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bowyow cine-archives vol.736
子母澤完の原作を三隅が映画化したもので、市川雷蔵扮する山崎蒸の目から見た新選組の近藤や土方の思想や言動の矛盾を鋭く糾弾している。
山崎は新選組の密偵で長州藩士の池田屋集結の情報を近藤たちに告げ、そこへ殴り込みをかけた新選組が大手柄を立てるわけだが、尊王攘夷も佐幕開国もどっちもどっちの私から見れば、単なる血なまぐさい惨劇にすぎない。
近藤勇にあこがれて新選組に入ったものの、局長鴨の暗殺などの権謀術数に嫌気がさして政治と殺戮から足を洗って恋人の藤村志保と隠遁生活を送りたいとシーンにはいたく共感したが、これくらい近藤や土方の陰険で暗い部分をえぐった映画もあるまい。
最近NHKの大河ドラマでは三谷幸喜の脚色で成り上がり武士たちの青春ドラマとしての新選組群像を描いたが、その能天気な向日性とは正反対の陰鬱などす黒さが揺曳する後味の悪い映画である。
会うたびにかたくわが手を握り締めし菊男伯父にいま一度逢いたし 蝶人