西暦2022年蝶人狂言綺語&バガテル―そんな私のここだけの話第407回
- 子の成人式を祝う父親のあいさつ
清、成人式おめでとう。君といっしょに、私の故郷の里山でオオムラサキやノコギリクワガタを採集したり、由良川に飛び込んでオオウナギと大格闘の末逃がしてしまったのが、つい昨日のことのようです。*1
君も知っての通り、私は定年まであと数年というところでリストラの憂目に遭いました。
しかしお父さんは全然めげてはいません。企業というものは所詮金儲けに始まり、そして金儲けで終わる組織集団なのです。
金儲けに夢中になる組織はどこか不自然で不人情になって無理が出ます。だからそんな会社にリストラされたお父さんは実のところホットしています。そしてこれからはもういちど一個の自由人として、人生をやり直そうと思っているのです。
清はようやく二十歳。君には無限の自由と可能性があります。*2
前途洋々の人生がいまはじまったばかりです。いわば5週遅れで君とおんなじスタートラインに立ったお父さんに負けないで君独自の素晴らしい軌跡を描いてみてください。お母さんと私は、いついつまでも声をからして大声援するでしょう。
- アドバイス
- 1リストラされた父親が成人式を迎えた息子に贈るちょっとユニークなメッセージ。リストラされた無念さとともに、災厄を乗り越えて第2の人生に旅立とうとする覚悟が表明されている。
- 2サラリーマンだけが人生ではない。リストラされても終りではない。息子と隣のコースで肩を並べて競走しようとする父親の行く手に平安あれ。
ものみなが遠ざかりつつ皐月尽 蝶人