな。


   人間は弱いもんだな人間は弱いもんです人間なんて 蝶人

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雑巾の歌~「これでも詩かよ」第145番

2015-06-25 17:24:28 | Weblog


渋谷ヒカリエで「I'm sorry please talk more slowly」展をみて

ある晴れた日に 第314回

寒い寒い冬の夜
目の前に雑巾を置いて、
そいつをじっくり眺めてみよう。

すると突然雑巾が、なにか、ぶつぶつ言い始める。
「I'm sorry please talk more slowly」
すると雑巾は、おのれについて、ゆるやかに語り始めるだろう。

「ホラホラ、これが俺の骨だ。これが俺の肉だ。
これが俺のはらわた。俺の脳髄。これが俺の肌の色。
これこそが俺の実在なんだ」

頭巾の奴は、次第に雑巾野郎としての本質を露わにしてくる。
雑巾は、雑巾としてのレエゾン・デートルを、
静かに、しかし、力強く主張しはじめる。

雑巾をじっと見つめると、それは美しい。
雑巾をじっと見つめると、それは侵しがたい。
雑巾をじっと見つめていると、それはひとつの宇宙だ。

雑巾は、もう誰にも「たかが雑巾」などとはいわせない。
なぜならそれは、吹けば呼ぶよな家政婦よりも、したたかに存在しているから。
いまや雑巾は、長らく人間どもに浸食された主権を、奪還しつつある。

寒い寒い冬の夜
キャンバスの前で画家に描かれている雑巾は、だんだん雑巾ではなくなってくる。
雑巾が、雑巾ではない何か、雑巾以上の何者か、になってくる。

画家は、それをありのままに、油絵で描いた。
すると雑巾は画家に感謝して、「健君ありがとう」と言ったので
画家は「どういたしまして」と答えてから、筆を置いた。



 アベシンゾウのあべこべ男が首相ならたちまち日本はよくなるだろうに 蝶人
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なにゆえに~「これでも詩かよ」第143番

2015-06-24 11:36:56 | Weblog



ある晴れた日に 第313回


なにゆえに
黄色いひよっこ
ピヨピヨピヨ
さえずるだけで
たのしいからさ

なにゆえに
めんどりおばさん
コケコッコ
歌ってるだけで
仕合わせだからさ

なにゆえに
うちのムクちゃん
ワンワンワン
吠えてるだけで
うれしいからさ

なにゆえに
隣のタマちゃん
ミャウミャウミャウ
鳴いてるだけで
恋しいからさ

なにゆえに
うちの耕君
ニコニコニコ
生きてるだけで
面白いからさ

なにゆえに
うちの奥さん
オホホノホ
朝から晩まで
可笑しいからさ

なにゆえに
うちの父さん
グウグウグウ
とにかく人世
疲れるからさ


   コンビニに行きて帰りて誤嚥して六十九歳で果てし人はも 蝶人
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キリル・ペトレンコって誰だ?

2015-06-23 13:36:27 | Weblog



音楽千夜一夜第342 回バガテル-そんな私のここだけの話op.201


 ベルリン・フィルが2018年からとなるサイモン・ラトルの後任にキリル・ペトレンコを選んだというニュースには驚いた。

 ロシア・オムスクの出身で現在バイエルン州立(国立)劇場の音楽監督を務め、バイロイトで「指輪」の指揮をしているそうだが、日本に来たことはないし、CDだってろくに出ていないから文字通り寝耳に水だった。

 ロシア出身の優れた指揮者にはベテランのヴァレリー・ゲルギエフ、若手ではツガン・ソヒエフなどがいるが、この人はこれまでベルリン・フィルは3回しか振っていないという。

 それでも選ばれたのは、楽員の票が独出身本命ティーレマンとベネズエラの異端ブタブタドダメルとに真っ二つに割れ、急遽ダークホースとしてどこからともなく現われたロシアの鳶が油揚げをかっさらったのではないだろうか。

 ベルリンフィルで振ったスクリャービンの「法悦の詩」などを視聴してみるとなかなか根性のある音楽をやっていて、ちょっと私の大好きな広上淳一を思わせるところがあるが、「第2のクライバー」という噂もある天才肌指揮者らしいので、いやがうえにも期待が高まる。

 しかしベルリン・フィルはアバドやラトルをシェフに選んだときにも驚いたが、じつに大胆な選択をするものだ。過去の伝統にあぐらをかかず、絶えず音楽の最先端へと飛躍を続けるこの戦闘的な姿勢を、自民党と同様の保守反動の高みであぐらをかいている「天下のN響」も少しは見習ってほしいものである。

 
キリル・ペトレンコの演奏→ http://tower.jp/article/feature_item/2015/06/22/1102


  あまりにも早く茶色い染みがつきだした命短し乙女椿 蝶人
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ブルース・ウィルス大活躍!

2015-06-22 11:30:16 | Weblog

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.846&847


ジョン・マクティアナン監督の「ダイハード3」をみて

 NY市内の大爆発からはじまって、テロあり、カーチエイスあり、地下鉄から海から空から地下道まで縦横無尽に転回するサスペンスを、大口あんぐりで楽しむ一大エンターテインメント映画なりい。

 満身創痍で大活躍のブルース・ウィルスに対する犯人に、ジェレミー・アイアンズを配したことも正解である。


レン・ワイズマン監督の「ダイハード4.0」をみて

 高速道路を疾走中に、ジェット機からミサイル攻撃を仕掛けられたダンプに乗った主人公が、どうやって逃れてどうやってそのF104に乗り移り、墜落する戦闘機から無事脱出できるのか?

 漫画ならともかくそれを4D駆使とはいえ映画でシレッとやってのけるウルトラスーパー大活劇に脱帽。しかし残念ながら、この映画では前作と違って犯人があまりにもうすっぺらで、悪人オーラが弱すぎる。


   春逝きし君のスノードームはなぜか冬いつも静かに雪が降ってる 蝶人
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鎌倉文学館で「源氏物語展」をみる

2015-06-21 11:02:27 | Weblog


茫洋物見遊山記第183回&鎌倉ちょっと不思議な物語第345回


 初夏のバラの見ごろは終わってしまいましたが、長谷の鎌倉文学館では来る7月5日まで「スーパーストーリ源氏物語特別展」が開催されています。

 鎌倉と源氏物語なんてあんまり関係がないのではないかと勝手に考えていたのですが、とんでもない。源氏物語の原本のひとつである「河内本」はここ鎌倉で編まれたそうです。

 源氏物語の代表的な写本には、いずれも平安時代末期から鎌倉時代のはじめにかけて編まれた藤原定家の「青表紙本」と源光行・親行親子(2人とも河内守だった)の「河内本」の2種類が存在していて、どちらもそれぞれの特色を備えているそうですが、鎌倉時代までは「河内本」が圧倒的に優勢だったそうです。

 会場には与謝野晶子の原稿などが並べられていましたが、鎌倉在住の川端康成がどうして彼の翻訳を遺してくれなかったのかと惜しまれてなりません。

 幸い2017年からは若手の角田光代選手の渾身の新訳が登場するそうですから、いまから楽しみなことです。


 賛成はしないが反対もしなかった人々が巻き込まれてゆく戦争 蝶人
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鎌倉時代のテロルの現場を歩く その4 三浦泰村とその一族の「宝治合戦」

2015-06-20 09:57:20 | Weblog


茫洋物見遊山記第182回&鎌倉ちょっと不思議な物語第344回


 その合戦は、1247年宝治元年に起こったので、「宝治合戦」と呼ばれている。三浦氏は代々源氏に仕え、頼朝の挙兵時にも大きな役割を果たした御家人中の最大最強勢力であった。

 その後鎌倉から追却された前将軍九条頼経を中心とする反執権勢力に接近した三浦泰村は、時の執権北条時頼から危険視され、さまざまな政治的策動を仕掛けられていた。

 宝治元年6月5日、時頼の外祖父で三浦氏の排除を狙う安達景盛らが突如三浦泰村邸を襲撃し、これに時頼も加担したため鎌倉幕府の中心部で大合戦の火蓋が切って落とされた。

 両軍は現在の大学前バス停付近の筋替橋辺りで激戦を繰り広げたが、戦況は徐々に不意を打たれた三浦勢に不利となり、泰村らは頼朝が祀られている法華堂(現在の頼朝の墓付近)に籠って防戦に努めたが武運つたなく、一族の500名余りが自刃して果てたという。

 大倉幕府を一望する法華堂跡のやぐらには、恨みを呑んで自刃した三浦一族を祀る五輪塔が遺されているが、その小ささと粗末さがいかにも哀れである。

 この戦いは安達景盛が主導して時頼を巻き込んだ形になったが、宿敵三浦氏を滅亡させて後顧の憂いを絶ったはずの安達家は、景盛の孫の泰盛の時代になって弘安8年1285年の霜月騒動で全滅してしまい、いたずらに北条家に名をなさしめる結果となった。

 「宝治合戦」によって三浦氏を滅亡させた北条氏は、将軍側近勢力を一掃し、ここに合議制の執権政治が終焉して北条得宗家による「安倍」専制体制が確立するのである。
 
 以上はNPO法人鎌倉ガイド協会の資料をもとに一部小生が改変しつつ記述いたしました。


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異民族の愛と憎しみのはざまを描いた二本

2015-06-19 09:54:43 | Weblog


闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.844&845


○シルヴィオ・ナリッツァーノ監督の「血と怒りの河」をみて

 メキシコの盗賊に子供の時に誘拐された米国人テレンス・スタンプが人種の谷間で悩みながら最終的にはアメリカ側について育ての親と一味をやっつける話。医師の娘ジョアンナ・ペティットに一目ぼれしたからこういう結果になったが、でなければ恐らくメキシコに戻っていただろう。

○ジョン・ヒューストン監督の「許されざる者」をみて

 赤ん坊の時にアイオワ族に誘拐されたオードリー・ヘプバーンを守ろうとして村八分も辞さずにバート・ランカスター一家がインデイアンと命懸けで戦い、母親リリアンギッシュは死んだもののなんとか撃退する話。戦いの中でヘプバーンは実の兄を撃ち殺すが、ランカスターとヘプバーンの強烈な思慕がなければこういう結末にはならなかっただろう。


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R.J.カトラー監督の「ファションが教えてくれること」をみて

2015-06-18 13:11:35 | Weblog


闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.843&ふぁっちょん幻論第94回


 2007年9月号の製作をめぐって激しく戦うアメリカヴォーグの編集長アナとクリエイティブ・ディレクターのグレース。

 この同じ年、同じ月、同じ英国生まれで同期入社の二人の熟女の熾烈な女のいくさが、彼らの人間性とともに激烈に描かれている。

アナは作らない、あるいは作れない。グレースが作ったものに対していい、悪いをいうのだが、その判断基準は創造的価値とは無関係で、読者に受けそうか否かという商品的経営的観点のみ。

 アナとグレース、あるいはアナ的要素とグレース的要素は、あらゆる企業を駆動させる両輪だが、アナの冷酷な獣を思わせる非情な目を見ているとなんだか厭な気持になって、精魂こめて無から有を、有の中の優を創造した「芸術品」を不条理に突き返されるグレースの潤んだ瞳を見るに絶えなくなってくる。

 一身にしてアナとグレースを兼備しつつ前進するのがスマートなビジネスピープルなのだろうが、自分で新しいものを創造できない人を私は憎悪する。

 原題は「9月号」なのに、「ファションが教えてくれること」などともっともらしい邦題をつける配給会社やコピーライターも私は嫌いだ。


ふぁっちょんが教えてくれることそれは売れなければなにを言ってもだめだということ 蝶人

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ロバート・アルトマン監督の「ロング・グッドバイ」をみて

2015-06-17 14:40:21 | Weblog


闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.842


 探偵のフィリップ・マーロウは相変わらずタフだし、事件の全貌は相変わらず曖昧模糊にして五里霧中。いちおうの犯罪のプロットはあり、暦とした犯罪事件は起こり、残虐な死体の1つや2つはごろごろ転がり、チャンドラー好みの政財界の大物からマフィアから謎の医師や弁護士や出版プロデューサー、ヤクザにチンピラにボディガード、謎のブロンド女やマーロウの運命のファムファタールまで陸続と面妖な人物が登場する。

 だが、それがどうした。その犯罪の本質ははじめから終わりまで杳として最後の最後まで読者に知らされることは無い。

 確かに犯罪者は登場し、犯罪は起こる。しかしその犯罪の動機や必然性は明確に描かれることはない。それなのに犯罪を構成する人物のデテールだけが異様に精確に描かれている。

 人物が登場するたびに、チャンドラーは舌なめずりしながら彼らの姿かたちを鮮やかに描写する。彼らはドラクロアの登場人物のように強烈な光線を浴びてくっきりとして輪郭をしている。

 しかしそれは犯罪の全体構造とは内的な関連をもたない。つまり事件は小説の舞台フレームとして仮に設定されているに過ぎない。

 とみるまに、またしても絶世の美女が暗い部屋の片隅で全裸になり、マーロウを誘うと、我らが探偵は「まるで牡馬のように」なっちまうのであるが、このマーロウやアイリーン・ウエードの内面性はどのように描かれているのだろうかと調べてみると、ようわからんのである。

 いったいマーロウが何を考えているのか、彼らの人生の喜びや悲しみや価値観は奈辺にあるかがてんでわからないのである。 つまりチャンドラーはプロットなどはどうでもよく、その瞬間ごとの人物たちのリアルな外形だけに関心があった。

 マーロウやアイリーン・ウエードやテリー・レノックスたちはすべて能面冠者であり、彼らの内面は戯作者であるチャンドラー自身の内面に格納されている。かくして全体は最高に虚妄でありながら、部分部分は最高におもしろいという世にも不思議な物語が完成したのであった。

 以上がレイモンド・チャンドラーの原作を村上春樹の翻訳で読んだときの感想ですが、異才アルトマンが演出したこの映画をみても、どこが面白いのやらさっぱりわからず。マーローに扮したどうしようもない役者も初めから終わりまで煙草を呑み続けているだけのドジな探偵で、最後にいきなりズドンとやってジエンドとはあまりにも酷過ぎる。


   裏駅の時計は午後4時を廻りたりものみな息絶え虫になるとき 蝶人


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チェーホフの「三人姉妹」を読んで観る

2015-06-15 11:09:57 | Weblog


照る日曇る日第794回


 読んだのは昭和二五年に岩波文庫から出た湯浅芳子の翻訳、視聴したのはケラリーノ・サンドロヴィッチ演出のシスカンパニー製作のものをNHKが中継録画したものでしたが、いずれも期待を上回るようなものではありませんでした。

 私は何を隠そう湯浅芳子の人とその翻訳は好きなのですが、いかにも用字用語が古すぎてこればっかりはどうしようもない。それにこの芝居には仏蘭西語やラテン語なども出てくるのですが、フランス語はともかくラテン語などどこまで正確なのか、読んでいても甚だ心もとない。

 話の内容もだいたい知っていたのですが、三人姉妹がやたらモスクワへ戻りたいとか、生きていることの意味が知りたいとか、軍人が自分たちが消えてなくなっても次代の人間に資することができればそれでいいとか、わりとセンチメンタルなセリフを連発するのが気になります。

 ふと思うのですが、トルストイがベートーヴェン、ドストエフスキーはマーラーだとしたら、チェーホフはさしずめショパンかしら。人世観の基調に短調の抒情と詠嘆が疾走しています。

 さてお芝居の方ですが、長女オリガに余貴美子、次女マーシャに宮沢りえ、三女イリーナに蒼井優、男優に堤真一、段田安則などを取りそろえているにもかかわらず、蜷川演出と違って役者、特に堤真一は勝手に台詞を喋っているだけ。

 オーソドックスな演出といえばそうなのだろうけれど、子細に点検してみると一幕の終りでは台詞の順序を勝手に入れ替えているし、台本で「静かに笑う」と指定されている個所は、宮沢りえなどみな大声で莫迦笑いしている。

 ケラリーノ・サンドロヴィッチは「鬼才」だそうですが、全4幕をつらつら見物してもどこが鬼才なのかさっぱり分からない。これでは一昔前の新劇の舞台のほうがよほど完成度も感銘の度も高かったといわざるを得ません。
  

 それに彼自身が台本を用意したというのですが、まさか自分でロシア語から翻訳した訳でもないだろうし、いったい誰の翻訳に依拠しているのか。もしかすると著作権を無視してあれこれの脚本を自由に引用して「創作」しているのかもしれません。

 とまあさんざん悪口を書いてしまいましたが、私はこの演出家の演出ではなく、1980年代の「有頂天のケラ」時代の音楽活動を「鬼才」どころか「天才」の名に値すると今でも思っております。

 こんな下らない演劇から1日も早く足を洗って、狂気と笑いの怒涛のライヴ活動に復帰してほしいものです。



 へらへらとマルクス兄弟になりきって歌ってる君は有頂天のケラ 蝶人
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